2019
■一方その頃緑ヶ丘では
++++
「いっちー先輩おはよーございまーす」
「おざーっす」
「果林ゴティおはよー」
今日は元々サークル自体を休む予定だったけど、事態が事態だから顔を出すことに。ちなみにサークルを休もうと思っていた理由っていうのが今日が俺の誕生日だからデートをしますよとかそういうヤツ。慧梨夏にはちょっと遅れますと連絡を入れたので後から埋め合わせを。
さて、俺が急遽サークルに顔を出すことに決めた理由もまた大変なヤツ。詳しいことは明日話すんでとにかくちょっとだけでいいんでサークルに来てもらえませんかって果林から連絡が入って、講習会関係で何かあったかなと。昨日は対策委員の会議があったとは聞いてたから。
「講習会関係で何かあった?」
「もーう大アリもアリですよ! 昨日、野坂に三井サンから逆切れメールが送られてきたんです」
「あー……それは別に今に始まったことでもなくない? でもつばちゃんとかキレてなかった? 大丈夫?」
「それは野坂が「あの人の言うことは全部論破出来るから無視でいい」って話を戻してくれました」
「野坂みたいなド理系が論破とか言うとガチっぽくてこえーな」
「で、実際逆切れは別にいいんですけど、あの人が呼んでたプロのラジオパーソナリティーとかいう人が急遽来れなくなったって書いてたんですね、そのメールに」
「は!? だってもう2日前じゃんか!」
「まーその内容が俺らに伝わったのが2日前の夜なんで実質1日前っすね」
初心者講習会に向けて準備していた対策委員の会議にミッツが乱入して荒らしまくってるという話は聞いていた。果林からも聞いていたし、MBCCサークル室への不法侵入の件で話し合っていた向島勢ともどうにかしないとなーとは話していた。
実際俺にも講師から降りろとか講習内容がどうとかっていうメールが来た。まあ、当然無視してるけど。それでも一応は招聘する体で話を進めていたそのプロの人とかいう奴が、2日前になってドタキャンって。バカみてーな話じゃんか。
ついこないだ高ピーをディスられた果林がとうとうブチ切れて「お前がそこまで言うならそのプロとかいう奴を連れて来い」と言ってしまったばっかりに、高ピーは本当に講師を降りた。果林はいざという時のために自分が代打で講習が出来るよう高ピーからスパルタ訓練を受けてたけど、それでもやっぱりね。
全体講習の枠に入る予定だったプロ講師とかいう奴の枠が空いて、さてどうすると昨日の対策委員はそのテーマを重点的に話し合っていたそうだ。そりゃそうだよな。俺はミキサーのことならともかく全体講習となると厳しいし、ビッキーも今からだとさすがにと。
「その件も最終的には野坂がなっち先輩に頼んでくれて、なっち先輩が講師をやってくれることになりました」
「おー、なっちさんが講師やってくれるなら結果オーライじゃん。良かったね2人とも」
「ホントですよ」
「ガチでそれっす」
アナウンサー講師の最有力候補が高ピーだったからその陰に隠れてたみたいだけど、言ってなっちさんも“アナウンサーの双璧”の一角だからね。全体講習を担当する講師としては箔がありますよ。つかガチでなっちさんっていう強キャラが残っててよかった。
「でも、いくらなっちさんでも急に全体講習なんて大丈夫かな」
「その辺は今頃野坂が打ち合わせてるかと」
「つかなっちさんの予定空いてて良かったね」
「野坂曰く、なっち先輩て土曜は基本昼放送の収録以外予定ないらしいっす」
「毎回野坂がバカみたいに遅刻してくるから他に予定が入れられないんですってー」
「あー……何か納得しちゃうけど俺も遅刻癖があるだけに笑えねーわ」
「あっ、それでですねいっちー先輩」
「ん?」
「昨日野坂が言ってたんですけど、全体講習でやって欲しいこと? 明日の朝それをいっちー先輩に見せるそうなんで、もしミキサー視点で足りないことがあれば補足をお願いしまーすだそうでーす」
「それは了解です」
果林とゴティからは他に、講習会の最初の方で魅せる見本番組はなっちさんと野坂が既存の番組を再編集してやってくれるというような報告を受けた。何かプロ講師とかいう奴がマルチでやるとかやらないとかっていう話らしかったから全然準備してなかったし、それは正直助かった。
結果として対策委員の子たちが最初に考えていたのと近い形の講習会になりそうな感じだ。強いて言えば全体講習の講師が高ピーからなっちさんに変わったくらいで、その他に関しては特に何も変わってなくないかと。だけど、問題はドタキャン+逆切れメールを送って来た張本人だ。
これだけ対策委員を引っ掻き回すだけ回して場を荒らした上に対策委員の子たちやこれまでにディスられた人たちの尊厳みてーなモンまで完全に踏み躙りやがった奴だ。俺のことは別にいいんだけど、テメーの思い込みと被害妄想でどんだけ人にメーワクかけてんだっつー話で。
「あ、野坂からLINEだ」
「何て?」
「えーとねえ、まず「菜月先輩素晴らし過ぎる」ってのと、あっ、これはいっちー先輩にも関係ありますね。明日、圭斗先輩が講習会を見に来るそうです」
「あっマジで? 圭斗来るんだ」
「最悪の事態を想定して、だそうです。それから、今後のことについて定例会三役の皆さんで話し合いたいねというようなことを言ってたみたいです」
「了解。果林、返信するならついでにミキサー視点での補足了解ですっつっといてくれる?」
「はーい」
野坂が「菜月先輩素晴らし過ぎる」って送って来たことからするに、なっちさんは俺たちの想像よりも対策委員の期待に応えた講習内容を出してきたのかな? 俺も明日の朝それを見せてもらうのが楽しみだ。
明日になってみないと講習会がどうなるかはわからないけど、何事もなければいいなって思う。上手く行くといいながその次になってしまうのがホント、要らんコトしてくれたなあの野郎って。いや、アイツを気にしててもしょうがない。講習を受ける1年生の子が一番大事。
「あっ、いっちー先輩スイマセン今日誕生日デートなのに」
「言ってたっけ?」
「そもそも高ピー先輩がいっちー先輩が誕生日デートだから言いたいことがあるなら絶対早いうちに連絡しとけって言ってくれたんですよ」
「高ピ~…!」
end.
++++
講習会前日は向島の話になりがちなので、タイトル通りに「一方その頃緑ヶ丘では」です。
今日はいち氏の誕生日なので本来はデート休みで高崎もそれを送り出すのが通例ですが、今年はちょっと違ったようです。
いち氏が「プロ講師とかいう奴」となかなかに辛辣。事情を知らないので完全に敵視じゃないけど、は?って感じで見てますね
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「いっちー先輩おはよーございまーす」
「おざーっす」
「果林ゴティおはよー」
今日は元々サークル自体を休む予定だったけど、事態が事態だから顔を出すことに。ちなみにサークルを休もうと思っていた理由っていうのが今日が俺の誕生日だからデートをしますよとかそういうヤツ。慧梨夏にはちょっと遅れますと連絡を入れたので後から埋め合わせを。
さて、俺が急遽サークルに顔を出すことに決めた理由もまた大変なヤツ。詳しいことは明日話すんでとにかくちょっとだけでいいんでサークルに来てもらえませんかって果林から連絡が入って、講習会関係で何かあったかなと。昨日は対策委員の会議があったとは聞いてたから。
「講習会関係で何かあった?」
「もーう大アリもアリですよ! 昨日、野坂に三井サンから逆切れメールが送られてきたんです」
「あー……それは別に今に始まったことでもなくない? でもつばちゃんとかキレてなかった? 大丈夫?」
「それは野坂が「あの人の言うことは全部論破出来るから無視でいい」って話を戻してくれました」
「野坂みたいなド理系が論破とか言うとガチっぽくてこえーな」
「で、実際逆切れは別にいいんですけど、あの人が呼んでたプロのラジオパーソナリティーとかいう人が急遽来れなくなったって書いてたんですね、そのメールに」
「は!? だってもう2日前じゃんか!」
「まーその内容が俺らに伝わったのが2日前の夜なんで実質1日前っすね」
初心者講習会に向けて準備していた対策委員の会議にミッツが乱入して荒らしまくってるという話は聞いていた。果林からも聞いていたし、MBCCサークル室への不法侵入の件で話し合っていた向島勢ともどうにかしないとなーとは話していた。
実際俺にも講師から降りろとか講習内容がどうとかっていうメールが来た。まあ、当然無視してるけど。それでも一応は招聘する体で話を進めていたそのプロの人とかいう奴が、2日前になってドタキャンって。バカみてーな話じゃんか。
ついこないだ高ピーをディスられた果林がとうとうブチ切れて「お前がそこまで言うならそのプロとかいう奴を連れて来い」と言ってしまったばっかりに、高ピーは本当に講師を降りた。果林はいざという時のために自分が代打で講習が出来るよう高ピーからスパルタ訓練を受けてたけど、それでもやっぱりね。
全体講習の枠に入る予定だったプロ講師とかいう奴の枠が空いて、さてどうすると昨日の対策委員はそのテーマを重点的に話し合っていたそうだ。そりゃそうだよな。俺はミキサーのことならともかく全体講習となると厳しいし、ビッキーも今からだとさすがにと。
「その件も最終的には野坂がなっち先輩に頼んでくれて、なっち先輩が講師をやってくれることになりました」
「おー、なっちさんが講師やってくれるなら結果オーライじゃん。良かったね2人とも」
「ホントですよ」
「ガチでそれっす」
アナウンサー講師の最有力候補が高ピーだったからその陰に隠れてたみたいだけど、言ってなっちさんも“アナウンサーの双璧”の一角だからね。全体講習を担当する講師としては箔がありますよ。つかガチでなっちさんっていう強キャラが残っててよかった。
「でも、いくらなっちさんでも急に全体講習なんて大丈夫かな」
「その辺は今頃野坂が打ち合わせてるかと」
「つかなっちさんの予定空いてて良かったね」
「野坂曰く、なっち先輩て土曜は基本昼放送の収録以外予定ないらしいっす」
「毎回野坂がバカみたいに遅刻してくるから他に予定が入れられないんですってー」
「あー……何か納得しちゃうけど俺も遅刻癖があるだけに笑えねーわ」
「あっ、それでですねいっちー先輩」
「ん?」
「昨日野坂が言ってたんですけど、全体講習でやって欲しいこと? 明日の朝それをいっちー先輩に見せるそうなんで、もしミキサー視点で足りないことがあれば補足をお願いしまーすだそうでーす」
「それは了解です」
果林とゴティからは他に、講習会の最初の方で魅せる見本番組はなっちさんと野坂が既存の番組を再編集してやってくれるというような報告を受けた。何かプロ講師とかいう奴がマルチでやるとかやらないとかっていう話らしかったから全然準備してなかったし、それは正直助かった。
結果として対策委員の子たちが最初に考えていたのと近い形の講習会になりそうな感じだ。強いて言えば全体講習の講師が高ピーからなっちさんに変わったくらいで、その他に関しては特に何も変わってなくないかと。だけど、問題はドタキャン+逆切れメールを送って来た張本人だ。
これだけ対策委員を引っ掻き回すだけ回して場を荒らした上に対策委員の子たちやこれまでにディスられた人たちの尊厳みてーなモンまで完全に踏み躙りやがった奴だ。俺のことは別にいいんだけど、テメーの思い込みと被害妄想でどんだけ人にメーワクかけてんだっつー話で。
「あ、野坂からLINEだ」
「何て?」
「えーとねえ、まず「菜月先輩素晴らし過ぎる」ってのと、あっ、これはいっちー先輩にも関係ありますね。明日、圭斗先輩が講習会を見に来るそうです」
「あっマジで? 圭斗来るんだ」
「最悪の事態を想定して、だそうです。それから、今後のことについて定例会三役の皆さんで話し合いたいねというようなことを言ってたみたいです」
「了解。果林、返信するならついでにミキサー視点での補足了解ですっつっといてくれる?」
「はーい」
野坂が「菜月先輩素晴らし過ぎる」って送って来たことからするに、なっちさんは俺たちの想像よりも対策委員の期待に応えた講習内容を出してきたのかな? 俺も明日の朝それを見せてもらうのが楽しみだ。
明日になってみないと講習会がどうなるかはわからないけど、何事もなければいいなって思う。上手く行くといいながその次になってしまうのがホント、要らんコトしてくれたなあの野郎って。いや、アイツを気にしててもしょうがない。講習を受ける1年生の子が一番大事。
「あっ、いっちー先輩スイマセン今日誕生日デートなのに」
「言ってたっけ?」
「そもそも高ピー先輩がいっちー先輩が誕生日デートだから言いたいことがあるなら絶対早いうちに連絡しとけって言ってくれたんですよ」
「高ピ~…!」
end.
++++
講習会前日は向島の話になりがちなので、タイトル通りに「一方その頃緑ヶ丘では」です。
今日はいち氏の誕生日なので本来はデート休みで高崎もそれを送り出すのが通例ですが、今年はちょっと違ったようです。
いち氏が「プロ講師とかいう奴」となかなかに辛辣。事情を知らないので完全に敵視じゃないけど、は?って感じで見てますね
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