2019(02)
■圭斗さんの夏のお仕事!
++++
「さて、本日皆さんに集まってもらったのは他でもない、向舞祭についてのお知らせです」
「うへー、もうそんな季節かー」
「そうなんだよ」
本日は3年生を対象とした緊急定例会が開かれている。それというのも向島エリアで行われる向舞祭という夏の行事に関係してくるんだ。一言で言えばいわゆるヨサコイ系の、チームで踊って最優秀賞を狙いに行くとかそんなこんな。8月の盆時に行われて、エリア内に転々とサテライトステージが設けられるんだ。
さて、僕たち向島インターフェイス放送委員会がお世話になっている企業サマは、この向舞祭のスポンサーでもある。そのお上が先日僕にインターフェイスとしての参加要請をしてきたんだね。学生を向舞祭のスタッフとして出すようにと。参加要請と言うより、召集令状と言う方が正しいかもしれない。
如何せん僕たちはお上からの支援で向島インターフェイス放送委員会という組織を保てていた面があるので(「保てていた」と過去形なのは、スキー場DJが終わってからはさほど絡んでもいないからだ)、言うことにはなかなか逆らえない。下手に反抗して今後が不利になってもいけない。
「昨年からの変更点が少しあってね。例年スタッフとして駆り出されるのは3年生だけだったけど、今年は3年生の人数が少ないと言うこともあり2年生にも白羽の矢が立てられました。緑ヶ丘と星大、それから青女さんかな。それぞれ2年生の子に説明をよろしく」
「っつーと、Lは実家に帰すなっつーコトでいい?」
「まあ、そういうことになるね。お前と同郷の僕も、それから、もっと遠い上に星ヶ丘のステージが終わって自由になれるはずの朝霞君も帰れないんだよとでも圧をかけておいてくれれば」
「りょーかい」
正直、僕の夏は合宿が終わってからが本番で、それまでのことに関して言えばもうどうにでもな~れ状態なんだ。菜月さんに夏の予定を崩させたからには、僕もある程度はこう、ね。言っても僕やLは帰ろうと思えばすぐにでも帰れる距離なんだ、湖西市までなんか。山羽市の朝霞君には少々申し訳がないんだけども。山羽は横に広いからね。
「ところで圭斗」
「ん、どうしたんだい朝霞君」
「丸の池が終わっても帰れないのは別にいいんだけど、打ち合わせとか練習も入ってくるんだろ。俺はそっちの都合の方が圧倒的に気になる。ステージと被ろうモンなら俺は向舞祭を捨てて丸の池に行くぞ」
「本番の日程は被ってないから安心してもらって」
「つかカオル向舞祭を捨てるってはっきり言ったよなー」
「向舞祭の方が後出しだし当たり前だろ。こちとら丸の池に全てを懸けてんだ」
「あっ、練習とかの日程は俺も気になる。バイトに入れないと学費が稼げなくなっちゃうもん」
如何せん、夏はそれぞれ忙しい。今はまだ落ち着いた様子だけど、これから私大組のテストが始まり、続け様に国公立組のテストが。そして星ヶ丘に関して言えば8月アタマに部の最大の行事である丸の池ステージとやらが控えている。このステージに対する朝霞君の情念が凄まじくガチなんだ。彼が鬼のプロデューサーと呼ばれる由縁だね。
テストが終わって長期休暇に入れば、アルバイトに入る日数を増やす人もいる。僕も授業があるときよりは時間を長くしたり、日数を増やしたりするね。それが特に顕著なのが大石君だ。彼は兄一人弟一人の家庭で暮らしている。家計の負担を少しでも減らせるようにと学費の一部は長期休暇に稼いで自分で出しているそうだ。
「打ち合わせなどの日程に関しては近日中に出してもらえるようお上をチクチクつつこうと思うので、しばし待ってください」
「何か、圭斗にチクチクつつかれるとか嫌すぎるな」
「それ! 絶対クドいし嫌みったらしそう!」
「あー、確かに。ネチネチしてそうだ」
「笑顔の裏に圧があるもん」
「ん、君たちにそう言われるとは心外だな。僕はみんなのためにインターフェイスが不利にならないような条件を毟り取ろうと頑張っているのに」
「だから圭斗、毟り取るっつー表現な」
「あと絶対みんなのためじゃなくて自分のためだろ。俺は人のこと言えないけど」
「それは否定しないよ。でも、この場合僕が自分のために超絶ブラックな条件を少しでもグレーに近付けていくことで、その恩恵を受けられるのはみんなだということは忘れないでいただきたい」
どうしても表現が悪くなってしまうのは僕自身がMMPでムライズムだのラブ&ピースだのに浸かっているからだし、企業サマの僕たち担当の人がMMPのOBだからだね。直接関わりがあったワケじゃないけれど向島大学同士通じる空気があるのなら、付け入る隙もあるはずだ。
僕は菜月さんに対してはほんの少しだけ申し訳ないなという気持ちがあったけれども(過去形なのは今は微塵とも悪いとは思っていないからだね)、だからと言ってその気持ちで僕自身までブラックなところに行こうという気は全くない。僕自身に余裕がなくてどうして他の人たちに目を配ることが出来るのかい? それが僕のポジションだ。
「お上と交渉することもまだ残っているし、みんなは今のところ向舞祭にスタッフとして出ることになったと覚えておいていただければ」
「で、何をまだ交渉すんの?」
「伊東、いくらお上から駆り出された学生スタッフだからと言って、それを慈善活動だの奉仕活動といった名の下にタダ働きしたいかい?」
「したくないです!」
「僕にはまだ学生スタッフは短期アルバイト扱いにしてくれという契約上の交渉が残っているんだよ。そういうワケだからみんな、タダ働きしたくなければ僕を無碍に扱うことのないように」
「ははーっ、圭斗様ーっ」
end.
++++
毎度お馴染み向舞祭への召集のお話です。最近は書類の代筆の話をやってないですね。菜月さんがいないので朝霞Pが代筆する件の。
Lに圧力をかけておいてくれっていう圭斗さんね。でもって相手がいち氏だからその圧もすげーんだろうなあ。かわいがられてんなあ()
朝霞Pの方も安定でステージしか見えていない様子。まああとひと月だもんなあ。本来はこの時間すら勿体ないと思ってそう
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「さて、本日皆さんに集まってもらったのは他でもない、向舞祭についてのお知らせです」
「うへー、もうそんな季節かー」
「そうなんだよ」
本日は3年生を対象とした緊急定例会が開かれている。それというのも向島エリアで行われる向舞祭という夏の行事に関係してくるんだ。一言で言えばいわゆるヨサコイ系の、チームで踊って最優秀賞を狙いに行くとかそんなこんな。8月の盆時に行われて、エリア内に転々とサテライトステージが設けられるんだ。
さて、僕たち向島インターフェイス放送委員会がお世話になっている企業サマは、この向舞祭のスポンサーでもある。そのお上が先日僕にインターフェイスとしての参加要請をしてきたんだね。学生を向舞祭のスタッフとして出すようにと。参加要請と言うより、召集令状と言う方が正しいかもしれない。
如何せん僕たちはお上からの支援で向島インターフェイス放送委員会という組織を保てていた面があるので(「保てていた」と過去形なのは、スキー場DJが終わってからはさほど絡んでもいないからだ)、言うことにはなかなか逆らえない。下手に反抗して今後が不利になってもいけない。
「昨年からの変更点が少しあってね。例年スタッフとして駆り出されるのは3年生だけだったけど、今年は3年生の人数が少ないと言うこともあり2年生にも白羽の矢が立てられました。緑ヶ丘と星大、それから青女さんかな。それぞれ2年生の子に説明をよろしく」
「っつーと、Lは実家に帰すなっつーコトでいい?」
「まあ、そういうことになるね。お前と同郷の僕も、それから、もっと遠い上に星ヶ丘のステージが終わって自由になれるはずの朝霞君も帰れないんだよとでも圧をかけておいてくれれば」
「りょーかい」
正直、僕の夏は合宿が終わってからが本番で、それまでのことに関して言えばもうどうにでもな~れ状態なんだ。菜月さんに夏の予定を崩させたからには、僕もある程度はこう、ね。言っても僕やLは帰ろうと思えばすぐにでも帰れる距離なんだ、湖西市までなんか。山羽市の朝霞君には少々申し訳がないんだけども。山羽は横に広いからね。
「ところで圭斗」
「ん、どうしたんだい朝霞君」
「丸の池が終わっても帰れないのは別にいいんだけど、打ち合わせとか練習も入ってくるんだろ。俺はそっちの都合の方が圧倒的に気になる。ステージと被ろうモンなら俺は向舞祭を捨てて丸の池に行くぞ」
「本番の日程は被ってないから安心してもらって」
「つかカオル向舞祭を捨てるってはっきり言ったよなー」
「向舞祭の方が後出しだし当たり前だろ。こちとら丸の池に全てを懸けてんだ」
「あっ、練習とかの日程は俺も気になる。バイトに入れないと学費が稼げなくなっちゃうもん」
如何せん、夏はそれぞれ忙しい。今はまだ落ち着いた様子だけど、これから私大組のテストが始まり、続け様に国公立組のテストが。そして星ヶ丘に関して言えば8月アタマに部の最大の行事である丸の池ステージとやらが控えている。このステージに対する朝霞君の情念が凄まじくガチなんだ。彼が鬼のプロデューサーと呼ばれる由縁だね。
テストが終わって長期休暇に入れば、アルバイトに入る日数を増やす人もいる。僕も授業があるときよりは時間を長くしたり、日数を増やしたりするね。それが特に顕著なのが大石君だ。彼は兄一人弟一人の家庭で暮らしている。家計の負担を少しでも減らせるようにと学費の一部は長期休暇に稼いで自分で出しているそうだ。
「打ち合わせなどの日程に関しては近日中に出してもらえるようお上をチクチクつつこうと思うので、しばし待ってください」
「何か、圭斗にチクチクつつかれるとか嫌すぎるな」
「それ! 絶対クドいし嫌みったらしそう!」
「あー、確かに。ネチネチしてそうだ」
「笑顔の裏に圧があるもん」
「ん、君たちにそう言われるとは心外だな。僕はみんなのためにインターフェイスが不利にならないような条件を毟り取ろうと頑張っているのに」
「だから圭斗、毟り取るっつー表現な」
「あと絶対みんなのためじゃなくて自分のためだろ。俺は人のこと言えないけど」
「それは否定しないよ。でも、この場合僕が自分のために超絶ブラックな条件を少しでもグレーに近付けていくことで、その恩恵を受けられるのはみんなだということは忘れないでいただきたい」
どうしても表現が悪くなってしまうのは僕自身がMMPでムライズムだのラブ&ピースだのに浸かっているからだし、企業サマの僕たち担当の人がMMPのOBだからだね。直接関わりがあったワケじゃないけれど向島大学同士通じる空気があるのなら、付け入る隙もあるはずだ。
僕は菜月さんに対してはほんの少しだけ申し訳ないなという気持ちがあったけれども(過去形なのは今は微塵とも悪いとは思っていないからだね)、だからと言ってその気持ちで僕自身までブラックなところに行こうという気は全くない。僕自身に余裕がなくてどうして他の人たちに目を配ることが出来るのかい? それが僕のポジションだ。
「お上と交渉することもまだ残っているし、みんなは今のところ向舞祭にスタッフとして出ることになったと覚えておいていただければ」
「で、何をまだ交渉すんの?」
「伊東、いくらお上から駆り出された学生スタッフだからと言って、それを慈善活動だの奉仕活動といった名の下にタダ働きしたいかい?」
「したくないです!」
「僕にはまだ学生スタッフは短期アルバイト扱いにしてくれという契約上の交渉が残っているんだよ。そういうワケだからみんな、タダ働きしたくなければ僕を無碍に扱うことのないように」
「ははーっ、圭斗様ーっ」
end.
++++
毎度お馴染み向舞祭への召集のお話です。最近は書類の代筆の話をやってないですね。菜月さんがいないので朝霞Pが代筆する件の。
Lに圧力をかけておいてくれっていう圭斗さんね。でもって相手がいち氏だからその圧もすげーんだろうなあ。かわいがられてんなあ()
朝霞Pの方も安定でステージしか見えていない様子。まああとひと月だもんなあ。本来はこの時間すら勿体ないと思ってそう
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