2019
■女気でアレをアレしてどーなる
++++
「もーね、アレですよ! ダブルトークは豪華客船に乗ったつもりでおってください山口先輩!」
「頼もしいでしょでしょ~」
ファンフェスの班打ち合わせで、唐突にヒロがドヤり始めた。ダブルトークは豪華客船に乗ったつもりでいろ? お前が言うとその豪華客船がタイタニックなんじゃないのかと思わずにはいられない。ヒロのその自信はどこから来るんだ。
ついこないだ、番組制作会でダブルトークを練習出来てないだの何だのと文句を垂れていたはずだ。あれから1週間も経っていないのにどうしてここまで自信満々なのかと。慢性鼻炎でマイクの前に座るのさえ嫌がるアナウンサーとしての底辺が。
「あの、山口先輩……ヒロの言うことですのであまり信用し切るのもどうかと。あくまで参考程度に留めておいた方が得策です」
「何やのノサカ!」
「でも~、せっかくだし~、豪華客船に乗せてもらっちゃおうよ~、ね?」
「ヒロは信用に足る人物ではないのでその自信の根拠を聞いた上で、これなら信用してやってもいいと判断出来るまでホイホイついて行くのは危険極まりない行為かと」
「野坂クンは用心深い性格なんだね~」
「単に疑り深くて心が狭いだけですよ」
「お前に関しては自業自得だとしか言いようがない。意味がわからない。去年あれだけテスト前にプリントだのなんだのを強奪されて課題まで付き合わされたのに取得単位数が思うように伸びなかったことを俺の責任だと文句を言われれば信用したくなくなるのは当然じゃないか」
去年は本当に酷い目に遭ったんだ。ヒロとは同じ学部学科でほとんど履修が被っていた結果、欠席した授業のプリントだのノートをよこせだの、未提出課題をやるのに付き合えだの何だのと振り回された。挙句、自分より俺の方が成績がいいと教授に賄賂を渡しただのとのたまうのだ。
今年は絶対に助けてなんかやるものかと心に決めている。そしてヒロの言う調子のいい言葉も絶対に信じないのだと。勉学以外にもそれを適用させなければ俺は性も根も尽き果てるまであらゆるものを搾り取られてカッスカスになるまで利用し尽されるに決まっているのだ。用心するに越したことはない。
「えっと、そしたらヒロはさ~? 俺たちをどう豪華客船に乗せてくれるのかな~?」
「聞ーてください山口先輩、ボクアレですよ、ダブルトークのちょっとしたコトを聞ーたんですよ」
「ダブルトークのちょっとしたこと?」
「嘘を言うな。こないだのサークルでも制作会でピントークだったって喚いてただけじゃないか」
「それやからノサカは甘いんやよ。ボクあれから菜月先輩捕まえてダブルトークのコトちょっと聞ーたからね」
「ナ、ナンダッテー!?」
「え~、すご~い! 議長サン直伝なら信用してあげていいんジャない? ねえ野坂クン!」
「いえ、まだです。菜月先輩から何を聞いたのか、そしてそれをそのまま出してくることが出来るかの問題です」
ヒロの言うことによれば、自分は春の制作会でピントークだったがためにダブルトークの体験も出来ていないのにステージメインでラジオに慣れていない星ヶ丘の先輩をリードするのは不可能だと。それは相手が誰であれそうだろう。そう喚いていたら、菜月先輩が立ち上がってくれたそうだ。
山口先輩の班に俺とヒロがぶち込まれたその目的だ。それは朝霞先輩の班にこーたと果林がぶち込まれた経緯とほぼ同じ。ラジオに不慣れな人が班にいる場合、ラジオメインの大学から出ている俺たちが補佐して、一緒に番組を作り上げること。まあ、律には「お前にはヒロの子守りもある」と言われたけどな! 畜生!
「菜月先輩、制作会での責任取ってボクにダブルトーク教えるーゆーてちょっと教えてくれてんよ。これぞ女気やよ」
「え~と野坂クン、女気っていうのは~、男気の女の子版みたいなコトでいいのかな~?」
「そんなようなことを言いたいのだと推測されますが、辞書的に“女気”とは「しとやかで優しい気持ち」ということを指すそうです。ですので、この場合は義侠心という意味のある男気と言う方が正しいような気がしないでもないです」
「そんな辞書的な意味なんかどーでもいーんやよ」
「義侠心、ね~」
「義を重んじて、強い者を挫き弱い者を助けること、その心ですね。それで命までも惜しまなくなれば、任侠」
「それを貫くのはいいけど、結果死なれたら置いて行かれた方はどうしろって感じだよね」
一瞬、ゾクッとした。先の言葉に乗る感情の圧が、何とも言えず分厚く感じて。間延びしたふわふわしたデフォルトの喋り方にはない、実感が籠っていると言うか。菜月先輩の言っていた「山口はああ見えて見た目ほど緩くない」というのはこういうことなのかと、少しだけ理解をした。
「あっ、そしたら~、ヒロが議長サンに聞いてくれたそのダブルトークのちょっとしたコト? それを俺に教えてくれる練習の日を設けようか~。俺は連休中の日中は大体空いてるから~」
「ノサカも大体空いとるやろ? バイトしてないし引き籠もりやし」
「うるさいな、成人式実行委員とか対策委員とか地味にいろいろあるんだぞ」
「えっ、対策委員あったっけ!」
「ったくお前は」
end.
++++
FF山口班のあれこれですが、例によってヒロがうるさいwww でも洋平ちゃんはIFサッカー部で面識あるからある程度扱えるかな?
さて、どうやらあれから菜月さんがヒロに対するちょっとした講習的なことをやってくれたみたいですね。何だかんだ菜月さんですわ
そしてノサカである。ヒロに対してはま~あ信用しないなあと。まあ、それだけのことをされてるので当然っちゃ当然だけども
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「もーね、アレですよ! ダブルトークは豪華客船に乗ったつもりでおってください山口先輩!」
「頼もしいでしょでしょ~」
ファンフェスの班打ち合わせで、唐突にヒロがドヤり始めた。ダブルトークは豪華客船に乗ったつもりでいろ? お前が言うとその豪華客船がタイタニックなんじゃないのかと思わずにはいられない。ヒロのその自信はどこから来るんだ。
ついこないだ、番組制作会でダブルトークを練習出来てないだの何だのと文句を垂れていたはずだ。あれから1週間も経っていないのにどうしてここまで自信満々なのかと。慢性鼻炎でマイクの前に座るのさえ嫌がるアナウンサーとしての底辺が。
「あの、山口先輩……ヒロの言うことですのであまり信用し切るのもどうかと。あくまで参考程度に留めておいた方が得策です」
「何やのノサカ!」
「でも~、せっかくだし~、豪華客船に乗せてもらっちゃおうよ~、ね?」
「ヒロは信用に足る人物ではないのでその自信の根拠を聞いた上で、これなら信用してやってもいいと判断出来るまでホイホイついて行くのは危険極まりない行為かと」
「野坂クンは用心深い性格なんだね~」
「単に疑り深くて心が狭いだけですよ」
「お前に関しては自業自得だとしか言いようがない。意味がわからない。去年あれだけテスト前にプリントだのなんだのを強奪されて課題まで付き合わされたのに取得単位数が思うように伸びなかったことを俺の責任だと文句を言われれば信用したくなくなるのは当然じゃないか」
去年は本当に酷い目に遭ったんだ。ヒロとは同じ学部学科でほとんど履修が被っていた結果、欠席した授業のプリントだのノートをよこせだの、未提出課題をやるのに付き合えだの何だのと振り回された。挙句、自分より俺の方が成績がいいと教授に賄賂を渡しただのとのたまうのだ。
今年は絶対に助けてなんかやるものかと心に決めている。そしてヒロの言う調子のいい言葉も絶対に信じないのだと。勉学以外にもそれを適用させなければ俺は性も根も尽き果てるまであらゆるものを搾り取られてカッスカスになるまで利用し尽されるに決まっているのだ。用心するに越したことはない。
「えっと、そしたらヒロはさ~? 俺たちをどう豪華客船に乗せてくれるのかな~?」
「聞ーてください山口先輩、ボクアレですよ、ダブルトークのちょっとしたコトを聞ーたんですよ」
「ダブルトークのちょっとしたこと?」
「嘘を言うな。こないだのサークルでも制作会でピントークだったって喚いてただけじゃないか」
「それやからノサカは甘いんやよ。ボクあれから菜月先輩捕まえてダブルトークのコトちょっと聞ーたからね」
「ナ、ナンダッテー!?」
「え~、すご~い! 議長サン直伝なら信用してあげていいんジャない? ねえ野坂クン!」
「いえ、まだです。菜月先輩から何を聞いたのか、そしてそれをそのまま出してくることが出来るかの問題です」
ヒロの言うことによれば、自分は春の制作会でピントークだったがためにダブルトークの体験も出来ていないのにステージメインでラジオに慣れていない星ヶ丘の先輩をリードするのは不可能だと。それは相手が誰であれそうだろう。そう喚いていたら、菜月先輩が立ち上がってくれたそうだ。
山口先輩の班に俺とヒロがぶち込まれたその目的だ。それは朝霞先輩の班にこーたと果林がぶち込まれた経緯とほぼ同じ。ラジオに不慣れな人が班にいる場合、ラジオメインの大学から出ている俺たちが補佐して、一緒に番組を作り上げること。まあ、律には「お前にはヒロの子守りもある」と言われたけどな! 畜生!
「菜月先輩、制作会での責任取ってボクにダブルトーク教えるーゆーてちょっと教えてくれてんよ。これぞ女気やよ」
「え~と野坂クン、女気っていうのは~、男気の女の子版みたいなコトでいいのかな~?」
「そんなようなことを言いたいのだと推測されますが、辞書的に“女気”とは「しとやかで優しい気持ち」ということを指すそうです。ですので、この場合は義侠心という意味のある男気と言う方が正しいような気がしないでもないです」
「そんな辞書的な意味なんかどーでもいーんやよ」
「義侠心、ね~」
「義を重んじて、強い者を挫き弱い者を助けること、その心ですね。それで命までも惜しまなくなれば、任侠」
「それを貫くのはいいけど、結果死なれたら置いて行かれた方はどうしろって感じだよね」
一瞬、ゾクッとした。先の言葉に乗る感情の圧が、何とも言えず分厚く感じて。間延びしたふわふわしたデフォルトの喋り方にはない、実感が籠っていると言うか。菜月先輩の言っていた「山口はああ見えて見た目ほど緩くない」というのはこういうことなのかと、少しだけ理解をした。
「あっ、そしたら~、ヒロが議長サンに聞いてくれたそのダブルトークのちょっとしたコト? それを俺に教えてくれる練習の日を設けようか~。俺は連休中の日中は大体空いてるから~」
「ノサカも大体空いとるやろ? バイトしてないし引き籠もりやし」
「うるさいな、成人式実行委員とか対策委員とか地味にいろいろあるんだぞ」
「えっ、対策委員あったっけ!」
「ったくお前は」
end.
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FF山口班のあれこれですが、例によってヒロがうるさいwww でも洋平ちゃんはIFサッカー部で面識あるからある程度扱えるかな?
さて、どうやらあれから菜月さんがヒロに対するちょっとした講習的なことをやってくれたみたいですね。何だかんだ菜月さんですわ
そしてノサカである。ヒロに対してはま~あ信用しないなあと。まあ、それだけのことをされてるので当然っちゃ当然だけども
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