2019
■見渡すオールアラウンド
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「おざーっす! ヒデさん、新しい機材買ったんで試しに行きましょ! マジパねえんすよ!」
「へえ、いいね。どんなの買ったの?」
「防水・防塵カメラっす…! まあ、俺の行動様式的には遅い方だとは思うんすけど、俺の視点でこう、山に分け入って行く様子とか撮ったら面白くないすか?」
「うん、いいと思うよ。サバイバルな感じでワイルドな画が撮れそうだね」
青浪敬愛大学放送サークルAKBC。俺、浜田真司はこのサークルで日々マジパねえ映像を作っている。自販機みたいにデカい先輩が、ヒデさんこと松江英雄さん。体はデカいんすけど性格は控え目っすよね。冬にダウンジャケットを着た姿はマジベイマックス。パねえ。
AKBCでは個人が好きに映像を撮ったりもするけど、チームでひとつの作品を作り上げることもある。そういうときは大きく分けて企画と機材って感じで分かれてやるけど、実際そんなのはあってないようなもの。俺も実際先輩の影響で企画側にいるけど、今みたいに自分で機材買って撮影してばっかだし。
「ヒデさん、今日ヒロさんて来てないんすか?」
「来ないとは聞いてないけどなあ。そのうち来ると思うよ」
「ヒロさんにもこのカメラ見せたいんすよね。つか俺4Kカメラも欲しいんすよねー! 360度カメラも欲しいし」
「お金がいくらあっても足りないね」
「宝くじとか当たんないっすかね!」
「事故に遭うとか、大病を患うより確率は低いそうだからね。地道に働くしかないと思うよ」
欲しい物はたくさんあるけど、防水・防塵カメラを買ってしまったので他のカメラはしばらくお預け。今は新しく買ったこのカメラの性能をフルに生かしたパねえヤツを作るのが優先。俺は映像を撮るのも好きだけど、機械のハードに対する興味の方がどっちかってーとデカい。学部的も工学部だし。
「おはよ」
「あ、ヒロ。遅かったね。顔色悪いけど、大丈夫?」
「最近はこんな感じだよ」
「そう。でも、具合が悪いなら無理はしちゃだめだよ」
「普通だって言ってるでしょ」
「ごめん」
小柄で、ヒデさんに対してはちょっとキツめなこの人が、ヒロさんこと長野宏樹さん。ヒロさんは呪いの民俗学なんていうニッチなモンを勉強してて、風貌も一見根暗に見える。だけど実際には表情こそあまり変わらないけど陽気でノリがいい、楽しいパねえ人だ。
俺はこのヒロさんが企画の方を主にやってるから自分も企画をやってみようと現在に至っている。ヒロさんの何が俺にそこまで影響を与えたのかははっきり言えないんだけど、芯の強さっつーかパワーがパねえんだよヒロさんは。あと、俺に映像制作(企画側)のいろはを教えてくれたからっつーのもデカいかな。
「でもヒロさんマジで顔色悪いっすよ。悪い本でも読んだすか?」
「しょうがないよね、本は読んでたら時間忘れるし。あんまり遅い時間まで読んでるとさ、次の日起きてもお腹がムカムカしてご飯食べる気になんかならないよね」
「ヒロさん、メシは食いましょ?」
「うん、ご飯は、食べよう」
「食べれないって言ってるでしょ」
「ごめん」
「でも、遅い時間にドカ食いして次の日に響くっつーのはわかるんすけど、ヒロさんの場合本を読みながら何かつまんでるワケでもないんすよね」
「そうだね、食べるって概念がなくなるから」
「胃の中に何もないのに胃もたれなんてあるんすか」
「長時間何もないと、酸で荒れるとは聞いたことがあるよ」
「あー、なるほど。じゃあヒロさんあれっすよ! お粥代わりにゼリー飲料とか飲んだらいいっすよ! で、少しずつ普通のメシに戻してくって感じで」
「そうだね、それなら作らなくてもいいし楽そうだから、今日の夜からでも採用してみるよ。ところで今日、朝倉は?」
「ツルさんは……来てないっすよね、ヒデさん」
「そうだね。千鶴はまだ来てないよ」
このまま朝倉が来ないなら静かでいいんだけど。そう言ってヒロさんは机に突っ伏してしまった。あっ、カメラ見せるタイミングを完全に逃した。まあいいか、今日はヒロさんしんどそうだし、あんまりウルサくしても良くない。
ちなみにツルさん……朝倉千鶴さんっつー先輩がいるんだけど、ヒロさんとは犬猿の仲だったりする。ツルさんは反オカルト勢力っぽい立ち位置で、オカルトは作れるをテーマに作品を量産してる。それがヒロさん的には気に入らないって感じ。軽々しく扱っていいテーマじゃないんだぞ、って。
ヒロさんとツルさんの間にはゼミの先輩とかいとこの兄貴みたいな人がいたりして何かややこしい相関図になってるらしいけど、結局のところオカルトを巡って戦ってるって感じ。確かにそういう映像とか写真って眉唾物も多いけど、ガチな神秘的・超自然的現象もあるっちゃあるんだろうし、よくわかんねーけど。
「ヒデさん、このままここにいてもしょうがないっすしヒロさん休んでるのに迷惑かかるんで、撮影行きません?」
「そうだね、そうしようか。せっかくハマちゃんが新しい機材買ったのも試したいよね。ヒロ、俺とハマちゃん撮影で出てくるからね。休むなら休んでてよ」
「いってら」
「それじゃあ行こうかハマちゃん」
「そっすね」
ヒロさんのことは心配だけど、ちょっと栄養とってちゃんと寝たら治るっしょ。言ってまだ若いし、そんなヤバい病気なんかそうそうないはずだ。そんなのに当たるなら宝くじ当たれって話だし。とりあえず今日は新しい機材を試す時間だ!
end.
++++
今回の青敬は女子がいないのでちょっと静かですね。長野っちは年度序盤らしく死んでますが。
新しい機材を買ったんだってきゃっきゃしてるハマちゃんはかわいいけど、あやめとかもこんな感じなんだろうなあ
そして完全に保護者のもじゃです。存在感は薄いけど、図体のでかさも相まって何やかんやいないと落ち着かないとかそんな感じになってそう、青敬では
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「おざーっす! ヒデさん、新しい機材買ったんで試しに行きましょ! マジパねえんすよ!」
「へえ、いいね。どんなの買ったの?」
「防水・防塵カメラっす…! まあ、俺の行動様式的には遅い方だとは思うんすけど、俺の視点でこう、山に分け入って行く様子とか撮ったら面白くないすか?」
「うん、いいと思うよ。サバイバルな感じでワイルドな画が撮れそうだね」
青浪敬愛大学放送サークルAKBC。俺、浜田真司はこのサークルで日々マジパねえ映像を作っている。自販機みたいにデカい先輩が、ヒデさんこと松江英雄さん。体はデカいんすけど性格は控え目っすよね。冬にダウンジャケットを着た姿はマジベイマックス。パねえ。
AKBCでは個人が好きに映像を撮ったりもするけど、チームでひとつの作品を作り上げることもある。そういうときは大きく分けて企画と機材って感じで分かれてやるけど、実際そんなのはあってないようなもの。俺も実際先輩の影響で企画側にいるけど、今みたいに自分で機材買って撮影してばっかだし。
「ヒデさん、今日ヒロさんて来てないんすか?」
「来ないとは聞いてないけどなあ。そのうち来ると思うよ」
「ヒロさんにもこのカメラ見せたいんすよね。つか俺4Kカメラも欲しいんすよねー! 360度カメラも欲しいし」
「お金がいくらあっても足りないね」
「宝くじとか当たんないっすかね!」
「事故に遭うとか、大病を患うより確率は低いそうだからね。地道に働くしかないと思うよ」
欲しい物はたくさんあるけど、防水・防塵カメラを買ってしまったので他のカメラはしばらくお預け。今は新しく買ったこのカメラの性能をフルに生かしたパねえヤツを作るのが優先。俺は映像を撮るのも好きだけど、機械のハードに対する興味の方がどっちかってーとデカい。学部的も工学部だし。
「おはよ」
「あ、ヒロ。遅かったね。顔色悪いけど、大丈夫?」
「最近はこんな感じだよ」
「そう。でも、具合が悪いなら無理はしちゃだめだよ」
「普通だって言ってるでしょ」
「ごめん」
小柄で、ヒデさんに対してはちょっとキツめなこの人が、ヒロさんこと長野宏樹さん。ヒロさんは呪いの民俗学なんていうニッチなモンを勉強してて、風貌も一見根暗に見える。だけど実際には表情こそあまり変わらないけど陽気でノリがいい、楽しいパねえ人だ。
俺はこのヒロさんが企画の方を主にやってるから自分も企画をやってみようと現在に至っている。ヒロさんの何が俺にそこまで影響を与えたのかははっきり言えないんだけど、芯の強さっつーかパワーがパねえんだよヒロさんは。あと、俺に映像制作(企画側)のいろはを教えてくれたからっつーのもデカいかな。
「でもヒロさんマジで顔色悪いっすよ。悪い本でも読んだすか?」
「しょうがないよね、本は読んでたら時間忘れるし。あんまり遅い時間まで読んでるとさ、次の日起きてもお腹がムカムカしてご飯食べる気になんかならないよね」
「ヒロさん、メシは食いましょ?」
「うん、ご飯は、食べよう」
「食べれないって言ってるでしょ」
「ごめん」
「でも、遅い時間にドカ食いして次の日に響くっつーのはわかるんすけど、ヒロさんの場合本を読みながら何かつまんでるワケでもないんすよね」
「そうだね、食べるって概念がなくなるから」
「胃の中に何もないのに胃もたれなんてあるんすか」
「長時間何もないと、酸で荒れるとは聞いたことがあるよ」
「あー、なるほど。じゃあヒロさんあれっすよ! お粥代わりにゼリー飲料とか飲んだらいいっすよ! で、少しずつ普通のメシに戻してくって感じで」
「そうだね、それなら作らなくてもいいし楽そうだから、今日の夜からでも採用してみるよ。ところで今日、朝倉は?」
「ツルさんは……来てないっすよね、ヒデさん」
「そうだね。千鶴はまだ来てないよ」
このまま朝倉が来ないなら静かでいいんだけど。そう言ってヒロさんは机に突っ伏してしまった。あっ、カメラ見せるタイミングを完全に逃した。まあいいか、今日はヒロさんしんどそうだし、あんまりウルサくしても良くない。
ちなみにツルさん……朝倉千鶴さんっつー先輩がいるんだけど、ヒロさんとは犬猿の仲だったりする。ツルさんは反オカルト勢力っぽい立ち位置で、オカルトは作れるをテーマに作品を量産してる。それがヒロさん的には気に入らないって感じ。軽々しく扱っていいテーマじゃないんだぞ、って。
ヒロさんとツルさんの間にはゼミの先輩とかいとこの兄貴みたいな人がいたりして何かややこしい相関図になってるらしいけど、結局のところオカルトを巡って戦ってるって感じ。確かにそういう映像とか写真って眉唾物も多いけど、ガチな神秘的・超自然的現象もあるっちゃあるんだろうし、よくわかんねーけど。
「ヒデさん、このままここにいてもしょうがないっすしヒロさん休んでるのに迷惑かかるんで、撮影行きません?」
「そうだね、そうしようか。せっかくハマちゃんが新しい機材買ったのも試したいよね。ヒロ、俺とハマちゃん撮影で出てくるからね。休むなら休んでてよ」
「いってら」
「それじゃあ行こうかハマちゃん」
「そっすね」
ヒロさんのことは心配だけど、ちょっと栄養とってちゃんと寝たら治るっしょ。言ってまだ若いし、そんなヤバい病気なんかそうそうないはずだ。そんなのに当たるなら宝くじ当たれって話だし。とりあえず今日は新しい機材を試す時間だ!
end.
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今回の青敬は女子がいないのでちょっと静かですね。長野っちは年度序盤らしく死んでますが。
新しい機材を買ったんだってきゃっきゃしてるハマちゃんはかわいいけど、あやめとかもこんな感じなんだろうなあ
そして完全に保護者のもじゃです。存在感は薄いけど、図体のでかさも相まって何やかんやいないと落ち着かないとかそんな感じになってそう、青敬では
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