2018(05)
■白いディッシュに色を添える
++++
「タカちゃーん、来たよー。あっ、本当に机がある。いいねえ」
「どうぞ、狭くなりましたけど上がって下さい」
前々から約束をしていた通り、果林先輩がうちに遊びに来た。それというのも、大量に溜まっているパンまつりのお皿を持って来てくれるという話になってたんだ。果林先輩はとにかく量を食べる人だから、このテの景品がとにかくたくさん溜まるんだ。
今までは伊東先輩の部屋に寄贈することで無制限飲みで使ってもらったりしてたそうなんだけど、伊東先輩が1人暮らしを終えたことで皿の行き場が無くなってしまったらしい。当然、果林先輩の家には大量の食器があってこれ以上は増やせないそうで。
そこで白羽の矢が立ったのが俺の部屋だったらしい。確かに俺の部屋は必要最低限の食器しか置いてないおかげで夏はみんなに不便な目に遭わせたしなあ。精々2~3人くらいにしか耐えれないんだよね、うちの食器事情じゃ。それ以上になると紙皿の出番ですよね。
「はいこれ」
「10枚はありますよね、これ」
「溜まっちゃったんだもんね。でもさ、これだけシール貯めてると不正を疑われてもーう大変よ」
「確かに、期間に対して10枚集めるのが早すぎますもんね。果林先輩を知ってたら何も不思議じゃないですけど」
「そうなの。だからパンを買うお店はいつも同じにするのがコツね。それか顔見知りの居る店。そうじゃないと売り物のパンからシールを盗ったって疑われるから」
俺はよく知らなかったんだけど、パンまつりの点数が書いたシールとかペットボトルに付いてる懸賞のシールみたいな物を剥がすと窃盗罪になるんだそうだ。ついでに言えば、窃盗で得たシールで景品を交換しようとすると詐欺に当たるらしい。
何度も言うけど俺は果林先輩が本当に自分で大量にパンを食べることを知っているから怒涛のペースにも驚かない。だけど知らない人だとさすがにおかしいと思うらしい。いくら家族と協力したってこんなに早く溜まるかな、と思われることも多々だそうで。
「知り合いがいるとどんないいことがあるんですか?」
「アタシがパンをたくさん買ってることを知ってるから、お皿をたくさん引き換えても疑われない。あれだけ買ってたら溜まるよねって納得してもらえる」
「確かに」
「バイト先でも一応点数を分けてもらえるっちゃ分けてもらえるんだけど、自分で毎日食べる分よりは少ないですよねー」
「それは果林先輩だからだと思うんですよね?」
「ですよねー」
「実は俺も冷蔵庫にシール台紙を貼ってるんですけど」
「あっホントだ。何点溜まってる?」
こないだ貰って来たシール台紙にペタペタとシールを貼ってみたんだけど、あと1ヶ月で溜まるか溜まらないかっていうギリギリな感じ。でもこれからは大学に行くし家でただごろごろしてるだけよりは溜まるかなと思う。小数点以下の扱いに気を付けながらかな。
「えっと、10.5点ですかね」
「もうちょっとだね」
「寒かった頃は食パンを食べてたんですけど、あったかくなってくるとご飯を炊くのにも抵抗が無くなって来てパンの消費量が落ち込むんですよ」
「それはそれでいいことだよ。そもそもアタシご飯派だもん」
「そうなんですか!?」
「そんなに驚くこと?」
「正直果林先輩は美味しい物なら何でも好きだと思ってました」
「美味しい物は何でも好きだよ。パンも好き。でもご飯はもっと好き」
それはそうと、10枚ももらってしまった皿の使い道だ。俺の生活ではどう考えても10枚も使うことはない。ただ、夏合宿の打ち合わせのときみたいな特殊ケースが入って来れば一度にたくさん使うかなって。あ、合宿云々以前にインターフェイスか。
エイジと机を買いに行ったときにも言ってたけど、インターフェイスのみんなで集まる会場になりやすいのが俺の家。机も買ったし、今後は今までよりも少し規模の大きなパーティーめいたことをやるようになるかもしれない。そんな時に紙皿ではいろいろ不便だとは言っていたんだ。
「タカちゃん、洗うのがめんどくさいときは紙皿もいいけどね、お皿にラップをかけてもいいんですよ」
「聞いたことはあります」
「せっかく机も来たことだし、お祝いに何か作ろうか。アタシお腹空いたし」
「えっ、いいんですか」
「あのねえ、パンまつりの公式が紹介してるトーストとかサンドイッチのレシピが美味しそうでさ。いっちー先輩に頼れなくなった以上、自分でやるしかないからね」
「調べればすぐ出てきますか?」
「出る出る」
スマホで調べた先のページには、美味しそうなトーストが紹介されていた。軽く潰したジャガイモと、ハムとチーズ、それから卵が乗った豪華なトースト。これ1枚で大分腹もちが良さそうだなっていう印象。これは確かに食べたいけど、自分ではなかなか出来そうにない。
「ところでタカちゃん、食パンある?」
「ないですね」
「買いに行かなきゃいけないのか。よし、買いに行こうか」
「えっ、これからですか?」
「だって今食べたいんだもん。買いに行かなきゃないなら、買いに行きますよねー」
「ですよねー」
「どのパンを使うかにもよるけど、今回のパンの点数はタカちゃんにあげるね」
「ありがとうございます」
果林先輩にとってはおやつっていうレベルだろうけど、俺にとってはちゃんとした1食にもなりそうな豪華なトースト。それを作るための買い物に出ることになった。一応、冷蔵庫の中身や乾き物の備蓄箱もチェックして。うん。パスタの麺が無くなってる。買っとかなきゃ。
end.
++++
パンまつりの話もなかなかナノスパあるあるになりつつありますね。春の風物詩。
果林はパンばっかり食べてるのかな、コンビニでおにぎりは買わないのだろうか。それとも春だからパンを買うのか。謎である。
あったかくなるとご飯を炊くのに抵抗がないって、水に触りたくないのねタカちゃんよ
.
++++
「タカちゃーん、来たよー。あっ、本当に机がある。いいねえ」
「どうぞ、狭くなりましたけど上がって下さい」
前々から約束をしていた通り、果林先輩がうちに遊びに来た。それというのも、大量に溜まっているパンまつりのお皿を持って来てくれるという話になってたんだ。果林先輩はとにかく量を食べる人だから、このテの景品がとにかくたくさん溜まるんだ。
今までは伊東先輩の部屋に寄贈することで無制限飲みで使ってもらったりしてたそうなんだけど、伊東先輩が1人暮らしを終えたことで皿の行き場が無くなってしまったらしい。当然、果林先輩の家には大量の食器があってこれ以上は増やせないそうで。
そこで白羽の矢が立ったのが俺の部屋だったらしい。確かに俺の部屋は必要最低限の食器しか置いてないおかげで夏はみんなに不便な目に遭わせたしなあ。精々2~3人くらいにしか耐えれないんだよね、うちの食器事情じゃ。それ以上になると紙皿の出番ですよね。
「はいこれ」
「10枚はありますよね、これ」
「溜まっちゃったんだもんね。でもさ、これだけシール貯めてると不正を疑われてもーう大変よ」
「確かに、期間に対して10枚集めるのが早すぎますもんね。果林先輩を知ってたら何も不思議じゃないですけど」
「そうなの。だからパンを買うお店はいつも同じにするのがコツね。それか顔見知りの居る店。そうじゃないと売り物のパンからシールを盗ったって疑われるから」
俺はよく知らなかったんだけど、パンまつりの点数が書いたシールとかペットボトルに付いてる懸賞のシールみたいな物を剥がすと窃盗罪になるんだそうだ。ついでに言えば、窃盗で得たシールで景品を交換しようとすると詐欺に当たるらしい。
何度も言うけど俺は果林先輩が本当に自分で大量にパンを食べることを知っているから怒涛のペースにも驚かない。だけど知らない人だとさすがにおかしいと思うらしい。いくら家族と協力したってこんなに早く溜まるかな、と思われることも多々だそうで。
「知り合いがいるとどんないいことがあるんですか?」
「アタシがパンをたくさん買ってることを知ってるから、お皿をたくさん引き換えても疑われない。あれだけ買ってたら溜まるよねって納得してもらえる」
「確かに」
「バイト先でも一応点数を分けてもらえるっちゃ分けてもらえるんだけど、自分で毎日食べる分よりは少ないですよねー」
「それは果林先輩だからだと思うんですよね?」
「ですよねー」
「実は俺も冷蔵庫にシール台紙を貼ってるんですけど」
「あっホントだ。何点溜まってる?」
こないだ貰って来たシール台紙にペタペタとシールを貼ってみたんだけど、あと1ヶ月で溜まるか溜まらないかっていうギリギリな感じ。でもこれからは大学に行くし家でただごろごろしてるだけよりは溜まるかなと思う。小数点以下の扱いに気を付けながらかな。
「えっと、10.5点ですかね」
「もうちょっとだね」
「寒かった頃は食パンを食べてたんですけど、あったかくなってくるとご飯を炊くのにも抵抗が無くなって来てパンの消費量が落ち込むんですよ」
「それはそれでいいことだよ。そもそもアタシご飯派だもん」
「そうなんですか!?」
「そんなに驚くこと?」
「正直果林先輩は美味しい物なら何でも好きだと思ってました」
「美味しい物は何でも好きだよ。パンも好き。でもご飯はもっと好き」
それはそうと、10枚ももらってしまった皿の使い道だ。俺の生活ではどう考えても10枚も使うことはない。ただ、夏合宿の打ち合わせのときみたいな特殊ケースが入って来れば一度にたくさん使うかなって。あ、合宿云々以前にインターフェイスか。
エイジと机を買いに行ったときにも言ってたけど、インターフェイスのみんなで集まる会場になりやすいのが俺の家。机も買ったし、今後は今までよりも少し規模の大きなパーティーめいたことをやるようになるかもしれない。そんな時に紙皿ではいろいろ不便だとは言っていたんだ。
「タカちゃん、洗うのがめんどくさいときは紙皿もいいけどね、お皿にラップをかけてもいいんですよ」
「聞いたことはあります」
「せっかく机も来たことだし、お祝いに何か作ろうか。アタシお腹空いたし」
「えっ、いいんですか」
「あのねえ、パンまつりの公式が紹介してるトーストとかサンドイッチのレシピが美味しそうでさ。いっちー先輩に頼れなくなった以上、自分でやるしかないからね」
「調べればすぐ出てきますか?」
「出る出る」
スマホで調べた先のページには、美味しそうなトーストが紹介されていた。軽く潰したジャガイモと、ハムとチーズ、それから卵が乗った豪華なトースト。これ1枚で大分腹もちが良さそうだなっていう印象。これは確かに食べたいけど、自分ではなかなか出来そうにない。
「ところでタカちゃん、食パンある?」
「ないですね」
「買いに行かなきゃいけないのか。よし、買いに行こうか」
「えっ、これからですか?」
「だって今食べたいんだもん。買いに行かなきゃないなら、買いに行きますよねー」
「ですよねー」
「どのパンを使うかにもよるけど、今回のパンの点数はタカちゃんにあげるね」
「ありがとうございます」
果林先輩にとってはおやつっていうレベルだろうけど、俺にとってはちゃんとした1食にもなりそうな豪華なトースト。それを作るための買い物に出ることになった。一応、冷蔵庫の中身や乾き物の備蓄箱もチェックして。うん。パスタの麺が無くなってる。買っとかなきゃ。
end.
++++
パンまつりの話もなかなかナノスパあるあるになりつつありますね。春の風物詩。
果林はパンばっかり食べてるのかな、コンビニでおにぎりは買わないのだろうか。それとも春だからパンを買うのか。謎である。
あったかくなるとご飯を炊くのに抵抗がないって、水に触りたくないのねタカちゃんよ
.