2019(02)
■flaky, lazy, irresponsible
＋＋＋＋
「さて、１回集まってもらったけど進捗の方はどうかな？」
MMPでは、来たるオープンキャンパスの公開生放送に向けて週に１回の特別活動日を設けている。この活動日ではペアでの打ち合わせをしたり、実戦練習をしたりと思い思いの過ごし方をすることになっている。
さて、進捗はどうかなと圭斗先輩から聞かれてるけれども、俺たち２年ミキサーは現段階でも明暗がはっきりと分かれているようだ。当然、現状で最も余裕があるのは菜月先輩とペアを組む律なワケだけれども。
「やァー、ウチはすこぶる順調スわァー」
「でしょうね」
「菜月先輩とは水面下で連絡を取り合って、使う曲のコトやらトークのコトやら、既にいろいろ打ち合わせ済みスわ。強いて言えば菜月先輩本人と今日も顔を合わせられないっつーコトが不安材料スけど、それがどーしたっつー感じスね」
「さすが、菜月さんとりっちゃんは安定しているね」
ちなみに、菜月先輩は緑風のご実家に帰省されているのでまだもうしばらくサークルの特別活動にも来られないということだ。ただ、実戦練習や対面での打ち合わせの少なさなんかをもろともしない安定感が菜月先輩にはある。律の話からしてもきちんとやっていらっしゃるのだなあと改めて実感する。
「ちなみに僕は夏バテをまだ引き摺っていて精力的に活動出来る時間が短いんだけど、今日と次回の打ち合わせでしっかり詰めようと思っているよ」
「圭斗先輩よろしくお願いしますッ！」
「圭斗先輩、夏バテを引き摺っていらっしゃるのですか？」
「向舞祭のダメージは僕が思うより大きかったようだよ」
確かに圭斗先輩はこの夏を経て少しやつれられたかなという気がする。本人がその原因をわかっていらっしゃるのであれば、問題の解決方法にも最短ルートで辿り着けるだろうから安心か。やつれてアンニュイな圭斗先輩もいいけれど、やはり圭斗先輩にはバリバリの覇気やオーラを出していていただきたい。
番組面で言えば「今日の打ち合わせで詰める」という発言に２年ミキサーは「本当に大丈夫か」と首を傾げている。１年生の奈々が相手なのだからいつものような適当さは封印してくださいとみんなでお願いはしてある。だけども、精力的に活動出来ないと宣言されると、本当に大丈夫なのかと。
「さて、神崎はどうかな」
「ご覧の通り今もここに三井先輩がいらっしゃらないじゃないですか」
「そうだね。今日は用事があって来られないそうだよ」
「……いない人と何を打ち合わせろと？」
「悲壮感に溢れてるね」
「悲壮感だけならまだいいですよ。連絡をしても１日以内には返ってきませんし、もう諦めました。一応アナウンサー陣で決めたテーマだけはもらっているので適当に曲を用意して適当に構成して適当に形にしようかと思っていますよ。ここで言う適当にというのはいい加減に、要領よくあしらうという意味で解釈をお願いします」
こーたは三井先輩相手に苦戦しているようだった。番組が、ではなく三井先輩の扱い方に。まあ、それ自体は別に今に始まったことでもなかったけど。自由で身勝手過ぎる三井先輩にこーたがブチ切れる寸前まで来ているといったところだろうか。
圭斗先輩に進捗を報告する様子を見た律が「そろそろこーたが最終兵器として覚醒しヤすわ」と耳打ちしてくる。こーたがキレると先輩だろうが何だろうが容赦なく土下座させての説教が始まるからなあ……それこそ場を無双するおばちゃんの如く。
「さて、野坂とヒロはどうかな」
「ボクアレですよ、多分今日打ち合わせると思うんですけど、ノサカがお小言でイジメて来ると思うんですよ」
「お小言とは何だ。番組をやるなら細かいところまできっちりとだなあ」
「やァー、大雑把と綿密、真逆の性質が見事にケンカしてヤすわ」
「ヒロさん、野坂さんはこうしたいと案を出せば一応はちゃんと方向性を示してくれるミキサーなんですから、それを利用するくらいでないと回りませんよ」
「そうだぞヒロ。お前がいい加減で何も案を出さないから俺が口煩く見えるんであって、こうしたいっていう番組の方針を持って来ればそのようにするんじゃないか」
「えー？ ノサカ細かいんやからノサカが番組の方針？ 骨子？ みたいなモンを出してくればええんちゃうの。で、ボクがそれに合わせてやるからさ」
「いーや、お前は俺が出した案を「飽きた」とか「やっとられんわ」っつって自由にやり始めるんだから、お前がやりたいように案を出してもらうのが現実的だ」
「せやゆーたかして自分がやりたいと思ったことでも飽きるんやもん。ノサカやっといてよ」
「意味がわからない」
如何せんヒロがこんな調子だ。水面下での打ち合わせなど実現するはずもなく、特別活動日のみに懸けるような感じになっている。ただ、こんな調子のヒロでもこーたからは相方がちゃんと来ていていいじゃないですかと言われるものだから、返す言葉がない。
「ヒロ、お前のトークテーマは何だったっけか」
「バイトの話」
「ネタ帳は」
「今から」
「そしたら、T1でバイトを始める利点だとかバイトを含めた学生生活の送り方なんかを話して、T2で自分の経験を踏まえた話なんかをすればいいんじゃないか。で、EDでオトす」
「へー、そーするんや。もっかい言って」
「だから、T1で――」
どうしてミキサーがアナウンサーの喋ることをリードして考えているのか。ステージや映像メイン校の１年生相手ならともかく、ラジオメイン校の２年生相手にだ。めんどくさがりとか怠惰とかいうレベルで済む話ではないのだけど、こーたの姿を見ていると、相方がいるだけマシかなとも思えてしまう。
お前は今まで恵まれ過ぎたんだ、という律とこーたからの言われ方には納得が行ってなかったんだけども、やっぱり俺は恵まれ過ぎていたのかなと今になって思う。菜月先輩と番組をやった機会の多さが弊害となる事案だってないとは言い切れない。どんなアナウンサーさんにも対応出来るようにならなければ。
「お金あったら旅行も出来るよっていうんはどっちに回せばいいん？ １？ ２？」
「それは好きにしたらいいんじゃないか。T2の話が長くなりそうなら１でさらっと言ってもいいし」
「T2は、ボク卵焼きが上手に作れるようになった話とかしようと思っとるんやよね」
「バイトの実務的なこととか、身に付けた技術が生活にも役立ってるっていう話な。それなら旅行の話は１でもいいんじゃないか？」
「じゃそーするわ」
「野坂がヒロを操縦し始めてヤすわ」
「こうなったら悲惨なのは私だけじゃないですか」
「こーた、圭斗先輩のスタミナ切れにワンチャン賭けヤしょうぜ」
end.
＋＋＋＋
MMPオープンキャンパス番組の進捗を聞いているだけの話です。神崎に悲壮感が漂っています。早く覚醒すればいいのに
アナ決めのクジに大勝利したりっちゃんが大分余裕を振りかざしていますね。圭斗さんは向舞祭疲れをまだ引き摺っている模様。
ヒロをいかに操縦するかがカギのノサカです。これまではアナさんに引っ張ってもらうことが多かったけど、合宿を経て自分がリードする機会も増えて来たね
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「さて、１回集まってもらったけど進捗の方はどうかな？」
MMPでは、来たるオープンキャンパスの公開生放送に向けて週に１回の特別活動日を設けている。この活動日ではペアでの打ち合わせをしたり、実戦練習をしたりと思い思いの過ごし方をすることになっている。
さて、進捗はどうかなと圭斗先輩から聞かれてるけれども、俺たち２年ミキサーは現段階でも明暗がはっきりと分かれているようだ。当然、現状で最も余裕があるのは菜月先輩とペアを組む律なワケだけれども。
「やァー、ウチはすこぶる順調スわァー」
「でしょうね」
「菜月先輩とは水面下で連絡を取り合って、使う曲のコトやらトークのコトやら、既にいろいろ打ち合わせ済みスわ。強いて言えば菜月先輩本人と今日も顔を合わせられないっつーコトが不安材料スけど、それがどーしたっつー感じスね」
「さすが、菜月さんとりっちゃんは安定しているね」
ちなみに、菜月先輩は緑風のご実家に帰省されているのでまだもうしばらくサークルの特別活動にも来られないということだ。ただ、実戦練習や対面での打ち合わせの少なさなんかをもろともしない安定感が菜月先輩にはある。律の話からしてもきちんとやっていらっしゃるのだなあと改めて実感する。
「ちなみに僕は夏バテをまだ引き摺っていて精力的に活動出来る時間が短いんだけど、今日と次回の打ち合わせでしっかり詰めようと思っているよ」
「圭斗先輩よろしくお願いしますッ！」
「圭斗先輩、夏バテを引き摺っていらっしゃるのですか？」
「向舞祭のダメージは僕が思うより大きかったようだよ」
確かに圭斗先輩はこの夏を経て少しやつれられたかなという気がする。本人がその原因をわかっていらっしゃるのであれば、問題の解決方法にも最短ルートで辿り着けるだろうから安心か。やつれてアンニュイな圭斗先輩もいいけれど、やはり圭斗先輩にはバリバリの覇気やオーラを出していていただきたい。
番組面で言えば「今日の打ち合わせで詰める」という発言に２年ミキサーは「本当に大丈夫か」と首を傾げている。１年生の奈々が相手なのだからいつものような適当さは封印してくださいとみんなでお願いはしてある。だけども、精力的に活動出来ないと宣言されると、本当に大丈夫なのかと。
「さて、神崎はどうかな」
「ご覧の通り今もここに三井先輩がいらっしゃらないじゃないですか」
「そうだね。今日は用事があって来られないそうだよ」
「……いない人と何を打ち合わせろと？」
「悲壮感に溢れてるね」
「悲壮感だけならまだいいですよ。連絡をしても１日以内には返ってきませんし、もう諦めました。一応アナウンサー陣で決めたテーマだけはもらっているので適当に曲を用意して適当に構成して適当に形にしようかと思っていますよ。ここで言う適当にというのはいい加減に、要領よくあしらうという意味で解釈をお願いします」
こーたは三井先輩相手に苦戦しているようだった。番組が、ではなく三井先輩の扱い方に。まあ、それ自体は別に今に始まったことでもなかったけど。自由で身勝手過ぎる三井先輩にこーたがブチ切れる寸前まで来ているといったところだろうか。
圭斗先輩に進捗を報告する様子を見た律が「そろそろこーたが最終兵器として覚醒しヤすわ」と耳打ちしてくる。こーたがキレると先輩だろうが何だろうが容赦なく土下座させての説教が始まるからなあ……それこそ場を無双するおばちゃんの如く。
「さて、野坂とヒロはどうかな」
「ボクアレですよ、多分今日打ち合わせると思うんですけど、ノサカがお小言でイジメて来ると思うんですよ」
「お小言とは何だ。番組をやるなら細かいところまできっちりとだなあ」
「やァー、大雑把と綿密、真逆の性質が見事にケンカしてヤすわ」
「ヒロさん、野坂さんはこうしたいと案を出せば一応はちゃんと方向性を示してくれるミキサーなんですから、それを利用するくらいでないと回りませんよ」
「そうだぞヒロ。お前がいい加減で何も案を出さないから俺が口煩く見えるんであって、こうしたいっていう番組の方針を持って来ればそのようにするんじゃないか」
「えー？ ノサカ細かいんやからノサカが番組の方針？ 骨子？ みたいなモンを出してくればええんちゃうの。で、ボクがそれに合わせてやるからさ」
「いーや、お前は俺が出した案を「飽きた」とか「やっとられんわ」っつって自由にやり始めるんだから、お前がやりたいように案を出してもらうのが現実的だ」
「せやゆーたかして自分がやりたいと思ったことでも飽きるんやもん。ノサカやっといてよ」
「意味がわからない」
如何せんヒロがこんな調子だ。水面下での打ち合わせなど実現するはずもなく、特別活動日のみに懸けるような感じになっている。ただ、こんな調子のヒロでもこーたからは相方がちゃんと来ていていいじゃないですかと言われるものだから、返す言葉がない。
「ヒロ、お前のトークテーマは何だったっけか」
「バイトの話」
「ネタ帳は」
「今から」
「そしたら、T1でバイトを始める利点だとかバイトを含めた学生生活の送り方なんかを話して、T2で自分の経験を踏まえた話なんかをすればいいんじゃないか。で、EDでオトす」
「へー、そーするんや。もっかい言って」
「だから、T1で――」
どうしてミキサーがアナウンサーの喋ることをリードして考えているのか。ステージや映像メイン校の１年生相手ならともかく、ラジオメイン校の２年生相手にだ。めんどくさがりとか怠惰とかいうレベルで済む話ではないのだけど、こーたの姿を見ていると、相方がいるだけマシかなとも思えてしまう。
お前は今まで恵まれ過ぎたんだ、という律とこーたからの言われ方には納得が行ってなかったんだけども、やっぱり俺は恵まれ過ぎていたのかなと今になって思う。菜月先輩と番組をやった機会の多さが弊害となる事案だってないとは言い切れない。どんなアナウンサーさんにも対応出来るようにならなければ。
「お金あったら旅行も出来るよっていうんはどっちに回せばいいん？ １？ ２？」
「それは好きにしたらいいんじゃないか。T2の話が長くなりそうなら１でさらっと言ってもいいし」
「T2は、ボク卵焼きが上手に作れるようになった話とかしようと思っとるんやよね」
「バイトの実務的なこととか、身に付けた技術が生活にも役立ってるっていう話な。それなら旅行の話は１でもいいんじゃないか？」
「じゃそーするわ」
「野坂がヒロを操縦し始めてヤすわ」
「こうなったら悲惨なのは私だけじゃないですか」
「こーた、圭斗先輩のスタミナ切れにワンチャン賭けヤしょうぜ」
end.
＋＋＋＋
MMPオープンキャンパス番組の進捗を聞いているだけの話です。神崎に悲壮感が漂っています。早く覚醒すればいいのに
アナ決めのクジに大勝利したりっちゃんが大分余裕を振りかざしていますね。圭斗さんは向舞祭疲れをまだ引き摺っている模様。
ヒロをいかに操縦するかがカギのノサカです。これまではアナさんに引っ張ってもらうことが多かったけど、合宿を経て自分がリードする機会も増えて来たね
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