2019(02)
■内でも外でも積極化!
++++
「おはようございまーす」
「ますー」
「おっ、あやめ、いいトコに来た。かんなもおはよーさん」
「どうしたんですか?」
「夏合宿の班割りが出たんだと」
昨日つばみから、夏合宿の班割りっていうリストが送られてきた。印刷するなり関係ある子に口頭で伝えるなりして何かしとけって言われたから、それを印刷してホワイトボードに貼り出す。AKBCから夏合宿に出るのは俺とあやめの2人だけだけど、それでも青敬からなら毎年そんなモンみたいだ。
俺は向島のヒロが班長の7班に入っていた。ヒロが班長っていう時点で、何となくだけど他の対策委員のメンツと比べて大丈夫かよって感じもした。それは対策委員も織り込み済みで、副班長の直クンがすげーしっかりしてるからプラマイゼロだろうと。
「あっ、夏合宿の班だったら昨日班長さんから挨拶のLINEがありましたよ」
「えっ、他の班ってそんなんあんの、班長からの挨拶とかマジパねえ」
「ハマちゃん先輩の班はなかったですか?」
「ないない。まあ、そういう律儀な班長なのかもしれないな!」
手元のリストによれば、あやめは野坂が班長の5班に配属されたっぽい。野坂とは講習会とつばみの誕生会で会ったくらいだけど、対策委員の議長もやってるような奴なら班が決まりましたみたいな挨拶をしてきても不思議じゃない。と言うか挨拶をするのが普通だとしても、ヒロならそれを端折っても不思議じゃないかな、とも。
「挨拶と一緒に、顔合わせの日程を決めたいから都合のいい日を教えてくださいってあったんですよ」
「……やっぱ挨拶いるじゃねーか! えっ、つかウチの班いつ顔合わせすんの!?」
「知らないですよ。それはそうと、私、初心者講習会に出てないじゃないですか。今更ですけど大丈夫かなってちょっと思いますよね」
「夏合宿の参加者の中にも講習会に出てない奴はちょこちょこいるらしいから大丈夫だ」
「あっ、そうなんですね」
正直、あやめがインターフェイスの活動に出るって聞いた時、めっちゃ驚いたよな。ヒデさんも最近は忙しくてサークルに来ない日があってどう考えてもインターフェイスとの接点が少ないのに、俺が講習会に出てこんなことやってきたーって見せびらかした情報だけで今に至ってんだろ? あやめの決断力パねえ。
「班長の野坂ってのが対策委員の議長なんだけど、あやめのことはラジオの基礎やミキサーの技術的なこともひっくるめてちゃんと面倒見るっつってたから安心しとけな」
「至れり尽くせりです」
「ホントにな」
「議長さんだけあって責任感が強めですね」
「まあ、俺からも改めて頼んどくしな」
「お願いします」
「あやめはよくやるよね、インターフェイスなんて」
「そーいやかんな、お前は出ないんだな」
「出ないですよ。映像作品を作るワケじゃないですからね」
いつも2人で行動している印象のある諏訪姉妹だったけど、インターフェイスの活動に対するスタンスは正反対とも言えそうだ。でも、かんなの言ってることも間違いじゃない。俺たちAKBCは映像作品を作るサークルであって、ラジオの活動はいわば寄り道とか課外活動だ。
俺がインターフェイスに出るようになったきっかけと言うか、動機か。それもぶっちゃけ「友達が欲しい」とか「わいわい活動がしたい」っていう感じで不純っちゃ不純だ。AKBCでの作品制作だけに向き合うなら、インターフェイスの活動に出る必要性はあまりない。
「そういやあやめ、どうしてインターフェイスの活動に出ようと思ったんだ?」
「映像作品を作るっていう点では直接的じゃないかもですけど、音を扱うという意味では全く関係なくもないかなって。いろんな表現方法があると思うのでそれを勉強しようと。それから、いろんな人と出会いたいなと思ったんですよ」
「マジわかる」
「バイト先の先輩も楽しいって言ってたんで、それなら1回やってみようかなーって」
「あー、何かお前らのバイト先の先輩がインターフェイスの人なんだっけ?」
「はい、星ヶ丘の4年生の先輩ですよ」
「ですー」
そう聞いて、ポンッと朝霞さんと洋平さんの顔が思い浮かんだ。そーいやあの人らも星ヶ丘の人だったなって。こないだつばみが言ってたけど、星ヶ丘の放送部は規模もでけーし活動がステージメインってこともあってインターフェイスの活動に出て来るのは精々部員全体の8分の1とかだそうだ。
対策委員とか定例会っていうインターフェイスの組織に名を連ねるような人になると、星ヶ丘の部活では逆に立場がないと言うか、まあ何か余所は余所でいろんなしがらみとかがあるらしい。流刑地って呼ばれて部長から嫌がらせをされたりするような班もあるとかないとか。
必ずしもラジオを主として活動しているワケじゃない大学から、わざわざ表に出て来るような俺だとか星ヶ丘の人らはよほどの変わり者なのかと。俺がどう思われるかは別にいいけど、少なくとも朝霞さんと洋平さんは悪い人じゃなかった。
「じゃあ、お前らのその先輩って人もきっといい人だろうな!」
「……なんでそうなるんです? 確かにいい人ですけど」
「ですー」
「野生のカンだ! あと、俺が星ヶ丘の3年生の先輩に良くしてもらってインターフェイスに出始めたってのもある」
「ハマちゃん先輩も星ヶ丘経由だったんですね」
「ヒロさんのお見舞いに行ったときになー」
「あれっ、そう言えば長野先輩てその後どうなったんですか? 入院したところまでは聞きましたけど」
「ああ、2週間ほど前に退院した。今は自宅療養してるって」
映像制作も大事だけど、それ以外の活動をやるなって言われたワケじゃない。やりたいと思ったことはやれるうちにならないと、いつやれなくなるかもわからない。それなら動けるうちに動いてやれっていう感じだ。俺がインターフェイスの活動に出るのはそういうこと。もっと友達欲しい。
「あっ、LINE来た。……直クンマジパねえ! つかマジで誰が班長だよ!」
「班長さんからの挨拶です?」
「いーや、副班長からの顔合わせいつにしますかっていう日程合わせ」
end.
++++
インターフェイス関係でかんなの言及があるのは何気に初めてのことなので、これはこれで今年度らしくて新鮮。
確かに映像やってるだけだったらインターフェイスの活動に出る必要はないんだけども、その辺の動機とか好奇心がハマちゃんとあやめは特に強いのかな
ヒロ率いる7班は例によって自由なようですが、直クンがめっちゃ頑張ることになるんだろうなあ……ノサカと啓子さんもそら直クンに何でもお願いするよ
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「おはようございまーす」
「ますー」
「おっ、あやめ、いいトコに来た。かんなもおはよーさん」
「どうしたんですか?」
「夏合宿の班割りが出たんだと」
昨日つばみから、夏合宿の班割りっていうリストが送られてきた。印刷するなり関係ある子に口頭で伝えるなりして何かしとけって言われたから、それを印刷してホワイトボードに貼り出す。AKBCから夏合宿に出るのは俺とあやめの2人だけだけど、それでも青敬からなら毎年そんなモンみたいだ。
俺は向島のヒロが班長の7班に入っていた。ヒロが班長っていう時点で、何となくだけど他の対策委員のメンツと比べて大丈夫かよって感じもした。それは対策委員も織り込み済みで、副班長の直クンがすげーしっかりしてるからプラマイゼロだろうと。
「あっ、夏合宿の班だったら昨日班長さんから挨拶のLINEがありましたよ」
「えっ、他の班ってそんなんあんの、班長からの挨拶とかマジパねえ」
「ハマちゃん先輩の班はなかったですか?」
「ないない。まあ、そういう律儀な班長なのかもしれないな!」
手元のリストによれば、あやめは野坂が班長の5班に配属されたっぽい。野坂とは講習会とつばみの誕生会で会ったくらいだけど、対策委員の議長もやってるような奴なら班が決まりましたみたいな挨拶をしてきても不思議じゃない。と言うか挨拶をするのが普通だとしても、ヒロならそれを端折っても不思議じゃないかな、とも。
「挨拶と一緒に、顔合わせの日程を決めたいから都合のいい日を教えてくださいってあったんですよ」
「……やっぱ挨拶いるじゃねーか! えっ、つかウチの班いつ顔合わせすんの!?」
「知らないですよ。それはそうと、私、初心者講習会に出てないじゃないですか。今更ですけど大丈夫かなってちょっと思いますよね」
「夏合宿の参加者の中にも講習会に出てない奴はちょこちょこいるらしいから大丈夫だ」
「あっ、そうなんですね」
正直、あやめがインターフェイスの活動に出るって聞いた時、めっちゃ驚いたよな。ヒデさんも最近は忙しくてサークルに来ない日があってどう考えてもインターフェイスとの接点が少ないのに、俺が講習会に出てこんなことやってきたーって見せびらかした情報だけで今に至ってんだろ? あやめの決断力パねえ。
「班長の野坂ってのが対策委員の議長なんだけど、あやめのことはラジオの基礎やミキサーの技術的なこともひっくるめてちゃんと面倒見るっつってたから安心しとけな」
「至れり尽くせりです」
「ホントにな」
「議長さんだけあって責任感が強めですね」
「まあ、俺からも改めて頼んどくしな」
「お願いします」
「あやめはよくやるよね、インターフェイスなんて」
「そーいやかんな、お前は出ないんだな」
「出ないですよ。映像作品を作るワケじゃないですからね」
いつも2人で行動している印象のある諏訪姉妹だったけど、インターフェイスの活動に対するスタンスは正反対とも言えそうだ。でも、かんなの言ってることも間違いじゃない。俺たちAKBCは映像作品を作るサークルであって、ラジオの活動はいわば寄り道とか課外活動だ。
俺がインターフェイスに出るようになったきっかけと言うか、動機か。それもぶっちゃけ「友達が欲しい」とか「わいわい活動がしたい」っていう感じで不純っちゃ不純だ。AKBCでの作品制作だけに向き合うなら、インターフェイスの活動に出る必要性はあまりない。
「そういやあやめ、どうしてインターフェイスの活動に出ようと思ったんだ?」
「映像作品を作るっていう点では直接的じゃないかもですけど、音を扱うという意味では全く関係なくもないかなって。いろんな表現方法があると思うのでそれを勉強しようと。それから、いろんな人と出会いたいなと思ったんですよ」
「マジわかる」
「バイト先の先輩も楽しいって言ってたんで、それなら1回やってみようかなーって」
「あー、何かお前らのバイト先の先輩がインターフェイスの人なんだっけ?」
「はい、星ヶ丘の4年生の先輩ですよ」
「ですー」
そう聞いて、ポンッと朝霞さんと洋平さんの顔が思い浮かんだ。そーいやあの人らも星ヶ丘の人だったなって。こないだつばみが言ってたけど、星ヶ丘の放送部は規模もでけーし活動がステージメインってこともあってインターフェイスの活動に出て来るのは精々部員全体の8分の1とかだそうだ。
対策委員とか定例会っていうインターフェイスの組織に名を連ねるような人になると、星ヶ丘の部活では逆に立場がないと言うか、まあ何か余所は余所でいろんなしがらみとかがあるらしい。流刑地って呼ばれて部長から嫌がらせをされたりするような班もあるとかないとか。
必ずしもラジオを主として活動しているワケじゃない大学から、わざわざ表に出て来るような俺だとか星ヶ丘の人らはよほどの変わり者なのかと。俺がどう思われるかは別にいいけど、少なくとも朝霞さんと洋平さんは悪い人じゃなかった。
「じゃあ、お前らのその先輩って人もきっといい人だろうな!」
「……なんでそうなるんです? 確かにいい人ですけど」
「ですー」
「野生のカンだ! あと、俺が星ヶ丘の3年生の先輩に良くしてもらってインターフェイスに出始めたってのもある」
「ハマちゃん先輩も星ヶ丘経由だったんですね」
「ヒロさんのお見舞いに行ったときになー」
「あれっ、そう言えば長野先輩てその後どうなったんですか? 入院したところまでは聞きましたけど」
「ああ、2週間ほど前に退院した。今は自宅療養してるって」
映像制作も大事だけど、それ以外の活動をやるなって言われたワケじゃない。やりたいと思ったことはやれるうちにならないと、いつやれなくなるかもわからない。それなら動けるうちに動いてやれっていう感じだ。俺がインターフェイスの活動に出るのはそういうこと。もっと友達欲しい。
「あっ、LINE来た。……直クンマジパねえ! つかマジで誰が班長だよ!」
「班長さんからの挨拶です?」
「いーや、副班長からの顔合わせいつにしますかっていう日程合わせ」
end.
++++
インターフェイス関係でかんなの言及があるのは何気に初めてのことなので、これはこれで今年度らしくて新鮮。
確かに映像やってるだけだったらインターフェイスの活動に出る必要はないんだけども、その辺の動機とか好奇心がハマちゃんとあやめは特に強いのかな
ヒロ率いる7班は例によって自由なようですが、直クンがめっちゃ頑張ることになるんだろうなあ……ノサカと啓子さんもそら直クンに何でもお願いするよ
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