2019(02)
■店長の貫禄と安心感
++++
「君たち、そろそろ大学祭に向けても動いて行かなきゃいけないんだよ」
今日も今日とて地下で窓もないスタジオは季節感もない。一応冷房はガンガンにかかっているけど、そんな季節から秋の大学祭に向けて考えていかなきゃいけないらしい。てっきり今日は班での活動がメインだと思ってたから、ゼミの前半が大学祭の話に費やされることにビックリ。
緑ヶ丘大学社会学部メディア文化学科佐藤久ゼミは、自称ブロック一のサブカル・メディアゼミ。お昼にはセンタービルに構えられたガラス張りのラジオブースで番組をやっていて華がある。でも勉強もしっかりと。フィールドワークもやるし座学もする。レポートを書く量だって凄まじい。
フィールドワークに座学と勉強もするけど、イベント事に対する気合もまあ凄かったりする。ヒゲがお祭り好きだからっていうのもあるみたい。それから、大学祭実行委員からのブース説明会みたいな日程も出され始めてて、実際動き出すのがこれくらいの時期かららしい。
「大学祭では毎年学年ごとに食品ブースを出すことになってるんだよ。その他にもメディア表現技法とかオーディオ文化論の授業で作った作品の上映会もあるからね。あっ、食品ブースは店長を1人出してもらって、その人が中心になって進めて行ってね。今日決めるのは店長と、何を出したいか。それじゃああとよろしく」
そう言ってヒゲはスタジオの奥の奥にある防音室へと引っ込んで行った。こうやってヒゲが奥に籠ってしまうと、いよいよ話し合いがナチュラルに桃華を中心に動き始める。でも、大学祭のブースか。MBCCも去年の感じだと結構てんこ盛りって感じだったから、今年はさらに忙しくなるんだね。
「一応、一人一幹事のルールに則る感じで、こないだのバーベキューで幹事をやってくれた小田ちゃん以外で誰か店長やりますって人」
佐藤ゼミには「一人一幹事制」というルールがある。2年生から4年生までの間に1人1回はイベントの幹事や何かで中心になりなさいよという決まり。早く済ませておけば後々楽になるそうだけど、実際ゼミの活動への積極度なんかは学年が上がれば固定化して4年生になる頃には決まった人が運営してそうですよねー。
それはそうと、アタシもそろそろ幹事やっときたいですよねー。何かこの一幹事制ってMBCCのミキサーは特例で免除されるらしいけど、アタシはアナウンサーだからその特例が適用されないし。でもミキサーだったとしても何をさせられるかわかったモンじゃないからみんなと同じ扱いで良かったと思う。
「桃華、具体的に店長って何の仕事するの? ブース説明会とかに出るとか?」
「そんな感じになるんじゃないかな。ブース説明会に出て、こういう場での議事進行をしたりするとか? 正直どうしてアタシが今こうやって司会してるのかが謎だから早く誰か名乗り出てください」
「ホントそれ。ナチュラルにやってるけど謎だわ」
「姐御姐御ー、ゆーて店長やからって自分で全部やらなアカンワケでもないんやろ?」
「むしろみんなにバランスよく均等に仕事を配分するのが店長の仕事だとアタシは思う。メニュー開発とか看板製作、あとはお金の管理のことなんかをこう、スケジュール管理したり進捗を把握したり?」
「じゃあ俺店長やるわ」
「平田君が立候補してくれましたけど、他に店長やりたい人いますか。はい、他に候補がいないようなので店長は平田君にお願いします」
お願いしまーすとみんなからの拍手で店長が迎えられ、司会も桃華からひらっちゃんに引き継がれる。マイクを受け渡してひらっちゃんがホワイトボードの前に立ってる姿を見ると、多分元々の風貌なんだろうね、ガタイが良くて黒縁メガネ、それから声の要素もあるんだろうね。ザ・店長って感じ。
ひらっちゃんとはまだ冬の合宿とバーベキュー、それからそれから回数を重ねてもいないゼミで絡んでるくらいだからはっきりこうだって断言は出来ないけど、何かこう、従業員の話とかめっちゃ聞いてくれそうな感じがする。安心感と言うか包容力的な? よくわかんないけど。
「えー、店長の平田です。さっそくですけどブースで何出したいとかある人はどんどん出してってください。千葉ちゃん何かない?」
「えっ、何でアタシピンポイントで聞かれた?」
「食品のことなら千葉ちゃんに聞いとけば間違いないかなーて」
「ひらっちゃん、果林は食べる専だから」
「失礼なー! 作ることも出来るからね! むしろたくさん作るのは得意!」
「おっ、ええやん。料理出来るって言っても大抵の人は精々一世帯分くらいまでやでな。その点千葉ちゃんの食べる量は半端ないし作る量も半端ないんやろ。だから大学祭仕様にはいいかもしれん」
「……悪いことは言わないから果林を食品ブースに近付けない方がいい」
「そんなに見境なく食べないからね! えっと、メニューだよね? 食べ歩きしやすいのがいいな、ワンハンド系って言うか」
「思ったよりまともな意見が出てビックリした」
「ホンマに」
こないだのバーベキューで鮮烈な印象(アタシ的には通常運転だけど)を植え付けてしまったらしく、ご飯のことならアタシに、と話が回ってくるようになってしまった。まあ、いいんだけど。って言うか食料はいくらあっても足りないし。でもせっかく食べるんならただ儲けを出すだけよりも美味しくなくちゃ。
「簡単で安くて片手で持ち歩けてってなると、なかなか条件は絞られてくるぞ~」
「店長、食品のリサーチはアタシに任せてみない? そこにパソコンあるしさ、4ヶ月先に何が流行るか見てみようよ」
「姐御、それでええ?」
「人員配置については店長にお任せしまーす」
end.
++++
公式学年+1年の時間軸では既に店長の愛称で親しまれているひらっちゃんですが、今回はその経緯を。
何かここまできたら大学祭でも店長と果林がきゃっきゃしててほしいし、なんなら一緒に食べ歩きしながら休憩時間を過ごしてて欲しい。かわいいコンビは正義。
って言うか本当に人数ある程度揃ったら普通に公式の時間軸でもある程度話になるのが楽しいっすね
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「君たち、そろそろ大学祭に向けても動いて行かなきゃいけないんだよ」
今日も今日とて地下で窓もないスタジオは季節感もない。一応冷房はガンガンにかかっているけど、そんな季節から秋の大学祭に向けて考えていかなきゃいけないらしい。てっきり今日は班での活動がメインだと思ってたから、ゼミの前半が大学祭の話に費やされることにビックリ。
緑ヶ丘大学社会学部メディア文化学科佐藤久ゼミは、自称ブロック一のサブカル・メディアゼミ。お昼にはセンタービルに構えられたガラス張りのラジオブースで番組をやっていて華がある。でも勉強もしっかりと。フィールドワークもやるし座学もする。レポートを書く量だって凄まじい。
フィールドワークに座学と勉強もするけど、イベント事に対する気合もまあ凄かったりする。ヒゲがお祭り好きだからっていうのもあるみたい。それから、大学祭実行委員からのブース説明会みたいな日程も出され始めてて、実際動き出すのがこれくらいの時期かららしい。
「大学祭では毎年学年ごとに食品ブースを出すことになってるんだよ。その他にもメディア表現技法とかオーディオ文化論の授業で作った作品の上映会もあるからね。あっ、食品ブースは店長を1人出してもらって、その人が中心になって進めて行ってね。今日決めるのは店長と、何を出したいか。それじゃああとよろしく」
そう言ってヒゲはスタジオの奥の奥にある防音室へと引っ込んで行った。こうやってヒゲが奥に籠ってしまうと、いよいよ話し合いがナチュラルに桃華を中心に動き始める。でも、大学祭のブースか。MBCCも去年の感じだと結構てんこ盛りって感じだったから、今年はさらに忙しくなるんだね。
「一応、一人一幹事のルールに則る感じで、こないだのバーベキューで幹事をやってくれた小田ちゃん以外で誰か店長やりますって人」
佐藤ゼミには「一人一幹事制」というルールがある。2年生から4年生までの間に1人1回はイベントの幹事や何かで中心になりなさいよという決まり。早く済ませておけば後々楽になるそうだけど、実際ゼミの活動への積極度なんかは学年が上がれば固定化して4年生になる頃には決まった人が運営してそうですよねー。
それはそうと、アタシもそろそろ幹事やっときたいですよねー。何かこの一幹事制ってMBCCのミキサーは特例で免除されるらしいけど、アタシはアナウンサーだからその特例が適用されないし。でもミキサーだったとしても何をさせられるかわかったモンじゃないからみんなと同じ扱いで良かったと思う。
「桃華、具体的に店長って何の仕事するの? ブース説明会とかに出るとか?」
「そんな感じになるんじゃないかな。ブース説明会に出て、こういう場での議事進行をしたりするとか? 正直どうしてアタシが今こうやって司会してるのかが謎だから早く誰か名乗り出てください」
「ホントそれ。ナチュラルにやってるけど謎だわ」
「姐御姐御ー、ゆーて店長やからって自分で全部やらなアカンワケでもないんやろ?」
「むしろみんなにバランスよく均等に仕事を配分するのが店長の仕事だとアタシは思う。メニュー開発とか看板製作、あとはお金の管理のことなんかをこう、スケジュール管理したり進捗を把握したり?」
「じゃあ俺店長やるわ」
「平田君が立候補してくれましたけど、他に店長やりたい人いますか。はい、他に候補がいないようなので店長は平田君にお願いします」
お願いしまーすとみんなからの拍手で店長が迎えられ、司会も桃華からひらっちゃんに引き継がれる。マイクを受け渡してひらっちゃんがホワイトボードの前に立ってる姿を見ると、多分元々の風貌なんだろうね、ガタイが良くて黒縁メガネ、それから声の要素もあるんだろうね。ザ・店長って感じ。
ひらっちゃんとはまだ冬の合宿とバーベキュー、それからそれから回数を重ねてもいないゼミで絡んでるくらいだからはっきりこうだって断言は出来ないけど、何かこう、従業員の話とかめっちゃ聞いてくれそうな感じがする。安心感と言うか包容力的な? よくわかんないけど。
「えー、店長の平田です。さっそくですけどブースで何出したいとかある人はどんどん出してってください。千葉ちゃん何かない?」
「えっ、何でアタシピンポイントで聞かれた?」
「食品のことなら千葉ちゃんに聞いとけば間違いないかなーて」
「ひらっちゃん、果林は食べる専だから」
「失礼なー! 作ることも出来るからね! むしろたくさん作るのは得意!」
「おっ、ええやん。料理出来るって言っても大抵の人は精々一世帯分くらいまでやでな。その点千葉ちゃんの食べる量は半端ないし作る量も半端ないんやろ。だから大学祭仕様にはいいかもしれん」
「……悪いことは言わないから果林を食品ブースに近付けない方がいい」
「そんなに見境なく食べないからね! えっと、メニューだよね? 食べ歩きしやすいのがいいな、ワンハンド系って言うか」
「思ったよりまともな意見が出てビックリした」
「ホンマに」
こないだのバーベキューで鮮烈な印象(アタシ的には通常運転だけど)を植え付けてしまったらしく、ご飯のことならアタシに、と話が回ってくるようになってしまった。まあ、いいんだけど。って言うか食料はいくらあっても足りないし。でもせっかく食べるんならただ儲けを出すだけよりも美味しくなくちゃ。
「簡単で安くて片手で持ち歩けてってなると、なかなか条件は絞られてくるぞ~」
「店長、食品のリサーチはアタシに任せてみない? そこにパソコンあるしさ、4ヶ月先に何が流行るか見てみようよ」
「姐御、それでええ?」
「人員配置については店長にお任せしまーす」
end.
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公式学年+1年の時間軸では既に店長の愛称で親しまれているひらっちゃんですが、今回はその経緯を。
何かここまできたら大学祭でも店長と果林がきゃっきゃしててほしいし、なんなら一緒に食べ歩きしながら休憩時間を過ごしてて欲しい。かわいいコンビは正義。
って言うか本当に人数ある程度揃ったら普通に公式の時間軸でもある程度話になるのが楽しいっすね
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