2019(02)

■皆さま進捗どうですか

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「みんな、集まったわね。それでは班長会議を始めます」

 会議室に集められた各班の班長たち。これから始まるのは丸の池ステージ前としては最後になる班長会議だ。もちろん、早急に知らせる必要のある事柄が発生すれば緊急会議という形で開催されるそうだが、定例会議としてはこれが最後らしい。
 しかし、班長会議とはいうものの、日高の姿はない。その理由が俺たち一般の班長に公表されることはなく、今日の会議に関しても日高がいなければ回らないということはないということでそのまま続行されるようだ。

「来週はテスト期間ということで、多くの班が今週の間で準備を詰めていると思います。各班の進捗を聞いておこうかしら。菅野班はどう?」
「ウチは至極順調と言うか、大きな問題はないかな」
「そう。さすがね。その調子で頼むわよ。次、鎌ヶ谷班は」
「ウチか? まー頑張ってるよ。ちょこちょこ微修正は入るかもだけど、後は詰めるだけって感じ」
「ファンフェスよりは見られるステージになりそうかしら」
「当然だぜ! いつから準備してると思ってんだ!」
「ファンフェス終了直後からね」
「だろ?」

 急遽行われたファンフェスのステージは、一部を除き酷い出来だったと言う。予定されていないステージだった上に、準備期間が短かったということもあっただろうが、それでも日頃から何事にも動じず対処する力を各班が付けなければならないと宇部は言った。
 こうして行われている進捗確認は宇部が監査としてどの班がどんな状況なのかを把握するのと同時に、こうして公衆の面前で進捗を発表することで遅れている班のケツを叩くという意味合いがあるのだろう。尤も、俺は別にケツを叩かれなくても常に全力で作業をしているのだが。

「須賀班はどう?」
「台本とその練習は大体出来てるんだ! 今は大道具を作ってるんだ!」
「そう。それが出来れば完成ね」
「そうなんだ!」
「魚里班は」
「いろいろ出来てないトコはあるけど、リハまでには間に合わせる」
「リハまでって……リハーサルは今週の金曜日よ? 本当に大丈夫なの?」
「やるったらやってやるよ」

 班によって人数や予算、それから能力も大きく異なる。どの班がどういうステージをやろうとしているのかはわからないが、相当凝ったことをしようとして準備に時間がかかっているのか、それとも単純に要領が悪くて追いついていないのか。

「朝霞班は……まあ、聞かなくてもわかるけれど」
「いや、聞けよ」
「例によって台本の修正を続けてるんでしょう? あなたの台本に完成稿という単語はないものね。でも一応聞くわよ」
「朝霞班は台本の修正と日々の練習を繰り返している。必要な道具類は既に用意済みだ」
「でしょうね」

 聞くまでもなくわかるという扱いをされたのは納得いかないが、俺が時間さえあれば台本の修正をしているのは事実だ。それから、完成稿という単語がないというのも本当だが、それも先回りされてしまうと俺が実際ここに来た意味とは、となるのだ。
 宇部班の進捗もほぼほぼ達成されているし、日高班の進捗については宇部にも知らされていないらしく、日高班がステージに向けて動いているという情報もない。まあ、それはそうとして、次の議題へ。それは、金曜日に予定されているリハーサルについてだ。

「今年の丸の池ステージは来週末ということで、テスト期間と重なっています。人によっては土曜日の予備日に考査が入って来る可能性もなくはないと思いますが、今のところそのような話はありませんか?」

 これにはないでーすと皆声を上げる。と言うか平日でもやってられないのに、土曜日にまでテストなんかやってられるか。学部学科や履修コマの都合でそんなことがある場合もあるそうだが、ウチはそんなことがなくてよかった。

「金曜日のリハーサルについてもテストとの兼ね合いがあるでしょうから、班員の揃わない班もあると思います。ですから例年のようなガッツリとしたリハーサルは出来ない物と想定して、簡単に流れの確認にとどめます。機材セッティングの確認もあるわね」
「機材のことなら任せとけ!」
「機材のことは鳴尾浜がいれば心強いのは本当だけど、あなたはそもそも」
「朝霞からノートとプリントもらってるし全然イケる! そもそも金曜はレポート提出だけだ、任せとけ!」
「あら、今までよりも学業にも腰を据えているのね」
「つか、ちゃんとやらねーとそろそろ冗談抜きでヤバいしな」
「と言うか、まだ何も言われてないのにテストのことを聞かれるって何でわかるんだ」
「いいか菅野、俺くらいになれば次に何を聞かれるかわかるようになんだよ、世界のシゲトラだぞ」

 まさかコイツが鳴尾浜にノートとプリントを寄こしたのかという奇異な目を向けられているのはわかっていた。それに関しては鳴尾浜が俺に集るタイミングが良かったとしか言いようがない。いくら授業中と言えネタを詰めるのに神経が向いていれば、ということだ。

「金曜日にやるリハーサルが実質的に班の全体で活動出来る最後になります。テスト期間に関しては各班で予定を合わせるなどして準備をしてください」
「宇部、聞いていいか」
「どうぞ」
「テスト期間も申請すれば普通に機材は借りられるんだな」
「ええ。ただし、一度に連続使用できるのは1時間半まで。それ以降に関しては他の班との兼ね合いを見ながら調整してもらう必要があるわね」
「わかった。それから、ブースの使用時間に関してだけど」
「まさか、泊まり込む気じゃないでしょうね」
「さすがに泊まるつもりはなかったけど、9時10時くらいまでは普通にいるつもりだった」
「そのくらいならいてもらって構わないわよ。朝霞班に限らず、他の班もそれくらいの時間までなら準備しているでしょうから」
「そうか、わかった」

 ステージまで残された時間はあとわずか。俺個人はテストがないけど、班員の都合を考えるとやはり出来ることには限りがある。その間、やれることを考えておかないと。


end.


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星ヶ丘の班長会議です。例によって日高は雲隠れをしているようですが。でも今年はその動きを詳しくやることはないのかな
朝霞班のことは聞かなくてもわかるというのがそろそろテッパン化しつつあるのだけど、まあ、朝霞Pのやることだしなあ
でも朝霞Pがシゲトラにノートとプリントを渡したっていうのが他の班長たちには「マジで!?」みたいな感じだったみたいですね

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