2019(02)
■You're so into him!
++++
「ナ、ナ……ナンダッテー!?」
「うわーい、いつもよりガチなヤツをいただきましたよ」
履修登録期間中の学食は、いつもより人が少ないからか声がよく響く。向島大学では、3、4年生は自宅から履修登録が出来るけど1、2年生は大学まで出て来て履修登録をしなければならないという謎の決まりがある。まだ定期を買ってなかったのでこーたの車に乗せてもらって履修登録をしに来たんだ。
「聞いたことのあるヤツだと思って来てみれば。やっぱりお前か、野坂」
「圭斗先輩! おはようございます!」
「私たちは履修登録ですけど、3年生の先輩がどうされたんですか?」
「ん、僕はこれからゼミの友人と麻雀大会でね。腹ごなしをしようと思って来たんだよ」
「そうでしたか。麻雀大会は夜通し行われるのですか?」
「結果としてそうなるんじゃないかと思うよ。さすがにゼミ室で酒を飲むわけにはいかないから、僕の部屋に移動するんじゃないかな、知らないけど」
「ぜひ俺もいつか圭斗先輩宅での麻雀大会に参加出来ればと」
「そうか、お前は麻雀が出来るんだな。MMPで麻雀大会を企画したら何人乗ってくるかな」
「私も出来ますし、土田さんも出来ますから、野坂さんを含めて最低4人は揃うかと思いますよ」
「ムラマリさんも奈々も出来るし菜月さんも興味があるとは言ってたから、結構な規模になりそうだね」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩が麻雀に興味を…!?」
「と言うか、ほぼ全員じゃないですか」
圭斗先輩も相席することになり、よくあるようで少し変わった昼食の光景。ああ、こーただけとかむさ苦しいところに圭斗先輩という溢れんばかりの美貌を持ちしお方が降臨して下さって俺は今本当に幸せを感じている。あと、菜月先輩に麻雀を手取り足取りレクチャーする妄想が止まらないので誰か何とかしてくれ。
「ところで、先のナンダッテーはよく響いていたけど、何にそんなに驚いていたんだい?」
「あっ、聞いて下さいよ圭斗先輩。私の高校時代の友人にやっちゃんという爽やかイケメンがいるんですが、先日野坂さんと世音坂で遊んでいたときにバッタリ会ったんですね?」
「また野坂の好きそうな感じだね、イケメンとか」
「やっちゃんも情報系の子なので基本情報の試験を受けたそうなのですが、残念ながら落ちてしまったと。で、目の前にオールSがいるじゃないですか。やっちゃんはいい子なので勉強のポイントを教えて欲しいと野坂さんにお願いして、遊ぶはずだったのに気付いたら勉強が始まってたんですよ」
「やっちゃん真面目か! ……続けて」
俺とこーたは普通にゲーセンとかに行く予定だったし、やっちゃんこと小林君も買い物帰りの足で豊葦に向かうつもりだったそうだけど、結局時間のギリギリまで勉強してたよな。あれは本当に幸せの時間だった。やれアレがわからんだの、教え方が悪いだのとクレームを付けられることもなかったしな!
「先日やっちゃんから連絡が入ったんですね。また勉強を教えて欲しいから野坂さんに会えないかーと。それを野坂さんに伝えて、ナンダッテーに至ります。圭斗先輩もご存知の通り、野坂さんはイケメン好きじゃないですか」
「そうだね」
「やっちゃんに対してもそれはも~う、凄かったんです。野坂さんの発作を知っていてもドン引きするレベルでしたよ。で、イケメンに求められて断る野坂さんじゃないじゃないですか」
「だろうね」
「いや、小林君がイケメンなのは事実だし俺の目の保養にもなってるけど、どこぞのヒロとかいう奴と違って彼には教え甲斐があるんだよ! 小林君は、勉強が終わった後に「教えてくれてありがとう」って言ってくれるんだぞ! 感動するだろ!?」
「感動するようなことかな? 人として当たり前だろ」
「圭斗先輩、普段がヒロさんですので……」
「あっ、うん」
礼儀正しいイケメンとかガチで目と精神の保養だし、勉強を教えるのが俺でよければ喜んで出向きますとも、という感じだ。しかも小林君は爽やかで気のいい感じだし、根暗な俺と違って内から滲み出る人当たりの良さがある。で、趣味でベース弾いてるとか陽キャか! 本来なら住む世界が違うんだよ…!
「圭斗先輩、ちなみにこれがやっちゃんの写真なんですけど」
「ん、本当にイケメンだね。爽やかな感じで」
「そうなんですよ…! 信じられます!? こんなにカッコいいのに女っ気がないんですよ! ウソだろ……詐欺だろ……」
「ちなみに、やっちゃんからも野坂さんに対して同じ感想をもらってます」
「ん? 感想? 小林君からの?」
正直、俺に対する感想とか怖すぎるよな! 番組のモニターとかじゃなくて俺自身に対する感想とか。だけど、それはそれで気になって仕方ないので聞きますよ……変なテンションだったのは否定出来ないし、嫌われてなかったらいいな!
「やっちゃんからは「あんなに頭が良くて性格のいいイケメンに彼女がいないワケがない」と言われましたので、私はそこに「さらにスポーツも出来るけど根暗ですよ」と付け加えてあげたところ」
「お前事実だけど何だよ根暗って」
「でも「あの落ち着きが大人でカッコいいし勉強の時メガネかけてもイケメン。スポーツも出来るとか野坂君完璧過ぎて俺なんかが勉強教わってるの申し訳なくなってきた、落ち着きないし出来が悪くてごめん」と返ってきましたね」
「そんなことない! 小林君はちゃんと俺の話を聞いてくれるし、最終的にはちゃんとわかってくれるじゃないか…! 何より小林君の笑顔には周りを明るくする力があってだな…!」
「……バカップルかな?」
「野坂さんとやっちゃんの間にいるからこそ思うんですが、いっそあなたたちが付き合ってしまえばいいんじゃないです?」
「そんなことしたら眩しくて死ぬ」
「何か、野坂もやっちゃんも最初の印象だけで相手に盲目的になりすぎてて、こういう勢いも恋愛には大事だねと思い出したよ」
結局、惚気の板挟みになるのはもう勘弁だ、お前ら爆発しろとキレたこーたが伝書鳩をやめることになり、何と俺は小林君と直接やり取りを始めることになったんだ。うう、緊張するぜ…! 菜月先輩にメールを送るとき誤字脱字がないか、文脈におかしなところはないか何度も確認するときの緊張感に似ている!
「野坂とやっちゃんの話を伊東にでも売ってみようかな」
「噂の腐女子の彼女さんの反応で遊んでるヤツじゃないですか~」
end.
++++
我々は一体何を見せられているのだ。神崎と圭斗さんはきっとそんなことを思ったに違いない
互いに好き好きっていうオーラを隠さないノサカとコバヤスです。圭斗さん的には、菜月さんにもそんだけ素直に言えればいいのにと思いそうだけども。
果たしてこれからノサカとコバヤスはどうなるのか。一時の激情でない友情みたいな物は芽生えるのか!
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「ナ、ナ……ナンダッテー!?」
「うわーい、いつもよりガチなヤツをいただきましたよ」
履修登録期間中の学食は、いつもより人が少ないからか声がよく響く。向島大学では、3、4年生は自宅から履修登録が出来るけど1、2年生は大学まで出て来て履修登録をしなければならないという謎の決まりがある。まだ定期を買ってなかったのでこーたの車に乗せてもらって履修登録をしに来たんだ。
「聞いたことのあるヤツだと思って来てみれば。やっぱりお前か、野坂」
「圭斗先輩! おはようございます!」
「私たちは履修登録ですけど、3年生の先輩がどうされたんですか?」
「ん、僕はこれからゼミの友人と麻雀大会でね。腹ごなしをしようと思って来たんだよ」
「そうでしたか。麻雀大会は夜通し行われるのですか?」
「結果としてそうなるんじゃないかと思うよ。さすがにゼミ室で酒を飲むわけにはいかないから、僕の部屋に移動するんじゃないかな、知らないけど」
「ぜひ俺もいつか圭斗先輩宅での麻雀大会に参加出来ればと」
「そうか、お前は麻雀が出来るんだな。MMPで麻雀大会を企画したら何人乗ってくるかな」
「私も出来ますし、土田さんも出来ますから、野坂さんを含めて最低4人は揃うかと思いますよ」
「ムラマリさんも奈々も出来るし菜月さんも興味があるとは言ってたから、結構な規模になりそうだね」
「ナ、ナンダッテー!? 菜月先輩が麻雀に興味を…!?」
「と言うか、ほぼ全員じゃないですか」
圭斗先輩も相席することになり、よくあるようで少し変わった昼食の光景。ああ、こーただけとかむさ苦しいところに圭斗先輩という溢れんばかりの美貌を持ちしお方が降臨して下さって俺は今本当に幸せを感じている。あと、菜月先輩に麻雀を手取り足取りレクチャーする妄想が止まらないので誰か何とかしてくれ。
「ところで、先のナンダッテーはよく響いていたけど、何にそんなに驚いていたんだい?」
「あっ、聞いて下さいよ圭斗先輩。私の高校時代の友人にやっちゃんという爽やかイケメンがいるんですが、先日野坂さんと世音坂で遊んでいたときにバッタリ会ったんですね?」
「また野坂の好きそうな感じだね、イケメンとか」
「やっちゃんも情報系の子なので基本情報の試験を受けたそうなのですが、残念ながら落ちてしまったと。で、目の前にオールSがいるじゃないですか。やっちゃんはいい子なので勉強のポイントを教えて欲しいと野坂さんにお願いして、遊ぶはずだったのに気付いたら勉強が始まってたんですよ」
「やっちゃん真面目か! ……続けて」
俺とこーたは普通にゲーセンとかに行く予定だったし、やっちゃんこと小林君も買い物帰りの足で豊葦に向かうつもりだったそうだけど、結局時間のギリギリまで勉強してたよな。あれは本当に幸せの時間だった。やれアレがわからんだの、教え方が悪いだのとクレームを付けられることもなかったしな!
「先日やっちゃんから連絡が入ったんですね。また勉強を教えて欲しいから野坂さんに会えないかーと。それを野坂さんに伝えて、ナンダッテーに至ります。圭斗先輩もご存知の通り、野坂さんはイケメン好きじゃないですか」
「そうだね」
「やっちゃんに対してもそれはも~う、凄かったんです。野坂さんの発作を知っていてもドン引きするレベルでしたよ。で、イケメンに求められて断る野坂さんじゃないじゃないですか」
「だろうね」
「いや、小林君がイケメンなのは事実だし俺の目の保養にもなってるけど、どこぞのヒロとかいう奴と違って彼には教え甲斐があるんだよ! 小林君は、勉強が終わった後に「教えてくれてありがとう」って言ってくれるんだぞ! 感動するだろ!?」
「感動するようなことかな? 人として当たり前だろ」
「圭斗先輩、普段がヒロさんですので……」
「あっ、うん」
礼儀正しいイケメンとかガチで目と精神の保養だし、勉強を教えるのが俺でよければ喜んで出向きますとも、という感じだ。しかも小林君は爽やかで気のいい感じだし、根暗な俺と違って内から滲み出る人当たりの良さがある。で、趣味でベース弾いてるとか陽キャか! 本来なら住む世界が違うんだよ…!
「圭斗先輩、ちなみにこれがやっちゃんの写真なんですけど」
「ん、本当にイケメンだね。爽やかな感じで」
「そうなんですよ…! 信じられます!? こんなにカッコいいのに女っ気がないんですよ! ウソだろ……詐欺だろ……」
「ちなみに、やっちゃんからも野坂さんに対して同じ感想をもらってます」
「ん? 感想? 小林君からの?」
正直、俺に対する感想とか怖すぎるよな! 番組のモニターとかじゃなくて俺自身に対する感想とか。だけど、それはそれで気になって仕方ないので聞きますよ……変なテンションだったのは否定出来ないし、嫌われてなかったらいいな!
「やっちゃんからは「あんなに頭が良くて性格のいいイケメンに彼女がいないワケがない」と言われましたので、私はそこに「さらにスポーツも出来るけど根暗ですよ」と付け加えてあげたところ」
「お前事実だけど何だよ根暗って」
「でも「あの落ち着きが大人でカッコいいし勉強の時メガネかけてもイケメン。スポーツも出来るとか野坂君完璧過ぎて俺なんかが勉強教わってるの申し訳なくなってきた、落ち着きないし出来が悪くてごめん」と返ってきましたね」
「そんなことない! 小林君はちゃんと俺の話を聞いてくれるし、最終的にはちゃんとわかってくれるじゃないか…! 何より小林君の笑顔には周りを明るくする力があってだな…!」
「……バカップルかな?」
「野坂さんとやっちゃんの間にいるからこそ思うんですが、いっそあなたたちが付き合ってしまえばいいんじゃないです?」
「そんなことしたら眩しくて死ぬ」
「何か、野坂もやっちゃんも最初の印象だけで相手に盲目的になりすぎてて、こういう勢いも恋愛には大事だねと思い出したよ」
結局、惚気の板挟みになるのはもう勘弁だ、お前ら爆発しろとキレたこーたが伝書鳩をやめることになり、何と俺は小林君と直接やり取りを始めることになったんだ。うう、緊張するぜ…! 菜月先輩にメールを送るとき誤字脱字がないか、文脈におかしなところはないか何度も確認するときの緊張感に似ている!
「野坂とやっちゃんの話を伊東にでも売ってみようかな」
「噂の腐女子の彼女さんの反応で遊んでるヤツじゃないですか~」
end.
++++
我々は一体何を見せられているのだ。神崎と圭斗さんはきっとそんなことを思ったに違いない
互いに好き好きっていうオーラを隠さないノサカとコバヤスです。圭斗さん的には、菜月さんにもそんだけ素直に言えればいいのにと思いそうだけども。
果たしてこれからノサカとコバヤスはどうなるのか。一時の激情でない友情みたいな物は芽生えるのか!
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