2019(02)
■1ヶ月戦争のゴングを鳴らせ
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「――というわけで、今年のDJブースの責任者は岡崎に頼むことになった。ここからは岡崎の指揮の下で当日に向けて練習したり、企画したりしてくれ」
MBCCの通年の活動である昼放送が始まり、そして10月に入るということで大学祭に向けての動きも加速していくことになる。俺と高ピーは大祭実行さんとの兼ね合いがあってMBCCの側にずっといることは出来ないから、DJブースの責任者はヨシにお願いすることになった。
そして、MBCCでは延々と公開生放送をするDJブースの他に、延々と焼きそばを焼き続ける食品ブースも出店するのが毎年の流れだ。食品ブースは毎年1年生が担当することになっている。メニューは焼きそばで決定してるからその辺の打ち合わせはないけど、レシピは毎年研究開発しなきゃいけない。
「で、食品ブースだな。メニューは例年通り焼きそばで、責任者を1年の中から出すことになるんだが……まあ、サークルへの出席頻度から見てもお前ら3人の中の誰かから出してもらえると都合がいいな」
「高崎先輩、ブース責任者って何するんすか」
「レシピの開発にシフト決め、それから金の管理の取りまとめだ。別に全部責任者がやらなくても、適任な奴にそれを割り振ってくれればいい。シフト決めに関しては、DJブースとの兼ね合いがあるから岡崎とも相談する必要があるな。エージ、お前責任者やるか」
「えっ、俺すか!?」
「ハナは理系だし授業コマもお前らより多いだろ。高木に食品を扱わせるのは果林とは別の意味で心配だ」
「一理あるっす。じゃあ、やります」
「過去のノウハウは2、3年が持ってるし、手詰まりになったら聞きに来い」
「焼きそばなら俺にも作れそうだし何とかなるかも」
「甘いぞ高木。たかが焼きそば、されど焼きそばだ。どうせやるなら歴代MBCCの中で、この大学祭に出るブースの中で一番美味いモンじゃねえと戦えねえ。売り上げを出すためには手段を選ぶな。使える物は使え」
「何か、高崎先輩の熱が凄いですね」
「高崎先輩て学祭にここまで熱くなる人だったんですねー、意外ー」
高ピーは高校時代に生徒会長をやってただけあって、こういうイベント事は元々嫌いじゃない。だけど、ここまで食品ブースの売り上げにこだわるのにはきっちりとMBCCらしい理由がある。1年生はまだそのことを知らないから、これも高ピーの意外な一面に見えるかな。
「高崎が売り上げにこだわってるのは打ち上げのためだよ」
「打ち上げ?」
「そう。学祭が終われば学祭の打ち上げを豊葦の駅前とかのお店でやるのが毎年の流れなんだ。その費用は食品ブースの売り上げから出されるから、食品で稼げば稼ぐほど飲み放題コースが豪勢に出来るってワケ」
「それは熱いべ。稼ぎが打ち上げのレベルに直結するっつーのが分かりやすいっすし、モチベーションになるっていう」
「サークル費として今後のために貯めとくとかではないんですね」
「食品ブースの稼ぎを打ち上げにぶち込むっつーのは俺らが入学する前からの伝統だからな」
そう、インターフェイスでは酒豪ゾーンと呼ばれるくらいにはお酒に強い人が多いMBCCでは、店での飲み会もそれはもう凄いことになるんだ。で、食べる方も一生懸命だから、コースのグレードが上がれば上がるだけ嬉しいよねっていうこと。
食品ブースでの儲けをそのまま飲み会に使ってしまえるくらいには普段のやりくりがきちんと出来てるってことなんだろうけどね。まあ、今年も一応予算的にはそんなに問題ないし、稼いだら稼いだ分だけ打ち上げに回しても問題なさそうかな。
「では、ここからはDJブースについての話をします。主に1年生に向けた説明だね。DJブースでは3日間ぶっ通しで公開生放送をやるんだ。タイムテーブルはこっちで決めさせてもらうんだけど、1人1時間の企画番組と1時間のリクエスト番組を担当するのが流れだね」
「1時間ずつってことは正味2時間っつーコトっすね!」
「そうなるね。で、企画番組だね。内容的には普段の番組でやってるようなことや、特定のテーマを設けたりしてもいいかもね。それで、ここからが肝になるんだけど、番組を回すペアはアナウンサーが組みたいミキサーにお願いするという形式を採ってるんだ」
「っつーと、例えばすけど、カズ先輩と組みたければ、直接出向いてお願いするって感じすか?」
「そうなるね。予定があったりペアが決まってたりして了承してもらえないこともあるかもしれないけど、その辺は臨機応変に。で、このプロポーズの解禁は今週水曜日の16時半」
「そんなことまで決まってるんすか」
多分、このプロポーズと呼ばれるミキサー指名もイベントのひとつとして楽しもうっていうことなんだろうと思うんだよね。これも俺たちが入学する前からの謎の伝統で、そのままそれに従って現在に至ってるんだけど。
俺はミキサーだから基本的に指名を受ける側だけど、やっぱりこれはアナウンサーが番組の企画を練るっていう前提でなってる物なんだろうね。でも、指名がなかなか来ないと待ってる間はしんどそう。俺はありがたいことにこれまでは割とサクッと指名してもらえてたからさ。
「指名もらえなかったらどうしよう」
「タカティはその心配は要らないんじゃないかな」
「そうですかね」
「うん」
「岡崎、枠決めはお前の好きにしろとは言ったが、過度な職権濫用はするなよ。プロポーズ解禁前に狙いのミキサーに唾付ける、とかな」
「おっと。俺がそんなことをするように見えるかな」
「てめェは何考えてっかわかんねえからな」
いよいよ学祭に向けて本格的に動き出したなって感じがする。MBCCの現役としては最後の学祭になるし、これを境に代替わり。あと1ヶ月か。早いなあ。泣いても笑ってもあと1ヶ月、活動するのは2ヶ月か。やり残しがないようにしなきゃ。
「あ、そうだ伊東。この後大事な話がある」
「えっ、どったの高ピー、わかったよ」
end.
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10月に入っていくということで各大学で学祭に向けた動きが加速していきます。
MBCCでは例によって高崎が商魂丸出しだけども、例のことはまだ言ってないみたいですね……この後の大事な話かな?
そしてユノ先輩がDJブースの責任者として仕切っていくようです。好きにしていいからって、もしかして誰かを招集したりするのかしら
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「――というわけで、今年のDJブースの責任者は岡崎に頼むことになった。ここからは岡崎の指揮の下で当日に向けて練習したり、企画したりしてくれ」
MBCCの通年の活動である昼放送が始まり、そして10月に入るということで大学祭に向けての動きも加速していくことになる。俺と高ピーは大祭実行さんとの兼ね合いがあってMBCCの側にずっといることは出来ないから、DJブースの責任者はヨシにお願いすることになった。
そして、MBCCでは延々と公開生放送をするDJブースの他に、延々と焼きそばを焼き続ける食品ブースも出店するのが毎年の流れだ。食品ブースは毎年1年生が担当することになっている。メニューは焼きそばで決定してるからその辺の打ち合わせはないけど、レシピは毎年研究開発しなきゃいけない。
「で、食品ブースだな。メニューは例年通り焼きそばで、責任者を1年の中から出すことになるんだが……まあ、サークルへの出席頻度から見てもお前ら3人の中の誰かから出してもらえると都合がいいな」
「高崎先輩、ブース責任者って何するんすか」
「レシピの開発にシフト決め、それから金の管理の取りまとめだ。別に全部責任者がやらなくても、適任な奴にそれを割り振ってくれればいい。シフト決めに関しては、DJブースとの兼ね合いがあるから岡崎とも相談する必要があるな。エージ、お前責任者やるか」
「えっ、俺すか!?」
「ハナは理系だし授業コマもお前らより多いだろ。高木に食品を扱わせるのは果林とは別の意味で心配だ」
「一理あるっす。じゃあ、やります」
「過去のノウハウは2、3年が持ってるし、手詰まりになったら聞きに来い」
「焼きそばなら俺にも作れそうだし何とかなるかも」
「甘いぞ高木。たかが焼きそば、されど焼きそばだ。どうせやるなら歴代MBCCの中で、この大学祭に出るブースの中で一番美味いモンじゃねえと戦えねえ。売り上げを出すためには手段を選ぶな。使える物は使え」
「何か、高崎先輩の熱が凄いですね」
「高崎先輩て学祭にここまで熱くなる人だったんですねー、意外ー」
高ピーは高校時代に生徒会長をやってただけあって、こういうイベント事は元々嫌いじゃない。だけど、ここまで食品ブースの売り上げにこだわるのにはきっちりとMBCCらしい理由がある。1年生はまだそのことを知らないから、これも高ピーの意外な一面に見えるかな。
「高崎が売り上げにこだわってるのは打ち上げのためだよ」
「打ち上げ?」
「そう。学祭が終われば学祭の打ち上げを豊葦の駅前とかのお店でやるのが毎年の流れなんだ。その費用は食品ブースの売り上げから出されるから、食品で稼げば稼ぐほど飲み放題コースが豪勢に出来るってワケ」
「それは熱いべ。稼ぎが打ち上げのレベルに直結するっつーのが分かりやすいっすし、モチベーションになるっていう」
「サークル費として今後のために貯めとくとかではないんですね」
「食品ブースの稼ぎを打ち上げにぶち込むっつーのは俺らが入学する前からの伝統だからな」
そう、インターフェイスでは酒豪ゾーンと呼ばれるくらいにはお酒に強い人が多いMBCCでは、店での飲み会もそれはもう凄いことになるんだ。で、食べる方も一生懸命だから、コースのグレードが上がれば上がるだけ嬉しいよねっていうこと。
食品ブースでの儲けをそのまま飲み会に使ってしまえるくらいには普段のやりくりがきちんと出来てるってことなんだろうけどね。まあ、今年も一応予算的にはそんなに問題ないし、稼いだら稼いだ分だけ打ち上げに回しても問題なさそうかな。
「では、ここからはDJブースについての話をします。主に1年生に向けた説明だね。DJブースでは3日間ぶっ通しで公開生放送をやるんだ。タイムテーブルはこっちで決めさせてもらうんだけど、1人1時間の企画番組と1時間のリクエスト番組を担当するのが流れだね」
「1時間ずつってことは正味2時間っつーコトっすね!」
「そうなるね。で、企画番組だね。内容的には普段の番組でやってるようなことや、特定のテーマを設けたりしてもいいかもね。それで、ここからが肝になるんだけど、番組を回すペアはアナウンサーが組みたいミキサーにお願いするという形式を採ってるんだ」
「っつーと、例えばすけど、カズ先輩と組みたければ、直接出向いてお願いするって感じすか?」
「そうなるね。予定があったりペアが決まってたりして了承してもらえないこともあるかもしれないけど、その辺は臨機応変に。で、このプロポーズの解禁は今週水曜日の16時半」
「そんなことまで決まってるんすか」
多分、このプロポーズと呼ばれるミキサー指名もイベントのひとつとして楽しもうっていうことなんだろうと思うんだよね。これも俺たちが入学する前からの謎の伝統で、そのままそれに従って現在に至ってるんだけど。
俺はミキサーだから基本的に指名を受ける側だけど、やっぱりこれはアナウンサーが番組の企画を練るっていう前提でなってる物なんだろうね。でも、指名がなかなか来ないと待ってる間はしんどそう。俺はありがたいことにこれまでは割とサクッと指名してもらえてたからさ。
「指名もらえなかったらどうしよう」
「タカティはその心配は要らないんじゃないかな」
「そうですかね」
「うん」
「岡崎、枠決めはお前の好きにしろとは言ったが、過度な職権濫用はするなよ。プロポーズ解禁前に狙いのミキサーに唾付ける、とかな」
「おっと。俺がそんなことをするように見えるかな」
「てめェは何考えてっかわかんねえからな」
いよいよ学祭に向けて本格的に動き出したなって感じがする。MBCCの現役としては最後の学祭になるし、これを境に代替わり。あと1ヶ月か。早いなあ。泣いても笑ってもあと1ヶ月、活動するのは2ヶ月か。やり残しがないようにしなきゃ。
「あ、そうだ伊東。この後大事な話がある」
「えっ、どったの高ピー、わかったよ」
end.
++++
10月に入っていくということで各大学で学祭に向けた動きが加速していきます。
MBCCでは例によって高崎が商魂丸出しだけども、例のことはまだ言ってないみたいですね……この後の大事な話かな?
そしてユノ先輩がDJブースの責任者として仕切っていくようです。好きにしていいからって、もしかして誰かを招集したりするのかしら
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