2019
■青空ランチのカラフルパレット
++++
私立緑ヶ丘大学には2ヵ所の食堂と購買、コンビニ、カレー&パスタショップなどなど飯を買ったり食ったりする場所はまあまあある。その中でも俺が愛用しているのは第2食堂の脇で売っているテイクアウト丼と、第1学食の2階にある量り売り弁当のグラムワンだ。
如何せん学生数がバカみたいにいやがるから学食の席に座ってゆっくり飯を食うことなんか出来やしねえ。それならテイクアウト系で飯を買って、晴れているなら外で飯を食った方が気分もいいし座れるし、いいこと尽くしだと結論付けた。
一時期に比べれば人こそ減ったが、それでも今日は外で食った方がいい陽気だ。風もいい感じだし、暑すぎず寒すぎず。問題点があるとすれば昼からビールが飲みたくなる雰囲気だということくらいか。授業やサークル、バイトがなければ絶対に飲んでいる。
「さーて、何を食うかな」
「何にするかなー。おっ、たこ焼きあと5つじゃん! 3つゲットー」
量り売りの弁当に使うトレーは大中小の3種類があって、俺は大体いつも中トレーに中ライスを選択する。緑ヶ丘大学の大だのLだのというサイズは食うことも仕事か強化のうちと言われるアスリートか果林のような奴向けのバカみたいな量だ。俺のような一般的男子は中くらいでいい。
一緒におかずを選んでいる明るい髪色のパーマ野郎は飯野晋哉という同ゼミのダチで、大学祭実行委員会のナンバーツーを張っている奴だ。コイツが選ぶおかずは大体いつも茶色がメインで色がない。今もたこ焼きや唐揚げといったものを中心にチョイスしている。
一方で俺はと言えば、グラムワンでは普段あまり食べない物を中心に選ぶようにしている。と言うか普通に美味いから選ぶと言うのもある。ほうれん草のお浸しや揚げ出し豆腐、筑前煮など、和食系のメニューが地味にうめえんだ。
「お前まーた健康志向の和食かよ」
「健康志向ではない。普通にうめえからな。お、卵焼きが来た」
「卵焼きかー……卵焼きって朝飯のバイキングメニューじゃね?」
「ビジホとかのな。つか言うほど朝飯のバイキングなんか食ったことねえしな」
「コンビニとかでも出来合いの卵焼きの袋とか売ってんじゃんか、あれは食う気しねえわ。卵焼きはちゃんと焼いて欲しい」
「言っても、焼いたモンが袋に入ってるんだけどな」
「うるせーよお前は!」
「おっ、この梅しそチーズつくねっつーの美味そう。食ってみるか」
今日のおかずのメインにはこの梅しそチーズつくねを据え、空いたスペースを埋めるように残りを組み立てていく。卵焼きを取ったし、次は野菜系が欲しいところ。ひじきの煮物とほうれん草のツナ胡麻和えでいいか。鮭も入れとこう。
飯野のおかずトレーはたこ焼きにフライドポテト、唐揚げ、トンカツで埋め尽くされていて、飯と言うよりは軽食のようだ。まあ、好き好きに選ぶことが出来るのもこの量り売りシステムのいいところだろう。個人的にはカレーも量り売りで売って欲しい。
「今日はトータル542円か。まあまあだな」
「くそー……俺672円」
「唐揚げとトンカツは重くなるだろ。ただでさえカツは1グラム2円だぞ」
「たまにすげー揚げ物食いたくなることあるんだよな。今日がそれだった」
「わからないでもないけどな。つかこんなトレー作っといてなんだけど、ぶっちゃけ俺カツカレー食いたいんだよな」
「あー、いいなカツカレー」
「クワトロのカレーもテイクアウト出来るようにしてほしい。飯とトッピングはあるんだから」
買った飯を持って向かうのは、学生課のある建物の入り口前に広がる石の階段だ。目の前には芝生の敷かれた池が広がり、いい風がゆるりと吹き抜ける。寒い時期だと階段に座るとケツが冷てえが、今の季節だとそんなこともなく快適に飯を食えるのだ。
陣取った階段の脇にはスピーカーが設置されている。ここから流れているのは左に目をやったところにあるセンタービルの中、ガラス張りのラジオブースでやっている佐藤ゼミの昼放送だ。何気に人を選ぶ番組だが、こうして外にも派手に流してやがる。
昼放送と言えば第1学食でMBCCのそれもやっているが、さすがに毎回は聞けていない。ほぼ毎回聞くのはそこのぼっち席で飯を食っている岡崎に託してある。何か変わったことがあれば連絡が入るようにはなっているし、今日のところは青空ランチだ。
「つくねうめえ」
「くーっ! 唐揚げうめーっ! ビール飲みてーっ!」
「こんなにいい天気でいい陽気で、目の前には池。飲みてえよな」
「ま、3限があるんだけどな」
「つか3限って教室が飯臭せえんだよな。今の時期なら換気しろっつーの」
「それな。学食に席ねえから持ち込むのはわかるけど、空気籠るし何かしといて欲しいわ窓開けるとか」
「金が有り余ってるなら空気清浄機つけるとかな」
「あー、それもアリだな」
青空ランチのいいところは誰に気兼ねすることなく食べられることだと思う。混雑した食堂でうろうろして席を探す必要もなければ、次の講義のある教室で飯を食って空気をどうこうなどと気にすることもない。雨が降った時はさすがにもう少し考えるが。しばらくしたら梅雨か。でもその頃には今よりもっと人は減るだろう。
「今日の晩飯カツカレーにしようかな」
「クワトロ?」
「クワトロでもいいし、外に食いに出てもいいし」
「大学から徒歩5分、バイク2分はこれが出来るからいいよな」
「てめェも原付10分以内なんだから余裕だろ」
end.
++++
たまにはこういう話も。高崎と飯野の青空ランチ。何気に飯野は今期初登場かな?
量り売りだけじゃなくて、ビュッフェとかでもそういう選び方をするのかしら。いつかやってみたいところ。
でも本当はカツカレーが食べたいのね。いいじゃない、金曜日のカレーライス。サークル後のごはんかしら。
.
++++
私立緑ヶ丘大学には2ヵ所の食堂と購買、コンビニ、カレー&パスタショップなどなど飯を買ったり食ったりする場所はまあまあある。その中でも俺が愛用しているのは第2食堂の脇で売っているテイクアウト丼と、第1学食の2階にある量り売り弁当のグラムワンだ。
如何せん学生数がバカみたいにいやがるから学食の席に座ってゆっくり飯を食うことなんか出来やしねえ。それならテイクアウト系で飯を買って、晴れているなら外で飯を食った方が気分もいいし座れるし、いいこと尽くしだと結論付けた。
一時期に比べれば人こそ減ったが、それでも今日は外で食った方がいい陽気だ。風もいい感じだし、暑すぎず寒すぎず。問題点があるとすれば昼からビールが飲みたくなる雰囲気だということくらいか。授業やサークル、バイトがなければ絶対に飲んでいる。
「さーて、何を食うかな」
「何にするかなー。おっ、たこ焼きあと5つじゃん! 3つゲットー」
量り売りの弁当に使うトレーは大中小の3種類があって、俺は大体いつも中トレーに中ライスを選択する。緑ヶ丘大学の大だのLだのというサイズは食うことも仕事か強化のうちと言われるアスリートか果林のような奴向けのバカみたいな量だ。俺のような一般的男子は中くらいでいい。
一緒におかずを選んでいる明るい髪色のパーマ野郎は飯野晋哉という同ゼミのダチで、大学祭実行委員会のナンバーツーを張っている奴だ。コイツが選ぶおかずは大体いつも茶色がメインで色がない。今もたこ焼きや唐揚げといったものを中心にチョイスしている。
一方で俺はと言えば、グラムワンでは普段あまり食べない物を中心に選ぶようにしている。と言うか普通に美味いから選ぶと言うのもある。ほうれん草のお浸しや揚げ出し豆腐、筑前煮など、和食系のメニューが地味にうめえんだ。
「お前まーた健康志向の和食かよ」
「健康志向ではない。普通にうめえからな。お、卵焼きが来た」
「卵焼きかー……卵焼きって朝飯のバイキングメニューじゃね?」
「ビジホとかのな。つか言うほど朝飯のバイキングなんか食ったことねえしな」
「コンビニとかでも出来合いの卵焼きの袋とか売ってんじゃんか、あれは食う気しねえわ。卵焼きはちゃんと焼いて欲しい」
「言っても、焼いたモンが袋に入ってるんだけどな」
「うるせーよお前は!」
「おっ、この梅しそチーズつくねっつーの美味そう。食ってみるか」
今日のおかずのメインにはこの梅しそチーズつくねを据え、空いたスペースを埋めるように残りを組み立てていく。卵焼きを取ったし、次は野菜系が欲しいところ。ひじきの煮物とほうれん草のツナ胡麻和えでいいか。鮭も入れとこう。
飯野のおかずトレーはたこ焼きにフライドポテト、唐揚げ、トンカツで埋め尽くされていて、飯と言うよりは軽食のようだ。まあ、好き好きに選ぶことが出来るのもこの量り売りシステムのいいところだろう。個人的にはカレーも量り売りで売って欲しい。
「今日はトータル542円か。まあまあだな」
「くそー……俺672円」
「唐揚げとトンカツは重くなるだろ。ただでさえカツは1グラム2円だぞ」
「たまにすげー揚げ物食いたくなることあるんだよな。今日がそれだった」
「わからないでもないけどな。つかこんなトレー作っといてなんだけど、ぶっちゃけ俺カツカレー食いたいんだよな」
「あー、いいなカツカレー」
「クワトロのカレーもテイクアウト出来るようにしてほしい。飯とトッピングはあるんだから」
買った飯を持って向かうのは、学生課のある建物の入り口前に広がる石の階段だ。目の前には芝生の敷かれた池が広がり、いい風がゆるりと吹き抜ける。寒い時期だと階段に座るとケツが冷てえが、今の季節だとそんなこともなく快適に飯を食えるのだ。
陣取った階段の脇にはスピーカーが設置されている。ここから流れているのは左に目をやったところにあるセンタービルの中、ガラス張りのラジオブースでやっている佐藤ゼミの昼放送だ。何気に人を選ぶ番組だが、こうして外にも派手に流してやがる。
昼放送と言えば第1学食でMBCCのそれもやっているが、さすがに毎回は聞けていない。ほぼ毎回聞くのはそこのぼっち席で飯を食っている岡崎に託してある。何か変わったことがあれば連絡が入るようにはなっているし、今日のところは青空ランチだ。
「つくねうめえ」
「くーっ! 唐揚げうめーっ! ビール飲みてーっ!」
「こんなにいい天気でいい陽気で、目の前には池。飲みてえよな」
「ま、3限があるんだけどな」
「つか3限って教室が飯臭せえんだよな。今の時期なら換気しろっつーの」
「それな。学食に席ねえから持ち込むのはわかるけど、空気籠るし何かしといて欲しいわ窓開けるとか」
「金が有り余ってるなら空気清浄機つけるとかな」
「あー、それもアリだな」
青空ランチのいいところは誰に気兼ねすることなく食べられることだと思う。混雑した食堂でうろうろして席を探す必要もなければ、次の講義のある教室で飯を食って空気をどうこうなどと気にすることもない。雨が降った時はさすがにもう少し考えるが。しばらくしたら梅雨か。でもその頃には今よりもっと人は減るだろう。
「今日の晩飯カツカレーにしようかな」
「クワトロ?」
「クワトロでもいいし、外に食いに出てもいいし」
「大学から徒歩5分、バイク2分はこれが出来るからいいよな」
「てめェも原付10分以内なんだから余裕だろ」
end.
++++
たまにはこういう話も。高崎と飯野の青空ランチ。何気に飯野は今期初登場かな?
量り売りだけじゃなくて、ビュッフェとかでもそういう選び方をするのかしら。いつかやってみたいところ。
でも本当はカツカレーが食べたいのね。いいじゃない、金曜日のカレーライス。サークル後のごはんかしら。
.