2019
■Let it go
++++
「さて、これにて一旦新歓の活動は終了したワケだけど、各々の成果を発表してもらおうか」
新入生勧誘活動として学内で堂々ビラを配れるのは4月3日まで。菜月先輩をリーダーに、春風の似合うぽわぽわして癒される女子とやらを積極的に狙いに行く“ゲッティング☆ガールプロジェクト”とやらが決行されていたMMPだけど、その成果には謎が残る。
「うちはかわいい女の子の連絡先を1つゲットしたぞ!」
「あー……あれは本当にどこの誰だろうという目映い余所行きの笑顔でしたね」
「ウルサいぞノサカ!」
「いてっ!」
「やァー、見事なローキックが決まりヤしたわァー」
「的として有能ですよ、野坂さん」
「うるせーぞお前ら!」
有言実行と言うべきか、菜月先輩は女子の連絡先を見事に獲得していた。俺もその現場には立ち会っていたのだけど、それはもう、サークルの最中には見たことがないような目映い笑顔で個人的にはそれだけでもう眼福だったワケだけど、それだけ菜月先輩が女子にガチだったんだよなあ。
しかし、菜月先輩が女子に声をかけるときはどこの誰だろうという目映い余所行きの笑顔だったのは事実じゃないか。その事実を言ってローキックを食らう理由はわからない。律とこーたがヤジを入れてくるのがまあウザい。このドSコンビめ。
「女の子の連絡先をひとつゲットしてきたのはまあいい。菜月、その後は何をして遊んでいたのかな?」
「え、学年サバ読めるかなっていう社会実験」
「それをする必要がどこにあった」
「むしろ今しか出来ないじゃないか」
女子の連絡先をひとつゲットしたことで、菜月先輩はビラ配りに飽きてしまったのか社会実験と称してサバ読みビラ集め大会なるものを始めてしまったのだ。わざわざ自宅まで戻ってグレーのパーカーにジーンズという地味な服に着替えてくるという徹底振り。
いや、普段がスカートやショートパンツに編み上げピンヒールのニーハイブーツというスタイルだけに、グレーのパーカーにジーンズ、スニーカーというどちゃくそ地味なスタイルの菜月先輩もそれはもうごちそうさまですという気持ちでいっぱいだったワケだが! しかも変装のためにダテメガネまで装着してな!
「めっちゃビラもらったんだぞ。これはうちがサバを読めたということじゃないか」
「やァー、サバがどーこーじャなく配る側がビラをさっさと捌ケたかっただけじャないスか? 自分もテキトーに配ってヤしたからね」
「圭斗先輩! ここに犯行を自白した奴がいます!」
「ん、りっちゃんらに誰でもいいからとにかく配れと指示をしたのは僕だよ。誰かさんと誰かさんが自分の趣味に走って全くノルマを達成出来る気がしなかったからね」
「えーと……誰かさんというのは……もしや…?」
「菜月! 野坂! お前たちだ!」
「ですよね!」
「お前たちはまず品評会をやめるところから始めろ! ったく、好みじゃない奴に配るビラなんかないだのあれには関わりたくないだの選り好みしやがって!」
品評会というのは……アレですね。菜月先輩好みのかわいい女子や、俺の好みのイケメンを探しては、あれはアリ、これはナシなどと好き勝手に言うという大会だ。当然、そんなことをやっているとビラの減りが遅くもなりますよね。ビラを配るか否かも自分たちの好みだし。
「でも、うちは最終的に連絡先をもらったじゃないか」
「気合いを入れていた割に獲得数が少ない」
「好感触だった子も含めると、打率はそこそこいいぞ」
「ん、野球で例えないでもらえるかな。僕はスポーツ全般に興味がないものでね」
「ほーう、それ以上ごたごた言うようならこれ以上お前名義の書類は代筆しなくていいんだな、窓際の帝王サマ」
「それとこれとは別問題だ。代筆業はMMPならびに向島インターフェイス放送委員会に関わる話じゃないか。ちなみに、ファンフェス関連の書類はまだあるのでそちらもよろしくお願いします」
「まったく」
「ん、まったくは僕の台詞だよ」
新入生に関しては、来るときは来るし来ないときは何をしても来ないという結論に落ち着いた。結局のところ、今いるMMPのメンバーが全員ビラ経由の加入ではないし、ビラの効果はそこまで期待出来ないことを知っているからだ。それよりも、今後は掲示板に貼られたポスターのポジション取りが重要になる。
所狭しと貼られたポスターは、油断すると他の団体の物が自分たちの上から貼られていたりする。そういうのを見つけ次第直すというのと、自分たちの物を上に上に持って行くというだけの仕事。今いるメンバーは大体ポスターを見て見学に来ているので、どちらかと言うとこっちの作戦の方が重要だと考えているようだ。
「とりあえず、今後はポスターのポジション取りが大事になってくるよ。それから、もしサークルの見学に1年生が来てくれるようなことがあった場合、全力で猫をかぶって明るく楽しく元気のいいサークルであるように見せること。いいね」
「はーい圭斗先輩質問でース」
「どうしたんだいりっちゃん」
「その化けの皮が剥がれた場合どーしヤすか?」
「うーん……なるようになるしかないね。後はアレだよ、菜月と野坂。自分好みの子じゃないからと露骨に応対の手を抜くようなことはしないように」
結局のところはなるようになるというだけのこと。ただ、一応は“ゲッティング☆ガールプロジェクト”と銘打っていただけに女子が一人も入らなかった場合菜月先輩がとんでもないことになると思うけど……まあ、気を長く持つ。それだけだ。その他にはない。
end.
++++
MMPの新歓はナツノサが好き勝手にやってそれに圭斗さんが雷を落とすというのが様式美ですね。
でもナチュラルにいろんな要素がぶち込まれてるね、代筆の話とか。それが主題になってる話はもう少し後で。
何気にりっちゃんが既に結構喋ってる。紹介もまだなのに。でもいいよーそういうナチュラルな入り方。
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「さて、これにて一旦新歓の活動は終了したワケだけど、各々の成果を発表してもらおうか」
新入生勧誘活動として学内で堂々ビラを配れるのは4月3日まで。菜月先輩をリーダーに、春風の似合うぽわぽわして癒される女子とやらを積極的に狙いに行く“ゲッティング☆ガールプロジェクト”とやらが決行されていたMMPだけど、その成果には謎が残る。
「うちはかわいい女の子の連絡先を1つゲットしたぞ!」
「あー……あれは本当にどこの誰だろうという目映い余所行きの笑顔でしたね」
「ウルサいぞノサカ!」
「いてっ!」
「やァー、見事なローキックが決まりヤしたわァー」
「的として有能ですよ、野坂さん」
「うるせーぞお前ら!」
有言実行と言うべきか、菜月先輩は女子の連絡先を見事に獲得していた。俺もその現場には立ち会っていたのだけど、それはもう、サークルの最中には見たことがないような目映い笑顔で個人的にはそれだけでもう眼福だったワケだけど、それだけ菜月先輩が女子にガチだったんだよなあ。
しかし、菜月先輩が女子に声をかけるときはどこの誰だろうという目映い余所行きの笑顔だったのは事実じゃないか。その事実を言ってローキックを食らう理由はわからない。律とこーたがヤジを入れてくるのがまあウザい。このドSコンビめ。
「女の子の連絡先をひとつゲットしてきたのはまあいい。菜月、その後は何をして遊んでいたのかな?」
「え、学年サバ読めるかなっていう社会実験」
「それをする必要がどこにあった」
「むしろ今しか出来ないじゃないか」
女子の連絡先をひとつゲットしたことで、菜月先輩はビラ配りに飽きてしまったのか社会実験と称してサバ読みビラ集め大会なるものを始めてしまったのだ。わざわざ自宅まで戻ってグレーのパーカーにジーンズという地味な服に着替えてくるという徹底振り。
いや、普段がスカートやショートパンツに編み上げピンヒールのニーハイブーツというスタイルだけに、グレーのパーカーにジーンズ、スニーカーというどちゃくそ地味なスタイルの菜月先輩もそれはもうごちそうさまですという気持ちでいっぱいだったワケだが! しかも変装のためにダテメガネまで装着してな!
「めっちゃビラもらったんだぞ。これはうちがサバを読めたということじゃないか」
「やァー、サバがどーこーじャなく配る側がビラをさっさと捌ケたかっただけじャないスか? 自分もテキトーに配ってヤしたからね」
「圭斗先輩! ここに犯行を自白した奴がいます!」
「ん、りっちゃんらに誰でもいいからとにかく配れと指示をしたのは僕だよ。誰かさんと誰かさんが自分の趣味に走って全くノルマを達成出来る気がしなかったからね」
「えーと……誰かさんというのは……もしや…?」
「菜月! 野坂! お前たちだ!」
「ですよね!」
「お前たちはまず品評会をやめるところから始めろ! ったく、好みじゃない奴に配るビラなんかないだのあれには関わりたくないだの選り好みしやがって!」
品評会というのは……アレですね。菜月先輩好みのかわいい女子や、俺の好みのイケメンを探しては、あれはアリ、これはナシなどと好き勝手に言うという大会だ。当然、そんなことをやっているとビラの減りが遅くもなりますよね。ビラを配るか否かも自分たちの好みだし。
「でも、うちは最終的に連絡先をもらったじゃないか」
「気合いを入れていた割に獲得数が少ない」
「好感触だった子も含めると、打率はそこそこいいぞ」
「ん、野球で例えないでもらえるかな。僕はスポーツ全般に興味がないものでね」
「ほーう、それ以上ごたごた言うようならこれ以上お前名義の書類は代筆しなくていいんだな、窓際の帝王サマ」
「それとこれとは別問題だ。代筆業はMMPならびに向島インターフェイス放送委員会に関わる話じゃないか。ちなみに、ファンフェス関連の書類はまだあるのでそちらもよろしくお願いします」
「まったく」
「ん、まったくは僕の台詞だよ」
新入生に関しては、来るときは来るし来ないときは何をしても来ないという結論に落ち着いた。結局のところ、今いるMMPのメンバーが全員ビラ経由の加入ではないし、ビラの効果はそこまで期待出来ないことを知っているからだ。それよりも、今後は掲示板に貼られたポスターのポジション取りが重要になる。
所狭しと貼られたポスターは、油断すると他の団体の物が自分たちの上から貼られていたりする。そういうのを見つけ次第直すというのと、自分たちの物を上に上に持って行くというだけの仕事。今いるメンバーは大体ポスターを見て見学に来ているので、どちらかと言うとこっちの作戦の方が重要だと考えているようだ。
「とりあえず、今後はポスターのポジション取りが大事になってくるよ。それから、もしサークルの見学に1年生が来てくれるようなことがあった場合、全力で猫をかぶって明るく楽しく元気のいいサークルであるように見せること。いいね」
「はーい圭斗先輩質問でース」
「どうしたんだいりっちゃん」
「その化けの皮が剥がれた場合どーしヤすか?」
「うーん……なるようになるしかないね。後はアレだよ、菜月と野坂。自分好みの子じゃないからと露骨に応対の手を抜くようなことはしないように」
結局のところはなるようになるというだけのこと。ただ、一応は“ゲッティング☆ガールプロジェクト”と銘打っていただけに女子が一人も入らなかった場合菜月先輩がとんでもないことになると思うけど……まあ、気を長く持つ。それだけだ。その他にはない。
end.
++++
MMPの新歓はナツノサが好き勝手にやってそれに圭斗さんが雷を落とすというのが様式美ですね。
でもナチュラルにいろんな要素がぶち込まれてるね、代筆の話とか。それが主題になってる話はもう少し後で。
何気にりっちゃんが既に結構喋ってる。紹介もまだなのに。でもいいよーそういうナチュラルな入り方。
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