2019

■MORE DRAW DRAW DRAW!

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「はい、ファンフェスも無事終わってお疲れさまでしたー」
「お疲れさまでしたー」
「とりあえず、昼放送も始まったしまた平穏なサークルに戻ったということで、今日は久し振りにトランプかUNOでもしようか?」
「おっ、いいな」
「ここのところファンフェスのことばかりだったからね」

 土曜日に開催されたファンフェスは、向島的に言えばノサカのやらかし以外に特に大きなポカもなく、無事に終了したと言えるだろう。定例会的には青敬の松江が急遽欠席になってしまったことでバタバタしたらしいけど、番組は同じ班だったカンザキが即興でカバーしたらしい。
 ファンフェスが終われば次は初心者講習会。だけどそれに向けてバタバタするのは対策委員のノサカとヒロだ。MMP的には通年の活動になる昼放送を淡々と続けて、日々練習を重ねるだけ。梅雨に入れば発声練習もやらなくなるから、今のうちにちゃんとしておきたい。
 まあでも、基本的には緩いサークルなので、活動前にちょっと遊ぶことをやめるワケでもないんだ。トランプやUNOをやりながらメンバーが揃うのを待ちつつ好きなことをやる、そんな感じで今日も回っていくのだろう。

「トランプかUNOはいいんだけど圭斗」
「ん?」
「その前にファンフェスでも例によってデカいのをぶちかましてきたノサカに対する何かはないのか」
「その節は大変ご迷惑をおかけしました…!」

 何と、ノサカはファンフェスでも遅刻して来たのだ。使う音源を忘れて取りに戻ったり、その過程でいろいろやっていたら現地に着いたのが番組開始直前の11時10分。ちなみに、一般参加者の集合時刻は8時半だったから2時間40分の遅刻だ。言うまでもなく過去ワースト記録。「向島の遅刻は切り捨てろ」がここまで当たるとは。

「まあ、その件に関しては現場で完結したし、次やったら覚えとけよというそれに尽きるね」
「ご尤もでございます…! 猛省しています!」
「ん、じゃあUNOを始めようか?」

 今いるうちと圭斗、ノサカ、カンザキ、それからりっちゃんの分のカードが配られ、さあゲームを始めようかとした瞬間のことだった。ドタバタと、ヒロがサークル室に駆け込んで来た。いつもゆるゆるでマイペースなヒロがこんなに慌てているのは正直見たことがない。

「聞ーてください圭斗先輩!」
「ん、どうしたんだい?」
「知ってましたか、UNOってドロー2とかドロー4の重ね出し禁止らしーですよ!」
「ナ、ナンダッテー!?」

 手札を整理しようとしていた全員がナンダッテーと声を発した。ノサカの汎用セリフが思わず出てしまうくらいには持ち込まれたトピックが衝撃的だったのだ。

「ドロー2とかドロー4の重ね出しが禁止になると大分面白くなくなるぞ」
「ことMMP式UNOはドロー系カードを重ねて相手を殺すことに重きを置いてますからね……」
「ヤ、違いないスわ」

 UNOにおけるドロー2、ドロー4のカードは次の相手に2枚、4枚のカードを引かせる攻撃系カードになる。ただし、同じドロー2やドロー4をその上から重ねて出すことで自分が手札を増やさずに次の人に回すことが出来るのだ。そういう物だと思ってやっていたんだ、今の今まで。何なら今からもそうするつもりでいた。
 それでなくてもMMPのUNOは予備で用意されているカードをドロー6として扱っている。それはもう、ドロードロードロードロー! という具合にとことん攻撃の手を緩めることなくドロー系カードの応酬に耐え切れず終着した人間に対するラブ&ピース(と書いて抹殺)のため。UNOに限らず何があっても攻撃手段だけは手放さないんだ、MMPのメンバーは。

「ヒロ、それはどこからの情報だい?」
「公式がゆーたらしーですよ!」
「UNOの公式って…?」
「公式は公式やよ! アホちゃうんノサカ!」
「よし! みんな、今日のサークルのテーマはUNOのルールについて語り合うに決定だ!」

 ――とは言え、語り合うのは公式ルールではなくMMPのローカルルールの確認だ。圭斗が議長、うちが書記で話し合いが始まる。第8代MMPになってから、かつてこれほど真面目に話し合いが行われようとしていたことはあっただろうか。いや、ない。

「確認だけど、MMPオリジナルのドロー6はそれが続くと12枚、24枚、48枚とドロー枚数が増える仕様だったね」
「そうでーす」
「公式では禁止されているようだけど、スキップやリバースといったアクションカードの重ね出しは有効」
「有効がいいですね、その方が戦術も広がるかと」
「各種サイトなどを眺めていてこれはというルールを見つけた奴はいるか?」
「本家のサイトを参照したのですが、とりかえっこワイルドという物がありますね」
「詳しく」
「指定した相手と手持ちのカードを全て交換出来るようです」
「ん、それは面白いけど、縛りを設けたいね」
「確かに」

 サークルの番組に関することは悪ふざけの大喜利なのに、UNOに関する話し合いがかつてないほど真面目なのがMMPなんだなあ。でもいいか、このノリでも一応やるべきことはちゃんとやってるんだから。たまにはこういう会議の日があってもいいだろう。
 こんなことがないとUNOの公式ルールを調べることなんてなかったし、アナウンサーに関してはこれがいつか番組のテーマになるかもしれない。トークを練る時って案外何が役に立つかわからないんだ。……うん、さすがにこじつけ臭いかな。

「この話し合いがある程度まとまったら、改めてMMPローカルルールでのUNOをやってみることにするよ」
「おー」
「話し合いがまとまったらちゃんと書記ノートにも書いておくように」


end.


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最近少し話題になったので書きました。これはMMPやろと。でも話題になってから1週間くらい経ったのでもう鮮度落ちたかな
それはそうと、MMPの連中は何があっても攻撃手段だけは手放さないし、少しでも隙を見せたらそいつを全員で殴りに行くので性質が悪い
やっぱりこれくらいしょーもない話をやるくらいがちょうどいいですね。もっと増やそう。

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