2019
■summer solstice curry
++++
「みなさーんッ! カレーの時間ですよーッ!」
――と、奈々がサークル室に飛び込んで来た。それはもう、きゃっきゃとした弾けるような笑顔でカレーを食べましょうとサークルメンバーに勧めている。確かにMMPはカレーを比較的食べるサークルではある。カレーパーティーなんかも多々開かれているからね。
だけど、こうまで急にガツガツとカレーを推されると、いくらカレーをよく食べるサークルと言えど「急に何を言っているんだ」となるんだね。いや、確かにカレーは美味しいし、食べたいとはよく思うけどどうして急にそんなことになるんだと。
「ん、奈々、急にどうしたんだい? カレーパーティーをやりたいのかな?」
「あっ圭斗先輩聞いてくださいッ! 夏至にはカレーを食べるんですッ! ちなみに今年の夏至は明日なので、皆さんカレーを食べましょうッ!」
「えーと……菜月さん、夏至にカレーを食べる風習があるのかな?」
「うちは知らないぞ。そういうのはノサペディアの管轄じゃないか」
「それもそうだ。野坂、夏至にカレーを食べる風習があるのかな?」
「いやー……北欧の方では夏至を踊って祝う風習があるのは知っていますが、カレーは初めて聞きますね」
MMPが誇るオールSの頭でっかち……もといノサペディアでもダメとなると、いよいよどうして夏至とカレーが結び付いてくるのかわからなくなる。ここはこの話を持って来た奈々に聞いてみるのが一番いい。
「奈々、それは一体何なんだい?」
「うちもミーちゃんがイベントの司会じゃなきゃ知らなかったっす」
「イベント? 夏至にカレーを食べるイベントがあるのかな?」
「元々は完全に個人の趣味で始まったらしいんですって。「日が伸びる夏至サイコー!」っていうのと「カレーサイコー!」っていうので「夏至にカレーを食べるのが最高なのでは?」っていう結論に達して布教を始めたそうですッ!」
「それがイベントを興すまでに成長している、と」
「はいッ!」
確かに夏は日が長くて活動的になる人はなるかもしれないし、カレーは美味しいものだね。好きと好きを掛け合わせて大好きになるような感じかな。それで夏至にカレーを。何て言うか、それをイベントにして人を巻き込むだなんてまさに陽の者の発想だなと思うよね。
「奈々、夏至カレーの成り立ちはわかった」
「圭斗先輩カレーを食べてくれますかッ!」
「それはいいにしても、MMPは陰の集団であることを失念していないかな?」
「そ、そんな暗いこと言わないでくださいッ……」
「あれを見てみるんだよ」
MMPは陰の集団。その代表格が僕であり、菜月さんであり、野坂であり……いや、もしかしたらヒロ以外の全員かもしれないね。そんな陰の集団に陽の行事を持ち出されても、負の力で打ち消されるのがオチじゃないかと。
「やァー、夏至カレーの話は興味深く聞かせてもらいヤした」
「りっちゃん」
「自分の記憶が確かなら、去年「日の短い冬至サイコー」って言ってた先輩がいるンすわァー」
「それから、日の出が最も早く日の入りが最も遅い日が厳密には夏至の日ではなく、実際にはその1週間ほど前であるらしいということは付け加えなければならない情報かと」
「野坂」
「北半球では性欲を掻き立てる日とも言われるそうですね」
「神崎、その情報は要らないんじゃないのかな?」
「下半身で生きる置物の帝王サマがとうとう本気を出す日が来たか」
「ん、菜月さん?」
「もーッ! 先輩たちッ! 今はその補足情報はいいんですッ!」
はっ。どうも話に横槍を入れて脱線させたくなるのはMMPの悪癖だね。野坂と神崎の情報はともかく、MMP的に何が問題かというとりっちゃんの情報にこそある。日の短い冬至サイコーと言っていた某先輩……いや、僕から見れば同期の存在だ。
何せ彼女は太陽光が嫌いだ。日に焼けるし、眩しくて目に良くないという理由だね。暑いし眩しいから外に出たくないという理由で平気で授業をサボるような人が、日の長い夏至サイコーという陽の念に賛同出来るかと言えば、否。言ってしまえば対極にある物だ。
「言っても夏至の頃なんかは日が長いと言うだけの理由で外に出たくないじゃないか」
「安定の菜月先輩でいらっしゃいますね!」
「菜月先輩ッ!? お外に出ましょうッ!」
「夏なんて大嫌いだ。カレーはうまーだけど夏至である意味がわからない。はあ……早く冬至の頃にならないかな」
……とまあ、如何せん菜月さんがこんな感じなので、MMPに夏至カレーなる風習はどうにもこうにも根付かないだろうね。奈々には申し訳ないけど、もう少し陽の要素のある友人なんかに声を掛けた方が良かったかもしれないね。
「よし、今日のMMPは夏至カレーに対抗して冬至○○を考える回にしようか」
「しかし、冬至にはゆず湯に入りカボチャを食べるという風習があります」
「ん、新たな風習を僕たちが作ってもいいんじゃないかな」
「カレーの対極にある物……シチューとか?」
「いえ、シチューはカレーと対極と言えるかもしれませんが、似ていると解釈することも出来ます」
「カレーの対」
「甘い」
「ごはんにかけない」
「ごはんにかけないならシチューはアウトだなあ」
「えっ、菜月先輩、シチューをご飯にかけるのですか?」
「えっ、かけるだろ?」
「かけませんよ」
「嘘だ!」
end.
++++
何か最近は奈々にきゃっきゃさせがちだし、なんなら今日はヒロの誕生日なんだけどヒロがお話に出て来ないw
……まあその辺はIF2年生がどうしたこうしたって件になるのかしら。星ヶ丘祭りも土日スタートだし今年ちょっとしんどみだ
そして陽か陰ならMMPは圧倒的に陰の集団なので、なかなかね。滲み出る何かがあるのよ
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「みなさーんッ! カレーの時間ですよーッ!」
――と、奈々がサークル室に飛び込んで来た。それはもう、きゃっきゃとした弾けるような笑顔でカレーを食べましょうとサークルメンバーに勧めている。確かにMMPはカレーを比較的食べるサークルではある。カレーパーティーなんかも多々開かれているからね。
だけど、こうまで急にガツガツとカレーを推されると、いくらカレーをよく食べるサークルと言えど「急に何を言っているんだ」となるんだね。いや、確かにカレーは美味しいし、食べたいとはよく思うけどどうして急にそんなことになるんだと。
「ん、奈々、急にどうしたんだい? カレーパーティーをやりたいのかな?」
「あっ圭斗先輩聞いてくださいッ! 夏至にはカレーを食べるんですッ! ちなみに今年の夏至は明日なので、皆さんカレーを食べましょうッ!」
「えーと……菜月さん、夏至にカレーを食べる風習があるのかな?」
「うちは知らないぞ。そういうのはノサペディアの管轄じゃないか」
「それもそうだ。野坂、夏至にカレーを食べる風習があるのかな?」
「いやー……北欧の方では夏至を踊って祝う風習があるのは知っていますが、カレーは初めて聞きますね」
MMPが誇るオールSの頭でっかち……もといノサペディアでもダメとなると、いよいよどうして夏至とカレーが結び付いてくるのかわからなくなる。ここはこの話を持って来た奈々に聞いてみるのが一番いい。
「奈々、それは一体何なんだい?」
「うちもミーちゃんがイベントの司会じゃなきゃ知らなかったっす」
「イベント? 夏至にカレーを食べるイベントがあるのかな?」
「元々は完全に個人の趣味で始まったらしいんですって。「日が伸びる夏至サイコー!」っていうのと「カレーサイコー!」っていうので「夏至にカレーを食べるのが最高なのでは?」っていう結論に達して布教を始めたそうですッ!」
「それがイベントを興すまでに成長している、と」
「はいッ!」
確かに夏は日が長くて活動的になる人はなるかもしれないし、カレーは美味しいものだね。好きと好きを掛け合わせて大好きになるような感じかな。それで夏至にカレーを。何て言うか、それをイベントにして人を巻き込むだなんてまさに陽の者の発想だなと思うよね。
「奈々、夏至カレーの成り立ちはわかった」
「圭斗先輩カレーを食べてくれますかッ!」
「それはいいにしても、MMPは陰の集団であることを失念していないかな?」
「そ、そんな暗いこと言わないでくださいッ……」
「あれを見てみるんだよ」
MMPは陰の集団。その代表格が僕であり、菜月さんであり、野坂であり……いや、もしかしたらヒロ以外の全員かもしれないね。そんな陰の集団に陽の行事を持ち出されても、負の力で打ち消されるのがオチじゃないかと。
「やァー、夏至カレーの話は興味深く聞かせてもらいヤした」
「りっちゃん」
「自分の記憶が確かなら、去年「日の短い冬至サイコー」って言ってた先輩がいるンすわァー」
「それから、日の出が最も早く日の入りが最も遅い日が厳密には夏至の日ではなく、実際にはその1週間ほど前であるらしいということは付け加えなければならない情報かと」
「野坂」
「北半球では性欲を掻き立てる日とも言われるそうですね」
「神崎、その情報は要らないんじゃないのかな?」
「下半身で生きる置物の帝王サマがとうとう本気を出す日が来たか」
「ん、菜月さん?」
「もーッ! 先輩たちッ! 今はその補足情報はいいんですッ!」
はっ。どうも話に横槍を入れて脱線させたくなるのはMMPの悪癖だね。野坂と神崎の情報はともかく、MMP的に何が問題かというとりっちゃんの情報にこそある。日の短い冬至サイコーと言っていた某先輩……いや、僕から見れば同期の存在だ。
何せ彼女は太陽光が嫌いだ。日に焼けるし、眩しくて目に良くないという理由だね。暑いし眩しいから外に出たくないという理由で平気で授業をサボるような人が、日の長い夏至サイコーという陽の念に賛同出来るかと言えば、否。言ってしまえば対極にある物だ。
「言っても夏至の頃なんかは日が長いと言うだけの理由で外に出たくないじゃないか」
「安定の菜月先輩でいらっしゃいますね!」
「菜月先輩ッ!? お外に出ましょうッ!」
「夏なんて大嫌いだ。カレーはうまーだけど夏至である意味がわからない。はあ……早く冬至の頃にならないかな」
……とまあ、如何せん菜月さんがこんな感じなので、MMPに夏至カレーなる風習はどうにもこうにも根付かないだろうね。奈々には申し訳ないけど、もう少し陽の要素のある友人なんかに声を掛けた方が良かったかもしれないね。
「よし、今日のMMPは夏至カレーに対抗して冬至○○を考える回にしようか」
「しかし、冬至にはゆず湯に入りカボチャを食べるという風習があります」
「ん、新たな風習を僕たちが作ってもいいんじゃないかな」
「カレーの対極にある物……シチューとか?」
「いえ、シチューはカレーと対極と言えるかもしれませんが、似ていると解釈することも出来ます」
「カレーの対」
「甘い」
「ごはんにかけない」
「ごはんにかけないならシチューはアウトだなあ」
「えっ、菜月先輩、シチューをご飯にかけるのですか?」
「えっ、かけるだろ?」
「かけませんよ」
「嘘だ!」
end.
++++
何か最近は奈々にきゃっきゃさせがちだし、なんなら今日はヒロの誕生日なんだけどヒロがお話に出て来ないw
……まあその辺はIF2年生がどうしたこうしたって件になるのかしら。星ヶ丘祭りも土日スタートだし今年ちょっとしんどみだ
そして陽か陰ならMMPは圧倒的に陰の集団なので、なかなかね。滲み出る何かがあるのよ
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