2019
■休日診療サンキューサンデー
++++
「慧梨夏サン慧梨夏サン、これから連れてってくれる病院ってそんなにいートコなんですか?」
「って言うか、うちがお世話になってるから一番信頼出来るっていうのがあるかな。さっちゃんの定期の範囲内でもあるし」
「ほー、慧梨夏サン御用達なんですね!」
サークル中のちょっとした事故で、さっちゃんが足首をぐねってしまった。その場の応急処置だけじゃちょっとマズいなって感じだったから、病院に行きましょうということでさっちゃんと、そのさっちゃんを負ぶってくれた鵠っちがうちの車に乗っている。
鵠っちは別に車までで良かったんじゃないのとうちは思ったんだけど、さっちゃんが「鵠沼クンも一緒に行こうよ~」なんて誘って現在に至っている。鵠っち本人も最初は行かなくていいじゃんって言ってたけど、さっちゃんの粘りと病院の診察時間の関係で車に乗せて来たよね。
うちが車を走らせているのは、星港市内にある高崎整形外科クリニック。そう、何を隠そう高崎クンの実家のクリニックだよね。それとは別に普通にいい病院だからお世話になってるって感じ。清潔感もあるし、雰囲気も人もいいし。
「はーよかった、ギリギリ間に合ったよ。すみませーん、まだ受付大丈夫ですかー?」
「はい、大丈夫ですよ」
「よかったー」
「今日は宮林さんご本人ですか?」
「うちじゃなくてあの子なんですけど、サークル中に足首を捻っちゃって」
「三浦祥子ですー」
「三浦祥子さんですね。ではしばらくお待ちくださいね」
「あっ、ちなみに今ってどっちの先生ですか?」
「今の時間は悠佳先生ですね」
何やかんや来ることも多いから受付のお姉さんにも完全に顔と名前を覚えられてますよね。このクリニックの強みは日曜日もやってるところだと思う。休日診療はさすがに平日に比べて時間が短いんだけど、それでもやってるっていうところがこちらからすれば有り難いという他になくて。
待合室にはまだもう少し人がいる。ギリギリで駆け込んで来たうちらが本日の最終で、本日の受付は終了しましたという立て看板が玄関に置かれた。1人、また1人とお会計を終えて帰っていって、どんどん静かになってくるのにそわそわした様子のさっちゃん。病院にはあまり縁がなさそうだということがわかる。
「鵠沼クン鵠沼クン、やっぱり都会の病院はキレイだね」
「あー、そうな」
「さっちゃん、鵠っちは都会から出て来てる子だからこれくらいで普通だよ」
「あ、そっか」
「いや、俺が知ってる病院の中でも綺麗な方っすよ。つか最近はあんまり病院に行くこともないっすし、受付番号をモニターで表示したりっていうのに時代の変化を感じるっつーか」
「そうだねえ。WEB予約とかも本当に便利だよねえ」
――とか何とかやってると三浦さーんと呼ばれていって、さっちゃんの診療が始まった。その間、うちと鵠っちはやることがないのでちょっとしたことを話したりしてるって感じ。自分1人の時は雑誌を読んだりしてるけどね。何気に雑誌のラインナップも独特なんだよね。
「慧梨夏サーン」
「さっちゃん、すごい出で立ちだねえ」
「三浦お前、そんなに重傷だったのか」
診察を終えて松葉杖をついて出て来たさっちゃんに、うちと鵠っちは驚きを隠さない。確かにすごく腫れてたけど、まさか杖をつかなきゃいけないほどだなんて。うちも高校の時に杖は使ったことがあるけど、あの時は本当にしんどかったし。
「使ってみたかったんだよ! こんなことでもないと使うこともないしね」
「あー……何と言うか三浦らしい」
「うん、さっちゃんらしい。さっちゃん、杖があるからってあんまりはしゃぎ過ぎちゃダメだよ」
「はーい」
すると、診察室の方から人影が。よく見るあの顔によく似た、でもちょっと違うその人はスポーツドクターの悠佳先生。高崎クンの一番上のお兄さんだね。クリニックはお父さんの院長先生と悠佳先生の2人が診てくれて、うちは最近じゃ悠佳先生に診てもらってるよね。
「あっ、悠佳先生こんにちは」
「宮ちゃん久し振り」
「さっちゃんの足、どうですか?」
「軽くはないけど普通の捻挫かな。しばらくは安静にしてもらって。でも性格的に大人しくっていうのはなかなか難しそうだね」
「そうなんですよー」
「自分のコンディションはどう?」
「あー、うちはたまに軽く痛むって感じで、走れないほど痛むのは月に1回あるかないかって」
「また酷くなったらちゃんと来てね、ただでさえ治りにくいんだから」
「はーい」
「三浦さーん」
「はーい」
今日の診察はさっちゃんでおしまいで、お仕事の閉めの作業なんかは後からやるって。って言うか、院長先生と悠佳先生は本当に物腰穏やかな性格と言うか雰囲気と言うか。表情も柔らかいの。なのに高崎クンは本当に正反対と言うか。
「そうだ宮ちゃん、悠哉は元気?」
「元気も元気ですよ。なーんにも変わりません」
「それならいいんだ。ほら、お盆にも正月にも帰らないし、最近全然会ってないからどうしてるかなと思って。お盆のお墓参りだけは勝手にしてるって祖父ちゃんが怒ってたけど」
「おじいちゃんに連絡があるような感じですか?」
「ううん。祖母ちゃんの好きな花を知ってるのは自分とあのクソガキだけだから、自分以外が供えればすぐわかるって言って怒ってた」
「もしかして高崎クンておじいちゃん似ですか?」
「そうだね。祖父ちゃんに似て頑固で強情で、照れ屋で」
「あー」
双子のお兄ちゃんに対するコンプレックスを拗らせた結果実家から距離を置いてる高崎クンだけど、別に家族や家のことは嫌いじゃないんだね。だから余計ややこしいことになってるみたいだけど。
「慧梨夏サーン、お会計終わりました!」
「はーい。じゃあ、帰りますか」
「それじゃあみんな、気を付けて」
「はーい、ありがとうございましたー」
杖をつきつき少々危なっかしくさっちゃんが歩く。うちと鵠っちはそれを恐る恐る見守って。悠佳先生もちょっと心配そうに自動ドアの向こうから覗いてる。うん、さっちゃんを見てたらちょっと心配にもなりますよね。
「えっと、さっちゃんどこまで送ろうか。星港は人が多くて大変だろうからもう少し人が少ない駅で降りる?」
end.
++++
2年前くらいにさっちゃんがケガをした話をやりましたが、その通院の様子です。
高崎の一番上のお兄さんに関しては、ハルカという名前は決まってたけど漢字が決まってなかったんですね。やっと決まりました
さて、この松葉杖でゴティ先輩がバンバンッてやられるのね。ゴサチかわいいけど最近やってないね。やりたいね
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「慧梨夏サン慧梨夏サン、これから連れてってくれる病院ってそんなにいートコなんですか?」
「って言うか、うちがお世話になってるから一番信頼出来るっていうのがあるかな。さっちゃんの定期の範囲内でもあるし」
「ほー、慧梨夏サン御用達なんですね!」
サークル中のちょっとした事故で、さっちゃんが足首をぐねってしまった。その場の応急処置だけじゃちょっとマズいなって感じだったから、病院に行きましょうということでさっちゃんと、そのさっちゃんを負ぶってくれた鵠っちがうちの車に乗っている。
鵠っちは別に車までで良かったんじゃないのとうちは思ったんだけど、さっちゃんが「鵠沼クンも一緒に行こうよ~」なんて誘って現在に至っている。鵠っち本人も最初は行かなくていいじゃんって言ってたけど、さっちゃんの粘りと病院の診察時間の関係で車に乗せて来たよね。
うちが車を走らせているのは、星港市内にある高崎整形外科クリニック。そう、何を隠そう高崎クンの実家のクリニックだよね。それとは別に普通にいい病院だからお世話になってるって感じ。清潔感もあるし、雰囲気も人もいいし。
「はーよかった、ギリギリ間に合ったよ。すみませーん、まだ受付大丈夫ですかー?」
「はい、大丈夫ですよ」
「よかったー」
「今日は宮林さんご本人ですか?」
「うちじゃなくてあの子なんですけど、サークル中に足首を捻っちゃって」
「三浦祥子ですー」
「三浦祥子さんですね。ではしばらくお待ちくださいね」
「あっ、ちなみに今ってどっちの先生ですか?」
「今の時間は悠佳先生ですね」
何やかんや来ることも多いから受付のお姉さんにも完全に顔と名前を覚えられてますよね。このクリニックの強みは日曜日もやってるところだと思う。休日診療はさすがに平日に比べて時間が短いんだけど、それでもやってるっていうところがこちらからすれば有り難いという他になくて。
待合室にはまだもう少し人がいる。ギリギリで駆け込んで来たうちらが本日の最終で、本日の受付は終了しましたという立て看板が玄関に置かれた。1人、また1人とお会計を終えて帰っていって、どんどん静かになってくるのにそわそわした様子のさっちゃん。病院にはあまり縁がなさそうだということがわかる。
「鵠沼クン鵠沼クン、やっぱり都会の病院はキレイだね」
「あー、そうな」
「さっちゃん、鵠っちは都会から出て来てる子だからこれくらいで普通だよ」
「あ、そっか」
「いや、俺が知ってる病院の中でも綺麗な方っすよ。つか最近はあんまり病院に行くこともないっすし、受付番号をモニターで表示したりっていうのに時代の変化を感じるっつーか」
「そうだねえ。WEB予約とかも本当に便利だよねえ」
――とか何とかやってると三浦さーんと呼ばれていって、さっちゃんの診療が始まった。その間、うちと鵠っちはやることがないのでちょっとしたことを話したりしてるって感じ。自分1人の時は雑誌を読んだりしてるけどね。何気に雑誌のラインナップも独特なんだよね。
「慧梨夏サーン」
「さっちゃん、すごい出で立ちだねえ」
「三浦お前、そんなに重傷だったのか」
診察を終えて松葉杖をついて出て来たさっちゃんに、うちと鵠っちは驚きを隠さない。確かにすごく腫れてたけど、まさか杖をつかなきゃいけないほどだなんて。うちも高校の時に杖は使ったことがあるけど、あの時は本当にしんどかったし。
「使ってみたかったんだよ! こんなことでもないと使うこともないしね」
「あー……何と言うか三浦らしい」
「うん、さっちゃんらしい。さっちゃん、杖があるからってあんまりはしゃぎ過ぎちゃダメだよ」
「はーい」
すると、診察室の方から人影が。よく見るあの顔によく似た、でもちょっと違うその人はスポーツドクターの悠佳先生。高崎クンの一番上のお兄さんだね。クリニックはお父さんの院長先生と悠佳先生の2人が診てくれて、うちは最近じゃ悠佳先生に診てもらってるよね。
「あっ、悠佳先生こんにちは」
「宮ちゃん久し振り」
「さっちゃんの足、どうですか?」
「軽くはないけど普通の捻挫かな。しばらくは安静にしてもらって。でも性格的に大人しくっていうのはなかなか難しそうだね」
「そうなんですよー」
「自分のコンディションはどう?」
「あー、うちはたまに軽く痛むって感じで、走れないほど痛むのは月に1回あるかないかって」
「また酷くなったらちゃんと来てね、ただでさえ治りにくいんだから」
「はーい」
「三浦さーん」
「はーい」
今日の診察はさっちゃんでおしまいで、お仕事の閉めの作業なんかは後からやるって。って言うか、院長先生と悠佳先生は本当に物腰穏やかな性格と言うか雰囲気と言うか。表情も柔らかいの。なのに高崎クンは本当に正反対と言うか。
「そうだ宮ちゃん、悠哉は元気?」
「元気も元気ですよ。なーんにも変わりません」
「それならいいんだ。ほら、お盆にも正月にも帰らないし、最近全然会ってないからどうしてるかなと思って。お盆のお墓参りだけは勝手にしてるって祖父ちゃんが怒ってたけど」
「おじいちゃんに連絡があるような感じですか?」
「ううん。祖母ちゃんの好きな花を知ってるのは自分とあのクソガキだけだから、自分以外が供えればすぐわかるって言って怒ってた」
「もしかして高崎クンておじいちゃん似ですか?」
「そうだね。祖父ちゃんに似て頑固で強情で、照れ屋で」
「あー」
双子のお兄ちゃんに対するコンプレックスを拗らせた結果実家から距離を置いてる高崎クンだけど、別に家族や家のことは嫌いじゃないんだね。だから余計ややこしいことになってるみたいだけど。
「慧梨夏サーン、お会計終わりました!」
「はーい。じゃあ、帰りますか」
「それじゃあみんな、気を付けて」
「はーい、ありがとうございましたー」
杖をつきつき少々危なっかしくさっちゃんが歩く。うちと鵠っちはそれを恐る恐る見守って。悠佳先生もちょっと心配そうに自動ドアの向こうから覗いてる。うん、さっちゃんを見てたらちょっと心配にもなりますよね。
「えっと、さっちゃんどこまで送ろうか。星港は人が多くて大変だろうからもう少し人が少ない駅で降りる?」
end.
++++
2年前くらいにさっちゃんがケガをした話をやりましたが、その通院の様子です。
高崎の一番上のお兄さんに関しては、ハルカという名前は決まってたけど漢字が決まってなかったんですね。やっと決まりました
さて、この松葉杖でゴティ先輩がバンバンッてやられるのね。ゴサチかわいいけど最近やってないね。やりたいね
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