2019
■いくつか分岐点の上で
++++
「タカちゃんおはよう」
「あ、果林先輩おはようございます」
「タカちゃんもこの授業取ってたんだね」
「そうですね。高崎先輩が面白いって言ってたので履修修正で入れてみました」
木曜2限はポップミュージックの社会学という授業を履修している。たまたまタカちゃんも同じ講義を履修していたようで、隣の席に陣取る。たまたま2人とも誰かと一緒に履修してるワケじゃない講義だったみたくて。大連休が明けたからか、はたまた授業が始まるまでには地味に時間があるからか、人は疎ら。
「高ピー先輩も取ってたんだねポプ社」
「そうみたいですね。高崎先輩は現社科の割にメディ文の授業を多めに取ってるとは聞きました」
「ああうんそれはそうだね」
「そういうことも出来るんですね、学科跨ぎと言うか」
「もちろん学科固有科目は取らなきゃだけど、他は自由だからね。どの学科の講義だろうと単位さえ取れてればオッケーみたいなところはあるよ」
「そうなんですね」
それは緑大社会学部のシステムなのかもしれない。社会学部には現代社会学科、社会福祉学科、メディア文化学科の3つの学科がある。アタシとタカちゃんはメディア文化学科……略してメディ文で、高ピー先輩は現社科の学生。だけど学科固有科目をちゃんと取っていれば他はどこの学科の授業でも取れるとか。
それは授業だけじゃなくて、ゼミもそう。一応学科ごとにゼミがあるんだけど、どこの学科のゼミに入ってもいいらしいんだって。アタシの所属している佐藤ゼミにもメディ文じゃない他の学科の人が普通にいるもんね。ただ、他の学科の人はヒゲが担当してるメディア論の授業を取ることを条件にしているそうだけど。
「ところで果林先輩、メディア論っていう佐藤先生の授業が秋学期にあるじゃないですか。あれってどんな感じですか?」
「アタシメディア論取ってないんだよね」
「えっ、そうなんですか? え、佐藤先生の授業、ですよね…?」
「メディア論よりスポーツの社会学の方が取りたかったからね。それにアタシメディ文だからゼミに入るためにわざわざメディア論取らなくていいもん」
「スポーツの社会学ですか。それはメディ文の授業ですか?」
「ううん、現社科」
「なんか、ワケがわからなくなってきました」
「アタシはスポーツとメディアの関係について勉強したくて社学に入ったワケだし、スポーツに絡む勉強を優先したいなと思った結果だよね。ヒゲが言ってることなんかゼミで聞いとけば問題ないっしょ」
まだ単位や履修の制度をちゃんと理解してない1年生が目を回して混乱している。でも、制度的には許されているワケだし、メディア論を取っていなくたってヒゲゼミに入ることは出来たんだから結果オーライだ。ゼミに入るために勉強する道を選んだワケじゃないからね。
そもそも、何が悲しくてあの顔を見なくてはならないのかという話でもある。ヒゲのやってる学問はまあすごいなと思うけど、ヒゲの人格が最低なことには違いない。あの顔を見なくていいなら極力見たくないし。わざわざ嫌いな教授のゼミに入ったのかと言われるけど、まあ悩んだ結果入ったよね、学問のために。
「そういうスポーツのことを社会学に絡める先生もいるんですね」
「西山ね。西山ゼミとまあ悩んだけど」
「果林先輩はスポーツに興味があるんですね」
「……ちゃんと話すと長くなるけどね、アタシ実は陸上でいろんな大学から推薦もらっててね、どこでも行けたんだよ」
「えっ、そうなんですか。でも、推薦をもらえるくらいなのに、今はやってないんですよね」
「うん、辞めちゃった。高3のインハイでミスっちゃってね。「短距離界の新星! オリンピック出場候補!」みたいな感じでいろんなメディアに取り上げられたのに結果が散々でしょ? まーあもう周りからの視線が痛いのなんの。走れるメンタルじゃなくなっちゃってさ」
「そうだったんですね」
「それまでの実績はあるし推薦はたくさんもらった。でも全部蹴って一般で緑大メディ文を受けたんだよ。どうせならメディアって何だっていうのを勉強してやろうと思って」
どうせならメディアについて、それもスポーツに絡めたそれについて勉強してやろうと思った。今までは走ることしか考えてなかったから勉強なんてあんまりやってこなかったし、受験勉強は本当にしんどかった。推薦で余裕で進学出来ると思ってたしね。まあ、自分で蹴ったんだけどさ。
それならちゃんとスポーツの社会学してる西山ゼミに入れば良かったんじゃないかって思うかもしれないけど、ゼミの活動量とか活動のベクトルだね。西山ゼミの活動はアタシのやりたいスポーツとメディアのあれこれとはちょっと違ったんだよね。じゃあ佐藤ゼミでラジオやるわって。
「そういうワケでアタシはメディア論取ってないけど、タカちゃんは裏に特別何かいい科目があるとかじゃない限り取った方がいいかなとは思うよ。あ、ヒゲゼミに来る前提で言ってるけど」
「佐藤ゼミに入りたいと思ってるので取ることになるとは思います」
「まあでもアレだよ、タカちゃんMBCCのミキサーだからあらゆる条件をパス出来そうだけどね」
「え、ミキサーだと何かあるんですか?」
「あー、そろそろ授業が始まるなー」
「ええ……あからさまな棒読みじゃないですか。教えてくださいよ、怖いじゃないですか」
「この後ご飯食べながらね」
end.
++++
久々に果林の昔のお話。こういう話が増えるなら来年だと思ってたけど、果林の基本的な設定を振り返るきっかけになったのでよし。
放送に関係ない日常のタカりんの話のつもりだったけど思いがけずこんな感じになってしまったので日常のかわいいタカりんをやりたい
木曜2限か……高崎は来てないか8号館のロビーで寝てるかなんだろうなあ。久々に飯野との青空ランチの話もやりたいね
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「タカちゃんおはよう」
「あ、果林先輩おはようございます」
「タカちゃんもこの授業取ってたんだね」
「そうですね。高崎先輩が面白いって言ってたので履修修正で入れてみました」
木曜2限はポップミュージックの社会学という授業を履修している。たまたまタカちゃんも同じ講義を履修していたようで、隣の席に陣取る。たまたま2人とも誰かと一緒に履修してるワケじゃない講義だったみたくて。大連休が明けたからか、はたまた授業が始まるまでには地味に時間があるからか、人は疎ら。
「高ピー先輩も取ってたんだねポプ社」
「そうみたいですね。高崎先輩は現社科の割にメディ文の授業を多めに取ってるとは聞きました」
「ああうんそれはそうだね」
「そういうことも出来るんですね、学科跨ぎと言うか」
「もちろん学科固有科目は取らなきゃだけど、他は自由だからね。どの学科の講義だろうと単位さえ取れてればオッケーみたいなところはあるよ」
「そうなんですね」
それは緑大社会学部のシステムなのかもしれない。社会学部には現代社会学科、社会福祉学科、メディア文化学科の3つの学科がある。アタシとタカちゃんはメディア文化学科……略してメディ文で、高ピー先輩は現社科の学生。だけど学科固有科目をちゃんと取っていれば他はどこの学科の授業でも取れるとか。
それは授業だけじゃなくて、ゼミもそう。一応学科ごとにゼミがあるんだけど、どこの学科のゼミに入ってもいいらしいんだって。アタシの所属している佐藤ゼミにもメディ文じゃない他の学科の人が普通にいるもんね。ただ、他の学科の人はヒゲが担当してるメディア論の授業を取ることを条件にしているそうだけど。
「ところで果林先輩、メディア論っていう佐藤先生の授業が秋学期にあるじゃないですか。あれってどんな感じですか?」
「アタシメディア論取ってないんだよね」
「えっ、そうなんですか? え、佐藤先生の授業、ですよね…?」
「メディア論よりスポーツの社会学の方が取りたかったからね。それにアタシメディ文だからゼミに入るためにわざわざメディア論取らなくていいもん」
「スポーツの社会学ですか。それはメディ文の授業ですか?」
「ううん、現社科」
「なんか、ワケがわからなくなってきました」
「アタシはスポーツとメディアの関係について勉強したくて社学に入ったワケだし、スポーツに絡む勉強を優先したいなと思った結果だよね。ヒゲが言ってることなんかゼミで聞いとけば問題ないっしょ」
まだ単位や履修の制度をちゃんと理解してない1年生が目を回して混乱している。でも、制度的には許されているワケだし、メディア論を取っていなくたってヒゲゼミに入ることは出来たんだから結果オーライだ。ゼミに入るために勉強する道を選んだワケじゃないからね。
そもそも、何が悲しくてあの顔を見なくてはならないのかという話でもある。ヒゲのやってる学問はまあすごいなと思うけど、ヒゲの人格が最低なことには違いない。あの顔を見なくていいなら極力見たくないし。わざわざ嫌いな教授のゼミに入ったのかと言われるけど、まあ悩んだ結果入ったよね、学問のために。
「そういうスポーツのことを社会学に絡める先生もいるんですね」
「西山ね。西山ゼミとまあ悩んだけど」
「果林先輩はスポーツに興味があるんですね」
「……ちゃんと話すと長くなるけどね、アタシ実は陸上でいろんな大学から推薦もらっててね、どこでも行けたんだよ」
「えっ、そうなんですか。でも、推薦をもらえるくらいなのに、今はやってないんですよね」
「うん、辞めちゃった。高3のインハイでミスっちゃってね。「短距離界の新星! オリンピック出場候補!」みたいな感じでいろんなメディアに取り上げられたのに結果が散々でしょ? まーあもう周りからの視線が痛いのなんの。走れるメンタルじゃなくなっちゃってさ」
「そうだったんですね」
「それまでの実績はあるし推薦はたくさんもらった。でも全部蹴って一般で緑大メディ文を受けたんだよ。どうせならメディアって何だっていうのを勉強してやろうと思って」
どうせならメディアについて、それもスポーツに絡めたそれについて勉強してやろうと思った。今までは走ることしか考えてなかったから勉強なんてあんまりやってこなかったし、受験勉強は本当にしんどかった。推薦で余裕で進学出来ると思ってたしね。まあ、自分で蹴ったんだけどさ。
それならちゃんとスポーツの社会学してる西山ゼミに入れば良かったんじゃないかって思うかもしれないけど、ゼミの活動量とか活動のベクトルだね。西山ゼミの活動はアタシのやりたいスポーツとメディアのあれこれとはちょっと違ったんだよね。じゃあ佐藤ゼミでラジオやるわって。
「そういうワケでアタシはメディア論取ってないけど、タカちゃんは裏に特別何かいい科目があるとかじゃない限り取った方がいいかなとは思うよ。あ、ヒゲゼミに来る前提で言ってるけど」
「佐藤ゼミに入りたいと思ってるので取ることになるとは思います」
「まあでもアレだよ、タカちゃんMBCCのミキサーだからあらゆる条件をパス出来そうだけどね」
「え、ミキサーだと何かあるんですか?」
「あー、そろそろ授業が始まるなー」
「ええ……あからさまな棒読みじゃないですか。教えてくださいよ、怖いじゃないですか」
「この後ご飯食べながらね」
end.
++++
久々に果林の昔のお話。こういう話が増えるなら来年だと思ってたけど、果林の基本的な設定を振り返るきっかけになったのでよし。
放送に関係ない日常のタカりんの話のつもりだったけど思いがけずこんな感じになってしまったので日常のかわいいタカりんをやりたい
木曜2限か……高崎は来てないか8号館のロビーで寝てるかなんだろうなあ。久々に飯野との青空ランチの話もやりたいね
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