2019
■土曜深夜の労働事情
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カランコロンとドアベルが鳴って、わいわいとお客さんがやって来た。深夜0時を回って日曜日になったけど、気持ち的にはまだまだ土曜日ですよねー。ここは緑大近くのガソリンスタンドとコーヒーショップの併設店。24時間営業だから、深夜だろうとバイト中。
「お~、千葉ちゃんやん!」
「果林ういーす」
「いらっしゃいませー。って言うかみんなどうしたの?」
「ドームで野球見て、うどん食って、カラオケ行って、現在に至る」
「元気だねえ」
コーヒーショップの方にお客さんとしてやってきたのは同じサークルのゴティと、同じ佐藤ゼミの小田ちゃんとひらっちゃん。へえ、小田ちゃんとひらっちゃんは仲良いのは知ってたけど、ゴティも仲良かったんだね。
みんな適当な飲み物とフードを頼んで席に着けば、ここから始まるお喋り大会。見て来たっていう野球の話だとか、今後の草野球の予定についてなんかを延々と。野球だけじゃなくてサッカーや相撲の話までして本当に幅広い。
「って言うか千葉ちゃんよくやるわホンマ。こんな深夜にバイトとか」
「深夜の方が時給高いからね。基本の時給が1000円でしょ? それに1.25倍で1250円。そうでもなきゃ食費が追い付かないんですよねー」
「お前エンゲル係数バリデカいよな絶対」
「冗談じゃなくてそれ」
「えっ、でも真面目な話女子が深夜にバイトって危なくない?」
「裏に店長いるからね。厳密には1人ではないよね」
「あ、そうなんだ」
夜の10時から朝の6時まで働けば、大体1万円くらいにはなる。それで週2、3くらい働いてって感じ。ゴティの言うようにエンゲル係数がかなり大きくなってると思う。それだけバイト代がご飯に消えちゃってるから。
土日はさらに100円が時給に上乗せされるから、結構な額になるよね。年末調整とかそういうのが面倒になるけど、働かざる者食うべからずって言って親はアタシのバイトを制限しようとしない。普通は103万超えないようにとかって言われるんだけどね。
「って言うか喋ってないで真面目に働けよー」
「お客さんが来たらレジに戻りますぅー」
深夜って結構緩いのが良かったりする。何が緩いって、人の動きだとか、雰囲気だとか。今日みたいなこともあるし全く人が来ないってワケじゃないけどお昼とかよりは全然人が少ない。まあ、昼に出来ないことをやるのが深夜の働き方でもあるよね。
次の朝のための仕込みだとか、マシンメンテナンスだとか。どっちかと言うとそっちの方が主かもしれない。最近では深夜のワンオペをしないようにって感じで店を回してるから、店長はそれなら女の子の方に回るよねって言ってアタシと一緒に入ることが多い。
深夜の緩さの一因がこの店長かもしれない。フランチャイズチェーンの店とかだと普通は本部とかが上にあって、その意向に従うんだと思う。だけどウチの店長はどうもいい加減と言うか。本部の言うことなんて気にしてないと言うか。自由ですよねー。
「って言うかさ果林お前さ、確か深夜に働くために資格とったとか言ってなかったか?」
「そーね。乙四取ったよ」
「オツヨン?」
「危険物取扱者の乙種四類だね。セルフスタンドとかだと資格のない人がガソリンを扱うじゃん、それが出来るのは資格のある人が監督してるからなんだよ」
「へー」
「そーいや俺そろそろガソリン入れなきゃいけなかったわ。まあ帰り入れてくわ」
そうそう、アタシ乙四取ってるから基本の時給がちょっと高くなってるんだよね。普通は1000円も行かなかったはず。まあね、食費のためなら勉強もしますよ。でもそれまで法律とか化学とかの勉強なんて全然したことなかったから難しかったけどさあ。何とか受かりましたよ。
「千葉ちゃーん、エスプレッソM-」
「はーい」
裏から眠そうに店長が出て来てアタシにエスプレッソを頼むのがいつもの感じ。大体裏でネサフしながらモニターを見てるんだけど、仮眠を取ったり書類仕事をするのもこの時間。昼はあんまりゆっくり仕事出来ないみたい。
「あっ、友達?」
「そうです、大学のサークルとゼミの」
「そう。千葉ちゃんもほどほどに様子見て休んだりしてね」
「はーい」
店長はエスプレッソを持ってまた裏に引き返して行った。ほどほどに様子を見てたまに交代したりね。大体2時ごろに1回ちょっとしたフードを作って食べたりとかね。俗に言うまかないってヤツ? でも今はみんなと喋ってるから働いてる感覚がない。
「店長お喋りに何も言わんの!?」
「あんまり言わないよね。深夜は大体こんな感じ」
「時給いくらだっけ」
「1250円」
「バリ高いやん!」
「何度でも言うけど果林の場合ほぼ食費ね」
「しょうがないよね、ご飯食べなきゃ生きていけないんだもん」
「つか飯以外に金の使い道ねーの?」
「そりゃ服買ったりガソリン代とかいろいろありますよ。って言うか、この後みんなどうするの?」
「あー、全然考えてなかった。どーする小田ちゃんひらっちゃん」
「どうする? 帰るにしてもひらっちゃんがもう終電ないよね」
「あーそうじゃんね。カラオケ戻って仮眠取るかー?」
何にせよまだまだアタシの今日のシフトは始まったばっかり。お客さんが来る気配はあんまりないけど、喋ってる3人がいるからまだBGM代わりになって退屈しない感じ。この後はマシンメンテとケーキカットをして、それから店内もめっちゃ綺麗にしてって感じかな。新聞の整理も忘れちゃいけない。
「そー言えば最近カラオケ行ってないなー。高ピー先輩誘ってみようかなー」
「えっ、お前飯以外に金使うの!?」
「使いますぅー」
end.
++++
久々に果林のバイト先からお送りしております。かなり久し振り。昔は結構やってたんだけどね。(佐竹)店長も久し振り。
小田ちゃんと店長(ひら)は仲良しだけど、ゴティ先輩も仲良しっていうのはどこかの話でやったようでどうだったかなっていう記憶。
MBCC勢のカラオケの話とか昔やろうとしてたかやってたか、その響きも最早懐かしいですね
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カランコロンとドアベルが鳴って、わいわいとお客さんがやって来た。深夜0時を回って日曜日になったけど、気持ち的にはまだまだ土曜日ですよねー。ここは緑大近くのガソリンスタンドとコーヒーショップの併設店。24時間営業だから、深夜だろうとバイト中。
「お~、千葉ちゃんやん!」
「果林ういーす」
「いらっしゃいませー。って言うかみんなどうしたの?」
「ドームで野球見て、うどん食って、カラオケ行って、現在に至る」
「元気だねえ」
コーヒーショップの方にお客さんとしてやってきたのは同じサークルのゴティと、同じ佐藤ゼミの小田ちゃんとひらっちゃん。へえ、小田ちゃんとひらっちゃんは仲良いのは知ってたけど、ゴティも仲良かったんだね。
みんな適当な飲み物とフードを頼んで席に着けば、ここから始まるお喋り大会。見て来たっていう野球の話だとか、今後の草野球の予定についてなんかを延々と。野球だけじゃなくてサッカーや相撲の話までして本当に幅広い。
「って言うか千葉ちゃんよくやるわホンマ。こんな深夜にバイトとか」
「深夜の方が時給高いからね。基本の時給が1000円でしょ? それに1.25倍で1250円。そうでもなきゃ食費が追い付かないんですよねー」
「お前エンゲル係数バリデカいよな絶対」
「冗談じゃなくてそれ」
「えっ、でも真面目な話女子が深夜にバイトって危なくない?」
「裏に店長いるからね。厳密には1人ではないよね」
「あ、そうなんだ」
夜の10時から朝の6時まで働けば、大体1万円くらいにはなる。それで週2、3くらい働いてって感じ。ゴティの言うようにエンゲル係数がかなり大きくなってると思う。それだけバイト代がご飯に消えちゃってるから。
土日はさらに100円が時給に上乗せされるから、結構な額になるよね。年末調整とかそういうのが面倒になるけど、働かざる者食うべからずって言って親はアタシのバイトを制限しようとしない。普通は103万超えないようにとかって言われるんだけどね。
「って言うか喋ってないで真面目に働けよー」
「お客さんが来たらレジに戻りますぅー」
深夜って結構緩いのが良かったりする。何が緩いって、人の動きだとか、雰囲気だとか。今日みたいなこともあるし全く人が来ないってワケじゃないけどお昼とかよりは全然人が少ない。まあ、昼に出来ないことをやるのが深夜の働き方でもあるよね。
次の朝のための仕込みだとか、マシンメンテナンスだとか。どっちかと言うとそっちの方が主かもしれない。最近では深夜のワンオペをしないようにって感じで店を回してるから、店長はそれなら女の子の方に回るよねって言ってアタシと一緒に入ることが多い。
深夜の緩さの一因がこの店長かもしれない。フランチャイズチェーンの店とかだと普通は本部とかが上にあって、その意向に従うんだと思う。だけどウチの店長はどうもいい加減と言うか。本部の言うことなんて気にしてないと言うか。自由ですよねー。
「って言うかさ果林お前さ、確か深夜に働くために資格とったとか言ってなかったか?」
「そーね。乙四取ったよ」
「オツヨン?」
「危険物取扱者の乙種四類だね。セルフスタンドとかだと資格のない人がガソリンを扱うじゃん、それが出来るのは資格のある人が監督してるからなんだよ」
「へー」
「そーいや俺そろそろガソリン入れなきゃいけなかったわ。まあ帰り入れてくわ」
そうそう、アタシ乙四取ってるから基本の時給がちょっと高くなってるんだよね。普通は1000円も行かなかったはず。まあね、食費のためなら勉強もしますよ。でもそれまで法律とか化学とかの勉強なんて全然したことなかったから難しかったけどさあ。何とか受かりましたよ。
「千葉ちゃーん、エスプレッソM-」
「はーい」
裏から眠そうに店長が出て来てアタシにエスプレッソを頼むのがいつもの感じ。大体裏でネサフしながらモニターを見てるんだけど、仮眠を取ったり書類仕事をするのもこの時間。昼はあんまりゆっくり仕事出来ないみたい。
「あっ、友達?」
「そうです、大学のサークルとゼミの」
「そう。千葉ちゃんもほどほどに様子見て休んだりしてね」
「はーい」
店長はエスプレッソを持ってまた裏に引き返して行った。ほどほどに様子を見てたまに交代したりね。大体2時ごろに1回ちょっとしたフードを作って食べたりとかね。俗に言うまかないってヤツ? でも今はみんなと喋ってるから働いてる感覚がない。
「店長お喋りに何も言わんの!?」
「あんまり言わないよね。深夜は大体こんな感じ」
「時給いくらだっけ」
「1250円」
「バリ高いやん!」
「何度でも言うけど果林の場合ほぼ食費ね」
「しょうがないよね、ご飯食べなきゃ生きていけないんだもん」
「つか飯以外に金の使い道ねーの?」
「そりゃ服買ったりガソリン代とかいろいろありますよ。って言うか、この後みんなどうするの?」
「あー、全然考えてなかった。どーする小田ちゃんひらっちゃん」
「どうする? 帰るにしてもひらっちゃんがもう終電ないよね」
「あーそうじゃんね。カラオケ戻って仮眠取るかー?」
何にせよまだまだアタシの今日のシフトは始まったばっかり。お客さんが来る気配はあんまりないけど、喋ってる3人がいるからまだBGM代わりになって退屈しない感じ。この後はマシンメンテとケーキカットをして、それから店内もめっちゃ綺麗にしてって感じかな。新聞の整理も忘れちゃいけない。
「そー言えば最近カラオケ行ってないなー。高ピー先輩誘ってみようかなー」
「えっ、お前飯以外に金使うの!?」
「使いますぅー」
end.
++++
久々に果林のバイト先からお送りしております。かなり久し振り。昔は結構やってたんだけどね。(佐竹)店長も久し振り。
小田ちゃんと店長(ひら)は仲良しだけど、ゴティ先輩も仲良しっていうのはどこかの話でやったようでどうだったかなっていう記憶。
MBCC勢のカラオケの話とか昔やろうとしてたかやってたか、その響きも最早懐かしいですね
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