2019
■マジパねえ強制診療作戦への道
++++
「おいおいまっつん、宏樹はどーしたってんだ」
「ここ最近、ずっと調子が悪いみたい」
「はー、まったく陰気臭くてダメだわ」
「あの、千鶴、そっとしておいてあげてね。本当にしんどそうだから」
新年度に上がった頃からしんどそうにしていたヒロさんの体調は、ひと月程が経った今でも改善の様子が全く見られなかった。それどころか、見る見る悪くなっているような気さえする。俺は医療従事者じゃないけど、素人が見てもわかるくらいにはヒロさんのヤバさがパねえ。
最初の頃はどーせ作ってんだろ、などと言ってヒロさんを気にすることもなかったツルさんも、さすがに最近では様子がおかしいなと思い始めたらしい。それでも基本的にやることは変わらず喧嘩を売りに行くくらいだけど。最近はそれすらヒデさんが止めるようになっていた。
ヒロさんのヤバさがパねえ。これはほっといても良くなることはないし、病院に行くしか解決策はないんじゃないかっていうのでAKBC内で一致している。でもそれは最終的に本人の意思に委ねられる。いくら周りが病院に行けと言ってもヒロさんが大丈夫だと言えばそうですかと納得せざるを得ないんだ。
「でも、ここで死なれてもメーワク極まりないじゃんか。まさかまっつんが宏樹の骨を拾うっつーワケでもあるまいし」
「それはそうだけど」
「日に日にヤバくなってんのがわかってんならさっさと病院に担ぎ込んじまえば良かったんじゃん」
「ヒロが大丈夫って言うから……」
「アイツが今更まっつんに対して素直に物を言うかよ」
「それは同意っす」
「だろー!? ほら、ハマちゃんもこう言ってる」
ヒロさんはヒデさんに対してだけちょっと当たりがキツいところがある。元々口数は多くないし表情が豊かというワケではないんだけど、ヒデさんに対してだけは特別キツいんだ。何も知らずに見てたらヒロさんが極悪非道に見えるし、ヒデさんがとてもかわいそうになってくるくらいには。
前にヒロさんから一度その理由を聞いたことがある。ヒデさんは自分のことよりも他人のことを気に掛けすぎるんだと。控えめな性格だから自己主張が苦手とか、優しいから気遣いをするのはいい。だけど、それは自分のことを疎かにしてもいい理由にはならないと。
ヒデさんがヒロさんに対して気遣いを見せると、ヒロさんからすればそれがとても腹立たしいそうだ。それで「もういい」って言ってるのに過剰なまでに気遣ってくる。別に奉仕が足りなくて不機嫌なんじゃなくて、他人に構う暇があるなら自分のことをちゃんとしろということらしい。
当然、そんなことをヒデさん本人に言うようなヒロさんではないので、事情を知らないヒデさんはさらに「何か悪いことをしたかな」と気に掛けるようになってしまっているという悪循環に陥っている。俺もそれを口止めされてるし。って言うか言ったらどうなるかわかってるよねって脅してきた時のヒロさんが怖すぎて。
「でも、そういうのを抜きにしても今のヒロさんのヤバさはガチっす。何とかして病院に放り込めないモンすかね」
「つかそんだけ悪けりゃ健康診断で引っかからないかね」
「健康診断の結果って早くても6月じゃないすか? そんなすぐに返ってこなかった気するんすけど」
「多分、ヒロに足りない物は割と真面目に時間とお金の余裕だと思うんだよね」
「時間とお金? っすか?」
「病院に行くと何気にお金がかかるでしょ、初診料とかで。1回の診療費で1冊本が買えると考えちゃって病院に行けないとか」
「あー、ヒロさんの好きそうな本って絶対高いっすもんね」
「ニッチ過ぎんだよ」
別にヒロさんの学問に限らず教科書になるような本はいい値段がする。1冊1500円は当たり前。場合によっちゃ2000円オーバー、下手すりゃ4000円する本を買って来いなんて授業も平気である。教科書販売の時期は財政状況がガチで厳しくなるんだよな。どうせ同じウン千円出すなら趣味に使いたいよな。
呪いの民俗学なんてニッチな物を勉強しているヒロさんだ。元々オカルトとか都市伝説とかも好きらしいけど、文献をとにかく読み漁ることが楽しいみたいなことは言ってたもんな。病院に行く時間もお金も惜しくなるよなあ。という風に俺たち外野が考えても仕方ないレベルの人なんだ。
「つかさ、そんだけしんどいならわざわざサークルに顔出すこともないじゃんか、家で休んでろよ」
「ヒロが言うには、家だと何かあったときに見つけてもらえないからって……」
「何か起きそうな気はしてんじゃねーかメーワクな奴め!」
「何か起きそうな気がしてるんだったら病院に強制連行じゃないすかそれ。つかヒデさんのパワーだったらヒロさんを担ぐくらい余裕っすよね?」
「どうかな。いくらヒロが小柄でも、一応は成人男子だしそこそこ重くないかな」
「俺をおんぶ出来るんすから余裕っすよ。ヒロさんの方がダンチで軽いっすもん。つかそろそろやっちゃいません? マジパねえ強制診察作戦」
「とりあえず、来週になってヒドそうだったら考えるよ。そのときは、千鶴とハマちゃんも協力してね」
「もちろんっす」
「いつまでもここで陰気臭くされても困るしね! しゃーなしだ!」
具合が悪いときは2週間様子を見て良くならないようなら病院へ、とも言うしひと月経ってこれなら絶対病院なんだ。いくらヒロさんが行かないっつっても今度は強制的に病院に放り込む方向で行くことに決まった。絶対尋常じゃないヤバさじゃんな。
「……で、何科に放り込むんすか?」
「胃の周りの具合が悪いって言ってるから、とりあえず内科じゃないかな……」
end.
++++
AKBCの強制診療作戦が動き始めました。ファンフェスが終わるまではもじゃもちょこちょこ忙しいので作戦決行は来週にするようです。
長野っちがもじゃに対してだけ特別辛辣な理由がまたアレですね。見てると腹か立つからって。
そーいやもじゃと言えばFF朝霞班って今年どうなってるのかしら。何気に今年は触れてないですね。ウザドル神崎が活躍してるんだろうけれども。
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「おいおいまっつん、宏樹はどーしたってんだ」
「ここ最近、ずっと調子が悪いみたい」
「はー、まったく陰気臭くてダメだわ」
「あの、千鶴、そっとしておいてあげてね。本当にしんどそうだから」
新年度に上がった頃からしんどそうにしていたヒロさんの体調は、ひと月程が経った今でも改善の様子が全く見られなかった。それどころか、見る見る悪くなっているような気さえする。俺は医療従事者じゃないけど、素人が見てもわかるくらいにはヒロさんのヤバさがパねえ。
最初の頃はどーせ作ってんだろ、などと言ってヒロさんを気にすることもなかったツルさんも、さすがに最近では様子がおかしいなと思い始めたらしい。それでも基本的にやることは変わらず喧嘩を売りに行くくらいだけど。最近はそれすらヒデさんが止めるようになっていた。
ヒロさんのヤバさがパねえ。これはほっといても良くなることはないし、病院に行くしか解決策はないんじゃないかっていうのでAKBC内で一致している。でもそれは最終的に本人の意思に委ねられる。いくら周りが病院に行けと言ってもヒロさんが大丈夫だと言えばそうですかと納得せざるを得ないんだ。
「でも、ここで死なれてもメーワク極まりないじゃんか。まさかまっつんが宏樹の骨を拾うっつーワケでもあるまいし」
「それはそうだけど」
「日に日にヤバくなってんのがわかってんならさっさと病院に担ぎ込んじまえば良かったんじゃん」
「ヒロが大丈夫って言うから……」
「アイツが今更まっつんに対して素直に物を言うかよ」
「それは同意っす」
「だろー!? ほら、ハマちゃんもこう言ってる」
ヒロさんはヒデさんに対してだけちょっと当たりがキツいところがある。元々口数は多くないし表情が豊かというワケではないんだけど、ヒデさんに対してだけは特別キツいんだ。何も知らずに見てたらヒロさんが極悪非道に見えるし、ヒデさんがとてもかわいそうになってくるくらいには。
前にヒロさんから一度その理由を聞いたことがある。ヒデさんは自分のことよりも他人のことを気に掛けすぎるんだと。控えめな性格だから自己主張が苦手とか、優しいから気遣いをするのはいい。だけど、それは自分のことを疎かにしてもいい理由にはならないと。
ヒデさんがヒロさんに対して気遣いを見せると、ヒロさんからすればそれがとても腹立たしいそうだ。それで「もういい」って言ってるのに過剰なまでに気遣ってくる。別に奉仕が足りなくて不機嫌なんじゃなくて、他人に構う暇があるなら自分のことをちゃんとしろということらしい。
当然、そんなことをヒデさん本人に言うようなヒロさんではないので、事情を知らないヒデさんはさらに「何か悪いことをしたかな」と気に掛けるようになってしまっているという悪循環に陥っている。俺もそれを口止めされてるし。って言うか言ったらどうなるかわかってるよねって脅してきた時のヒロさんが怖すぎて。
「でも、そういうのを抜きにしても今のヒロさんのヤバさはガチっす。何とかして病院に放り込めないモンすかね」
「つかそんだけ悪けりゃ健康診断で引っかからないかね」
「健康診断の結果って早くても6月じゃないすか? そんなすぐに返ってこなかった気するんすけど」
「多分、ヒロに足りない物は割と真面目に時間とお金の余裕だと思うんだよね」
「時間とお金? っすか?」
「病院に行くと何気にお金がかかるでしょ、初診料とかで。1回の診療費で1冊本が買えると考えちゃって病院に行けないとか」
「あー、ヒロさんの好きそうな本って絶対高いっすもんね」
「ニッチ過ぎんだよ」
別にヒロさんの学問に限らず教科書になるような本はいい値段がする。1冊1500円は当たり前。場合によっちゃ2000円オーバー、下手すりゃ4000円する本を買って来いなんて授業も平気である。教科書販売の時期は財政状況がガチで厳しくなるんだよな。どうせ同じウン千円出すなら趣味に使いたいよな。
呪いの民俗学なんてニッチな物を勉強しているヒロさんだ。元々オカルトとか都市伝説とかも好きらしいけど、文献をとにかく読み漁ることが楽しいみたいなことは言ってたもんな。病院に行く時間もお金も惜しくなるよなあ。という風に俺たち外野が考えても仕方ないレベルの人なんだ。
「つかさ、そんだけしんどいならわざわざサークルに顔出すこともないじゃんか、家で休んでろよ」
「ヒロが言うには、家だと何かあったときに見つけてもらえないからって……」
「何か起きそうな気はしてんじゃねーかメーワクな奴め!」
「何か起きそうな気がしてるんだったら病院に強制連行じゃないすかそれ。つかヒデさんのパワーだったらヒロさんを担ぐくらい余裕っすよね?」
「どうかな。いくらヒロが小柄でも、一応は成人男子だしそこそこ重くないかな」
「俺をおんぶ出来るんすから余裕っすよ。ヒロさんの方がダンチで軽いっすもん。つかそろそろやっちゃいません? マジパねえ強制診察作戦」
「とりあえず、来週になってヒドそうだったら考えるよ。そのときは、千鶴とハマちゃんも協力してね」
「もちろんっす」
「いつまでもここで陰気臭くされても困るしね! しゃーなしだ!」
具合が悪いときは2週間様子を見て良くならないようなら病院へ、とも言うしひと月経ってこれなら絶対病院なんだ。いくらヒロさんが行かないっつっても今度は強制的に病院に放り込む方向で行くことに決まった。絶対尋常じゃないヤバさじゃんな。
「……で、何科に放り込むんすか?」
「胃の周りの具合が悪いって言ってるから、とりあえず内科じゃないかな……」
end.
++++
AKBCの強制診療作戦が動き始めました。ファンフェスが終わるまではもじゃもちょこちょこ忙しいので作戦決行は来週にするようです。
長野っちがもじゃに対してだけ特別辛辣な理由がまたアレですね。見てると腹か立つからって。
そーいやもじゃと言えばFF朝霞班って今年どうなってるのかしら。何気に今年は触れてないですね。ウザドル神崎が活躍してるんだろうけれども。
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