2019(02)
■ノリの語呂合わせ
++++
「さて、どうしたモンかね」
「焼きそばの売値は毎年100円だから、それで利益が出るように食材や資材を集めないといけないって」
「資材?」
「タッパーとか、割り箸とか。あと輪ゴムと手提げ袋もいるって。消耗品以外なら鉄板とかガスとかのレンタル物」
「そうか~……そーゆーのがあるっていう」
例によって高木の部屋に転がり込んで、始まる話は自然と学祭の方向へ。高崎先輩から食品ブースの責任者に指名されて、最初にやることは運営計画を立てることだった。どんな食材、資材が必要かを考えたり、原価計算の仕方をまとめたりっていうのを考える。
言ってもまだ焼きそばの試作をしたワケでもないし、割り箸とかの資材がどんなところにいくらで売っているのかを下見にいったワケでもない。だから原価計算はそういうのを一通り済ませてからになる。必要な物の漏れがないかだけはしっかり見ておく必要がある。
「何か、資材とかは業務系の店があるとかないとかっていうから、そういうところで見るのがいいみたい」
「つかお前よくそんだけ把握してんなっていう」
「伊東先輩が教えてくれたよ。必然的に俺がエイジの補佐をやることになるだろうからって」
「そーか、なら頼むべ」
「出来る範囲でね」
「今日の晩飯は焼きそばにするか? どんなモンが要るかを考えるついでに」
「あ、ゴメン。今日は豆腐を食べるつもりで大量に買って来てるんだよね。焼きそばの気分ではなかった」
「は?」
「冷蔵庫を見てもらえばわかると思うんだけど」
言われるままに冷蔵庫を覗いてみると、確かにどうしたんだこれという量の豆腐が詰められている。コイツが特別豆腐が好きだった覚えもないし、急にどうしたんだと。いくつの豆腐があるのかと言うと、軽く10丁はあるかもしれない。
よくよく見ると、3個パックになっている絹豆腐が2つあるから6パックある。それから、木綿豆腐も6パック。そんだけの豆腐をどうやって食うつもりだという気もするけど、それらの豆腐には見切り品のシールが貼られたものもいくつかある。すぐ食うから安い方がいいという心理だろう。
「確かに豆腐だな。どうしたんだっていう」
「ほら、明日って10月2日で豆腐の日でしょ? その語呂合わせで豆腐を食べようと思って。明日はサークルだし食べて帰るかなと思って」
「しょーもな」
「まあ、気分だからね」
「で、これをどうやって食うつもりだったんだっていう」
「え、そのまま。しょうゆかけてスプーンですくって食べるつもりだったよ」
「絹はともかく木綿もその食い方するつもりだったんかっていう」
「うん」
「それはどうかと思うべ。俺はその食い方したくないっていう。つかそんな食い方してたら絶対飽きる!」
俺がいなければコイツは12パックの豆腐を1人でそのまま食うつもりだったのか。そう考えるとバカすぎるし、高崎先輩が「高木に食品を扱わせるのは心配だ」って言ってた意味も分かり過ぎる。今日は俺もここで飯を食うから、せめて俺の分くらいはきちんと料理にしておきたい。
冷蔵庫の中には他に卵ともやし、それから最低限の調味料しかない。あ、カゴの中には一応ニンジンがある。つか卵の期限もギリギリじゃねーかっていう! うーん、今日は豆腐と卵をメインに組み立てるか。でもきちんと飯を作るには材料が足りなさすぎる。
「おい高木、スーパーの視察も兼ねて買い物行くぞ」
「えっ、買い物行くの? 材料の値段だったらネットで調べればわかると思うけど」
「視察は口実だ。飯の材料が致命的に足りてねーんだっていう」
「え、豆腐があるじゃない」
「俺は豆腐だけもそもそ食ってりゃ満足するお前とは違うっていう」
「何作るとかって候補はあるの?」
「そうだなー……とりあえず味噌汁かスープは確定で、後は何かスーパーでクックドゥとかうちのごはんとか、そーゆー系のヤツで豆腐使えそうなの無いか探したい」
「安定のクックドゥだよね」
「俺もお前の部屋に入り浸るようになってから料理はちょっとするようになったけど、それでも全部自分で出来るかっつったらそーじゃないっていう」
「うん、俺も。ああいうのに助けてもらって何とか出来てるって感じだもん。でも、焼きそばくらいならちゃんと出来るから安心して」
豆腐をそのまま食う……もとい、冷奴として食う分を除いたとしてもまだまだ豆腐は山のように残る。ソイツらを何に化けさせるかを考えつつも、それは自分の調理能力との相談になってくる。それこそネットで調べることも出来るけど、コイツの部屋に余計なモンを増やしてもしょうがない。今後は使わないだろう片栗粉とか。
揚げ出し豆腐とかすき焼き風煮込みだとか、やれそうなことはまああるんだけども、スーパーに行ってから考える。焼きそばの材料云々のこともついでにやりつつな。今日に関して言えば焼きそばがついでで豆腐との戦いがメインだ。
「もうちょっと料理が上手けりゃ豆腐ステーキとか豆腐ハンバーグとか、そういうのも出来るんだろうけど難しそうだっていう」
「ハンバーグはともかく、ステーキは焼けばいいんじゃないの?」
「いや、知らないから適当に言ってるっていう」
「あっ、エイジ!」
「急にデカイ声出してどうした」
「麻婆豆腐!」
「あー、確かにそれがあったべ。麻婆丼にしてもアリだな」
「とりあえずご飯炊いて行く?」
「頼むべ」
end.
++++
豆腐の日で豆腐をたくさん食べてたみたいな話は初期の頃にちょっとやってた思い出。
今回はエイジが学祭の準備もしたかったのに豆腐の消費に巻き込まれる回でした。料理は出来なくないけどそこまで得意じゃない。
これがいち氏だったらいろいろ化けさせてくれるんだろうけども……そうだ、オクトーバーフェストが……
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「さて、どうしたモンかね」
「焼きそばの売値は毎年100円だから、それで利益が出るように食材や資材を集めないといけないって」
「資材?」
「タッパーとか、割り箸とか。あと輪ゴムと手提げ袋もいるって。消耗品以外なら鉄板とかガスとかのレンタル物」
「そうか~……そーゆーのがあるっていう」
例によって高木の部屋に転がり込んで、始まる話は自然と学祭の方向へ。高崎先輩から食品ブースの責任者に指名されて、最初にやることは運営計画を立てることだった。どんな食材、資材が必要かを考えたり、原価計算の仕方をまとめたりっていうのを考える。
言ってもまだ焼きそばの試作をしたワケでもないし、割り箸とかの資材がどんなところにいくらで売っているのかを下見にいったワケでもない。だから原価計算はそういうのを一通り済ませてからになる。必要な物の漏れがないかだけはしっかり見ておく必要がある。
「何か、資材とかは業務系の店があるとかないとかっていうから、そういうところで見るのがいいみたい」
「つかお前よくそんだけ把握してんなっていう」
「伊東先輩が教えてくれたよ。必然的に俺がエイジの補佐をやることになるだろうからって」
「そーか、なら頼むべ」
「出来る範囲でね」
「今日の晩飯は焼きそばにするか? どんなモンが要るかを考えるついでに」
「あ、ゴメン。今日は豆腐を食べるつもりで大量に買って来てるんだよね。焼きそばの気分ではなかった」
「は?」
「冷蔵庫を見てもらえばわかると思うんだけど」
言われるままに冷蔵庫を覗いてみると、確かにどうしたんだこれという量の豆腐が詰められている。コイツが特別豆腐が好きだった覚えもないし、急にどうしたんだと。いくつの豆腐があるのかと言うと、軽く10丁はあるかもしれない。
よくよく見ると、3個パックになっている絹豆腐が2つあるから6パックある。それから、木綿豆腐も6パック。そんだけの豆腐をどうやって食うつもりだという気もするけど、それらの豆腐には見切り品のシールが貼られたものもいくつかある。すぐ食うから安い方がいいという心理だろう。
「確かに豆腐だな。どうしたんだっていう」
「ほら、明日って10月2日で豆腐の日でしょ? その語呂合わせで豆腐を食べようと思って。明日はサークルだし食べて帰るかなと思って」
「しょーもな」
「まあ、気分だからね」
「で、これをどうやって食うつもりだったんだっていう」
「え、そのまま。しょうゆかけてスプーンですくって食べるつもりだったよ」
「絹はともかく木綿もその食い方するつもりだったんかっていう」
「うん」
「それはどうかと思うべ。俺はその食い方したくないっていう。つかそんな食い方してたら絶対飽きる!」
俺がいなければコイツは12パックの豆腐を1人でそのまま食うつもりだったのか。そう考えるとバカすぎるし、高崎先輩が「高木に食品を扱わせるのは心配だ」って言ってた意味も分かり過ぎる。今日は俺もここで飯を食うから、せめて俺の分くらいはきちんと料理にしておきたい。
冷蔵庫の中には他に卵ともやし、それから最低限の調味料しかない。あ、カゴの中には一応ニンジンがある。つか卵の期限もギリギリじゃねーかっていう! うーん、今日は豆腐と卵をメインに組み立てるか。でもきちんと飯を作るには材料が足りなさすぎる。
「おい高木、スーパーの視察も兼ねて買い物行くぞ」
「えっ、買い物行くの? 材料の値段だったらネットで調べればわかると思うけど」
「視察は口実だ。飯の材料が致命的に足りてねーんだっていう」
「え、豆腐があるじゃない」
「俺は豆腐だけもそもそ食ってりゃ満足するお前とは違うっていう」
「何作るとかって候補はあるの?」
「そうだなー……とりあえず味噌汁かスープは確定で、後は何かスーパーでクックドゥとかうちのごはんとか、そーゆー系のヤツで豆腐使えそうなの無いか探したい」
「安定のクックドゥだよね」
「俺もお前の部屋に入り浸るようになってから料理はちょっとするようになったけど、それでも全部自分で出来るかっつったらそーじゃないっていう」
「うん、俺も。ああいうのに助けてもらって何とか出来てるって感じだもん。でも、焼きそばくらいならちゃんと出来るから安心して」
豆腐をそのまま食う……もとい、冷奴として食う分を除いたとしてもまだまだ豆腐は山のように残る。ソイツらを何に化けさせるかを考えつつも、それは自分の調理能力との相談になってくる。それこそネットで調べることも出来るけど、コイツの部屋に余計なモンを増やしてもしょうがない。今後は使わないだろう片栗粉とか。
揚げ出し豆腐とかすき焼き風煮込みだとか、やれそうなことはまああるんだけども、スーパーに行ってから考える。焼きそばの材料云々のこともついでにやりつつな。今日に関して言えば焼きそばがついでで豆腐との戦いがメインだ。
「もうちょっと料理が上手けりゃ豆腐ステーキとか豆腐ハンバーグとか、そういうのも出来るんだろうけど難しそうだっていう」
「ハンバーグはともかく、ステーキは焼けばいいんじゃないの?」
「いや、知らないから適当に言ってるっていう」
「あっ、エイジ!」
「急にデカイ声出してどうした」
「麻婆豆腐!」
「あー、確かにそれがあったべ。麻婆丼にしてもアリだな」
「とりあえずご飯炊いて行く?」
「頼むべ」
end.
++++
豆腐の日で豆腐をたくさん食べてたみたいな話は初期の頃にちょっとやってた思い出。
今回はエイジが学祭の準備もしたかったのに豆腐の消費に巻き込まれる回でした。料理は出来なくないけどそこまで得意じゃない。
これがいち氏だったらいろいろ化けさせてくれるんだろうけども……そうだ、オクトーバーフェストが……
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