2018(05)
■コミュニティ内ニコイチの姿
++++
「ありゃ、フラれた」
「ダメだったか」
「これから朝霞の部屋で水入らずで飲むんだとー。それはそれで羨ましいな、乱入してやろうかな」
「カン、水入らずでって言ってるんだから邪魔してやるな」
日曜の夕方、バンドの練習を終えて夜から始まるUSDX打ち合わせまでの時間を潰そうと適当な奴に声を掛け続けていた。スガがいるから別に誰も捕まらなくたって問題自体はないんだけど、たまにはちょっと違う風を取り入れたいと思うこともあって。
洋平にも声を掛けてみたんだけどフラれたし。って言うか朝霞と飲むとか。確かにこれからあるUSDXの打ち合わせは強制参加じゃないけど、もうちょっと真面目な用事での不参加だと思ってたからな。飲んでるとわかれば頃合いを見て電凸でもしてやろうか。
「――で、その埋め合わせにオレが呼ばれたと。貴様ら、オレは高いぞ」
「俺とリンの仲じゃんか、なあ!」
「どんな仲だ」
「俺のライバルにして、USDXファンコミュニティの間では“鍵盤組”って括られる仲じゃないすか~」
「へえ。2人、鍵盤組って呼ばれてんだ」
「なんかそうらしい」
「カンノ、エゴサーチをしているのか」
「ある程度はするだろ。人の声が届かねーと作ったモンの何が良くて何が悪いのかわかんないし。作りっぱなしで満足して確認しないのが一番よくない」
スガはステージとかバンドとかだとその辺も割とちゃんとしてる印象があるけど、ことUSDXに関しては怖くて現実を直視出来ないと言っている。多分リアルとネットの差がそうさせてんじゃないかなと思う。ネットだと時々悪意剥き出しの言葉が突き刺さって来るから。
リンはあまりそういうことに興味がないらしく、良くも悪くも言いたい奴には言わせておけというスタンスらしい。誰が何と言おうとも自分のやり方を変えることはないと言えば聞こえはいい。だけど、あまりに人の言葉に耳を傾けなさ過ぎても良くないと俺は思っていて。
「それに今はUSDXになったばっかりでまだまだ試行錯誤してる最中だ。今までのSDXの方が良かったって層も一定数はいる。俺たちのキャラも1回1回ちゃんとブレてないか確認しなきゃいけないし、システムにしてもそうだろ、スガ」
「まあな。それはわかる」
「エゴサも悪いことばっかじゃねーのよ」
「でも、悪いことを言われたらさすがに気持ちがしんどくならないか?」
「それは“チータ”が言われてるんであって“俺”が言われてるんじゃないからな。リアルの俺はあそこまで喧嘩っ早くも無礼でもねーよ」
「喧嘩っ早いとは思うけどな」
「ンだとスガ!」
「初対面の女の子にちびっ子なんて無礼なことを言ってその後しばらく喧嘩してた話をしようか」
「いやお前その話はなしじゃね? ノーカンだノーカン!」
宇部の後ろにくっついて歩いてた茉莉奈と出会った時の話はノーカンだ。ちくしょう、スガの野郎。常に一緒にいるとこーゆーときに不利なんだよな。俺もスガ関係の変な話は持ってるはずなんだけど、爆撃の仕掛け方が下手なんだよな。
「ちなみに、最近だと企画関係で何か際立ったコメントはあったのか」
「そうね、SDX晩期のぐだぐだからは戻って来ててそれは良かったとか?」
「確かに夏の頃のぐだぐだは酷かった。他には」
「ゲームシステムが前より凝ってるっつーのもあったな」
「よかったぁー……」
「何あからさまにホッとしてんだよスガ」
「そりゃするだろ、自分が組んでるんだから」
「でもお褒めの言葉ばっかじゃないとは言っとくぞ。御託はいいからただ殺し合う企画が戻って来てほしい、とかもあるんだからな」
「と言うか、後でまた会議をするのだから、夜にとっておけばいいのではないか」
「確かに」
リンの言うようにUSDX関係の話は夜にとっておくことにして、違う話題へ移ることに。なんか、キョージュ曰く今日はソルも棚卸が前日のうちに終わってたとかで休みらしいから、久々にフル参加出来るらしい。ますます全員揃わないのが惜しいな今日は。いや、強制じゃないけどな。
「ほう、朝霞は今日は来んのか」
「いや、待ち時間にさ、俺らの共通のダチにアポ取ろうとしたら朝霞と水入らずで飲むからーっつってさ」
「交友関係の広すぎる朝霞にも水入らずで酌み交わす相手がいるのだな」
「うん、まあ、朝霞にとってのそいつは俺にとってのカンみたいな相手だろうから」
「あー、そうね。確かにイメージとしては俺にとってのスガだわ」
「その割にそういう存在があるとは聞いたことがないのだが、いや、常日頃から行動を共にしているお前たちが異色なのだな」
「えっ、マジかよ!」
「いくら相棒とは言え、そこまで四六時中一緒にいる奴らはそうおらん」
「俺は薄々感じてた。でも本当にたまたま趣味が重なってた結果だから」
部活動中にはニコイチって感じの奴らはちょこちょこいるんだよな。だけどその“相棒”と部活動の外ででも付き合いがある奴っていうのはそういない。スガとは音楽のこととかゲームにフットサル、とにかく趣味が合って一緒にいる時間が長くなってたんだ。
それを異色と言われれば、確かにそうなのかもしれない。確かに朝霞と洋平は部活以外の場所で何かしてるって話を聞かない。あっ、年末に1回出かけたとかそのくらいか。ベタベタとはしてなくたって相棒にはなり得るし、ちょっと離れてたからってそれまでの付き合いがリセットされるワケじゃねーもんなあ。
「……と言うか、朝霞とサシで飲むことほど怖い事もないのだがな」
「え、リンが怖いってアイツどんな飲み方すんの…!?」
「それはもう捕まったが最後、無事に翌日を迎えられるかわからんとは」
end.
++++
今年度ナノスパ最終日は今年度より強化されたUSDXです。というか学生バンド組。
スガカンの暇潰しに声をかけた洋平ちゃんは朝霞Pと飲むからとお断りを入れて来たようですが、その飲みこそがかのLIBに繋がる飲み。
実はサシ飲みではないんだけど、朝霞Pとのサシ飲みと聞いてリン様が戦慄している……そらそうか
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「ありゃ、フラれた」
「ダメだったか」
「これから朝霞の部屋で水入らずで飲むんだとー。それはそれで羨ましいな、乱入してやろうかな」
「カン、水入らずでって言ってるんだから邪魔してやるな」
日曜の夕方、バンドの練習を終えて夜から始まるUSDX打ち合わせまでの時間を潰そうと適当な奴に声を掛け続けていた。スガがいるから別に誰も捕まらなくたって問題自体はないんだけど、たまにはちょっと違う風を取り入れたいと思うこともあって。
洋平にも声を掛けてみたんだけどフラれたし。って言うか朝霞と飲むとか。確かにこれからあるUSDXの打ち合わせは強制参加じゃないけど、もうちょっと真面目な用事での不参加だと思ってたからな。飲んでるとわかれば頃合いを見て電凸でもしてやろうか。
「――で、その埋め合わせにオレが呼ばれたと。貴様ら、オレは高いぞ」
「俺とリンの仲じゃんか、なあ!」
「どんな仲だ」
「俺のライバルにして、USDXファンコミュニティの間では“鍵盤組”って括られる仲じゃないすか~」
「へえ。2人、鍵盤組って呼ばれてんだ」
「なんかそうらしい」
「カンノ、エゴサーチをしているのか」
「ある程度はするだろ。人の声が届かねーと作ったモンの何が良くて何が悪いのかわかんないし。作りっぱなしで満足して確認しないのが一番よくない」
スガはステージとかバンドとかだとその辺も割とちゃんとしてる印象があるけど、ことUSDXに関しては怖くて現実を直視出来ないと言っている。多分リアルとネットの差がそうさせてんじゃないかなと思う。ネットだと時々悪意剥き出しの言葉が突き刺さって来るから。
リンはあまりそういうことに興味がないらしく、良くも悪くも言いたい奴には言わせておけというスタンスらしい。誰が何と言おうとも自分のやり方を変えることはないと言えば聞こえはいい。だけど、あまりに人の言葉に耳を傾けなさ過ぎても良くないと俺は思っていて。
「それに今はUSDXになったばっかりでまだまだ試行錯誤してる最中だ。今までのSDXの方が良かったって層も一定数はいる。俺たちのキャラも1回1回ちゃんとブレてないか確認しなきゃいけないし、システムにしてもそうだろ、スガ」
「まあな。それはわかる」
「エゴサも悪いことばっかじゃねーのよ」
「でも、悪いことを言われたらさすがに気持ちがしんどくならないか?」
「それは“チータ”が言われてるんであって“俺”が言われてるんじゃないからな。リアルの俺はあそこまで喧嘩っ早くも無礼でもねーよ」
「喧嘩っ早いとは思うけどな」
「ンだとスガ!」
「初対面の女の子にちびっ子なんて無礼なことを言ってその後しばらく喧嘩してた話をしようか」
「いやお前その話はなしじゃね? ノーカンだノーカン!」
宇部の後ろにくっついて歩いてた茉莉奈と出会った時の話はノーカンだ。ちくしょう、スガの野郎。常に一緒にいるとこーゆーときに不利なんだよな。俺もスガ関係の変な話は持ってるはずなんだけど、爆撃の仕掛け方が下手なんだよな。
「ちなみに、最近だと企画関係で何か際立ったコメントはあったのか」
「そうね、SDX晩期のぐだぐだからは戻って来ててそれは良かったとか?」
「確かに夏の頃のぐだぐだは酷かった。他には」
「ゲームシステムが前より凝ってるっつーのもあったな」
「よかったぁー……」
「何あからさまにホッとしてんだよスガ」
「そりゃするだろ、自分が組んでるんだから」
「でもお褒めの言葉ばっかじゃないとは言っとくぞ。御託はいいからただ殺し合う企画が戻って来てほしい、とかもあるんだからな」
「と言うか、後でまた会議をするのだから、夜にとっておけばいいのではないか」
「確かに」
リンの言うようにUSDX関係の話は夜にとっておくことにして、違う話題へ移ることに。なんか、キョージュ曰く今日はソルも棚卸が前日のうちに終わってたとかで休みらしいから、久々にフル参加出来るらしい。ますます全員揃わないのが惜しいな今日は。いや、強制じゃないけどな。
「ほう、朝霞は今日は来んのか」
「いや、待ち時間にさ、俺らの共通のダチにアポ取ろうとしたら朝霞と水入らずで飲むからーっつってさ」
「交友関係の広すぎる朝霞にも水入らずで酌み交わす相手がいるのだな」
「うん、まあ、朝霞にとってのそいつは俺にとってのカンみたいな相手だろうから」
「あー、そうね。確かにイメージとしては俺にとってのスガだわ」
「その割にそういう存在があるとは聞いたことがないのだが、いや、常日頃から行動を共にしているお前たちが異色なのだな」
「えっ、マジかよ!」
「いくら相棒とは言え、そこまで四六時中一緒にいる奴らはそうおらん」
「俺は薄々感じてた。でも本当にたまたま趣味が重なってた結果だから」
部活動中にはニコイチって感じの奴らはちょこちょこいるんだよな。だけどその“相棒”と部活動の外ででも付き合いがある奴っていうのはそういない。スガとは音楽のこととかゲームにフットサル、とにかく趣味が合って一緒にいる時間が長くなってたんだ。
それを異色と言われれば、確かにそうなのかもしれない。確かに朝霞と洋平は部活以外の場所で何かしてるって話を聞かない。あっ、年末に1回出かけたとかそのくらいか。ベタベタとはしてなくたって相棒にはなり得るし、ちょっと離れてたからってそれまでの付き合いがリセットされるワケじゃねーもんなあ。
「……と言うか、朝霞とサシで飲むことほど怖い事もないのだがな」
「え、リンが怖いってアイツどんな飲み方すんの…!?」
「それはもう捕まったが最後、無事に翌日を迎えられるかわからんとは」
end.
++++
今年度ナノスパ最終日は今年度より強化されたUSDXです。というか学生バンド組。
スガカンの暇潰しに声をかけた洋平ちゃんは朝霞Pと飲むからとお断りを入れて来たようですが、その飲みこそがかのLIBに繋がる飲み。
実はサシ飲みではないんだけど、朝霞Pとのサシ飲みと聞いてリン様が戦慄している……そらそうか
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