2018(05)
■バーガーバーガーバーガー!
++++
「うわっ、何か縁起でもない物が置いてる」
さーて今日も制作だ。そんなノリで部室に行くと、机の上には平面ピラミッド型のハンバーガータワーが組まれていた。もちろんまだそんな季節じゃない。このタワーを積み上げるには1ヶ月ほど早いんだけど、何でそんなモンが今美術部の部室にあんの?
「あ、唯香さんおはようございます」
「どしたの実苑これ」
「これですか? 文化会発表会のシンボルだという風に聞いたので、作ってみました」
「アンタの仕業かい」
どうやら先のバーガータワーは実苑の犯行らしい。実苑が“作った”と言うからには、きっとただハンバーガーを積んだだけではないな。ハンバーガーの包み紙を開いてみると、中から出て来たのは精巧な食品サンプルっぽいハンバーガー。やっぱり、このくらいはやってくれなきゃ実苑じゃないし。
「でも、これを作るのは結構大変だったんですよ」
「だろうね。いくら小規模のタワーとは言え実寸大のハンバーガー10個作るとか」
「ちなみにこの他に……これなんですけど」
「うわっ! さすが! バカだわ!」
「世の中には少なからず断面フェチの人がいるので、バーガータワーの断面図を用意しました」
実苑がソファの裏から出してきたのは、机の上に置いてあるハンバーガータワーを真っ二つに切った物。つまり、少なくともハンバーガーの模型を20個は作ったということ。相当キチってるし。さすが実苑、面白いことするし。
断面図の方にはチーズバーガーもありますと言うからじっくり見てみたら、本当にチーズバーガーもある。これを作るのに2日間はハンバーガーとチーズバーガーしか食べない生活をしたとかさすがすぎる。
「アンタそんなに文化会発表会が楽しみなの?」
「去年はこの時点で部活に入ってなかったですし、自分の趣味の制作で家に籠り切りだったので発表会には最終日しか来れてないんですよ」
「ああそう。それじゃあ今年はスタッフとしてバリバリ駆り出されるし。良かったね」
「はい、今から楽しみですよ!」
文化会発表会というのは、ゴールデンウィーク前半にある緑大文化部の祭典だ。内輪の発表会でもあるけど、ここで新入生勧誘活動も兼ねたちゃんとした行事だったりする。この準備のために文化会役員や部の偉い人はもうバタバタ走り回ってるってワケ。
それぞれの部では発表会の出し物を制作したり、軽音や演劇部なら演目の練習をしたりと忙しくしている。ウチ、美術部の場合は制作になるから当日は案外ヒマ。でも今は結構バタバタしてる。発表会が近くなると平部員も招集されて、昼夜問わず準備が始まる。そこで出て来るのがハンバーガータワーだ。
予約を入れて作ってもらっていた何百個単位のハンバーガーを、とにかく山積みにした夜食の塔。文化会発表会の裏シンボルだ。別に表のシンボルがあるという話は聞かないけど、これこそ内輪のあるあるだから裏シンボルで間違いない。
実苑が作って来たこのバーガータワーは実物の何十分の1っていう大きさだけど、文化会発表会の準備のために夜の401教室にいたことのある人なら絶対ビビるヤツ。現にアタシもビビったし。
「って言うかアンタこれ本命の作品じゃないっしょ?」
「そうですね。これは発表会が楽しみだなあという気持ちを表現した息抜きの作品です」
「息抜きでこれって。まあいいわ。実苑、ちょっとこれ撮らせてもらっていい? アタシも息抜きに1枚」
「どうぞ」
ハンバーガータワーとタワーの断面図、それぞれの写真を撮ってさっそくパソコンに取り込む。額縁にでも入れて受付の後ろに飾ってもらおうかな。美和さんならきっと話を分かってくれると思うんだけど。
「これ、包み紙はどうしたの? これもまさか作った?」
「包み紙はそれらしい紙を取り寄せて、それらしいデザインにした上でプリントですね」
「凝ってるし」
「僕はさすがにこんなにハンバーガーを食べられませんし、自分が食べた後の包装紙は油汚れなどが付いていますから衛生上よくないと思い」
「まあね。最低20個は食べなきゃいけないとかしんどいわ」
「それに、いかにして極限まで本物に近付けていくのかが楽しいんじゃありませんか」
「アンタ普段作ってんの空想上の生物じゃん」
「それを言われては仕方ありません」
すると実苑はまたソファの後ろから大きな取っ手付きの紙袋を取り出して、その中をごそごそ漁っている。これ以上何が出て来るというのか。って言うか本当にバカだな! 一応この場合のバカも褒めてはいる。
「これがハンバーガー単品とその断面。これがチーズバーガー単品とその断面。そしてこれがジュースの紙コップとその断面です。どうですか? この炭酸の気泡が結構上手く表現出来たのではないかと思っています。これがチキンチーズバーガー。これはバンズにゴマを乗せたという変更点があります。それから、チキン特有の繊維ですね」
「よくやるわ」
「バンズやパティなどは一度作ってしまえば量産が簡単なので調子に乗ってつい作り過ぎてしまいました。材料を余らせても仕方ありませんし」
「まあね」
「ちなみにこれはミニチュアサイズのキーホルダーにしてみました」
「あっ、これはかわいいし」
「よろしければ差し上げますよ。どうぞ使ってください」
「あんがと」
何て言うか、発表会が楽しみっていう息抜きで始めたちょっとした制作がこの規模になるとか本当にバカだよね実苑って。でも、ここまで振り切れてないと突っ切った作品も作れないんだろう。うーん、アタシも攻め時か? 最近猫ばっか撮ってたからな。
「今日の夜はてりたまかな」
「僕はご飯物が食べたいですね。しばらくバーガーはちょっと」
end.
++++
思い出したように緑大美術部です。実苑が相変わらず突っ切っている様子。何やねんハンバーガーの断面って
放送に関係のないキャラとしてはそこそこ濃い目のキャラとしてたまにキメてくれますね。この調子でがんばれ
そしてあずみんも久し振り。今年度佐藤ゼミも+1年の話少なかったもんね。来年度はもうちょっとやりたい
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「うわっ、何か縁起でもない物が置いてる」
さーて今日も制作だ。そんなノリで部室に行くと、机の上には平面ピラミッド型のハンバーガータワーが組まれていた。もちろんまだそんな季節じゃない。このタワーを積み上げるには1ヶ月ほど早いんだけど、何でそんなモンが今美術部の部室にあんの?
「あ、唯香さんおはようございます」
「どしたの実苑これ」
「これですか? 文化会発表会のシンボルだという風に聞いたので、作ってみました」
「アンタの仕業かい」
どうやら先のバーガータワーは実苑の犯行らしい。実苑が“作った”と言うからには、きっとただハンバーガーを積んだだけではないな。ハンバーガーの包み紙を開いてみると、中から出て来たのは精巧な食品サンプルっぽいハンバーガー。やっぱり、このくらいはやってくれなきゃ実苑じゃないし。
「でも、これを作るのは結構大変だったんですよ」
「だろうね。いくら小規模のタワーとは言え実寸大のハンバーガー10個作るとか」
「ちなみにこの他に……これなんですけど」
「うわっ! さすが! バカだわ!」
「世の中には少なからず断面フェチの人がいるので、バーガータワーの断面図を用意しました」
実苑がソファの裏から出してきたのは、机の上に置いてあるハンバーガータワーを真っ二つに切った物。つまり、少なくともハンバーガーの模型を20個は作ったということ。相当キチってるし。さすが実苑、面白いことするし。
断面図の方にはチーズバーガーもありますと言うからじっくり見てみたら、本当にチーズバーガーもある。これを作るのに2日間はハンバーガーとチーズバーガーしか食べない生活をしたとかさすがすぎる。
「アンタそんなに文化会発表会が楽しみなの?」
「去年はこの時点で部活に入ってなかったですし、自分の趣味の制作で家に籠り切りだったので発表会には最終日しか来れてないんですよ」
「ああそう。それじゃあ今年はスタッフとしてバリバリ駆り出されるし。良かったね」
「はい、今から楽しみですよ!」
文化会発表会というのは、ゴールデンウィーク前半にある緑大文化部の祭典だ。内輪の発表会でもあるけど、ここで新入生勧誘活動も兼ねたちゃんとした行事だったりする。この準備のために文化会役員や部の偉い人はもうバタバタ走り回ってるってワケ。
それぞれの部では発表会の出し物を制作したり、軽音や演劇部なら演目の練習をしたりと忙しくしている。ウチ、美術部の場合は制作になるから当日は案外ヒマ。でも今は結構バタバタしてる。発表会が近くなると平部員も招集されて、昼夜問わず準備が始まる。そこで出て来るのがハンバーガータワーだ。
予約を入れて作ってもらっていた何百個単位のハンバーガーを、とにかく山積みにした夜食の塔。文化会発表会の裏シンボルだ。別に表のシンボルがあるという話は聞かないけど、これこそ内輪のあるあるだから裏シンボルで間違いない。
実苑が作って来たこのバーガータワーは実物の何十分の1っていう大きさだけど、文化会発表会の準備のために夜の401教室にいたことのある人なら絶対ビビるヤツ。現にアタシもビビったし。
「って言うかアンタこれ本命の作品じゃないっしょ?」
「そうですね。これは発表会が楽しみだなあという気持ちを表現した息抜きの作品です」
「息抜きでこれって。まあいいわ。実苑、ちょっとこれ撮らせてもらっていい? アタシも息抜きに1枚」
「どうぞ」
ハンバーガータワーとタワーの断面図、それぞれの写真を撮ってさっそくパソコンに取り込む。額縁にでも入れて受付の後ろに飾ってもらおうかな。美和さんならきっと話を分かってくれると思うんだけど。
「これ、包み紙はどうしたの? これもまさか作った?」
「包み紙はそれらしい紙を取り寄せて、それらしいデザインにした上でプリントですね」
「凝ってるし」
「僕はさすがにこんなにハンバーガーを食べられませんし、自分が食べた後の包装紙は油汚れなどが付いていますから衛生上よくないと思い」
「まあね。最低20個は食べなきゃいけないとかしんどいわ」
「それに、いかにして極限まで本物に近付けていくのかが楽しいんじゃありませんか」
「アンタ普段作ってんの空想上の生物じゃん」
「それを言われては仕方ありません」
すると実苑はまたソファの後ろから大きな取っ手付きの紙袋を取り出して、その中をごそごそ漁っている。これ以上何が出て来るというのか。って言うか本当にバカだな! 一応この場合のバカも褒めてはいる。
「これがハンバーガー単品とその断面。これがチーズバーガー単品とその断面。そしてこれがジュースの紙コップとその断面です。どうですか? この炭酸の気泡が結構上手く表現出来たのではないかと思っています。これがチキンチーズバーガー。これはバンズにゴマを乗せたという変更点があります。それから、チキン特有の繊維ですね」
「よくやるわ」
「バンズやパティなどは一度作ってしまえば量産が簡単なので調子に乗ってつい作り過ぎてしまいました。材料を余らせても仕方ありませんし」
「まあね」
「ちなみにこれはミニチュアサイズのキーホルダーにしてみました」
「あっ、これはかわいいし」
「よろしければ差し上げますよ。どうぞ使ってください」
「あんがと」
何て言うか、発表会が楽しみっていう息抜きで始めたちょっとした制作がこの規模になるとか本当にバカだよね実苑って。でも、ここまで振り切れてないと突っ切った作品も作れないんだろう。うーん、アタシも攻め時か? 最近猫ばっか撮ってたからな。
「今日の夜はてりたまかな」
「僕はご飯物が食べたいですね。しばらくバーガーはちょっと」
end.
++++
思い出したように緑大美術部です。実苑が相変わらず突っ切っている様子。何やねんハンバーガーの断面って
放送に関係のないキャラとしてはそこそこ濃い目のキャラとしてたまにキメてくれますね。この調子でがんばれ
そしてあずみんも久し振り。今年度佐藤ゼミも+1年の話少なかったもんね。来年度はもうちょっとやりたい
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