2018(05)
■行く道を作る効率
++++
「へえ、珍しくしっとりした感じだけど、これはこれでいいね」
「だろ?」
「何でカンがドヤってんだ」
「俺のコーラスもいーだろーがよ!」
USDXの大半を占める春休みの学生たちがキョージュ宅に集合すると、始まるのはグループでのこれからの活動会議ではなくカンノの活動報告だった。さっそくこれを聞いてくれよと再生されたのは塩見さんの歌うシティポップ調のナンバー。
話によれば、高崎の組んでいた自然消滅バンドのギターボーカルが唐突にメンバーを集め、このバンドで演るんだと鼻息を荒くしていたらしい。3曲ほど用意した新曲をサポートメンバーを含めた編成で録るだけ録ってその場は解散したと。
そこで呼ばれたサポートメンバーがベースの塩見さんとキーボードのカンノだったらしいのだが、ギターボーカルのワガママで最後に塩見さんバージョンも聞きたいなどなんだのと、あれよあれよと別バージョンの録音も進んだとか。
「大晦日に第九やったときにさ、メンバーみんなバンドマンならフルメンバー版第九も聞きたいって言われたの思い出したよ」
「大晦日の頃にはまだオレは加入してなかったがな」
「でもバネはピアノ弾けるじゃない。レイ君は何か楽器出来ないの?」
「出来るという話は聞いたことがない」
「じゃあインスト版のアルバムと歌ものアルバム作ればいいんじゃない? レイ君物書きだし歌詞書いてって言ったら持って来てくれそう」
「そう簡単に出来ることでもないと思うがアイツならやりかねんな……」
以前、生放送で投げ銭をたくさんいただけたらUSDXで使っているカンノの曲を収録したアルバムを出してもいいなという話になっていたそうだ。カンノが組んだオリジナル音源と、メンバーによるライブサウンド版、それから歌ものもやりたいなどと好き勝手な話が広がっていく。
「ところでソルさんは安定の社畜モードですか?」
「今日は何か棚卸? らしいから逆にいつもよりは早く上がれるらしいし、来れそうなら連絡くれるって」
「つかアイツどんなバイタリティしてんだよ」
「本当にな」
「で、4月からのUSDXの運営方針に関する会議ね」
「はーい」
新年度に入るとメンバー4人が大学4年に進級し、それぞれの忙しさに走り回ることになる。主なところで言えば就活や卒研、院試などがあるだろうか。そして院生もそれなりに忙しいはずだが、そんな素振りは全く見せないのが不気味だ。社会人は年度が変わろうとも変わらず社畜だそうだ。
「ところで4年生のみんなはどういう動き方をするのかな。就職一本とか院試とか。バネは院に行きそうな顔だけど」
「院が第一志望ですけど顔で判断するな」
「いかにも研究職って感じじゃない。コンちゃんは?」
「俺は院も視野に入れてますね」
「へー、コンちゃん院試受けるの」
「院を出てないと就職にも影響しそうじゃないですか? プロさんもそういうことを考えての進学なんじゃ」
「僕はそんなことちーっとも考えてなかったね! ただ学生でいたいがためだったし。そのために留年もしたよね」
「知ってたけど安定のクズだな!」
「そう言うチータ君はどうするのかな? 君も理系だよね?」
「俺はもうあれよ、うん」
「おやおや~? 何も決まってないのかな~?」
「うるせー! 就職したくなくて学生の期間わざと伸ばしてるヤツに言われたくねーし!」
ここでは誤魔化しているようだが、カンノは割と本気で音楽で飯を食おうとしているらしい。自身のバンド・CONTINUEやUSDX関係で使う曲の他にも様々な効果音などを制作していて、いつでも勝負出来るようにしているとか。言ってしまえば、カンノが院に行く意味はない。
スガノが院へ行くというのは、向島は院を出ていない理系などどこで使うのだというエリアであることに違いないし、理解せんでもない。キョージュが特別おかしいだけで、他の面々はまあよくある進路希望だろう。
「あれっ、そういや今日朝霞って?」
「ああ、レイ君は今日ゼミの論文提出だから遅れるって」
「そういや文系ってどんな感じなんだろうな。授業めちゃ少ないみたいな印象しかねーけど」
「朝霞はガッツリ就活していて、イベント関係を中心に回っているそうだ。企画をやりたいなどと言っていたな」
「うわっ、安定!」
「アイツのそれは根っからだったんだな」
USDXの運営方針の会議のはずが、新4年が3人も集まれば進路の話になるのは致し方ないことなのか。いや、誰がどのような動き方をするのかわかっていなければ今後の活動の予定など立てられんということにしておこう。
「それはそうと、USDX的には院試と就活組の予定次第的なところがあるじゃない?」
「ぶっちゃけ俺ら4人だと緩めなのが俺と朝霞じゃね? お前ら院試受けるっつっても就活も全くやらないワケじゃないんだろ?」
「言ってしまえば、その辺の連中のやっている就活など就活ごっこだろう。効率が悪過ぎる。ごっこ連中が無意味な活動をしている時間をオレはこっちに充てるだけだ」
「うわっ、リンお前言っちまった!」
「就活初期の半端なセミナーやワンデーインターンなど無意味ではないかと」
「ホントに」
「同意してっけどクソ院生が就活の何を知ってんだ!」
「あー、そういうこと言うチータ君。そうだなあ、ちょっとそこまで行ってお肉1キロほど買って来てくれる? お金は投げ銭でいただいたトコから出してあげるから」
「ちょっ、お前それ肉1キロとかどう考えてもソルが来るヤツだろテメー!」
カンノは肉を買いに追い出され、オレはキョージュに紅茶のおかわりをせびる。会議はまだまだ終わる気配がないし、まだ何もまとまっていないのだがはてさてどうしたものか。
end.
++++
春ということでそれぞれの進路希望なんかも少しずつ表に出ているようですが、プロ氏w
就職したくないがために留年などを繰り返し院にまで進学してるってこれは明らかなワケありですね
そして社畜のソルさんは安定のお仕事です。まあ、年度末の平日だからね、そんなモンですね。
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「へえ、珍しくしっとりした感じだけど、これはこれでいいね」
「だろ?」
「何でカンがドヤってんだ」
「俺のコーラスもいーだろーがよ!」
USDXの大半を占める春休みの学生たちがキョージュ宅に集合すると、始まるのはグループでのこれからの活動会議ではなくカンノの活動報告だった。さっそくこれを聞いてくれよと再生されたのは塩見さんの歌うシティポップ調のナンバー。
話によれば、高崎の組んでいた自然消滅バンドのギターボーカルが唐突にメンバーを集め、このバンドで演るんだと鼻息を荒くしていたらしい。3曲ほど用意した新曲をサポートメンバーを含めた編成で録るだけ録ってその場は解散したと。
そこで呼ばれたサポートメンバーがベースの塩見さんとキーボードのカンノだったらしいのだが、ギターボーカルのワガママで最後に塩見さんバージョンも聞きたいなどなんだのと、あれよあれよと別バージョンの録音も進んだとか。
「大晦日に第九やったときにさ、メンバーみんなバンドマンならフルメンバー版第九も聞きたいって言われたの思い出したよ」
「大晦日の頃にはまだオレは加入してなかったがな」
「でもバネはピアノ弾けるじゃない。レイ君は何か楽器出来ないの?」
「出来るという話は聞いたことがない」
「じゃあインスト版のアルバムと歌ものアルバム作ればいいんじゃない? レイ君物書きだし歌詞書いてって言ったら持って来てくれそう」
「そう簡単に出来ることでもないと思うがアイツならやりかねんな……」
以前、生放送で投げ銭をたくさんいただけたらUSDXで使っているカンノの曲を収録したアルバムを出してもいいなという話になっていたそうだ。カンノが組んだオリジナル音源と、メンバーによるライブサウンド版、それから歌ものもやりたいなどと好き勝手な話が広がっていく。
「ところでソルさんは安定の社畜モードですか?」
「今日は何か棚卸? らしいから逆にいつもよりは早く上がれるらしいし、来れそうなら連絡くれるって」
「つかアイツどんなバイタリティしてんだよ」
「本当にな」
「で、4月からのUSDXの運営方針に関する会議ね」
「はーい」
新年度に入るとメンバー4人が大学4年に進級し、それぞれの忙しさに走り回ることになる。主なところで言えば就活や卒研、院試などがあるだろうか。そして院生もそれなりに忙しいはずだが、そんな素振りは全く見せないのが不気味だ。社会人は年度が変わろうとも変わらず社畜だそうだ。
「ところで4年生のみんなはどういう動き方をするのかな。就職一本とか院試とか。バネは院に行きそうな顔だけど」
「院が第一志望ですけど顔で判断するな」
「いかにも研究職って感じじゃない。コンちゃんは?」
「俺は院も視野に入れてますね」
「へー、コンちゃん院試受けるの」
「院を出てないと就職にも影響しそうじゃないですか? プロさんもそういうことを考えての進学なんじゃ」
「僕はそんなことちーっとも考えてなかったね! ただ学生でいたいがためだったし。そのために留年もしたよね」
「知ってたけど安定のクズだな!」
「そう言うチータ君はどうするのかな? 君も理系だよね?」
「俺はもうあれよ、うん」
「おやおや~? 何も決まってないのかな~?」
「うるせー! 就職したくなくて学生の期間わざと伸ばしてるヤツに言われたくねーし!」
ここでは誤魔化しているようだが、カンノは割と本気で音楽で飯を食おうとしているらしい。自身のバンド・CONTINUEやUSDX関係で使う曲の他にも様々な効果音などを制作していて、いつでも勝負出来るようにしているとか。言ってしまえば、カンノが院に行く意味はない。
スガノが院へ行くというのは、向島は院を出ていない理系などどこで使うのだというエリアであることに違いないし、理解せんでもない。キョージュが特別おかしいだけで、他の面々はまあよくある進路希望だろう。
「あれっ、そういや今日朝霞って?」
「ああ、レイ君は今日ゼミの論文提出だから遅れるって」
「そういや文系ってどんな感じなんだろうな。授業めちゃ少ないみたいな印象しかねーけど」
「朝霞はガッツリ就活していて、イベント関係を中心に回っているそうだ。企画をやりたいなどと言っていたな」
「うわっ、安定!」
「アイツのそれは根っからだったんだな」
USDXの運営方針の会議のはずが、新4年が3人も集まれば進路の話になるのは致し方ないことなのか。いや、誰がどのような動き方をするのかわかっていなければ今後の活動の予定など立てられんということにしておこう。
「それはそうと、USDX的には院試と就活組の予定次第的なところがあるじゃない?」
「ぶっちゃけ俺ら4人だと緩めなのが俺と朝霞じゃね? お前ら院試受けるっつっても就活も全くやらないワケじゃないんだろ?」
「言ってしまえば、その辺の連中のやっている就活など就活ごっこだろう。効率が悪過ぎる。ごっこ連中が無意味な活動をしている時間をオレはこっちに充てるだけだ」
「うわっ、リンお前言っちまった!」
「就活初期の半端なセミナーやワンデーインターンなど無意味ではないかと」
「ホントに」
「同意してっけどクソ院生が就活の何を知ってんだ!」
「あー、そういうこと言うチータ君。そうだなあ、ちょっとそこまで行ってお肉1キロほど買って来てくれる? お金は投げ銭でいただいたトコから出してあげるから」
「ちょっ、お前それ肉1キロとかどう考えてもソルが来るヤツだろテメー!」
カンノは肉を買いに追い出され、オレはキョージュに紅茶のおかわりをせびる。会議はまだまだ終わる気配がないし、まだ何もまとまっていないのだがはてさてどうしたものか。
end.
++++
春ということでそれぞれの進路希望なんかも少しずつ表に出ているようですが、プロ氏w
就職したくないがために留年などを繰り返し院にまで進学してるってこれは明らかなワケありですね
そして社畜のソルさんは安定のお仕事です。まあ、年度末の平日だからね、そんなモンですね。
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