2019(03)

■I have plans so I can't go.

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「野坂さん、イケメンらしからぬ顔になってますよ」
「本当に。どうしたんだい野坂、そんな凶悪な顔をして」
「こーた、ホント真面目にアイツどうにかして欲しい」
「そこまで煩わしがるということは、例の女性ですか?」
「それな。土曜日が休みなわけないだろ、いい加減にしろ」

 神崎の話によれば、野坂は今、同じ成人式実行委員に属する女の子から猛烈なアタックを受けているらしかった。デートのお誘いが頻繁に来るそうなのだけど、如何せん野坂の恋愛対象は菜月さんだけだし、他の女性はカボチャと同等。心底面倒だから何かと理由を付けて断っているそうだけど、毎度毎度彼女も懲りないらしい。
 そして今回は、土曜日に会えませんかと連絡が来たそうだ。野坂本人が言うように土曜日は菜月さんとの昼放送の収録という、野坂の中では最上級に幸せなイベントで2ヶ月先まで埋まっている。と言うか、世間一般では休みの土曜日にお誘いを入れるだけで憎悪に満ちたこの顔だよ。野坂も立派にラブ&ピースの申し子だった。

「圭斗先輩は女性におモテになられるでしょうし、意図しない遊びの誘いの断り方なども心得ていらっしゃると思います。よろしければどうか俺にご教授いただけませんでしょうか…!」
「残念ながら僕はモテないんだよ」
「ナ、ナンダッテー!? そんなことがあってなるものか! 圭斗先輩がモテないと言うならどこの誰がモテると言うんだ!」
「あなたでしょう?」
「うるさいウザドル!」

 余談だけど、以前定例会の男4人の中で誰が一番モテるのかという話題になったとき、告白された数では朝霞君が1位だったんだ。本人の記憶が曖昧だけど、演劇部の看板女優で高校一の美少女の後輩から告白されて付き合ったこともあるそうだよ。朝霞君本人も伝聞調で言うから真偽は闇の中だけど、人は見かけによらないね。ちなみにヒビキの独断で選ぶ結婚したい男ランキングは大石君が1位だそうです。

「僕はどちらかと言うと自分から攻めて落としに行くタイプだから、女性からアタックされて誘いを受けるということはほとんどないんだよ」
「なるほど、そのパターンでしたか…!」
「強いて言うなら、お前にしかモテてない。それはともかく、意図しない遊びの誘いの断り方だったら、菜月さんの方が詳しいと思うよ」
「はっ…! もしや菜月先輩にどこの馬の骨ともわからない男が群がっていると!?」
「とある財布が財力をチラツかせて彼女に声をかけることがまああるんだけども、そのぶった斬り方がまことに秀逸でね」
「何だ、財布か」
「野坂さんあなた、財布の人も一応は先輩なんですから財布と言うのはやめて差し上げなさい」

 花火大会やクリスマスと言った行事になると、かの財布は菜月さんに声をかけているんだけども、人混みが嫌いな引きこもりがそんな人の多そうなところにわざわざ出かけていくワケがないんだよな。ソリティアの方が大事だから奴からの誘いを断ったという話を聞いたときには僕とムラマリさんは本当に文字通り笑い転げてね。

「それに比べて小林君は、野坂君土曜日以外の方がいいんだよねって先に断りを入れてくれるというのに! って言うか俺が土曜日NGなの何で知ってるんだろう。前に言ったかな」
「それは私がやっちゃんに教えたんですよ、野坂さんを誘うなら土曜日以外がいいですよと」
「お前最高かよこーた。これで俺は菜月先輩と小林君を天秤にかけるようなことをしなくていいんだな!」
「野坂、仮にやっちゃんが土曜日に誘いを入れてきてたらどうするつもりだったんだ。菜月さんと天秤にかけたのか?」
「それは菜月先輩優先です。当たり前じゃないですか、先から決まってる予定なんですから。MMPの活動は菜月先輩がとても大切にされていることですから、俺の一方的な都合で中止するわけにはいきません。小林君には断りを入れて、土曜日以外で次に都合のいい日を聞いて埋め合わせます」

 秤にかけるまでもなく菜月さんが最優先なんだよな、野坂には。わかってはいたけどね。しかし、他の女性からの誘いが疎ましくなるという経験を僕も一度はしてみたいものだね。モテる男の苦悩というヤツかな。でも、野坂が他の女性に対する態度は菜月さんの三井に対するそれと同等に無慈悲なんだよなあ。

「ああ、土曜日の予定で思い出しました。野坂さん、明日と来週の土日は青女さんの手伝いに行かなければならないという話は覚えていますか?」
「……はっ! 忘れてた!」
「やーい、啓子さんにシメられますよ」
「ん、お前たちは青女さんの手伝いに行くのかい?」
「ヒロさんが啓子さんから安請け合いしたんですよ」
「こっちの都合なんか聞きもしないで俺とこーたはいつでもフリーだからとか何とか言ってですね」
「ご愁傷様です。楽しい下僕ライフをお送りください」
「本当ですよ」
「青女さんの手伝いもいいけれど、MMPも毎日ここで準備をしているということはお忘れなく。そろそろ装飾の神がおキレになられる頃合いだからね。彼女は完璧主義だから一人作業を苦にしないけど、気遣いは求めるよ。野坂、お前は先に自分で何と言ったかな?」
「土曜日NG?」
「ではなく。MMPでの活動は」
「菜月先輩が大切にされていることです…! こーた、俺は収録もあるし明日NGで」
「それは自分で啓子さんに伝えてもらえますか、私も命が惜しいので」

 みんなそれぞれ事情があるようだね。結局、野坂は先の誘いをまた適当な理由を付けて断りを入れたらしい。土曜日は永久NGだと添えて。如何せん今後も成人式実行委員としての活動があるからあまり酷い扱いも出来ないのがネックらしい。そうでなければボロクソに言うつもりだったのか。クズか。あ、いや、クズだったわ。

「ちなみに、僕と菜月さんは日曜日もここで作業をしていますので、よろしければ皆様に置かれましてもご参加下さい」


end.


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今年度のノサカはなかなかにクズいところを隠しませんねえ。多分神崎が一緒だからだと思うけど。
というワケで、ノサカの土曜日の都合やら大学祭のことやらいろいろです。そういや菜月さん、ソリティアの方が大事だっつって三井サンを切ったことがあったなあ
そういや最近青女の話がご無沙汰だった。お話でやってないだけでみんなちゃんとやってるよ!

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