2017(02)
■あれもこれもまるっと包んで
++++
「うーす、来たぞ」
短いインターホンの後に、ドンドンとドアを叩く音がする。高崎先輩だ。10秒待たすと怒られる。はーいと返事をしてドアを開ければ、いい匂いが漂って来る。
バイト上がりらしい高崎先輩の手には、バイト先で焼いてすぐ持ってきたピザがある。社割で安く買えるそれがちょっとしたつまみになることは多々ある。
そして俺の方も準備は整いつつある。台所にはバットの上に敷き詰められた餃子、部屋には卓上コンロにフライパン。今日、ここでこれから行われるのはちょっとした宴だ。
「先輩お疲れさまです」
「ビール買ってきたぞ。すぐ飲まねえ分冷やしといていいか」
「突っ込んじゃってください。こっちもあと焼くだけなんで」
「あと、ついでだから焼いて来た。ちょっとつまもうぜ」
「俺ピザ食ったらすぐ腹いっぱいになるんすよね」
「お前食わなさすぎだろ」
先輩がピザをつまむ中、俺はさっそく餃子を焼いていく。俺は料理がそこまで上手くはないけど、バイト先がラーメン屋というおかげでサイドメニューとしての餃子作りだけはそれなりにこなせるようになった。
するとどうなったか。俺が家でも餃子が作れるとわかるやいなや、高崎先輩が焼いてくれと言い始める。別に嫌じゃないから気が向いた時にこういう会を開く程度には続いているのだけど。先輩からの注文も随分聞いて来た。
「白飯は」
「炊いてます。もちろん」
「よし」
この会を始めたばかりの頃、白い飯を準備していなくてめっちゃ怒られたことがある。餃子食うのに白い飯がないとか何考えてんだって。ラーメンのサイドメニューではなく、メインのおかずなら白い飯はいるだろと。
俺自身そこまで量を食べる方じゃないから白い飯なんて食ったら肝心の餃子が食えなくなるし、そこまで必要としない。だけど高崎先輩にとっては欠かせない物。以来、しっかりと炊き立ての飯を準備することにしている。
四次元胃袋と呼ばれる果林がいるから他の人が大して目立たないんだけど、何気に高崎先輩もめちゃ食う人だ。それなりの量を用意しておかないとすぐに終わってしまう。
「L、カシスはいくら置いといても問題ねえだろ」
「問題ないっすね。え、その瓶何すか」
ドンと先輩が床に置いたのは、カシスリキュールの大瓶。俺が好きで部屋に常備している物だ。部屋の隅には雑なバーカウンターと化したコーナーがある。そこにも当然。
「どしたんすか突然」
「あ? あれだ、とっとけ。材料費分くらいにはなるだろ」
「いや、そう言っても」
毎回それに見合った材料費などはもらっているワケで。もちろん今回も事前にもらっていて。それに加えて突然それを出してこられるのもよくわからない。まあ、ありがたくいただくけど。
「テスト期間のど真ん中っつーのもアレだな。無制限がやりにくい」
「あー……誕生日的なアレすか?」
MBCCではメンバーの誕生日に無制限飲みを開催することが多いけど、俺の誕生日は当然のようにスルーされていた。俺自身もテストでそれどころじゃなかったし。
「好きに解釈してもらっていいけどよ、そう解釈するなら俺ン時にはわかってんだろうな」
「これでいいっすよね」
「上等だ」
そうは言っても、俺の記憶が確かなら高崎先輩のそれもテスト期間のど真ん中に匹敵するくらい、いや、それ以上に忙しい学祭準備シーズンのはずだし、それこそこんなことをやっている場合なのか。いや、この場合問題は日程じゃない。内容だ。
「あっ、先輩そっち焼けてるっすよ」
「ピザ一切れ残してんだぞ。お前も食えよ」
「あざっす。ぶっちゃけこの一切れで間に合うっすよね俺は」
「食わねえと夏は死ぬぞ」
「食う気力が既に削がれてるんすよね」
「お前もさっさと食え食え」
「あー! 自分で皿に乗せますし!」
end.
++++
ここのところの星ヶ丘ブーストですっかりその存在を忘れていたのですが、26日はLの誕生日でした。
ただ、その頃は緑ヶ丘大学でもテスト期間だったので無制限飲みのようなものは行われず。緑大のテストの話もさっぱりだったもんなあ
事あるごとに高崎から怒られているLであった。まあ、Lも高崎はそんなモンだった思ってるからセーフということで
.
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「うーす、来たぞ」
短いインターホンの後に、ドンドンとドアを叩く音がする。高崎先輩だ。10秒待たすと怒られる。はーいと返事をしてドアを開ければ、いい匂いが漂って来る。
バイト上がりらしい高崎先輩の手には、バイト先で焼いてすぐ持ってきたピザがある。社割で安く買えるそれがちょっとしたつまみになることは多々ある。
そして俺の方も準備は整いつつある。台所にはバットの上に敷き詰められた餃子、部屋には卓上コンロにフライパン。今日、ここでこれから行われるのはちょっとした宴だ。
「先輩お疲れさまです」
「ビール買ってきたぞ。すぐ飲まねえ分冷やしといていいか」
「突っ込んじゃってください。こっちもあと焼くだけなんで」
「あと、ついでだから焼いて来た。ちょっとつまもうぜ」
「俺ピザ食ったらすぐ腹いっぱいになるんすよね」
「お前食わなさすぎだろ」
先輩がピザをつまむ中、俺はさっそく餃子を焼いていく。俺は料理がそこまで上手くはないけど、バイト先がラーメン屋というおかげでサイドメニューとしての餃子作りだけはそれなりにこなせるようになった。
するとどうなったか。俺が家でも餃子が作れるとわかるやいなや、高崎先輩が焼いてくれと言い始める。別に嫌じゃないから気が向いた時にこういう会を開く程度には続いているのだけど。先輩からの注文も随分聞いて来た。
「白飯は」
「炊いてます。もちろん」
「よし」
この会を始めたばかりの頃、白い飯を準備していなくてめっちゃ怒られたことがある。餃子食うのに白い飯がないとか何考えてんだって。ラーメンのサイドメニューではなく、メインのおかずなら白い飯はいるだろと。
俺自身そこまで量を食べる方じゃないから白い飯なんて食ったら肝心の餃子が食えなくなるし、そこまで必要としない。だけど高崎先輩にとっては欠かせない物。以来、しっかりと炊き立ての飯を準備することにしている。
四次元胃袋と呼ばれる果林がいるから他の人が大して目立たないんだけど、何気に高崎先輩もめちゃ食う人だ。それなりの量を用意しておかないとすぐに終わってしまう。
「L、カシスはいくら置いといても問題ねえだろ」
「問題ないっすね。え、その瓶何すか」
ドンと先輩が床に置いたのは、カシスリキュールの大瓶。俺が好きで部屋に常備している物だ。部屋の隅には雑なバーカウンターと化したコーナーがある。そこにも当然。
「どしたんすか突然」
「あ? あれだ、とっとけ。材料費分くらいにはなるだろ」
「いや、そう言っても」
毎回それに見合った材料費などはもらっているワケで。もちろん今回も事前にもらっていて。それに加えて突然それを出してこられるのもよくわからない。まあ、ありがたくいただくけど。
「テスト期間のど真ん中っつーのもアレだな。無制限がやりにくい」
「あー……誕生日的なアレすか?」
MBCCではメンバーの誕生日に無制限飲みを開催することが多いけど、俺の誕生日は当然のようにスルーされていた。俺自身もテストでそれどころじゃなかったし。
「好きに解釈してもらっていいけどよ、そう解釈するなら俺ン時にはわかってんだろうな」
「これでいいっすよね」
「上等だ」
そうは言っても、俺の記憶が確かなら高崎先輩のそれもテスト期間のど真ん中に匹敵するくらい、いや、それ以上に忙しい学祭準備シーズンのはずだし、それこそこんなことをやっている場合なのか。いや、この場合問題は日程じゃない。内容だ。
「あっ、先輩そっち焼けてるっすよ」
「ピザ一切れ残してんだぞ。お前も食えよ」
「あざっす。ぶっちゃけこの一切れで間に合うっすよね俺は」
「食わねえと夏は死ぬぞ」
「食う気力が既に削がれてるんすよね」
「お前もさっさと食え食え」
「あー! 自分で皿に乗せますし!」
end.
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ここのところの星ヶ丘ブーストですっかりその存在を忘れていたのですが、26日はLの誕生日でした。
ただ、その頃は緑ヶ丘大学でもテスト期間だったので無制限飲みのようなものは行われず。緑大のテストの話もさっぱりだったもんなあ
事あるごとに高崎から怒られているLであった。まあ、Lも高崎はそんなモンだった思ってるからセーフということで
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