2019(03)
■人助けなら実質無料!
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今度の金曜日、11日の夜から行われることに決まったMBCC流オクトーバーフェストに向けて、俺はジャガイモ料理の準備と練習に明け暮れていた。ウインナーは高ピーに当てがあるらしく、当日持って来てくれるとか。でも、問題はジャガイモなんだよなあ。
如何せん今度の無制限飲みは果林の誕生会。果林の誕生会ということは何においても食べ物が一番大事。なんならお酒よりも食べ物の方を重視した方がいいんじゃないかって。当日使う食材はある程度カンパしてもらえるけど、練習は完全に実費だもんなあ。
納得のいくものになるように練習とか開発とかってやってると、ジャガイモ消費量がとんでもないことになってて。でもって、試作品を食べるのもそこそこ大変で。まあ、それは慧梨夏や浅浦に味見してもらったりして冷蔵庫が圧迫されないようにしてるんだけど。
「本当に、お前もよくやるよな」
「何だかんだ言って、俺は自分の作ったモンを食ってもらうのが好きなんだよ。あっ浅浦、ちょっと味見てくれ。こっちがのり塩味で、そっちがカレー味」
「ん、美味い。そのまま食うには濃い目だけど、ビールと合わせるならちょうどいいと思う」
「オッケ、じゃあこれはこれで」
今日も例によって練習に次ぐ練習だよな。中高の部活じゃこれ以上ない練習嫌いだった俺が、ここまでガチで練習してるっていうのはMBCCに入ってからだと思う。ミキサーにしろ、料理にしろ。まあ、いい意味で俺が変わったんだということにしておこう。
「おい伊東、電話鳴ってるぞ」
「マジで? ちょっと火ぃ見ててくれ。はいもしもし」
『あっ、伊東先輩お疲れ様です。今良かったですか?』
「おー、どーしたタカシ」
『ジャガイモに需要はありませんか?』
「そりゃもうありまくるけど、どうしたの?」
『あのですね、星大のミドリから救援要請が入りまして、ジャガイモを譲ってくれることになったので今手元に5ケースあるんですよ。伊東先輩の練習用と、もし良ければ本番用のジャガイモを伊東先輩の部屋に搬入することは出来るかなと』
「あ、本当? 俺なら大丈夫だけど、今から来るの?」
『そうですね。今ミドリの車の中なので、伊東先輩さえ良ければ今から行きます』
「わかった、じゃあ待ってる。あ、運転するのってミドリでしょ? 道わかる?」
『俺が分かるので大丈夫です。ではまた後で。失礼します』
5ケース…? 1ケースがどんなサイズの何キロかっていうのを聞いてないから何とも言えないけど、それにしたって5ケースは。でもこれは本当にありがたい。ジャガイモの調達資金云々の心配をしなくてよくなったってことだもんな。
とりあえず火の番を浅浦から引き継いで、練習の続きを。ジャガイモとは関係ないけど夕飯の時間に向けた普通の飯も炊飯器で用意してたりする。おかずは今練習してるジャガイモ料理。例に漏れず浅浦に消費を手伝ってもらう予定だ。
しばらくして、タカシから電話がかかってきた。マンションに着きました、と。いくらエレベーターがあるとは言え、5ケースもあるジャガイモをどうやって運んでくるんだろうか。台車か何かを用意してあるのかな。
「伊東先輩、来ました」
「あっ、カズ先輩こんにちは! 星大のミドリです! 今回はジャガイモを引き取ってもらってありがとうございますー! 本っ当に助かります!」
「あ、うん、ありがとう、あっ、どっかその辺に置いといてもらって」
「とりあえずこれで2ケースなので、あと3ケースですね」
「マジかよ。浅浦、ちょっと火見てて」
駐車場に降りて、ミドリの車を覗くと本当にジャガイモのケースがあと3ケースある。1人1ケースずつ運び込み、台所で改めてジャガイモのケースを確認する。中を開けて見ると、それはもう立派なジャガイモがゴロゴロと。俺が想像してたのは小振りなヤツだったから、ガチで計算外だ。
「ミドリ、これって1ケースに何個ぐらい入ってるの?」
「えっと、先輩は25個ぐらいだろうって言ってましたー」
「このデカさのジャガイモが1ケース25個が5ケースは冷静に考えてヤバい。買うといくらするんだよ」
「軽く1万は超えるだろ」
「もしかして、さすがに迷惑でしたか?」
「ううん、めっちゃありがたい。ほら、ウチのメンバーってめちゃ食うのが何人かいるし、練習用に保存食用にってしてたらね。本当にありがとう」
「いえいえー」
「あっ、良かったら2人とも今日うちで食べてく? 今ちょうど練習してるんだけど、俺とコイツの2人じゃ多分食い切れないから。部屋にも電気鍋と保温調理鍋があるし、炊飯器でも炊き込みご飯作ってるんだ」
「ミドリ、伊東先輩のごはんは本当に美味しいから食べてった方がいいよ。あっ、俺はいただきます」
「それじゃあ俺もいただきまーす!」
これは思わぬ収穫だ。ミドリはこれだけのジャガイモをどこから持って来たんだろうとかは気にしたら負けだけど、とにかく今は俺の手元にあるんだから、使い放題ってことだ。本当に助かるって言ってるし、引き取ることが人助けなんだよな? うん、そう信じよう。
電気鍋の方にはスペアリブのピリ辛肉じゃが、保温鍋の方にはミルフィーユポテトが作ってある。オーブンの方ではポテトグラタンを焼いてるトコだし、次はツナじゃがブレッドケーキを焼く予定。冷蔵庫にもさっき作ったジャガイモモンブランが冷やしてあるし。
「そうだ、せっかく人手があるんだしコロッケ作るの手伝ってもらおうかな」
「コロッケですか?」
「そう。コロッケは冷凍保存しておけば、必要な時に揚げるだけでいいからね。MBCC流オクトーバーフェストはスピードが勝負だから」
「伊東、前々から思ってたけど、お前は一体どこを目指してるんだ?」
「ンなこた知るかよ。目指す先もなく好き勝手にやってたらここまで来ちまってたんだから」
end.
++++
タカミドがジャガイモを引き取る件はやっていても、いち氏宅に搬入している話は多分やったことがなかったのでやってみる
しかし消費要員としての浅浦雅弘か。まあアリすな。曜日とか時間とか細かいことを気にしたら負けな話。高崎は当日までのお楽しみ枠という体で
TKGは現代っ子なのでスマホのナビも使うしいち氏と違ってそのナビをちゃんと信用するので道には迷わないぞ!
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今度の金曜日、11日の夜から行われることに決まったMBCC流オクトーバーフェストに向けて、俺はジャガイモ料理の準備と練習に明け暮れていた。ウインナーは高ピーに当てがあるらしく、当日持って来てくれるとか。でも、問題はジャガイモなんだよなあ。
如何せん今度の無制限飲みは果林の誕生会。果林の誕生会ということは何においても食べ物が一番大事。なんならお酒よりも食べ物の方を重視した方がいいんじゃないかって。当日使う食材はある程度カンパしてもらえるけど、練習は完全に実費だもんなあ。
納得のいくものになるように練習とか開発とかってやってると、ジャガイモ消費量がとんでもないことになってて。でもって、試作品を食べるのもそこそこ大変で。まあ、それは慧梨夏や浅浦に味見してもらったりして冷蔵庫が圧迫されないようにしてるんだけど。
「本当に、お前もよくやるよな」
「何だかんだ言って、俺は自分の作ったモンを食ってもらうのが好きなんだよ。あっ浅浦、ちょっと味見てくれ。こっちがのり塩味で、そっちがカレー味」
「ん、美味い。そのまま食うには濃い目だけど、ビールと合わせるならちょうどいいと思う」
「オッケ、じゃあこれはこれで」
今日も例によって練習に次ぐ練習だよな。中高の部活じゃこれ以上ない練習嫌いだった俺が、ここまでガチで練習してるっていうのはMBCCに入ってからだと思う。ミキサーにしろ、料理にしろ。まあ、いい意味で俺が変わったんだということにしておこう。
「おい伊東、電話鳴ってるぞ」
「マジで? ちょっと火ぃ見ててくれ。はいもしもし」
『あっ、伊東先輩お疲れ様です。今良かったですか?』
「おー、どーしたタカシ」
『ジャガイモに需要はありませんか?』
「そりゃもうありまくるけど、どうしたの?」
『あのですね、星大のミドリから救援要請が入りまして、ジャガイモを譲ってくれることになったので今手元に5ケースあるんですよ。伊東先輩の練習用と、もし良ければ本番用のジャガイモを伊東先輩の部屋に搬入することは出来るかなと』
「あ、本当? 俺なら大丈夫だけど、今から来るの?」
『そうですね。今ミドリの車の中なので、伊東先輩さえ良ければ今から行きます』
「わかった、じゃあ待ってる。あ、運転するのってミドリでしょ? 道わかる?」
『俺が分かるので大丈夫です。ではまた後で。失礼します』
5ケース…? 1ケースがどんなサイズの何キロかっていうのを聞いてないから何とも言えないけど、それにしたって5ケースは。でもこれは本当にありがたい。ジャガイモの調達資金云々の心配をしなくてよくなったってことだもんな。
とりあえず火の番を浅浦から引き継いで、練習の続きを。ジャガイモとは関係ないけど夕飯の時間に向けた普通の飯も炊飯器で用意してたりする。おかずは今練習してるジャガイモ料理。例に漏れず浅浦に消費を手伝ってもらう予定だ。
しばらくして、タカシから電話がかかってきた。マンションに着きました、と。いくらエレベーターがあるとは言え、5ケースもあるジャガイモをどうやって運んでくるんだろうか。台車か何かを用意してあるのかな。
「伊東先輩、来ました」
「あっ、カズ先輩こんにちは! 星大のミドリです! 今回はジャガイモを引き取ってもらってありがとうございますー! 本っ当に助かります!」
「あ、うん、ありがとう、あっ、どっかその辺に置いといてもらって」
「とりあえずこれで2ケースなので、あと3ケースですね」
「マジかよ。浅浦、ちょっと火見てて」
駐車場に降りて、ミドリの車を覗くと本当にジャガイモのケースがあと3ケースある。1人1ケースずつ運び込み、台所で改めてジャガイモのケースを確認する。中を開けて見ると、それはもう立派なジャガイモがゴロゴロと。俺が想像してたのは小振りなヤツだったから、ガチで計算外だ。
「ミドリ、これって1ケースに何個ぐらい入ってるの?」
「えっと、先輩は25個ぐらいだろうって言ってましたー」
「このデカさのジャガイモが1ケース25個が5ケースは冷静に考えてヤバい。買うといくらするんだよ」
「軽く1万は超えるだろ」
「もしかして、さすがに迷惑でしたか?」
「ううん、めっちゃありがたい。ほら、ウチのメンバーってめちゃ食うのが何人かいるし、練習用に保存食用にってしてたらね。本当にありがとう」
「いえいえー」
「あっ、良かったら2人とも今日うちで食べてく? 今ちょうど練習してるんだけど、俺とコイツの2人じゃ多分食い切れないから。部屋にも電気鍋と保温調理鍋があるし、炊飯器でも炊き込みご飯作ってるんだ」
「ミドリ、伊東先輩のごはんは本当に美味しいから食べてった方がいいよ。あっ、俺はいただきます」
「それじゃあ俺もいただきまーす!」
これは思わぬ収穫だ。ミドリはこれだけのジャガイモをどこから持って来たんだろうとかは気にしたら負けだけど、とにかく今は俺の手元にあるんだから、使い放題ってことだ。本当に助かるって言ってるし、引き取ることが人助けなんだよな? うん、そう信じよう。
電気鍋の方にはスペアリブのピリ辛肉じゃが、保温鍋の方にはミルフィーユポテトが作ってある。オーブンの方ではポテトグラタンを焼いてるトコだし、次はツナじゃがブレッドケーキを焼く予定。冷蔵庫にもさっき作ったジャガイモモンブランが冷やしてあるし。
「そうだ、せっかく人手があるんだしコロッケ作るの手伝ってもらおうかな」
「コロッケですか?」
「そう。コロッケは冷凍保存しておけば、必要な時に揚げるだけでいいからね。MBCC流オクトーバーフェストはスピードが勝負だから」
「伊東、前々から思ってたけど、お前は一体どこを目指してるんだ?」
「ンなこた知るかよ。目指す先もなく好き勝手にやってたらここまで来ちまってたんだから」
end.
++++
タカミドがジャガイモを引き取る件はやっていても、いち氏宅に搬入している話は多分やったことがなかったのでやってみる
しかし消費要員としての浅浦雅弘か。まあアリすな。曜日とか時間とか細かいことを気にしたら負けな話。高崎は当日までのお楽しみ枠という体で
TKGは現代っ子なのでスマホのナビも使うしいち氏と違ってそのナビをちゃんと信用するので道には迷わないぞ!
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