2019(02)
■季節を閉じる一幕の
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夏合宿のモニター会が終わり、撤収だとバタバタしていた対策委員を後目に冷やかしの3・4年はさて飯でも行くかと石川と広瀬先輩、それぞれの車に乗り込んだ。合宿で制作した番組を発表するモニター会は、インターフェイス関係者なら誰でも聞きに来ることが出来る。今回は7人の聴衆が集まった。
一般参加者の菜月と帰省中の長野を除く前対策委員4人と、広瀬先輩と咲良さん、それから向島の村井サンという4年生の3人だ。俺たち3年はつばめから脅された山口からの誘いでここに来ることになった。4年生は大方伊東の冷やかしだろう。ファンフェスの時もそうだったし。
丘の下にあるファミレスに着くと、7人が座れる大きな楕円形のテーブルに通された。誕生会でもやるのかよといった感じだ。ソファが異様なまでにふかふかとしている。とりあえず食う物を決めようと、2、3人で1冊のメニューを開く。
「おーい、みんな決まったかー?」
「は~い、バッチリで~す」
「じゃあボタン押すぞー」
「お願いしま~す」
村井サンがボタンを押すと、店員がやって来て注文を受けていく。どうしようか、何気に俺は注文……と言うか、メインは決まってんだけどセットの内容を決めかねている。まあいい。最後に注文させてもらおう。それまでの間に決めないと。
「次、山口」
「えっと~、ハンバーグ&チキン南蛮の~、和食セットで~。はい、石川クン」
「野菜ちゃんぽんのケーキセットで、チョコレートケーキを。はい、高崎」
「えー……ハンバーグ&チーズチキンステーキにチキン南蛮をトッピングで、和食セットご飯大盛り、それにケーキセット、チョコレートケーキでお願いします」
「高崎お前やっぱ安定で食うな」
「これくらい余裕っすよ。言って村井サンも肉食ってるじゃないすか」
各々の注文を済ませれば順々にドリンクバーに飲み物を取りに行き、昨日今日で行われたモニター会や合宿のこと、インターフェイスがどうしたという話に自然と移行していくのだ。3日目の番組はこれまでのインターフェイスでは考えられなかった構成の班もいくつかあった。
「今日の番組は面白かったわね。昨日が面白くなかったってワケじゃねーけど、昨日より今日の方が雰囲気良かったのは事実としてあるじゃんな咲良」
「昨日は悪い意味で三井が全部持って行ったからな。正直、先に番組をやった1班と2班の印象はほとんど残っていない」
「あー……その結果の山口無双すよね」
「まさかな~、あっこで山口が辛口モニターをするとは思わなかったっつーな」
「それは正直ある。私は元々山口を買ってたんだが、まさかあそこまでやるとはな」
「え、そーなんすか」
「ああ。去年のこともあってな。お前たち前対策委員6人の中では最も現実的に、かつシビアに物事を考える奴だという評価をしている」
去年、対策委員が空中分解しかける寸前で持ち直した後、夏合宿に向けて動いて行くにあたり俺たち6人は定例会から呼び出しを食らっていた。当時の議長だった咲良さんや委員長の麻里さんから事情を聞かれる中、俺や菜月が言葉を選びながら言い淀むのを後目に山口はありのままに全てを発したのだ。
そもそもインターフェイスという団体自体が星ヶ丘や青敬というラジオ色の薄い大学に対する排他的な雰囲気がありますよ、と。番組は確かに上手く出来ない。だけど行事の運営などに番組の技術や学校の名前は関係ない。組織にいる以上、役割や責任は同じだけ与えられるべきだ。俺はやれますし、定例会側もちょっと見方を改めてくれません? と。
「ただ今戻りました~。村井サンはメロンソーダで、咲良さんはウーロン茶ですね~。お待たせしました~」
「ああ、悪いな」
「いえいえ~、職業病ですから~。あっ、何の話ですか~? 俺も混ぜてくださいよ~」
「昨日よりは今日の方がいい印象に残る番組が多かったなという話だ」
「あっ、そうですよね~。俺、最後の番組なんてあんなコト出来るんだ!? って思って~、忘れないうちに朝霞クンに教えてあげないと~って」
「私もインターフェイスのワイヤレスの機材が動いているのを見るのは久し振りだったんだ。1年の時に見て以来だったし、今の時代にあれを使える奴がいるのかと感心したんだ」
「ウチはワイヤレスも現役バリバリですからね~。シゲトラにかかればあれっくらい朝飯前ですよ~、ウチのナンバーワンミキサーですもん。ペーパーテストは苦手ですけどね~」
「そういやミキサーテストはボーダーに行かなかった3年がいたと聞いたが、アイツだったのか」
「は~い。大学の試験なら実技点で単位を取るタイプですね~」
「まさしく実技タイプだなアイツは」
昨日のモニターでの山口無双を聞いていても思ったが、山口は星ヶ丘でのステージの活動に強い誇りを抱いているのだろう。だからと言ってステージが一番でラジオはダメということを言うワケではない。ステージはステージ、ラジオはラジオのいいところを客観的に比べて、どっちのいいところも活動に活かしているようだ。
ただ、如何せんインターフェイスではラジオの活動がメインなだけに、ステージの認知度は低い。実際俺もこの夏までほとんど見たことがなかった。山口はよく「ウチは」とか「朝霞班は」というように「自分たちも凄いんだぞ、やれるんだぞ」とアピールしているが、それが大袈裟でも嘘でもないのだと知ったのも最近のことだ。
「野菜ちゃんぽんもう来てる」
「あ、あたしのサラダも来てる」
「ああ、お前とか福島さんとか、グリル系以外のはもう来てるぞ」
「うーん、やっぱり惜しむらくは石川と福島にミキサーテストを受験させられなかったことだな」
「えーと……何か今縁起でもないことが聞こえたような」
「うん、何か聞こえた気がしたね」
「お前たち、今からでも受験しないか?」
「あ、いえ、えーと……辞退させていただきたく」
「向かいに同じで……」
「おいおい咲良、あんま3年をイジメんじゃないよ」
「何がイジメだ。力量を測ろうとしてるだけじゃないか。伊東が97点なら、お前たちもそれくらいは出来ないか?」
「は~、アナウンサーにはペーパーテストがなくて良かったデショデショ~」
「マジでそれな」
「クソッ、てめえらぶっ潰す」
「石川、性悪の顔が出てんぞ」
そんなことをしていると、続々と鉄板系のメニューも届き始め、変わった面々での食事が本格的に始まる。今の1、2年は無駄に仲が良いなとか、一般参加者の3年が増えたのはどういうカラクリがあったんだとか、そんな話に花が咲く。きっともうこんな面々で顔を合わすこともそうないだろう。これも夏の一幕として、季節の終わりを飾るにはふさわしい。
end.
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合宿後のファミレスでの件です。4班の番組も遊んでたけど、ヒロ率いる7班のマジハンパないラジオに持って行かれた様子。
そして長編内の時間で語られるはずのことにもチラリ。山口洋平さん、城戸女史&お麻里様にも臆しないんですね。さすがだね!
で、高崎が頼み過ぎ問題。MBCC基準だったらこれくらい食べるのは当たり前なんだろうけど、他の子に比べたら「そんな食うの?」って量だもんなあ
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夏合宿のモニター会が終わり、撤収だとバタバタしていた対策委員を後目に冷やかしの3・4年はさて飯でも行くかと石川と広瀬先輩、それぞれの車に乗り込んだ。合宿で制作した番組を発表するモニター会は、インターフェイス関係者なら誰でも聞きに来ることが出来る。今回は7人の聴衆が集まった。
一般参加者の菜月と帰省中の長野を除く前対策委員4人と、広瀬先輩と咲良さん、それから向島の村井サンという4年生の3人だ。俺たち3年はつばめから脅された山口からの誘いでここに来ることになった。4年生は大方伊東の冷やかしだろう。ファンフェスの時もそうだったし。
丘の下にあるファミレスに着くと、7人が座れる大きな楕円形のテーブルに通された。誕生会でもやるのかよといった感じだ。ソファが異様なまでにふかふかとしている。とりあえず食う物を決めようと、2、3人で1冊のメニューを開く。
「おーい、みんな決まったかー?」
「は~い、バッチリで~す」
「じゃあボタン押すぞー」
「お願いしま~す」
村井サンがボタンを押すと、店員がやって来て注文を受けていく。どうしようか、何気に俺は注文……と言うか、メインは決まってんだけどセットの内容を決めかねている。まあいい。最後に注文させてもらおう。それまでの間に決めないと。
「次、山口」
「えっと~、ハンバーグ&チキン南蛮の~、和食セットで~。はい、石川クン」
「野菜ちゃんぽんのケーキセットで、チョコレートケーキを。はい、高崎」
「えー……ハンバーグ&チーズチキンステーキにチキン南蛮をトッピングで、和食セットご飯大盛り、それにケーキセット、チョコレートケーキでお願いします」
「高崎お前やっぱ安定で食うな」
「これくらい余裕っすよ。言って村井サンも肉食ってるじゃないすか」
各々の注文を済ませれば順々にドリンクバーに飲み物を取りに行き、昨日今日で行われたモニター会や合宿のこと、インターフェイスがどうしたという話に自然と移行していくのだ。3日目の番組はこれまでのインターフェイスでは考えられなかった構成の班もいくつかあった。
「今日の番組は面白かったわね。昨日が面白くなかったってワケじゃねーけど、昨日より今日の方が雰囲気良かったのは事実としてあるじゃんな咲良」
「昨日は悪い意味で三井が全部持って行ったからな。正直、先に番組をやった1班と2班の印象はほとんど残っていない」
「あー……その結果の山口無双すよね」
「まさかな~、あっこで山口が辛口モニターをするとは思わなかったっつーな」
「それは正直ある。私は元々山口を買ってたんだが、まさかあそこまでやるとはな」
「え、そーなんすか」
「ああ。去年のこともあってな。お前たち前対策委員6人の中では最も現実的に、かつシビアに物事を考える奴だという評価をしている」
去年、対策委員が空中分解しかける寸前で持ち直した後、夏合宿に向けて動いて行くにあたり俺たち6人は定例会から呼び出しを食らっていた。当時の議長だった咲良さんや委員長の麻里さんから事情を聞かれる中、俺や菜月が言葉を選びながら言い淀むのを後目に山口はありのままに全てを発したのだ。
そもそもインターフェイスという団体自体が星ヶ丘や青敬というラジオ色の薄い大学に対する排他的な雰囲気がありますよ、と。番組は確かに上手く出来ない。だけど行事の運営などに番組の技術や学校の名前は関係ない。組織にいる以上、役割や責任は同じだけ与えられるべきだ。俺はやれますし、定例会側もちょっと見方を改めてくれません? と。
「ただ今戻りました~。村井サンはメロンソーダで、咲良さんはウーロン茶ですね~。お待たせしました~」
「ああ、悪いな」
「いえいえ~、職業病ですから~。あっ、何の話ですか~? 俺も混ぜてくださいよ~」
「昨日よりは今日の方がいい印象に残る番組が多かったなという話だ」
「あっ、そうですよね~。俺、最後の番組なんてあんなコト出来るんだ!? って思って~、忘れないうちに朝霞クンに教えてあげないと~って」
「私もインターフェイスのワイヤレスの機材が動いているのを見るのは久し振りだったんだ。1年の時に見て以来だったし、今の時代にあれを使える奴がいるのかと感心したんだ」
「ウチはワイヤレスも現役バリバリですからね~。シゲトラにかかればあれっくらい朝飯前ですよ~、ウチのナンバーワンミキサーですもん。ペーパーテストは苦手ですけどね~」
「そういやミキサーテストはボーダーに行かなかった3年がいたと聞いたが、アイツだったのか」
「は~い。大学の試験なら実技点で単位を取るタイプですね~」
「まさしく実技タイプだなアイツは」
昨日のモニターでの山口無双を聞いていても思ったが、山口は星ヶ丘でのステージの活動に強い誇りを抱いているのだろう。だからと言ってステージが一番でラジオはダメということを言うワケではない。ステージはステージ、ラジオはラジオのいいところを客観的に比べて、どっちのいいところも活動に活かしているようだ。
ただ、如何せんインターフェイスではラジオの活動がメインなだけに、ステージの認知度は低い。実際俺もこの夏までほとんど見たことがなかった。山口はよく「ウチは」とか「朝霞班は」というように「自分たちも凄いんだぞ、やれるんだぞ」とアピールしているが、それが大袈裟でも嘘でもないのだと知ったのも最近のことだ。
「野菜ちゃんぽんもう来てる」
「あ、あたしのサラダも来てる」
「ああ、お前とか福島さんとか、グリル系以外のはもう来てるぞ」
「うーん、やっぱり惜しむらくは石川と福島にミキサーテストを受験させられなかったことだな」
「えーと……何か今縁起でもないことが聞こえたような」
「うん、何か聞こえた気がしたね」
「お前たち、今からでも受験しないか?」
「あ、いえ、えーと……辞退させていただきたく」
「向かいに同じで……」
「おいおい咲良、あんま3年をイジメんじゃないよ」
「何がイジメだ。力量を測ろうとしてるだけじゃないか。伊東が97点なら、お前たちもそれくらいは出来ないか?」
「は~、アナウンサーにはペーパーテストがなくて良かったデショデショ~」
「マジでそれな」
「クソッ、てめえらぶっ潰す」
「石川、性悪の顔が出てんぞ」
そんなことをしていると、続々と鉄板系のメニューも届き始め、変わった面々での食事が本格的に始まる。今の1、2年は無駄に仲が良いなとか、一般参加者の3年が増えたのはどういうカラクリがあったんだとか、そんな話に花が咲く。きっともうこんな面々で顔を合わすこともそうないだろう。これも夏の一幕として、季節の終わりを飾るにはふさわしい。
end.
++++
合宿後のファミレスでの件です。4班の番組も遊んでたけど、ヒロ率いる7班のマジハンパないラジオに持って行かれた様子。
そして長編内の時間で語られるはずのことにもチラリ。山口洋平さん、城戸女史&お麻里様にも臆しないんですね。さすがだね!
で、高崎が頼み過ぎ問題。MBCC基準だったらこれくらい食べるのは当たり前なんだろうけど、他の子に比べたら「そんな食うの?」って量だもんなあ
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