2019(02)
■引く手数多のネガティブスター
++++
一瞬、何が起こっているのかまるで理解が出来なかった。インターフェイス夏合宿が始まり、青年自然の家を利用する上でのオリエンテーションが終わった。対策委員や講師のダイさんの紹介なんかも済んで、さあ一旦それぞれの部屋に入って荷物を置いてこよう。そういう時間のことだ。
「なっちせーんぱいっ」
「ん?」
「青女が誇るアイドルで声優の卵のサドニナですっ」
「はあ」
「なっち先輩に、是非とも歌を教えて欲しいなぁ~と思ってぇ」
「歌?」
「こーた先輩から聞きましたよ~! なっち先輩は歌が上手だって」
「はあ!?」
カンザキの奴、何を言い振り回ってるんだ! と言うか、カンザキと関わりがあるってことは2班の子か。まあでも、頭のデカリボンは確かに初心者講習会で見たような見ないような。とは言えここは夏合宿の場なので、歌を教えろと言われても困る。と言うか声優の卵? だったらそういう学校とか事務所でレッスンしてるんじゃないのか。
「あっ! なっちさん? 向島の菜月先輩ですか!?」
「えっと、次はどちら様で?」
「星ヶ丘のマリンこと浦和茉莉奈と言います! 合宿では野坂先輩のお世話になっていて、この度はアナウンサーとしてのことやラジオに向かう姿勢なんかを直々に教えていただければなと思ってご挨拶させていただきましたですよ!」
「あ、えーと、合宿でのうちはただの参加者で――」
「その立ち振る舞いからも学ばせていただきますですよ」
ノサカ~…! お前もか! でも何か言ってることとかやろうとしてることが本人の資質もあるのかもしれないけど何かまあ、ノサカっぽい雰囲気がちょっとある。お世話になってるっていうのは本当なんだろうなあ。5班の子か。でも星ヶ丘の子はあんまり講習会でのイメージがないなあ。
「なっち先輩!」
「今度は何だ~…!」
「緑ヶ丘の射水ハナです! ハナも緑風出身で、同郷のよしみで仲良くなれればなーと思って~」
「星大のミドリこと川北碧です。えっと、なっち先輩と同じ班になりたかったんですけど、なれなくって。えっと、でもぜひお話ししたくって」
あれよあれよとうちの周りに1年生たちが群がってきていた。何だこれ。4月にやったサークルの新歓ビラ配りでもこんなに群がられることはなかったのに、1年生たちがわらわらと集合してるじゃないか。気付けば何事だと他の人がこっちに向ける視線も痛い! 誰でもいいから助けてくれないか。
「サドニナが一番に話しかけたんだもん!」
「私の用事が一番真面目!」
「距離の近さで言えばハナかな~、しょぼーん」
「こ、この機会を逃すとお話し出来ない気がする…! 俺も引けない…!」
「ぜひ! サドニナとお話を~!」
「私とです~!」
気付けばサドニナに右腕を、マリンに左腕を捕まれ奴には渡すものかと引っ張られている。それをハナとミドリはそこまでするかと少し引いている様子。いや、いいから見てないで助けてくれ。これは綱引きか親権争いか。歌か放送、どっちを教えるかならまだ放送の方がマシだけど!
「ちょっ、痛い痛い痛い!」
「マリン、なっち先輩が痛がってる!」
「そっちが放せばいいだけの話ですよ!」
「そっちが放すの!」
「放さないですよ~…!」
両手首の上では持って行こうとしていた大荷物がぷらぷらと揺れている。引っ張られている腕や力のかかる肩だけじゃなくて、荷物の揺れる手首もなかなかにしんどい。いや、真面目にもうムリだぞ!? 脚はフリーだけど、他校の女子だし普段ノサカやカンザキらにしてるみたいなローキックはかませないぞ。
「こーらっ、マリン、サドニナ! 今は部屋に荷物を置きに行く時間だ。自由時間は他にもあるし、そのときにしろ」
「ごめんなさいです~」
「今回はこれくらいにしておいてあげますよ」
「はい、わかったらみんな荷物を置きに行く。10時から講習は始まるんだぞ」
ノサカが引っ張られていた腕を解いてくれて、1年生たちに次の動きを促す。1年生たちは「はーい」と返事をしてぞろぞろと行列を作っていった。うちはと言えば、始まってもいないのに疲れ切ってしまって一気に脱力。そんなに重くないはずの荷物が全然持ち上がらない。
「ふーっ……ノサカ、助かったぞ」
「菜月先輩、お怪我はありませんか?」
「ギリセーフってトコだな」
「申し訳ございません、菜月先輩へのラブコールの存在は対策委員も把握していたのですが、まさかここまでの騒ぎになるとは思ってもおらず」
「いや、まさか誰も思わないだろう。お前の不備じゃない。ただ、マリンだっけ? あの子に何を言ったんだ?」
「あの子は講習会に出ていないので講習会の際にいただいたレジュメを活用しながらラジオの基礎を教えていたのですが、そのときに菜月先輩のお話をいろいろと。圭斗先輩も彼女は本当に上手いからと話を広げてくださって。真面目で意欲もある子なので、今回のような形になったのかと」
それはわかったにしても、他の子からこうも声をかけられるとは思わないワケで。邪険にされるよりは慕われる方がいいにせよ、ずっとこうだとさすがにしんどい。言ってうちは根暗の引きこもり属性だ。1人の時間が何よりの癒し。救いは女子部屋が3、4人単位の部屋だってことだな。大部屋だったらどうなってたか。
「菜月先輩、荷物をお部屋までお持ちしますか?」
「お前はバカか。対策委員の議長がそんなことをしてるヒマはないぞ。全体に目をやってろ」
「申し訳ございません」
「まあでも、えーと……またこんな感じになったら議長パワーで助けてくれると、嬉しい」
「それはもちろん! あっ、状況次第ですが、どこにでも馳せ参じます!」
end.
++++
今年はノサナツ年なのでまあ最後ちょっといちゃいちゃしてますね。いち氏や圭斗さんがこの光景見てないかな! 見てないかな!
菜月さんが物理的に取り合いになったと語られた話が○年前にあったので、物理的に取り合ってもらいました。
マリンが菜月さんに行ったのは宇部Pとつばちゃんの次に憧れのノサカがこの人は本当にすごいんだぞ!ってキラキラして言うもんだから興味が沸いたんやろなあ
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一瞬、何が起こっているのかまるで理解が出来なかった。インターフェイス夏合宿が始まり、青年自然の家を利用する上でのオリエンテーションが終わった。対策委員や講師のダイさんの紹介なんかも済んで、さあ一旦それぞれの部屋に入って荷物を置いてこよう。そういう時間のことだ。
「なっちせーんぱいっ」
「ん?」
「青女が誇るアイドルで声優の卵のサドニナですっ」
「はあ」
「なっち先輩に、是非とも歌を教えて欲しいなぁ~と思ってぇ」
「歌?」
「こーた先輩から聞きましたよ~! なっち先輩は歌が上手だって」
「はあ!?」
カンザキの奴、何を言い振り回ってるんだ! と言うか、カンザキと関わりがあるってことは2班の子か。まあでも、頭のデカリボンは確かに初心者講習会で見たような見ないような。とは言えここは夏合宿の場なので、歌を教えろと言われても困る。と言うか声優の卵? だったらそういう学校とか事務所でレッスンしてるんじゃないのか。
「あっ! なっちさん? 向島の菜月先輩ですか!?」
「えっと、次はどちら様で?」
「星ヶ丘のマリンこと浦和茉莉奈と言います! 合宿では野坂先輩のお世話になっていて、この度はアナウンサーとしてのことやラジオに向かう姿勢なんかを直々に教えていただければなと思ってご挨拶させていただきましたですよ!」
「あ、えーと、合宿でのうちはただの参加者で――」
「その立ち振る舞いからも学ばせていただきますですよ」
ノサカ~…! お前もか! でも何か言ってることとかやろうとしてることが本人の資質もあるのかもしれないけど何かまあ、ノサカっぽい雰囲気がちょっとある。お世話になってるっていうのは本当なんだろうなあ。5班の子か。でも星ヶ丘の子はあんまり講習会でのイメージがないなあ。
「なっち先輩!」
「今度は何だ~…!」
「緑ヶ丘の射水ハナです! ハナも緑風出身で、同郷のよしみで仲良くなれればなーと思って~」
「星大のミドリこと川北碧です。えっと、なっち先輩と同じ班になりたかったんですけど、なれなくって。えっと、でもぜひお話ししたくって」
あれよあれよとうちの周りに1年生たちが群がってきていた。何だこれ。4月にやったサークルの新歓ビラ配りでもこんなに群がられることはなかったのに、1年生たちがわらわらと集合してるじゃないか。気付けば何事だと他の人がこっちに向ける視線も痛い! 誰でもいいから助けてくれないか。
「サドニナが一番に話しかけたんだもん!」
「私の用事が一番真面目!」
「距離の近さで言えばハナかな~、しょぼーん」
「こ、この機会を逃すとお話し出来ない気がする…! 俺も引けない…!」
「ぜひ! サドニナとお話を~!」
「私とです~!」
気付けばサドニナに右腕を、マリンに左腕を捕まれ奴には渡すものかと引っ張られている。それをハナとミドリはそこまでするかと少し引いている様子。いや、いいから見てないで助けてくれ。これは綱引きか親権争いか。歌か放送、どっちを教えるかならまだ放送の方がマシだけど!
「ちょっ、痛い痛い痛い!」
「マリン、なっち先輩が痛がってる!」
「そっちが放せばいいだけの話ですよ!」
「そっちが放すの!」
「放さないですよ~…!」
両手首の上では持って行こうとしていた大荷物がぷらぷらと揺れている。引っ張られている腕や力のかかる肩だけじゃなくて、荷物の揺れる手首もなかなかにしんどい。いや、真面目にもうムリだぞ!? 脚はフリーだけど、他校の女子だし普段ノサカやカンザキらにしてるみたいなローキックはかませないぞ。
「こーらっ、マリン、サドニナ! 今は部屋に荷物を置きに行く時間だ。自由時間は他にもあるし、そのときにしろ」
「ごめんなさいです~」
「今回はこれくらいにしておいてあげますよ」
「はい、わかったらみんな荷物を置きに行く。10時から講習は始まるんだぞ」
ノサカが引っ張られていた腕を解いてくれて、1年生たちに次の動きを促す。1年生たちは「はーい」と返事をしてぞろぞろと行列を作っていった。うちはと言えば、始まってもいないのに疲れ切ってしまって一気に脱力。そんなに重くないはずの荷物が全然持ち上がらない。
「ふーっ……ノサカ、助かったぞ」
「菜月先輩、お怪我はありませんか?」
「ギリセーフってトコだな」
「申し訳ございません、菜月先輩へのラブコールの存在は対策委員も把握していたのですが、まさかここまでの騒ぎになるとは思ってもおらず」
「いや、まさか誰も思わないだろう。お前の不備じゃない。ただ、マリンだっけ? あの子に何を言ったんだ?」
「あの子は講習会に出ていないので講習会の際にいただいたレジュメを活用しながらラジオの基礎を教えていたのですが、そのときに菜月先輩のお話をいろいろと。圭斗先輩も彼女は本当に上手いからと話を広げてくださって。真面目で意欲もある子なので、今回のような形になったのかと」
それはわかったにしても、他の子からこうも声をかけられるとは思わないワケで。邪険にされるよりは慕われる方がいいにせよ、ずっとこうだとさすがにしんどい。言ってうちは根暗の引きこもり属性だ。1人の時間が何よりの癒し。救いは女子部屋が3、4人単位の部屋だってことだな。大部屋だったらどうなってたか。
「菜月先輩、荷物をお部屋までお持ちしますか?」
「お前はバカか。対策委員の議長がそんなことをしてるヒマはないぞ。全体に目をやってろ」
「申し訳ございません」
「まあでも、えーと……またこんな感じになったら議長パワーで助けてくれると、嬉しい」
「それはもちろん! あっ、状況次第ですが、どこにでも馳せ参じます!」
end.
++++
今年はノサナツ年なのでまあ最後ちょっといちゃいちゃしてますね。いち氏や圭斗さんがこの光景見てないかな! 見てないかな!
菜月さんが物理的に取り合いになったと語られた話が○年前にあったので、物理的に取り合ってもらいました。
マリンが菜月さんに行ったのは宇部Pとつばちゃんの次に憧れのノサカがこの人は本当にすごいんだぞ!ってキラキラして言うもんだから興味が沸いたんやろなあ
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