2019(02)
■LOVE CALL AGAIN
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「さて、皆さん夏合宿お疲れ様でした。来週から9月になるということで、MMPの今後の活動についてお知らせします」
合宿が終わってすぐ、俺は対策委員として閉めの活動でまだバタバタしているけれど、そんなことにはお構いなく時間は過ぎ、季節も変わろうとしている。夏季特別活動日と銘打たれた今日のサークルは、9月の活動についてのお知らせがあるそうだ。
「野坂、対策委員から何かお知らせはあるかな?」
「はい。皆さん夏合宿お疲れ様でした。合宿が終了したのでそのうち班長から番組の同録が配られると思います。えーと、三井先輩はもう預かってるので今ここで。どうぞ」
「ありがとー」
「で、ここでひとつ対策委員に入って来た向島への苦情があって」
「野坂マジか」
「それがマジなんです。向島と言うか……」
「あれあれ~? どうして私を見るのかな~?」
「お前以外にいるか! こーた、お前の所為で何人が安眠を妨害されたと思ってるんだ!」
「ですよね!」
こーたのクッソうるさいいびきと歯軋りのおかげで男子の大部屋では睡眠を阻害されたとして苦情が入って来たんだ。2日目夜にはこーたが原因で眠れず部屋の外まで避難してきたという1年生を2人保護して対策委員の部屋に避難させたという事実がある。
元々こーたの寝汚さにはMMP内では定評があったし、去年もこーたの騒音と俺の寝相の悪さで菜月先輩に苦情が入って来てたそうだから今年もありそうだなあと思ってたらこの有様だよ! ちなみに俺は今年対策委員部屋だったからみんなに迷惑を掛けることはなかったぜ! どや!
「圭斗先輩は眠ることが出来ましたか?」
「僕は耳栓を持って来ていたからね」
「やっぱり3年生の経験値は段違いですね。伊東先輩も寝ホンをされていたようですし」
「寝ホン?」
「寝るとき用イヤホンですね。横になっても痛くないそうですよ。それはそうとこーたお前反省してるのか」
「反省と言われましても生理現象ですから如何ともしがたいですよ」
「鼻呼吸を促す口テープとかあるだろ」
「なあ、苦情を受けたのはわかるけどカンザキのそれはもうどうにもならないし、本題の方に移らないか?」
「ん、一理あるね。野坂、対策委員からはもう何もないかな? ないようなら今日の本題に移るけど」
「はい! 合宿の報告などはまた後日しますので今日は以上です!」
危ない危ない。こーたのことだけで貴重な時間を費やしてしまうところだった。今日の本題は9月からの活動についてだ。とは言っても、向島大学では9月は丸々夏休み。そんなときにある活動なんて、アレの他にないことは奈々以外のみんながわかっているんだ。
「えー、9月の21日になるのかな。3連休の2回目だね。向島大学のオープンキャンパスが行われます。僕たちMMPは毎年学食の一角をお借りして公開生放送を非公式活動としてやっています。今年も例に漏れずやるような感じなのでみんな予定を空けておくように」
「はーい」
「で、時間は11時半から1時半までの2時間を予定してます。丁度アナミキ4人ずつだから30分×4ペアで2時間計算だよ。タケテンにはもう話を通してあるのであとはペアを決めて番組を作る、と」
「もうタケテンに話をつけたのか」
「こういうのは早い方がいいからね。ちなみに、オープンキャンパス番組のトークテーマは一応大学生活に関係することで頼むよ」
「ペアはどう決める?」
「クジでいいんじゃないかな。菜月さん、あみだくじを作ってくれないかい?」
その辺の紙にシャッシャッと菜月先輩が線を引き、あみだくじが作られて行く。下の方にアナウンサーの名前が書かれていて、今回はミキサーがそれぞれ引く場所を選ぶというシステムだ。俺の願うことはひとつだけだ。そう、菜月先輩と組めますようにというその一点のみ!
「あ、そうだ。うちからのお知らせだけど、来週から実家に帰るし顔を合わせての打ち合わせはほとんど出来ないと思ってくれ。その分メールとかでフォローするつもりだけど」
「菜月さん、ちなみにいつ頃戻って来るつもりかな?」
「2つある3連休の間くらいを予定してる」
「わかったよ。まあ、ウチのミキサー陣なら問題ない、よな?」
「はい、私は問題ありませんよ。言って菜月先輩ですし」
「やァー、自分にお任せくださいよォー、いつだって実質的にソロプレイすよ?」
「りっちゃんが言うと心に響くね。奈々ももし菜月さんとペアを組むことになったらそのように頼むよ」
「はいッ!」
本来菜月先輩は春学期が終わった時点で実家に戻られる予定だったところを、俺が無理を言って夏合宿に参加してもらったことでそれを遅らせてもらったという事情がある。申し訳ないという気持ちと圧倒的感謝しかないですよね。
と言うか、菜月先輩だから正直実家に戻られていても打ち合わせはメールなどで密にやってくれるだろうという信頼だよ。MMPのミキサー4人全員に共通するんだよなあ。と言うか、顔を合わせられるはずの他のアナウンサーさんの方が正直ちゃんと打ち合わせ出来んのかという気持ちがデカい!
「それじゃあミキサー陣、クジを引いてくれるかな?」
「よーし……神様仏様圭斗先輩、どうか良い結果を…!」
「自分はそろそろラクしたいンで菜月先輩希望スわ」
「私も夏合宿が後を引いているので安定感重視で菜月先輩を希望したいですよ」
「うちも菜月先輩と組んでみたいっす!」
「ナ、ナンダッテー!? お前ら、そこは俺のポジションだ! わかったら黙ってすっこんでろ!」
「あンだ野坂テメー、やるか!? お前もたまにはヒロだの圭斗先輩だのに振り回されてみろ!」
「圭斗先輩は耳の保養になるからともかくヒロは断固拒否だ!」
わかっちゃいたが敵が多い! ちくしょうお前ら寄ってたかって菜月先輩にラブコールを送りやがって!
「菜月さん、合宿初日のデジャヴだね」
「これはうちが好かれてると言うより、お前たちがめんどくさいと思われてるから起こってることだぞ。ミキサー陣の悲鳴を聞いて反省するんだな」
「……コホン。うるっせえお前ら! いいからさっさとクジ引けや!」
end.
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今年は夏合宿が終わってすぐ集合したMMPなので、菜月さんはまだ帰省していません。今から帰るよ!
神崎のいびき云々の問題に関してはまあ、3年生は抜け駆けをしていたみたいですね。いち氏は寝ホンを用意してたからミドリの横でぐっすりだったんですね
そしてミキサー陣4人の間で菜月さん争奪戦が行われているようです。しかしみんなその動機が残念。
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「さて、皆さん夏合宿お疲れ様でした。来週から9月になるということで、MMPの今後の活動についてお知らせします」
合宿が終わってすぐ、俺は対策委員として閉めの活動でまだバタバタしているけれど、そんなことにはお構いなく時間は過ぎ、季節も変わろうとしている。夏季特別活動日と銘打たれた今日のサークルは、9月の活動についてのお知らせがあるそうだ。
「野坂、対策委員から何かお知らせはあるかな?」
「はい。皆さん夏合宿お疲れ様でした。合宿が終了したのでそのうち班長から番組の同録が配られると思います。えーと、三井先輩はもう預かってるので今ここで。どうぞ」
「ありがとー」
「で、ここでひとつ対策委員に入って来た向島への苦情があって」
「野坂マジか」
「それがマジなんです。向島と言うか……」
「あれあれ~? どうして私を見るのかな~?」
「お前以外にいるか! こーた、お前の所為で何人が安眠を妨害されたと思ってるんだ!」
「ですよね!」
こーたのクッソうるさいいびきと歯軋りのおかげで男子の大部屋では睡眠を阻害されたとして苦情が入って来たんだ。2日目夜にはこーたが原因で眠れず部屋の外まで避難してきたという1年生を2人保護して対策委員の部屋に避難させたという事実がある。
元々こーたの寝汚さにはMMP内では定評があったし、去年もこーたの騒音と俺の寝相の悪さで菜月先輩に苦情が入って来てたそうだから今年もありそうだなあと思ってたらこの有様だよ! ちなみに俺は今年対策委員部屋だったからみんなに迷惑を掛けることはなかったぜ! どや!
「圭斗先輩は眠ることが出来ましたか?」
「僕は耳栓を持って来ていたからね」
「やっぱり3年生の経験値は段違いですね。伊東先輩も寝ホンをされていたようですし」
「寝ホン?」
「寝るとき用イヤホンですね。横になっても痛くないそうですよ。それはそうとこーたお前反省してるのか」
「反省と言われましても生理現象ですから如何ともしがたいですよ」
「鼻呼吸を促す口テープとかあるだろ」
「なあ、苦情を受けたのはわかるけどカンザキのそれはもうどうにもならないし、本題の方に移らないか?」
「ん、一理あるね。野坂、対策委員からはもう何もないかな? ないようなら今日の本題に移るけど」
「はい! 合宿の報告などはまた後日しますので今日は以上です!」
危ない危ない。こーたのことだけで貴重な時間を費やしてしまうところだった。今日の本題は9月からの活動についてだ。とは言っても、向島大学では9月は丸々夏休み。そんなときにある活動なんて、アレの他にないことは奈々以外のみんながわかっているんだ。
「えー、9月の21日になるのかな。3連休の2回目だね。向島大学のオープンキャンパスが行われます。僕たちMMPは毎年学食の一角をお借りして公開生放送を非公式活動としてやっています。今年も例に漏れずやるような感じなのでみんな予定を空けておくように」
「はーい」
「で、時間は11時半から1時半までの2時間を予定してます。丁度アナミキ4人ずつだから30分×4ペアで2時間計算だよ。タケテンにはもう話を通してあるのであとはペアを決めて番組を作る、と」
「もうタケテンに話をつけたのか」
「こういうのは早い方がいいからね。ちなみに、オープンキャンパス番組のトークテーマは一応大学生活に関係することで頼むよ」
「ペアはどう決める?」
「クジでいいんじゃないかな。菜月さん、あみだくじを作ってくれないかい?」
その辺の紙にシャッシャッと菜月先輩が線を引き、あみだくじが作られて行く。下の方にアナウンサーの名前が書かれていて、今回はミキサーがそれぞれ引く場所を選ぶというシステムだ。俺の願うことはひとつだけだ。そう、菜月先輩と組めますようにというその一点のみ!
「あ、そうだ。うちからのお知らせだけど、来週から実家に帰るし顔を合わせての打ち合わせはほとんど出来ないと思ってくれ。その分メールとかでフォローするつもりだけど」
「菜月さん、ちなみにいつ頃戻って来るつもりかな?」
「2つある3連休の間くらいを予定してる」
「わかったよ。まあ、ウチのミキサー陣なら問題ない、よな?」
「はい、私は問題ありませんよ。言って菜月先輩ですし」
「やァー、自分にお任せくださいよォー、いつだって実質的にソロプレイすよ?」
「りっちゃんが言うと心に響くね。奈々ももし菜月さんとペアを組むことになったらそのように頼むよ」
「はいッ!」
本来菜月先輩は春学期が終わった時点で実家に戻られる予定だったところを、俺が無理を言って夏合宿に参加してもらったことでそれを遅らせてもらったという事情がある。申し訳ないという気持ちと圧倒的感謝しかないですよね。
と言うか、菜月先輩だから正直実家に戻られていても打ち合わせはメールなどで密にやってくれるだろうという信頼だよ。MMPのミキサー4人全員に共通するんだよなあ。と言うか、顔を合わせられるはずの他のアナウンサーさんの方が正直ちゃんと打ち合わせ出来んのかという気持ちがデカい!
「それじゃあミキサー陣、クジを引いてくれるかな?」
「よーし……神様仏様圭斗先輩、どうか良い結果を…!」
「自分はそろそろラクしたいンで菜月先輩希望スわ」
「私も夏合宿が後を引いているので安定感重視で菜月先輩を希望したいですよ」
「うちも菜月先輩と組んでみたいっす!」
「ナ、ナンダッテー!? お前ら、そこは俺のポジションだ! わかったら黙ってすっこんでろ!」
「あンだ野坂テメー、やるか!? お前もたまにはヒロだの圭斗先輩だのに振り回されてみろ!」
「圭斗先輩は耳の保養になるからともかくヒロは断固拒否だ!」
わかっちゃいたが敵が多い! ちくしょうお前ら寄ってたかって菜月先輩にラブコールを送りやがって!
「菜月さん、合宿初日のデジャヴだね」
「これはうちが好かれてると言うより、お前たちがめんどくさいと思われてるから起こってることだぞ。ミキサー陣の悲鳴を聞いて反省するんだな」
「……コホン。うるっせえお前ら! いいからさっさとクジ引けや!」
end.
++++
今年は夏合宿が終わってすぐ集合したMMPなので、菜月さんはまだ帰省していません。今から帰るよ!
神崎のいびき云々の問題に関してはまあ、3年生は抜け駆けをしていたみたいですね。いち氏は寝ホンを用意してたからミドリの横でぐっすりだったんですね
そしてミキサー陣4人の間で菜月さん争奪戦が行われているようです。しかしみんなその動機が残念。
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