2019(02)

■取り得る対策と最強の布陣は

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「対策委員です」

 盆が明け、いよいよ月末に控えた夏合宿に向けて対策委員もラストスパートだ。夏合宿全体の運営の他に自分たちの班のこともある。班のことはこれまでちょこちょこと準備をしているけど、そっちの方も詰めていかなきゃいけないし、何気に忙しい。

「さて、いよいよ夏合宿まで日が無くなって来たワケだけど。何をする必要があったかな」
「まあ買い出しはマストっしょ」
「そうだな。まずは買い出し。そもそも、対策委員として合宿に必要な物って?」
「名札用のホルダー、同録用のMD、それから」
「なー野坂、そういやインターフェイスの機材掘り起こさなきゃいけない的なアレ?」

 ゴティの発言にこの場にいた全員がハッとした。インターフェイスの合宿は緑区にある青年自然の家で行われる。そこに機材やら何やらを運び込んでセッティングをするのが現地での最初の仕事になる。しかし俺たちは細かい確認はしていたものの、機材のことが完全にすっぽ抜けていたのだ。
 もちろん名札用のホルダーなど、忘れそうになる細かい物の確認は大事だ。だけど機材を運搬するにしても車が要るし、同日自分たちはどれくらいの時間に現場入りをして、一般参加者をどのようにして迎えるのかを話し合っていなかった。
 去年の議事録を参考にすると、タクシーを呼んで最寄駅から青年自然の家までひたすらピストン運行をしてもらうような感じだったようだ。5人乗れる中型タクシーに着いた人からとにかく詰め込んで会場に向かわせていた。1回につき代表者に1000円を握らせて。

「機材も掘り起こさなきゃだし、タクシーの手配もしなきゃいけない。それは今電話でやってしまおうか、後からだと忘れそうだ」
「そだね」
「じゃアタシ電話してくるよ」
「頼む果林。えっと、そうなると駅で対策委員が誰か1人待ってなきゃいけないってワケだ。1000円渡す係で」
「お金の扱いならつばめが適任じゃない? 会計だし」
「Kちゃんちょい待ち。確かに金の扱いならつばめなんだけど、機材セットしなきゃいけないときにミキサー1人いなくなられるとちょいキツいわ」
「野坂的には?」
「つばめの機動力がなくなると正直現場では1人分以上の痛手だ。そもそもミキサーに人数偏ってる2年生でどうして対策委員はミキサーの方が少ないのか」
「で、アタシは結局どこで何の仕事すんの?」
「正直準備段階で現場にいなくていいのはヒロなんだけど、ヒロに金の扱いと一般参加者を誘導することが出来るのかという問題が」
「何やのノサカ!」

 そうこうしている間にタクシー会社に電話をしに行っていた果林が戻って来て、ナニナニ何の話ーと人員配置問題に加わる。誰の言うこともわかんないでもないんだけどねーと頷きながら。ちなみにタクシーは無事に確保出来たようです。

「仕様は去年と同じで良かったよね。5人詰めて1000円握らす」
「ああ、それでいい。サンキュ」
「で、駅に誰を置くか問題ね。会場設営の視点ではつばめに現場にいて欲しいけど、お金の管理的な意味合いでは駅につばめを置きたい的な」
「いやー、デキるDはツラいね! 引っ張りだこだよ」
「いや、ガチで。つばめお前分裂出来ね?」
「出来るか! 野坂まで朝霞サンみたいなこと言うなよ。どんだけアタシのこと扱き使う気だよ。つか機材のセッティングとか別に3人もいなくて良くない?」
「いや、野坂は議長だし多分当日も忙しいじゃん? そしたら俺1人でやんの? 的な」
「ゆーて天下の緑ヶ丘なんだし大丈夫でしょーよゴティさ~ん」
「確かに、ゴティには機材のことだけやってもらって、残り全員がその他の雑務って感じでもまあイケるっちゃイケるかと。機材の運搬に関してはヒロもツカサもいるし」
「まあ、ゆーて機動力の点ではつばめ並に果林が信用なるわね。違いは機材セット出来るか出来ないかってくらいで」

 結局、機材セットは俺とゴティでやることになり、駅にはつばめを置くことに。残るアナウンサー4人でホワイトボードやイスのセットなどをするという作戦で行くことになった。最終のタクシーが駅を出たらつばめから連絡が入れてもらうことになったし、連携は出来そうだ。
 如何せん夏合宿というのは俺たち対策委員の主催する行事の中で一番大きいし、金も動く。人間関係のトラブルも絶えないとは聞く。この3日間、何事もなく平穏に過ごせれば一番いいんだろうけど、そうはいかないだろう。入念な準備は必要だ。

「そんで野坂、話戻すけどインターフェイスの機材はどーすんの。俺とKちゃんで乗せてくんしょ?」
「……忘れてたぁ~…! そうだ、定例会をやってるビルにあるんだよな機材って確か」
「そーね」
「つか機材って今どうなってんだよ、つかMDストックとか、リストって」
「ストックは定例会の機材管理の人が細々作る感じっしょ? リストもそーなんじゃねーの、知らないけど」
「えっ、もしかしてこれ定例会に連絡必要な感じ?」
「野坂が適任じゃん、定例会のボスって圭斗サンなんだし」
「いや……圭斗先輩に機材のことを聞いたところで収穫が少ない気も」
「なら直でカズさんに聞けば?」
「でも今年はファンフェスでウチの機材を使ってるくらいだし、どうだろう」
「じゃあ石川サンじゃない? 最後に機材触った人まで遡るなら」
「まあ、一応まずは圭斗先輩に当たってみて、誰に聞けば確実なのかを教えてもらうことにしよう」

 一番肝心な所での不安は拭えないけれど、一応何をすればいいのかだけは積み上げることが出来た。圭斗先輩への連絡は後回しにしていると忘れてしまうので今すぐに。今日はスマホのチェックや充電を忘れないようにしよう。


end.


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いよいよ夏合宿まで日が無くなって来ました。対策委員も必要な事柄の確認の時間です。
さて、つばちゃんの働きがいよいよ朝霞班の外でも認められつつありますね。分裂出来ん?ってw
果たしてインターフェイスの機材については誰に聞けばわかるのだろうか! 圭斗さんじゃダメみたいですね

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