2019
■Friday Knight Quest
++++
「りっちゃん、これは俗に言う「今日は帰りたくない」ってヤツだと思うんだよ」
「やァー、間違いないスわァー……」
本日はMMPの新歓コンパが開かれていた。一次会の飲みが終了して、現在は店の前で次について話し合う段階だ。この店は電車通学組の大多数が使う星港鉄道の駅に程近く、このまま解散になっても別に困らない立地。徒歩組はまたみんなで固まって帰る感じになるかな。
さて、僕とりっちゃんが何を見てドン引きしているのかという話だね。飲み会の最中からそれはもういちゃいちゃいちゃいちゃしていた菜月さんと野坂だね。いや、この場合酒に酔った菜月さんが一方的に野坂に絡んでいたと言う方が正しいのだけど。
初夏とは言え、薄着だと夜はまだ少し肌寒く感じることもある。寒さに強い菜月さんにしても例外ではなかったらしく、野坂の背中に頬を寄せてピタッとくっついてるんだ。暗くてよく見えないけれど、野坂はきっと死にそうな顔をしているに違いない。
飲み会の最中から僕とりっちゃんは酒癖の悪い菜月さんの避雷針として野坂を犠牲にしていたのだけど、ここまで来ると哀れと言うか、何と言うか。インターフェイスでは常識になっている野坂の片想いだけど、どうやらMMPでは僕とりっちゃんしか気付いていないようだからね。
「後日僕は2人の今日の様子を然るべきところに報告することになると思うのだけど、きっとかの方もドン引きすると思うんだよ」
「そーゆーのをわざとヤってるあざとい女の話も聞きヤすけど、菜月先輩には他意がないところが野坂にはしんどいところスね」
「……まあ、見る感じみんな二次会に行く元気もなさそうだね」
「そースね。ヒロとこーたももう帰る感じスもんね」
「みんな、一旦集合しようか? あまり広がらないようにね」
サークルの代表としてみんなを集め、今後についての指針を発表する。サークルとしての二次会はなし。帰りたい人はここから徒歩2分のところにある駅から帰るように。まだ飲みたいとか終わる気のない人は僕の部屋に来てもいいけれど、という内容。
りっちゃんは僕の部屋に泊まるそうだ。ん、今日はこのままこのテの話とかいろいろなことで盛り上がりそうだね。三井は自分で帰ってもらおう。星鉄組はこのまま帰りまーすとヒロ、神崎、奈々が固まる。うん、3人いるなら大丈夫そうかな。さて、残る問題はもう1人の星鉄組だ。
「野坂、お前はどうする」
「どうすると言われましても、この状況でまっすぐ帰れる気がしないのですが」
「勇者野坂、これはお前に課せられたクエストだ。姫を城まで安全に送り届けるように」
「……承りました」
「わァーい、野坂ガンバレー」
「律~…!」
「ちなみに野坂、明日は普通に昼放送の収録だよな?」
「そうですね。オールコースを想定して準備は出来ています」
気付いたら菜月さんの腕が野坂の腰に回って、バックハグ状態になってるんだよね。りっちゃんの応援は「ガンバレー」と言うか、厳密には「野坂生きろ」くらいの意味合いだと思う。まあ、僕も野坂は何もしないという信頼をして家まで送るよう指示したワケだし、後日ちゃんと報告は受けないとね!
「圭斗先輩、我々の乗る電車はもう10分前なので、そろそろ駅に移動しようと思います」
「ん、そうか。それじゃあ3人は気を付けて」
「お疲れさまでーす」
「お疲れ様でしたッ!」
「……ん、とりあえず僕たちも移動しようか?」
「そーしヤしョー」
「菜月先輩、帰りますよ」
「んー」
「あの、菜月先輩? ひょっとしなくても、少々おねむでいらっしゃいますか…?」
菜月さんはとうとう野坂の背中に頬を付けたまま立ち寝スタイルになってしまった。だけど、僕たちは全員酒が入ってるし車を運転することは出来ない。そうなると、うとうとして足取りが怪しい菜月さんを安全に家まで送り届けるには、という問題が発生するワケで。
「菜月先輩、帰りますよ。荷物を預からせていただいてよろしいでしょうか」
「んー」
「律、お前荷物担当な。俺のも頼む」
「りょうかーいス」
「菜月先輩、腕を首の方に回してもらってよろしいですか?」
おねむな菜月さんをバックハグされついでにおんぶに持ち込むとはさすがだね。これも野坂だからこそ出来ることかな。僕は体格や力に自信がないからなかなか女性を背負ってアップダウンの激しい徒歩30分を行こうとは思わないけど、お前はそれが出来ると言うのか。さすがだな。
「野坂、お前はぐだぐだになるほど飲んでないんだな」
「と言うか、俺が注文したカルピスサワーが悉く菜月先輩に強奪されまして……ほとんど飲めていないという方が正しいです」
「まあ、僕たちはそんなお前を遠目から眺めていたワケだけど」
「助けてくださいと視線を送っていたのですが」
「ん、あんなに濃密な2人の世界を構築されたら近付き難くてね」
「はは……」
菜月さんの酒癖の悪さは今に始まったことじゃない。人の頭に塩を振りかけたり割り箸を投擲したり、自分の頭を壁に打ち付けたりしていた昔のことを想うと今ではまだ良くなった方だけど、まだまだ近付く勇気はないね。
野坂の菜月さんに対する片想いにしても今に始まったことではないけれど、飲み会の度にこういう光景を見せられるとね。酒が人を暴くのだという言葉もあるけれど、菜月さんの「日頃は肩に力を入れてるけど、本当は人に甘えたい」という願望が滲み出てるのかなと。酔っていても絡む人は選ぶようだし。
「ま、あれスわ。お前は菜月先輩からある一定以上の信頼を得てると考えていーんじャないスか?」
「クソッ、律め。他人事だと思って」
「まァ他人事スからね」
end.
++++
MMPの飲み会もといお酒のある食事会は大体こんな感じだよ! 菜月さんもインターフェイスではあまりやらかさないけどね。
さて、ノサカです。いろいろしんどかっただろうな~と圭斗さんとりっちゃんは生暖かい目で見守ってたんですね
かの方がこの報告を受けたらどんなリアクションをするのやら。それもまた楽しみですね
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「りっちゃん、これは俗に言う「今日は帰りたくない」ってヤツだと思うんだよ」
「やァー、間違いないスわァー……」
本日はMMPの新歓コンパが開かれていた。一次会の飲みが終了して、現在は店の前で次について話し合う段階だ。この店は電車通学組の大多数が使う星港鉄道の駅に程近く、このまま解散になっても別に困らない立地。徒歩組はまたみんなで固まって帰る感じになるかな。
さて、僕とりっちゃんが何を見てドン引きしているのかという話だね。飲み会の最中からそれはもういちゃいちゃいちゃいちゃしていた菜月さんと野坂だね。いや、この場合酒に酔った菜月さんが一方的に野坂に絡んでいたと言う方が正しいのだけど。
初夏とは言え、薄着だと夜はまだ少し肌寒く感じることもある。寒さに強い菜月さんにしても例外ではなかったらしく、野坂の背中に頬を寄せてピタッとくっついてるんだ。暗くてよく見えないけれど、野坂はきっと死にそうな顔をしているに違いない。
飲み会の最中から僕とりっちゃんは酒癖の悪い菜月さんの避雷針として野坂を犠牲にしていたのだけど、ここまで来ると哀れと言うか、何と言うか。インターフェイスでは常識になっている野坂の片想いだけど、どうやらMMPでは僕とりっちゃんしか気付いていないようだからね。
「後日僕は2人の今日の様子を然るべきところに報告することになると思うのだけど、きっとかの方もドン引きすると思うんだよ」
「そーゆーのをわざとヤってるあざとい女の話も聞きヤすけど、菜月先輩には他意がないところが野坂にはしんどいところスね」
「……まあ、見る感じみんな二次会に行く元気もなさそうだね」
「そースね。ヒロとこーたももう帰る感じスもんね」
「みんな、一旦集合しようか? あまり広がらないようにね」
サークルの代表としてみんなを集め、今後についての指針を発表する。サークルとしての二次会はなし。帰りたい人はここから徒歩2分のところにある駅から帰るように。まだ飲みたいとか終わる気のない人は僕の部屋に来てもいいけれど、という内容。
りっちゃんは僕の部屋に泊まるそうだ。ん、今日はこのままこのテの話とかいろいろなことで盛り上がりそうだね。三井は自分で帰ってもらおう。星鉄組はこのまま帰りまーすとヒロ、神崎、奈々が固まる。うん、3人いるなら大丈夫そうかな。さて、残る問題はもう1人の星鉄組だ。
「野坂、お前はどうする」
「どうすると言われましても、この状況でまっすぐ帰れる気がしないのですが」
「勇者野坂、これはお前に課せられたクエストだ。姫を城まで安全に送り届けるように」
「……承りました」
「わァーい、野坂ガンバレー」
「律~…!」
「ちなみに野坂、明日は普通に昼放送の収録だよな?」
「そうですね。オールコースを想定して準備は出来ています」
気付いたら菜月さんの腕が野坂の腰に回って、バックハグ状態になってるんだよね。りっちゃんの応援は「ガンバレー」と言うか、厳密には「野坂生きろ」くらいの意味合いだと思う。まあ、僕も野坂は何もしないという信頼をして家まで送るよう指示したワケだし、後日ちゃんと報告は受けないとね!
「圭斗先輩、我々の乗る電車はもう10分前なので、そろそろ駅に移動しようと思います」
「ん、そうか。それじゃあ3人は気を付けて」
「お疲れさまでーす」
「お疲れ様でしたッ!」
「……ん、とりあえず僕たちも移動しようか?」
「そーしヤしョー」
「菜月先輩、帰りますよ」
「んー」
「あの、菜月先輩? ひょっとしなくても、少々おねむでいらっしゃいますか…?」
菜月さんはとうとう野坂の背中に頬を付けたまま立ち寝スタイルになってしまった。だけど、僕たちは全員酒が入ってるし車を運転することは出来ない。そうなると、うとうとして足取りが怪しい菜月さんを安全に家まで送り届けるには、という問題が発生するワケで。
「菜月先輩、帰りますよ。荷物を預からせていただいてよろしいでしょうか」
「んー」
「律、お前荷物担当な。俺のも頼む」
「りょうかーいス」
「菜月先輩、腕を首の方に回してもらってよろしいですか?」
おねむな菜月さんをバックハグされついでにおんぶに持ち込むとはさすがだね。これも野坂だからこそ出来ることかな。僕は体格や力に自信がないからなかなか女性を背負ってアップダウンの激しい徒歩30分を行こうとは思わないけど、お前はそれが出来ると言うのか。さすがだな。
「野坂、お前はぐだぐだになるほど飲んでないんだな」
「と言うか、俺が注文したカルピスサワーが悉く菜月先輩に強奪されまして……ほとんど飲めていないという方が正しいです」
「まあ、僕たちはそんなお前を遠目から眺めていたワケだけど」
「助けてくださいと視線を送っていたのですが」
「ん、あんなに濃密な2人の世界を構築されたら近付き難くてね」
「はは……」
菜月さんの酒癖の悪さは今に始まったことじゃない。人の頭に塩を振りかけたり割り箸を投擲したり、自分の頭を壁に打ち付けたりしていた昔のことを想うと今ではまだ良くなった方だけど、まだまだ近付く勇気はないね。
野坂の菜月さんに対する片想いにしても今に始まったことではないけれど、飲み会の度にこういう光景を見せられるとね。酒が人を暴くのだという言葉もあるけれど、菜月さんの「日頃は肩に力を入れてるけど、本当は人に甘えたい」という願望が滲み出てるのかなと。酔っていても絡む人は選ぶようだし。
「ま、あれスわ。お前は菜月先輩からある一定以上の信頼を得てると考えていーんじャないスか?」
「クソッ、律め。他人事だと思って」
「まァ他人事スからね」
end.
++++
MMPの飲み会もといお酒のある食事会は大体こんな感じだよ! 菜月さんもインターフェイスではあまりやらかさないけどね。
さて、ノサカです。いろいろしんどかっただろうな~と圭斗さんとりっちゃんは生暖かい目で見守ってたんですね
かの方がこの報告を受けたらどんなリアクションをするのやら。それもまた楽しみですね
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