2019(02)
■来たる本番の日に向けて
++++
「さて、集まったなお前ら。今日はリク番とインフォの練習だ」
今日はMBCCの夏期特別活動日。夏合宿がすぐそこまで迫っているということで、合宿でもやるリクエスト番組とインフォメーション放送のことを予習しようというプチ講習会めいたことが開かれる。MBCCでは毎年合宿前にこの講習をやってるんだ。今年は高ピーがきっと鬼のようにしごいてくれるんだろうなあ。
リクエスト番組というのはその名の通り、リスナーさんから音楽のリクエストを募ってそれに答えるという形式の番組。大学祭や昔行ってたスキー場DJなんかでは1時間なり2時間なりぶっ通しでリクエストを捌くだけの番組もやってたけど、夏合宿では15分番組の合間に突然1曲差し込まれてくる。
この“突然”というのが結構厄介なんだ。曲を紹介したりメッセージを読んだりするのはアナウンサーさんだけど、ミキサーにもたくさんやることはある。どこにリクエストを入れるかを決めたり、それによって変わる番組構成を立て直したり。場合によってはAD作業なんかもしなくちゃいけないんだ。
インフォメーション放送に関しては、よくある迷子放送だとか落とし物のお知らせとかをイメージしてもらえればわかりやすいかもしれない。夏合宿の番組は架空の場所での公開放送という体だ。起こり得るトラブルが想定されたインフォメーションが番組途中で差し込まれる。
「インフォは番組をやっている最中に飛んでくるが、番組は番組、インフォはインフォで区別しろ。番組のトーンでインフォをやると内容がぼやけて何も伝わらねえ。いいな」
「はーい」
「リク番にしてもそうだが、インフォやリク番で狂った番組の進行をいかにして立て直すかはミキサーの腕だ。曲中にアナと話し合って今後の進行を決めていくが、こういくと決めたらスパッと行け。アナはミキサーからの指示に従う。躊躇するな」
「慣れてるアナさんだったらリードしてもらえるかもしれないけど、基本的には自分でやるつもりでいてね。今回の名簿見てる感じだと、慣れてるアナウンサーさんって言ったらそれこそウチと向島の2・3年生だけって感じだから」
「はい、じゃあ座学はここまで。15分休憩」
それこそ初心者講習会より一歩先に進んだ講習が開かれてる。さすが高ピーだなあと思って。1年生の子たちはメモを取ったりしながらうーんうーんと勉強してる。春学期で少しずつ経験は積んできたけど、インフォやリク番は初めてだから、初めてのことに期待や不安が混ざってる感じかな。
座学が終われば次に始まるのは実践練習だ。とにもかくにもMBCCでは「ミキサーは実践で鍛える」にしてもそうだけど、実際に体で覚え込ませると言うか、そんな練習がメインなんだよね。だけどいろいろなパターンを実際にやってみることで、実戦でもどう立ち回ればいいかがわかるようになるんだよね。
「カズせんぱーい、15分の中にリク番とインフォメーションが飛んでくるんですよねー!?」
「そうだね」
「15分の中に2つも入れられたら用意してる番組全然出来なくないですか?」
「それをどうにかやりくりするんだよ」
「実際どこで調整するんすか?」
「曲の長さを短くしたり、アナさんのトークを少し削ってもらうとかね」
「あー、なるほど、ネタ帳を台本にすんなっつーのはそーゆーことか」
「まあ、今からそれを練習するからね」
「っつっても高崎先輩の扱きはマジヤベーっていう」
「それ~。しょぼーん」
1年生のアナウンサーの子たちはこれから始まるだろう実戦形式の練習に戦々恐々としている。まあ、高ピーがガチったらすごいスパルタ教育になりそうだもんなあ。それは俺も全然想像出来るしまあ怖いよね。だからと言ってミキサーはいいなーと思われるようなヌルいことをするワケでもないんだけど。
「伊東」
「あっ、どったの高ピー」
「今からリク番やるだろ。AD作業の練習も兼ねて1年に1人5枚は作らせんだけど、まあ、1年の作るモンなんか難易度的にたかが知れてるからな。でだ、鬼畜なリク用紙を作らせれば右に出る者はないと言われるお前にだ、これというヤツをいくつか作ってもらいたい」
「難しいヤツを作ればいいってことね」
インフォやリク番の実戦練習では、難しいとされるパターンを重点的に練習することが多い。イントロの秒数がやたら長い曲だとか、タイトルやアーティスト名の読み方がよくわからない曲、それから、アナさん的にはリクエスト用紙のメッセージ欄に何も書いてなかったりするのが逆に難しかったりするそうだ。
他にもこういうのが来たらイヤだなって言うパターンはいくつか持っている。それをふんだんにリクエストに反映させるんだ。もちろんファンフェスのような“本番”でそんな性格の悪いリクエストをわざとしてくることはないだろうけど、夏合宿の“本番”では十二分にあることなんだ。その対策だね。
「おーい1年、そろそろ再開するぞ」
「はーい」
「それでは、これからインフォメーションとリク番の実戦練習に入る。まずはインフォメーションだ。まずはインフォメーションだけを何回か繰り返して感じをつかんでもらう。それを何回かやって感じをつかんだら、ミキサー陣と番組をやって、その中でインフォ練習をする。この繰り返しだ」
「ミキサーはアナウンサー陣が練習してる間にインフォメーションとリク番のネタを仕込んでもらいます。本来はAD作業をするんだけど、今回はMDストックのリストを見てもらって、そのデータを使って下さい」
今の子たちは本当にこれを実戦で使うのが来年のファンフェスになっちゃうんだろうけど、それでも日々出来ることを増やすのは大事だと思うんだ。こうやって真面目な練習で半日とか1日とか使えることもそうないしね。如何せん緑ヶ丘は出来て当たり前みたいな空気もあるしね。
「よーし、それじゃあ始めるぞ」
end.
++++
座学段階では1年生がわーひゃー言っていないのでまだ平和な感じで講習が進んでいるようです。
いち氏が穏やかに見守っているようだけど、きっとここからがヒートアップしてくるんだろうなあ
そして生温い練習で終わる気がない高崎である。まあ、ですよねーかしょぼーんってヤツですね
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「さて、集まったなお前ら。今日はリク番とインフォの練習だ」
今日はMBCCの夏期特別活動日。夏合宿がすぐそこまで迫っているということで、合宿でもやるリクエスト番組とインフォメーション放送のことを予習しようというプチ講習会めいたことが開かれる。MBCCでは毎年合宿前にこの講習をやってるんだ。今年は高ピーがきっと鬼のようにしごいてくれるんだろうなあ。
リクエスト番組というのはその名の通り、リスナーさんから音楽のリクエストを募ってそれに答えるという形式の番組。大学祭や昔行ってたスキー場DJなんかでは1時間なり2時間なりぶっ通しでリクエストを捌くだけの番組もやってたけど、夏合宿では15分番組の合間に突然1曲差し込まれてくる。
この“突然”というのが結構厄介なんだ。曲を紹介したりメッセージを読んだりするのはアナウンサーさんだけど、ミキサーにもたくさんやることはある。どこにリクエストを入れるかを決めたり、それによって変わる番組構成を立て直したり。場合によってはAD作業なんかもしなくちゃいけないんだ。
インフォメーション放送に関しては、よくある迷子放送だとか落とし物のお知らせとかをイメージしてもらえればわかりやすいかもしれない。夏合宿の番組は架空の場所での公開放送という体だ。起こり得るトラブルが想定されたインフォメーションが番組途中で差し込まれる。
「インフォは番組をやっている最中に飛んでくるが、番組は番組、インフォはインフォで区別しろ。番組のトーンでインフォをやると内容がぼやけて何も伝わらねえ。いいな」
「はーい」
「リク番にしてもそうだが、インフォやリク番で狂った番組の進行をいかにして立て直すかはミキサーの腕だ。曲中にアナと話し合って今後の進行を決めていくが、こういくと決めたらスパッと行け。アナはミキサーからの指示に従う。躊躇するな」
「慣れてるアナさんだったらリードしてもらえるかもしれないけど、基本的には自分でやるつもりでいてね。今回の名簿見てる感じだと、慣れてるアナウンサーさんって言ったらそれこそウチと向島の2・3年生だけって感じだから」
「はい、じゃあ座学はここまで。15分休憩」
それこそ初心者講習会より一歩先に進んだ講習が開かれてる。さすが高ピーだなあと思って。1年生の子たちはメモを取ったりしながらうーんうーんと勉強してる。春学期で少しずつ経験は積んできたけど、インフォやリク番は初めてだから、初めてのことに期待や不安が混ざってる感じかな。
座学が終われば次に始まるのは実践練習だ。とにもかくにもMBCCでは「ミキサーは実践で鍛える」にしてもそうだけど、実際に体で覚え込ませると言うか、そんな練習がメインなんだよね。だけどいろいろなパターンを実際にやってみることで、実戦でもどう立ち回ればいいかがわかるようになるんだよね。
「カズせんぱーい、15分の中にリク番とインフォメーションが飛んでくるんですよねー!?」
「そうだね」
「15分の中に2つも入れられたら用意してる番組全然出来なくないですか?」
「それをどうにかやりくりするんだよ」
「実際どこで調整するんすか?」
「曲の長さを短くしたり、アナさんのトークを少し削ってもらうとかね」
「あー、なるほど、ネタ帳を台本にすんなっつーのはそーゆーことか」
「まあ、今からそれを練習するからね」
「っつっても高崎先輩の扱きはマジヤベーっていう」
「それ~。しょぼーん」
1年生のアナウンサーの子たちはこれから始まるだろう実戦形式の練習に戦々恐々としている。まあ、高ピーがガチったらすごいスパルタ教育になりそうだもんなあ。それは俺も全然想像出来るしまあ怖いよね。だからと言ってミキサーはいいなーと思われるようなヌルいことをするワケでもないんだけど。
「伊東」
「あっ、どったの高ピー」
「今からリク番やるだろ。AD作業の練習も兼ねて1年に1人5枚は作らせんだけど、まあ、1年の作るモンなんか難易度的にたかが知れてるからな。でだ、鬼畜なリク用紙を作らせれば右に出る者はないと言われるお前にだ、これというヤツをいくつか作ってもらいたい」
「難しいヤツを作ればいいってことね」
インフォやリク番の実戦練習では、難しいとされるパターンを重点的に練習することが多い。イントロの秒数がやたら長い曲だとか、タイトルやアーティスト名の読み方がよくわからない曲、それから、アナさん的にはリクエスト用紙のメッセージ欄に何も書いてなかったりするのが逆に難しかったりするそうだ。
他にもこういうのが来たらイヤだなって言うパターンはいくつか持っている。それをふんだんにリクエストに反映させるんだ。もちろんファンフェスのような“本番”でそんな性格の悪いリクエストをわざとしてくることはないだろうけど、夏合宿の“本番”では十二分にあることなんだ。その対策だね。
「おーい1年、そろそろ再開するぞ」
「はーい」
「それでは、これからインフォメーションとリク番の実戦練習に入る。まずはインフォメーションだ。まずはインフォメーションだけを何回か繰り返して感じをつかんでもらう。それを何回かやって感じをつかんだら、ミキサー陣と番組をやって、その中でインフォ練習をする。この繰り返しだ」
「ミキサーはアナウンサー陣が練習してる間にインフォメーションとリク番のネタを仕込んでもらいます。本来はAD作業をするんだけど、今回はMDストックのリストを見てもらって、そのデータを使って下さい」
今の子たちは本当にこれを実戦で使うのが来年のファンフェスになっちゃうんだろうけど、それでも日々出来ることを増やすのは大事だと思うんだ。こうやって真面目な練習で半日とか1日とか使えることもそうないしね。如何せん緑ヶ丘は出来て当たり前みたいな空気もあるしね。
「よーし、それじゃあ始めるぞ」
end.
++++
座学段階では1年生がわーひゃー言っていないのでまだ平和な感じで講習が進んでいるようです。
いち氏が穏やかに見守っているようだけど、きっとここからがヒートアップしてくるんだろうなあ
そして生温い練習で終わる気がない高崎である。まあ、ですよねーかしょぼーんってヤツですね
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