2019(02)
■as usual
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今日の夜には、圭斗と約束が入っている。厳密には「たまには先輩たちと食事でもどうかな、昼放送の収録の後だし対策委員の話も聞かせたいから野坂も一緒に連れて行こう」という感じの食事会の予定だ。だけど、困ったことが一点。
現在時刻が3時半。圭斗には5時ごろには終わらないかなという風に待ち合わせ時間の目安を伝えていたのだけど、この調子で行くと5時には毛頭終わらないだろうなという予感しかしない。と言うか、収録後に出掛けるからっていうのはノサカにも伝わってるのに通常運転しやがって。
今回の食事会に来られる先輩が村井サンと麻里さんだけだったらまだ話せば通じると言うか、ノサカの悪質な遅刻癖のことも知ってるから諦めてもらえると言うか。だけど、今日はそのお2人の他にダイさんも来るという風に聞いている。これは非常にマズい。
ダイさんはうちと圭斗が1年生の時の4年生で、麻里さんの彼氏でもある。当時の4年生の先輩は引退してからもサークルによく遊びに来ていたし、ダイさんに関しては大学を卒業してからもちょこちょこ来てたから、年の差の割に身近な先輩だなという風に感じる。
でも、いくら身近で優しい先輩だからと言って、時間に遅れるのはよろしくない。しかもダイさんとノサカは学年にして4コ差、つまり入れ替わりの学年で面識もない。今日初めて会うのにいきなり遅刻とか、最悪じゃないか。うちだったら何だコイツってなる。
自分のことじゃないのに気が気じゃない。ダイさんに失礼があったらどうしようとか。まあ、その失礼っていうのは大体が遅刻という単語で片付けられるんだけれども。ったく、早く来いあのバカ。うちとお前で1時間半だと、かなりギリギリなんだぞ。
「はーっ……」
――とか何とか心配している間に15分ほどが過ぎていた。これはもう5時終わりはダメそうだな。良い知らせでも悪い知らせでも、予定が変わるなら早く伝えた方がいい。うちはスマホを取り出し圭斗にメールを打つ。LINEの通知がないか確認したけど、ノサカからの連絡はなし。ふざけてる。意味がわからない。
「はいもしもし」
『菜月さん、相当ダメそうな感じかな?』
「まあ、うちが普通に電話に出てる時点でお察しいただければと」
『火曜ペアの待ち合わせ時刻は暗黙の午後2時だったよね』
「ですね」
『もう4時前じゃないか』
「通・常・運・転、です!」
『また雑記帳を買いに行かなくちゃいけないような感じかな』
「あー……春学期のうちは大丈夫だろ。昼放送も今日を含めてあと2回だ」
『一応言っておくけど、待てても最大6時前までだよ』
「はい、わかってます」
『まあ、菜月さんが悪くないのはわかってるから、あまり菜月さんに強く言っても無意味ではあるし申し訳なくはあるんだけど』
「はは……」
本当にな。うちはきちんと1時50分にはサークル室に来てるんだ。何かの間違いでノサカが2時15分くらいに来るかもしれないと毎週思うけど、それを裏切られ続けること早n回目。いや、何だかんだコイツがまともに来る事はないともわかっているから、裏切られてはいないな。
電話越しに圭斗も「やっぱりか」という空気を隠さないし、ファンフェスという大舞台でもやらかしやがったからこの程度のことではもう驚かないのだろう。時間に厳格な方のうちがノサカのそれに関しては30分くらいまでなら0分にも等しいと言えるようになった気持ちも察していただきたい。
「今日って村井サンと麻里さんと、ダイさんでいいんだよな」
『そうだね。おじちゃんとお麻里様とダイさんだね。ああ、そうだ。ダイさんの希望でミートワンに行くことになってるんだ。僕たちは昨日のレース後にも行ってるから2日連続になるけど構わないかな』
「ああ、大丈夫だ。ダイさんが行きたいって言うならそれが優先だし、うちは同じものを毎日食べるのも平気だ。あのバカは……まあ、口の中の傷が回復してるかどうかだろうけど、まあ食べるだろ」
『何やかんや昨日もめちゃ食ってたから大丈夫だろアイツは』
「それより圭斗、お前は大丈夫なのか。昨日は胃もたれしてたような感じだけど。やめてくれよ、車の中がうまい棒臭いとか」
『その辺はご心配なく。それから、僕も今日はちゃんと肉を食べるモチベーションがあるし、そのようにフィジカルも整えているよ』
「何を大袈裟な」
そう、昨日この部屋で行われていたうまい棒レースとかいうしょうもない行事の尾を引いてる奴が何人かいるんだ。硬いたこ焼き味を食べ続けた結果口の中がズタズタになったノサカに、53本のうまい棒を食べた結果何か気持ち悪くてサラダしか食べられなかった圭斗だ。うちはレース後も普通にお肉食べました。……とか何とか喋っていると、ドタドタとこちらに近付く人の気配。
「菜月先輩申し訳ございません!」
「遅いぞノサカ! ……というワケだから、また後で。5時半までには終わらせる」
『ん、了解。ではそのように迎えに行くよ』
「ノサカ、5時半までに終わらせるぞ。ったく、この後で用事があるのを忘れてるワケじゃないよな」
「しっかりと覚えております…!」
「さ、そんなことを言ってる時間も勿体ない。こっちの都合で先方を待たせるワケには行かないんだ」
「はい、ではさっそく準備をします」
現在時刻は4時前。結局リミットは1時間半。まあ、やれるか…? 今日は本当に遅れるワケにはいかないんだ。
end.
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うまい棒レースの翌日、昼放送の収録は通常通り行うナツノサです。いや、ノサカまだ来てないんですけど。
この話のポイントは数年前からスマホを使うようになった菜月さんですが、LINEはまだ限られた人としか交換してないというところですね
ちなみにお肉を食べに行っているパートは最近作った短編ページNOVELSにあるよ!
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今日の夜には、圭斗と約束が入っている。厳密には「たまには先輩たちと食事でもどうかな、昼放送の収録の後だし対策委員の話も聞かせたいから野坂も一緒に連れて行こう」という感じの食事会の予定だ。だけど、困ったことが一点。
現在時刻が3時半。圭斗には5時ごろには終わらないかなという風に待ち合わせ時間の目安を伝えていたのだけど、この調子で行くと5時には毛頭終わらないだろうなという予感しかしない。と言うか、収録後に出掛けるからっていうのはノサカにも伝わってるのに通常運転しやがって。
今回の食事会に来られる先輩が村井サンと麻里さんだけだったらまだ話せば通じると言うか、ノサカの悪質な遅刻癖のことも知ってるから諦めてもらえると言うか。だけど、今日はそのお2人の他にダイさんも来るという風に聞いている。これは非常にマズい。
ダイさんはうちと圭斗が1年生の時の4年生で、麻里さんの彼氏でもある。当時の4年生の先輩は引退してからもサークルによく遊びに来ていたし、ダイさんに関しては大学を卒業してからもちょこちょこ来てたから、年の差の割に身近な先輩だなという風に感じる。
でも、いくら身近で優しい先輩だからと言って、時間に遅れるのはよろしくない。しかもダイさんとノサカは学年にして4コ差、つまり入れ替わりの学年で面識もない。今日初めて会うのにいきなり遅刻とか、最悪じゃないか。うちだったら何だコイツってなる。
自分のことじゃないのに気が気じゃない。ダイさんに失礼があったらどうしようとか。まあ、その失礼っていうのは大体が遅刻という単語で片付けられるんだけれども。ったく、早く来いあのバカ。うちとお前で1時間半だと、かなりギリギリなんだぞ。
「はーっ……」
――とか何とか心配している間に15分ほどが過ぎていた。これはもう5時終わりはダメそうだな。良い知らせでも悪い知らせでも、予定が変わるなら早く伝えた方がいい。うちはスマホを取り出し圭斗にメールを打つ。LINEの通知がないか確認したけど、ノサカからの連絡はなし。ふざけてる。意味がわからない。
「はいもしもし」
『菜月さん、相当ダメそうな感じかな?』
「まあ、うちが普通に電話に出てる時点でお察しいただければと」
『火曜ペアの待ち合わせ時刻は暗黙の午後2時だったよね』
「ですね」
『もう4時前じゃないか』
「通・常・運・転、です!」
『また雑記帳を買いに行かなくちゃいけないような感じかな』
「あー……春学期のうちは大丈夫だろ。昼放送も今日を含めてあと2回だ」
『一応言っておくけど、待てても最大6時前までだよ』
「はい、わかってます」
『まあ、菜月さんが悪くないのはわかってるから、あまり菜月さんに強く言っても無意味ではあるし申し訳なくはあるんだけど』
「はは……」
本当にな。うちはきちんと1時50分にはサークル室に来てるんだ。何かの間違いでノサカが2時15分くらいに来るかもしれないと毎週思うけど、それを裏切られ続けること早n回目。いや、何だかんだコイツがまともに来る事はないともわかっているから、裏切られてはいないな。
電話越しに圭斗も「やっぱりか」という空気を隠さないし、ファンフェスという大舞台でもやらかしやがったからこの程度のことではもう驚かないのだろう。時間に厳格な方のうちがノサカのそれに関しては30分くらいまでなら0分にも等しいと言えるようになった気持ちも察していただきたい。
「今日って村井サンと麻里さんと、ダイさんでいいんだよな」
『そうだね。おじちゃんとお麻里様とダイさんだね。ああ、そうだ。ダイさんの希望でミートワンに行くことになってるんだ。僕たちは昨日のレース後にも行ってるから2日連続になるけど構わないかな』
「ああ、大丈夫だ。ダイさんが行きたいって言うならそれが優先だし、うちは同じものを毎日食べるのも平気だ。あのバカは……まあ、口の中の傷が回復してるかどうかだろうけど、まあ食べるだろ」
『何やかんや昨日もめちゃ食ってたから大丈夫だろアイツは』
「それより圭斗、お前は大丈夫なのか。昨日は胃もたれしてたような感じだけど。やめてくれよ、車の中がうまい棒臭いとか」
『その辺はご心配なく。それから、僕も今日はちゃんと肉を食べるモチベーションがあるし、そのようにフィジカルも整えているよ』
「何を大袈裟な」
そう、昨日この部屋で行われていたうまい棒レースとかいうしょうもない行事の尾を引いてる奴が何人かいるんだ。硬いたこ焼き味を食べ続けた結果口の中がズタズタになったノサカに、53本のうまい棒を食べた結果何か気持ち悪くてサラダしか食べられなかった圭斗だ。うちはレース後も普通にお肉食べました。……とか何とか喋っていると、ドタドタとこちらに近付く人の気配。
「菜月先輩申し訳ございません!」
「遅いぞノサカ! ……というワケだから、また後で。5時半までには終わらせる」
『ん、了解。ではそのように迎えに行くよ』
「ノサカ、5時半までに終わらせるぞ。ったく、この後で用事があるのを忘れてるワケじゃないよな」
「しっかりと覚えております…!」
「さ、そんなことを言ってる時間も勿体ない。こっちの都合で先方を待たせるワケには行かないんだ」
「はい、ではさっそく準備をします」
現在時刻は4時前。結局リミットは1時間半。まあ、やれるか…? 今日は本当に遅れるワケにはいかないんだ。
end.
++++
うまい棒レースの翌日、昼放送の収録は通常通り行うナツノサです。いや、ノサカまだ来てないんですけど。
この話のポイントは数年前からスマホを使うようになった菜月さんですが、LINEはまだ限られた人としか交換してないというところですね
ちなみにお肉を食べに行っているパートは最近作った短編ページNOVELSにあるよ!