2019
■真に語り合うべき問題は
++++
「対策委員です」
今週は夏合宿の参加不参加に関係する話を各大学さんでしてもらって、今日はその結果を集めるということになっている。各大学の参加者を割り出して、いよいよ班編成の仕事が始まるんだ。この班編成がそれぞれの運命を決めると言っても過言じゃない。間違いのないようにしなければ。
「さて、各大学の参加者リストを作っていきましょう」
どのくらいの人数が集まったかを見ていくと、何だかんだ40人弱ほどになりそうな感じ。班は学年とアナミキっていうパートのバランスを見て何だかんだ組み立てて行かなくてはならない。6人班でアナミキ3人ずつっていうのが基本形だけど、場合によっては5人班にする必要も出てくるか?
夏合宿の番組は1ペア15分を3ペア分、一班につき持ち時間は45分になる。その中でリクエストが飛んできたり、インフォメーション放送が飛んできたりとよりそれらしい要素が入ってきて本格的になるんだ。その昔やっていたスキー場DJでの番組を想定した本番仕様の縮小版とのこと。
「まあ大体よく見る感じのメンツだわね」
「ですよねー」
「……あの、非常に言いにくいんだけど」
「うわっ、嘘の吐けない顔の議長がダメそうな顔してる!」
「絶対悪い知らせじゃん!」
前回の会議では、初心者講習会でのことを踏まえた参加制限について話し合った。ストレートに言うと、夏合宿に三井先輩が参加しようとしたらどうしようというのが不安だったのだ。合宿の後の反省会でも、現場にいた3年生の先輩方は口を揃えて「アイツは出てくるだろう」と仰っていた。
三井先輩はただの懐古的プロ志向なだけではなく、その考えややり方を押しつけようとしてくるのが厄介なんだ。自分だけがその考えに基づいて行動しているのであれば、あの人ちょっと浮いてるなっていうだけだけど。圭斗先輩によれば、2コ上の先輩が好きなのと、1コ上の先輩と寄りが合わないのがそれに拍車をかけているらしい。
だけど、三井先輩1人のために3年生全体の参加制限をかけるのもどうかという話になったんだ。初心者講習会の時にもあったけど、3年生の先輩の技術や経験を伝えていただきたいんだ。それぞれ大学ごとの個性と言うか、固有の技術もある。そういうものを交換する貴重な機会でもあるんだ。
「えー……向島ですけど、1、2年生全員と三井先輩が」
「出た!」
「薄々こうなるとはわかってたけど、本当に来ますかー……ですよねー。ちなみに野坂、あの人何か言ってた?」
「えー、自分とペアを組めるミキサーは幸せだとか、自分を抱えることになる班長は大きく成長できるだろうね、的なことを言ってたなあ」
「相変わらず言ってることだけはデカいな」
三井先輩が出てくると聞いた瞬間、対策委員のメンバーからは大きな溜め息が漏れた。まあ、それはそうだろう。俺も現場では内心とてもげんなりした。また荒らしてくれようものならと。だけど、3年生の参加を制限しなかったのは自分たちなのだから、拒否する権利もないのだ。
そしてここで新たな問題が発生する。先の三井先輩の言葉ではないけれど、一体誰が三井先輩を班に抱えるんだという話だ。絶対面倒なことになるのは目に見えている。イキり散らしてもくるだろう。他の班員へのフォローも必要になってくるかもしれない。それじゃあ一体どうするんだと。
「誰があの人を引き取るのか問題」
「あとさ、夏合宿の参加者にアレを牽制出来る人間要るくない? だって、アイツの主張って「1、2年は3年の言うことを聞くべき」みたいな感じでしょ? いくら対策委員でも、2年である以上自分の言うことを聞けって言って暴れるに決まってるわアイツのことなら」
「あの人を牽制出来る人間ねえ。講師とか?」
「それがベストだろうけど、講師の人に当日の講習以外のことでいろいろ言うのもまた違うじゃん。出来れば3年生の役持ちに睨んでて欲しいんだけど。合宿に参加するのが厳しいにしても」
結局のところそれなんだ。一番大変そうなのは三井先輩とペアを組むことになるミキサーと、三井先輩を抱えることになる班長なんだ。出来ることならみんなそれを回避したいと思っている。班編成はせめて打たれ強いメンタルだとか、スルースキルの高い人を中心に入れていこうということになった。
「どうせ最終的にいろいろ言われるのは俺だし、俺が引き取るか?」
「野坂はやめといた方がいいっしょ。ただでさえ議長職もあるんだし、絶対講習会以上にメンタルボコボコにされるから」
「うん、アタシも野坂は最前線より最後の砦でいてもらいたいと思う」
「それじゃあアタシが引き取るわ。クソみたいな3年の扱いには慣れてるから」
「つばめ」
「他の班員、出来ればメンタル強めの子でお願いね」
三井先輩のことは心配だけど、そればっかりも心配していられないんだ。ここから班編成をしなければいけないし、現段階で出ている参加者がちょうど6の倍数でもないからそれをどうするっていう。まあ、一応参加申し込みは今週末だから、明日何かの間違いが起こらないとも限らないし。しかしどうしたものか。
「三井先輩を誰が引き取るか問題は解決したけど、まだまだすんなりとは行かせてもらえないだろうなー…!」
「何かこう、包囲網じゃないけど何かならないかな」
end.
++++
対策委員の会議がちょっと深刻になっています。それだけ三井サン参加の知らせは悪い知らせだったようです
それだったら3年生の参加を制限すれば良かったんだろうけど、それもまた違うというのが対策委員の方針のようです。
そう言えば、向島以外の3年生ってどういう経緯で参加してるんだろう。いつかその件やりたいなあ
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「対策委員です」
今週は夏合宿の参加不参加に関係する話を各大学さんでしてもらって、今日はその結果を集めるということになっている。各大学の参加者を割り出して、いよいよ班編成の仕事が始まるんだ。この班編成がそれぞれの運命を決めると言っても過言じゃない。間違いのないようにしなければ。
「さて、各大学の参加者リストを作っていきましょう」
どのくらいの人数が集まったかを見ていくと、何だかんだ40人弱ほどになりそうな感じ。班は学年とアナミキっていうパートのバランスを見て何だかんだ組み立てて行かなくてはならない。6人班でアナミキ3人ずつっていうのが基本形だけど、場合によっては5人班にする必要も出てくるか?
夏合宿の番組は1ペア15分を3ペア分、一班につき持ち時間は45分になる。その中でリクエストが飛んできたり、インフォメーション放送が飛んできたりとよりそれらしい要素が入ってきて本格的になるんだ。その昔やっていたスキー場DJでの番組を想定した本番仕様の縮小版とのこと。
「まあ大体よく見る感じのメンツだわね」
「ですよねー」
「……あの、非常に言いにくいんだけど」
「うわっ、嘘の吐けない顔の議長がダメそうな顔してる!」
「絶対悪い知らせじゃん!」
前回の会議では、初心者講習会でのことを踏まえた参加制限について話し合った。ストレートに言うと、夏合宿に三井先輩が参加しようとしたらどうしようというのが不安だったのだ。合宿の後の反省会でも、現場にいた3年生の先輩方は口を揃えて「アイツは出てくるだろう」と仰っていた。
三井先輩はただの懐古的プロ志向なだけではなく、その考えややり方を押しつけようとしてくるのが厄介なんだ。自分だけがその考えに基づいて行動しているのであれば、あの人ちょっと浮いてるなっていうだけだけど。圭斗先輩によれば、2コ上の先輩が好きなのと、1コ上の先輩と寄りが合わないのがそれに拍車をかけているらしい。
だけど、三井先輩1人のために3年生全体の参加制限をかけるのもどうかという話になったんだ。初心者講習会の時にもあったけど、3年生の先輩の技術や経験を伝えていただきたいんだ。それぞれ大学ごとの個性と言うか、固有の技術もある。そういうものを交換する貴重な機会でもあるんだ。
「えー……向島ですけど、1、2年生全員と三井先輩が」
「出た!」
「薄々こうなるとはわかってたけど、本当に来ますかー……ですよねー。ちなみに野坂、あの人何か言ってた?」
「えー、自分とペアを組めるミキサーは幸せだとか、自分を抱えることになる班長は大きく成長できるだろうね、的なことを言ってたなあ」
「相変わらず言ってることだけはデカいな」
三井先輩が出てくると聞いた瞬間、対策委員のメンバーからは大きな溜め息が漏れた。まあ、それはそうだろう。俺も現場では内心とてもげんなりした。また荒らしてくれようものならと。だけど、3年生の参加を制限しなかったのは自分たちなのだから、拒否する権利もないのだ。
そしてここで新たな問題が発生する。先の三井先輩の言葉ではないけれど、一体誰が三井先輩を班に抱えるんだという話だ。絶対面倒なことになるのは目に見えている。イキり散らしてもくるだろう。他の班員へのフォローも必要になってくるかもしれない。それじゃあ一体どうするんだと。
「誰があの人を引き取るのか問題」
「あとさ、夏合宿の参加者にアレを牽制出来る人間要るくない? だって、アイツの主張って「1、2年は3年の言うことを聞くべき」みたいな感じでしょ? いくら対策委員でも、2年である以上自分の言うことを聞けって言って暴れるに決まってるわアイツのことなら」
「あの人を牽制出来る人間ねえ。講師とか?」
「それがベストだろうけど、講師の人に当日の講習以外のことでいろいろ言うのもまた違うじゃん。出来れば3年生の役持ちに睨んでて欲しいんだけど。合宿に参加するのが厳しいにしても」
結局のところそれなんだ。一番大変そうなのは三井先輩とペアを組むことになるミキサーと、三井先輩を抱えることになる班長なんだ。出来ることならみんなそれを回避したいと思っている。班編成はせめて打たれ強いメンタルだとか、スルースキルの高い人を中心に入れていこうということになった。
「どうせ最終的にいろいろ言われるのは俺だし、俺が引き取るか?」
「野坂はやめといた方がいいっしょ。ただでさえ議長職もあるんだし、絶対講習会以上にメンタルボコボコにされるから」
「うん、アタシも野坂は最前線より最後の砦でいてもらいたいと思う」
「それじゃあアタシが引き取るわ。クソみたいな3年の扱いには慣れてるから」
「つばめ」
「他の班員、出来ればメンタル強めの子でお願いね」
三井先輩のことは心配だけど、そればっかりも心配していられないんだ。ここから班編成をしなければいけないし、現段階で出ている参加者がちょうど6の倍数でもないからそれをどうするっていう。まあ、一応参加申し込みは今週末だから、明日何かの間違いが起こらないとも限らないし。しかしどうしたものか。
「三井先輩を誰が引き取るか問題は解決したけど、まだまだすんなりとは行かせてもらえないだろうなー…!」
「何かこう、包囲網じゃないけど何かならないかな」
end.
++++
対策委員の会議がちょっと深刻になっています。それだけ三井サン参加の知らせは悪い知らせだったようです
それだったら3年生の参加を制限すれば良かったんだろうけど、それもまた違うというのが対策委員の方針のようです。
そう言えば、向島以外の3年生ってどういう経緯で参加してるんだろう。いつかその件やりたいなあ
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