2019
■真に試すべき事柄は
++++
「やァー、お疲れさーんス」
「冴、自習室はもういいのか」
「見回りもバッチリでーす。あ、C-12の席に忘れ物スわ」
「うい」
国立星港大学の情報センターは、先週の新2~4年の履修登録から始まった繁忙期っつーヤツすね。今週は2年生以上の履修変更と、ついこないだ入学してきた1年生の履修登録でてんやわんやしてヤす。
情報センターっつーのはパソコン学習支援室とでも言えばいーンすかね。パソコンを使った自習を目的とした学習室で、そのスタッフは所長のなっすん以外学生で運営されてる施設スわ。自分もそんな学生スタッフの1人スね。
今アクティブな学生スタッフは自分を含めて3人ス。バイトリーダーが4年生の春山芹サン。その下に3年生の林原雄介サンっつー人たちがいるンすけど、まーァ人手不足なことには違いないスね。で、センター前の掲示板に求人広告を出してて。
自分は先にスタッフとして登録されてた親戚の身代わりとして連れてこられたクチなンで、面談みたいなことは一切なくフツーにスルーしたンすね。つか面談とかするンすかね。そもそも申し込みがあるのかどうかって話スわ。
「おいリン、そいつ、明日さっそく呼んだから。面談するぞ」
「わかりました。しかし、今年は面談まで行くんですか。去年は春山さんの目つきの悪さにビビって面談まで辿り着きませんでしたからね。このセンターで働くなら最初の壁を越えねばならんのだが」
「うるせーこの野郎」
「春山サン、明日何かあるンすか?」
「ああ。さっき、ここでバイトしたいっつー1年が連絡を入れてきたんだ」
「おー! いースね! どんなヤツすか?」
「どんな奴かまではわからないけど、カワキタミドリっつー名前で、理工建築だからマシンの使い方には問題ないだろうなとは」
「男スか? 女スか? 名前はかわいースね」
「理工建築だ、9割方男だろう」
情報センターでの働き方は、授業の空きコマに入るっつー感じのシフトになりヤすね。で、時給は1000円。ただ、一応学内の施設なンで日給に上限が設けられてるンすわ。ちなみにその上限は6000円スね。
業務は受付のA番、自習室業務のB番っつー感じで大きく分かれてヤす。A番はまんま利用者の受付で、学生証と部屋のカードキーを交換するっつー感じスわ。B番は自習室内での学習補佐がメインすね。マシントラブルに対応したり。
如何せんパソコン自習室だけに、スタッフになるにはある程度パソコンの扱いがスムーズに出来る必要がありヤす。なンで採用はどっちかってーと理系の方が優遇される傾向にありヤすね。たまーに春山さんみたいな例外もいヤすけど。
「建築でしたら、春山さんにビビらずこの部屋に辿り着けば採用でいいのでは」
「ンだとリンテメー! 私だけが問題みたいな言い方しやがって!」
「そもそもアンタの受付らしからぬ目つきの悪さと妙な柄シャツが情報センターの柄が悪いと言われる一因には違いないということを自覚したらどうです」
「テメーがちょっと規約に違反したからっつって誰彼構わずポイポイ摘み出すからセンターの治安が悪くなるんだろーが! テメーが摘み出した奴に殴り込まれるのはこっちなんだぞ、あァん?」
まーァ自分から言わせればどっちもどっちスわね。面倒なことに巻き込まれる気しかしないンで口は出しヤせんけど。春山サンと林原サンのこのテのケンカは日常茶飯事なンでもう慣れっこスわ。メンチの切り合いにいちいち驚いてたら身が保ちヤせん。
「冴、お前はどう思う」
「土田に聞いたところで大した意見など出んだろうに」
「情報センターのスタッフに一番必要なのは度胸とスルー力じャないです?」
「あー、そうだな、リンが摘み出して怒り狂った連中に対処出来るかどうかっつー意味での度胸試しが必要だな」
「春山さんとかいう横柄なバイトリーダーのセクハラや妄言を冷静にスルーする力は確かに必要だ」
「ンだとリンこの野郎、ケツ出せや」
「だからそれがハラスメントだと言っている」
「さ~え~! 冴パイをくれ~!」
「はーっ……しかし、この人は本当に今年23なのか?」
「中身は完全におっさんスね」
ちなみに春山サンは留学の経験があるンでその分ストレートの4年生より1コ年上なンすね。でも星大ともなれば1浪2浪は当たり前。一応難関国立大っつー部類らしースからね。自分は姉が星大にいるンで何となく受けて合格したから来たンすけど。
春山サンが自分の胸を鷲掴みにしながらよーやく冷静になってきたっぽいンで、本題に戻りヤす。明日面談に来るらしい1年生をどう出迎えるかっつー話スね。所長のなっすんがテキトーだから、面談やその合否もバイトリーダーの春山サンに一任されるンすね。
「さて、面談をどう進める」
「リンみてーなクソ野郎じゃなきゃいいけどな」
「クズにクソだと言われる筋合いはありませんが」
「ンだとテメー」
「精々吠えていろ」
「いっそアレじャないスか? 春山サンと林原サンの間に立たせて飛び散る火花に耐えたら採用。センターの環境を見せつつ度胸試しも出来ヤすわ」
「なるほど? ドッキリを仕掛けろと」
「まーァそーゆーコトすね。春山サンと林原サンの圧に比べたら、そこらの連中なんか子犬みたいなモンすからね」
「聞き捨てならんな。春山さんはともかく、オレほど人畜無害で品行方正なスタッフはおらんだろうに」
「ヤ、林原サンも十分怖いスよ」
「む」
何やかんやで明日、面談とは名ばかりのドッキリ大会が開催されることになったみたいスね。自分はそのときB番で自習室にいることになってるンで見れないのが残念スけど。極論を言えば人が増えれば何でもいーでーす。
end.
++++
今年度の情報センター初回は冴さん視点です。しかし冴さん目線て珍しいですね全体で見ても。
さて、ミドリがさっそくセンターにバイトの申し込みをしたみたいなんですが、ここで計画されているようですね、今年度は……
春山さんもリン様も柄が悪いと言うか、怖い存在であることには違いないんだよなあ
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「やァー、お疲れさーんス」
「冴、自習室はもういいのか」
「見回りもバッチリでーす。あ、C-12の席に忘れ物スわ」
「うい」
国立星港大学の情報センターは、先週の新2~4年の履修登録から始まった繁忙期っつーヤツすね。今週は2年生以上の履修変更と、ついこないだ入学してきた1年生の履修登録でてんやわんやしてヤす。
情報センターっつーのはパソコン学習支援室とでも言えばいーンすかね。パソコンを使った自習を目的とした学習室で、そのスタッフは所長のなっすん以外学生で運営されてる施設スわ。自分もそんな学生スタッフの1人スね。
今アクティブな学生スタッフは自分を含めて3人ス。バイトリーダーが4年生の春山芹サン。その下に3年生の林原雄介サンっつー人たちがいるンすけど、まーァ人手不足なことには違いないスね。で、センター前の掲示板に求人広告を出してて。
自分は先にスタッフとして登録されてた親戚の身代わりとして連れてこられたクチなンで、面談みたいなことは一切なくフツーにスルーしたンすね。つか面談とかするンすかね。そもそも申し込みがあるのかどうかって話スわ。
「おいリン、そいつ、明日さっそく呼んだから。面談するぞ」
「わかりました。しかし、今年は面談まで行くんですか。去年は春山さんの目つきの悪さにビビって面談まで辿り着きませんでしたからね。このセンターで働くなら最初の壁を越えねばならんのだが」
「うるせーこの野郎」
「春山サン、明日何かあるンすか?」
「ああ。さっき、ここでバイトしたいっつー1年が連絡を入れてきたんだ」
「おー! いースね! どんなヤツすか?」
「どんな奴かまではわからないけど、カワキタミドリっつー名前で、理工建築だからマシンの使い方には問題ないだろうなとは」
「男スか? 女スか? 名前はかわいースね」
「理工建築だ、9割方男だろう」
情報センターでの働き方は、授業の空きコマに入るっつー感じのシフトになりヤすね。で、時給は1000円。ただ、一応学内の施設なンで日給に上限が設けられてるンすわ。ちなみにその上限は6000円スね。
業務は受付のA番、自習室業務のB番っつー感じで大きく分かれてヤす。A番はまんま利用者の受付で、学生証と部屋のカードキーを交換するっつー感じスわ。B番は自習室内での学習補佐がメインすね。マシントラブルに対応したり。
如何せんパソコン自習室だけに、スタッフになるにはある程度パソコンの扱いがスムーズに出来る必要がありヤす。なンで採用はどっちかってーと理系の方が優遇される傾向にありヤすね。たまーに春山さんみたいな例外もいヤすけど。
「建築でしたら、春山さんにビビらずこの部屋に辿り着けば採用でいいのでは」
「ンだとリンテメー! 私だけが問題みたいな言い方しやがって!」
「そもそもアンタの受付らしからぬ目つきの悪さと妙な柄シャツが情報センターの柄が悪いと言われる一因には違いないということを自覚したらどうです」
「テメーがちょっと規約に違反したからっつって誰彼構わずポイポイ摘み出すからセンターの治安が悪くなるんだろーが! テメーが摘み出した奴に殴り込まれるのはこっちなんだぞ、あァん?」
まーァ自分から言わせればどっちもどっちスわね。面倒なことに巻き込まれる気しかしないンで口は出しヤせんけど。春山サンと林原サンのこのテのケンカは日常茶飯事なンでもう慣れっこスわ。メンチの切り合いにいちいち驚いてたら身が保ちヤせん。
「冴、お前はどう思う」
「土田に聞いたところで大した意見など出んだろうに」
「情報センターのスタッフに一番必要なのは度胸とスルー力じャないです?」
「あー、そうだな、リンが摘み出して怒り狂った連中に対処出来るかどうかっつー意味での度胸試しが必要だな」
「春山さんとかいう横柄なバイトリーダーのセクハラや妄言を冷静にスルーする力は確かに必要だ」
「ンだとリンこの野郎、ケツ出せや」
「だからそれがハラスメントだと言っている」
「さ~え~! 冴パイをくれ~!」
「はーっ……しかし、この人は本当に今年23なのか?」
「中身は完全におっさんスね」
ちなみに春山サンは留学の経験があるンでその分ストレートの4年生より1コ年上なンすね。でも星大ともなれば1浪2浪は当たり前。一応難関国立大っつー部類らしースからね。自分は姉が星大にいるンで何となく受けて合格したから来たンすけど。
春山サンが自分の胸を鷲掴みにしながらよーやく冷静になってきたっぽいンで、本題に戻りヤす。明日面談に来るらしい1年生をどう出迎えるかっつー話スね。所長のなっすんがテキトーだから、面談やその合否もバイトリーダーの春山サンに一任されるンすね。
「さて、面談をどう進める」
「リンみてーなクソ野郎じゃなきゃいいけどな」
「クズにクソだと言われる筋合いはありませんが」
「ンだとテメー」
「精々吠えていろ」
「いっそアレじャないスか? 春山サンと林原サンの間に立たせて飛び散る火花に耐えたら採用。センターの環境を見せつつ度胸試しも出来ヤすわ」
「なるほど? ドッキリを仕掛けろと」
「まーァそーゆーコトすね。春山サンと林原サンの圧に比べたら、そこらの連中なんか子犬みたいなモンすからね」
「聞き捨てならんな。春山さんはともかく、オレほど人畜無害で品行方正なスタッフはおらんだろうに」
「ヤ、林原サンも十分怖いスよ」
「む」
何やかんやで明日、面談とは名ばかりのドッキリ大会が開催されることになったみたいスね。自分はそのときB番で自習室にいることになってるンで見れないのが残念スけど。極論を言えば人が増えれば何でもいーでーす。
end.
++++
今年度の情報センター初回は冴さん視点です。しかし冴さん目線て珍しいですね全体で見ても。
さて、ミドリがさっそくセンターにバイトの申し込みをしたみたいなんですが、ここで計画されているようですね、今年度は……
春山さんもリン様も柄が悪いと言うか、怖い存在であることには違いないんだよなあ
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