2019(02)
■さあ飲み干せカンパイ!
++++
「アインプロージット! スガ! 俺たちはオクトーバーフェストに行くべきだ!」
「カン、突然どうした…?」
「泰稚さん、今花栄でオクトーバーフェストやってるじゃないですか。昨日カンさんその前を通りがかったんですって。そしたらドイツの楽団の演奏ステージってのがやってたとかで」
「キーボードとアコーディオンがいたんだよ~! もっと近くで見たいしかんぱーいってやりたいじゃねーかよー!」
「相変わらずわかりやすいなお前は」
菅野班のブースに入ると、どうやらカンが俺を待っていたらしい。その手にはオクトーバーフェストのパンフレット。確かに花栄のど真ん中でやっているという話は聞いていたけどまさかそのお誘いが来るとは。と言うかカンの動機がまたわかりやすいと言うかあからさまと言うか。
カンは一緒に街を歩いていても、ストリートバンドの演奏だとか野外イベントの音楽ステージにはほぼ100%足を止める。そこにどんな音があって、それがどんな音楽になっているのかということを日々吸収して自分の作る音に生かそうとしてるんだ。あとは単純に音楽のある空間が好きなんだ。
俺とカンが組んでいるCONTINUEというバンドにしてもそうだし、部活でやっている菅野班のステージにしても音楽が軸になっている。そして今は丸の池ステージに向けて練習の日々だ。俺たちは他の班とは決定的にスタイルが違うから、ミーティングルームのブースで大人しくしていることはほとんどなく、どこかで音を鳴らしている。
「飲みながら音楽を楽しむとか最高じゃねーかよースガ~、行こうぜ~!」
「でも、このビール? ちょっと見ただけでもすごく高くないか? ちょっと飲み食いするだけでどんだけ金が飛んでくかって考えたら」
「平日に行けば3種1400円の飲み比べセットもあるし、それを分けたらいいんじゃね? な~あ~、ス~ガ~! ほらコバ、お前も説得しろ!」
「えっ、俺も行きたいことになってるんすか!?」
「お前も勉強しろよ!」
「スガ、無理強いはするな。ヤス、嫌だったり都合が悪かったりしたら普通に断っていいからな」
カンから悪絡みをされているのは菅野班の2年生ミキサー・小林泰弘。俺とは高校からの付き合いだ。ちなみに菅野班のステージではベースを担当している。そんな感じで菅野班の班員は実質的バンドメンバーみたいなところがあるから、カンからのこういう誘いは日常茶飯事だ。
「別に嫌ってワケじゃないですよ。むしろ面白そうだなとは思いますけどカンさんの熱にちょっと引いてるだけっす」
「うるせー! もう日がないの! 早く行かなきゃ終わっちまうの!」
「はいはいわかったわかった。でもステージの練習もあるし、テストも近いし。あんまり変な飲み方はしないこと」
「オッケー! それじゃあ行こうぜ!」
「いや、まさか今からじゃないだろ?」
「だからもう日がないんだって。ちなみに9時までだからな」
「――ってカンさんは言ってますけど泰稚さん大丈夫なんすか、SDXの方でもいろいろ押してますよね」
「まあ、俺は飲まなきゃ大丈夫だと思うから」
余談だけど、ヤスはSDXの方でも俺のアシスタントをしてくれている。実際に表に出て実況をすることはないけど、俺の組んだシステムのテストプレイをしてくれたり、動画内でカメラ役をやってくれることもある。時には、班でもSDXでもスケジュールを管理してくれてたり。名実ともに俺のマネージャーと言うか。本当に感謝です。
オクトーバーフェストに行くとすれば、今日の練習をどこまでにするかや今日の夜に予定していた作業をどうするかという調整が必要になる。俺とヤスがその調整をする裏で、カンは即興で音を掻き鳴らしている。もちろん。何がどこで使えるかはわからないので録音をしていることだろう。
「まあ、使えて4000円ってトコだな~。数量限定みたいだけど、飲み比べセットって何時くらいまで残ってんだろ」
「俺はフードを楽しむことにしよう」
「スガ、お前マジメかよ」
「納期を守らないとプロさんとソルさんに迷惑かかるんだよ」
「お前も大変だなー、俺なんか「これ使ってちょー」っつって好き勝手に曲とか効果音投げてるだけだもんな」
「泰稚さん、生ハムとか美味そうじゃないすか? シェアしましょうよ」
「いいね。ウインナーも食べたいな」
「あっ、一緒に食べましょ」
「何だよお前らー! 俺も混ぜろ! ちなみに俺はチーズが食べたいです!」
オクトーバーフェストに誘われた本題が一体何なのかはうやむやになってしまっているけど、どうせ行くなら雰囲気を楽しみたい。音楽ステージで勉強したいというのも、滅多に飲めないビールやフードを味わいたいっていうのも目的ではあるけど。いろいろな物に縛られてるから、束の間の休息でもいいだろう。
「さ、この後楽しむためにも今はしっかり練習だ」
「はーい」
「……ってスガお前マジメかよ!」
「遊ぶならやることをやってから遊ぶ。そうじゃないと後に響くからな」
「そうっすよカンさん」
「ったくよー、まるで俺が不真面目みたいじゃねーかよー」
「誰もカンさんが不真面目とは言ってないじゃないですか」
「お前らが真面目すぎるから相対的に俺が不真面目に見えんの」
end.
++++
菅野班のちょっとした日常の話だよ! 多分カンDが普段からぴょんぴょん班を盛り立ててるんだろうな。
そしてここでふえるなのすぱんえっくす。スガPの右腕的存在のマネージャー、コバヤス。CONTINUEではないらしいけど自身もベーシストである。
コバヤスと他の部員の関係とか、星ヶ丘の外にも繋がりがあるのかなど、それ次第によってはまたナノスパが面白くなりそうですね
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「アインプロージット! スガ! 俺たちはオクトーバーフェストに行くべきだ!」
「カン、突然どうした…?」
「泰稚さん、今花栄でオクトーバーフェストやってるじゃないですか。昨日カンさんその前を通りがかったんですって。そしたらドイツの楽団の演奏ステージってのがやってたとかで」
「キーボードとアコーディオンがいたんだよ~! もっと近くで見たいしかんぱーいってやりたいじゃねーかよー!」
「相変わらずわかりやすいなお前は」
菅野班のブースに入ると、どうやらカンが俺を待っていたらしい。その手にはオクトーバーフェストのパンフレット。確かに花栄のど真ん中でやっているという話は聞いていたけどまさかそのお誘いが来るとは。と言うかカンの動機がまたわかりやすいと言うかあからさまと言うか。
カンは一緒に街を歩いていても、ストリートバンドの演奏だとか野外イベントの音楽ステージにはほぼ100%足を止める。そこにどんな音があって、それがどんな音楽になっているのかということを日々吸収して自分の作る音に生かそうとしてるんだ。あとは単純に音楽のある空間が好きなんだ。
俺とカンが組んでいるCONTINUEというバンドにしてもそうだし、部活でやっている菅野班のステージにしても音楽が軸になっている。そして今は丸の池ステージに向けて練習の日々だ。俺たちは他の班とは決定的にスタイルが違うから、ミーティングルームのブースで大人しくしていることはほとんどなく、どこかで音を鳴らしている。
「飲みながら音楽を楽しむとか最高じゃねーかよースガ~、行こうぜ~!」
「でも、このビール? ちょっと見ただけでもすごく高くないか? ちょっと飲み食いするだけでどんだけ金が飛んでくかって考えたら」
「平日に行けば3種1400円の飲み比べセットもあるし、それを分けたらいいんじゃね? な~あ~、ス~ガ~! ほらコバ、お前も説得しろ!」
「えっ、俺も行きたいことになってるんすか!?」
「お前も勉強しろよ!」
「スガ、無理強いはするな。ヤス、嫌だったり都合が悪かったりしたら普通に断っていいからな」
カンから悪絡みをされているのは菅野班の2年生ミキサー・小林泰弘。俺とは高校からの付き合いだ。ちなみに菅野班のステージではベースを担当している。そんな感じで菅野班の班員は実質的バンドメンバーみたいなところがあるから、カンからのこういう誘いは日常茶飯事だ。
「別に嫌ってワケじゃないですよ。むしろ面白そうだなとは思いますけどカンさんの熱にちょっと引いてるだけっす」
「うるせー! もう日がないの! 早く行かなきゃ終わっちまうの!」
「はいはいわかったわかった。でもステージの練習もあるし、テストも近いし。あんまり変な飲み方はしないこと」
「オッケー! それじゃあ行こうぜ!」
「いや、まさか今からじゃないだろ?」
「だからもう日がないんだって。ちなみに9時までだからな」
「――ってカンさんは言ってますけど泰稚さん大丈夫なんすか、SDXの方でもいろいろ押してますよね」
「まあ、俺は飲まなきゃ大丈夫だと思うから」
余談だけど、ヤスはSDXの方でも俺のアシスタントをしてくれている。実際に表に出て実況をすることはないけど、俺の組んだシステムのテストプレイをしてくれたり、動画内でカメラ役をやってくれることもある。時には、班でもSDXでもスケジュールを管理してくれてたり。名実ともに俺のマネージャーと言うか。本当に感謝です。
オクトーバーフェストに行くとすれば、今日の練習をどこまでにするかや今日の夜に予定していた作業をどうするかという調整が必要になる。俺とヤスがその調整をする裏で、カンは即興で音を掻き鳴らしている。もちろん。何がどこで使えるかはわからないので録音をしていることだろう。
「まあ、使えて4000円ってトコだな~。数量限定みたいだけど、飲み比べセットって何時くらいまで残ってんだろ」
「俺はフードを楽しむことにしよう」
「スガ、お前マジメかよ」
「納期を守らないとプロさんとソルさんに迷惑かかるんだよ」
「お前も大変だなー、俺なんか「これ使ってちょー」っつって好き勝手に曲とか効果音投げてるだけだもんな」
「泰稚さん、生ハムとか美味そうじゃないすか? シェアしましょうよ」
「いいね。ウインナーも食べたいな」
「あっ、一緒に食べましょ」
「何だよお前らー! 俺も混ぜろ! ちなみに俺はチーズが食べたいです!」
オクトーバーフェストに誘われた本題が一体何なのかはうやむやになってしまっているけど、どうせ行くなら雰囲気を楽しみたい。音楽ステージで勉強したいというのも、滅多に飲めないビールやフードを味わいたいっていうのも目的ではあるけど。いろいろな物に縛られてるから、束の間の休息でもいいだろう。
「さ、この後楽しむためにも今はしっかり練習だ」
「はーい」
「……ってスガお前マジメかよ!」
「遊ぶならやることをやってから遊ぶ。そうじゃないと後に響くからな」
「そうっすよカンさん」
「ったくよー、まるで俺が不真面目みたいじゃねーかよー」
「誰もカンさんが不真面目とは言ってないじゃないですか」
「お前らが真面目すぎるから相対的に俺が不真面目に見えんの」
end.
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菅野班のちょっとした日常の話だよ! 多分カンDが普段からぴょんぴょん班を盛り立ててるんだろうな。
そしてここでふえるなのすぱんえっくす。スガPの右腕的存在のマネージャー、コバヤス。CONTINUEではないらしいけど自身もベーシストである。
コバヤスと他の部員の関係とか、星ヶ丘の外にも繋がりがあるのかなど、それ次第によってはまたナノスパが面白くなりそうですね
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