2018(05)

■新居の間取りはどうしよう

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「よぉーし! これでオッケー!」
「すごい機材です」
「です」
「1人で運んだんですか? 言ってくれれば手伝いましたよ」
「です」
「いや、平気平気。もう終わったしな。サンキュ」

 朝からやって来たのは人もまだ疎らな青浪敬愛大学星港新校舎。そう、この春から青敬の一部学部はこの新校舎に移転することになっていて、それに伴いAKBCの活動もこれまでのキャンパスからこっちに移動することにしたんだ。で、旧サークル室から機材を運搬するっていう作業をちょこちょこやってて。
 元々人の集まりが鈍いAKBCだけど、どちらかと言えば移転する校舎の方にメンバーが多いこと、それから、来年度からはなんか暗黙の了解みたいな感じで俺がまとめることになってたんだけど、その俺の独断と偏見で決めたっていうな! 俺パねえ。向こうの校舎から来たいっつー奴は俺が送迎すればいいんだし。

「それでハマちゃん先輩、どうしたんですかこれ」
「です?」
「緑ヶ丘からもらってきたんだよ」
「もらったです!?」
「です!?」

 こないだ、緑ヶ丘で大掃除をするから機材がほしい人は集まってくれってお達しがあった。大掃除でそんなに機材が出るのかよって思ったら、集められた部屋にそびえ立ってた機材の壁がマジパねえ。さすが、金持ちの大学はちげーなって。つか使わない機材がそんだけ出るとか怖すぎ。
 だけど俺はその機材を有り難くいただき、AKBCでもラジオのことが出来るように必要な一式を車に積んで帰ったよな。つか、俺とつばみでラジオ一式分持ち帰ってまだ余裕があるって普通に考えて頭おかしくね? いや、余所の学校には余所の事情があるんだろうしあまり深く突っ込むことでもないわな。

「そんな感じで、もらってきたから持ってきたんだよ」
「すごいです」
「もちろん今まで通り映像のこともやるけど、少なくとも俺とあやめはインターフェイスにも出るし、もしかしたら新しく来てくれる1年生がラジオにも興味持ってくれるかもしれない。やれることは多い方が、ここにみんな集まってくれるんじゃないかって思ってさ」
「今まで通り映像のこともやってていいんですよね」
「もちろん! それがAKBCの主活動だからな!」

 俺とあやめはインターフェイスの活動にも出始めたけど、かんなはそうではない。サークルには来たり来なかったりしたけど映像制作をサボってるとかではなく、これからもちょこちょこここでやっていくそうだ。そういう人のことも忘れない部屋のレイアウトにはしたい。
 さっそく、俺と諏訪姉妹で新しいサークル室の間取りを決めていく。俺の理想としては、映像コーナーとラジオコーナーを作っておきたい。ただ、そうなるとコンセントの場所や量が問題になる。つか電気使い過ぎって怒られないかな。いや、同時にやらなきゃ大丈夫だと信じたい!

「なんかこうしてみると、荷物多いですねハマちゃん先輩」
「あー……何でもかんでも持ってきたからな」
「ウチでも使わないものは処分した方がいいですよ」
「です」
「それな。でも、なんかこう、まだ何かに使えるんじゃないかって思っちまうんだよなー……」
「まだ何かに使うって取っといたものを実際に使うことってほとんどないそうですよ。具体的で明確な目的を持って取っておくならともかく」
「ぐっ。かんな、お前痛いところ付いてくるな」
「よっぽど過去作のパロディをやるとか、ファン向けにネタを仕込むとかじゃないと使わないですよ、昔の小道具なんて」

 かんなの言うことにも一理ある。ひとまず、無尽蔵に増やしてきた映像系の荷物の中から本当に必要なものはどれかを選んでいく作業を始めることになった。その間、あやめにはラジオの機材をセッティングしてもらうことにして、っと。えっ、出来るよな? 何回か習ってるはずだし。

「撮影に使う物は当然要る物。レフ板とかな」
「三脚などですね」
「微妙なのは小道具類とか、過去の台本」
「台本はきちんとしまっておく棚を作ればいいんじゃないですか?」
「そっか。じゃあ、それは俺が昼休憩の後にでもパパッと作るとして」
「小道具、これ何年物です?」
「それがさ、俺もわかんないんだよ。年代物マジパねえ」
「現状これらから特にインスピレーションも湧きませんし、ポイでいいんじゃないです?」

 そして俺は学ぶ。大掃除には思い切りがよく無慈悲な奴が1人は必要なんだということを。かんながこれは使える、使えないと問答無用で分けていく様はまるで閻魔大王じゃんな、お前は天国、お前は地獄って振り分ける。

「かんな、それだけサークル室の掃除が出来るなら部屋の掃除もやってくれない?」
「部屋には必要な物ばかりだから!」
「どこからどう見てもゴミの山じゃん!」
「違うの! あそこからインスピレーションを得て作品に生かされて」
「そんなごちゃっとした作品だった覚えはないけどなあ」
「うるさいあやめ!」
「あーあーお前ら、ここで喧嘩すんな」
「すみませーん」
「ですー」
「まあ、わかるっちゃわかる。自分の部屋はきったないけど公共の場所の片付けだけはめっちゃ得意な奴は確かにいる。今日の場合、かんなのその特性はマジパねえくらい役に立ってるから大目に見てやってくれ」

 映像コーナーとラジオコーナー、それからここに来た人が座る場所と。間取りを作っていって足りない物は後で買い出しに出て、昼休憩後に改めて作り上げていく。新居への引っ越しはこれが楽しいんだよな。えっと、とりあえず現状必要な物は棚とマルチタップだな。


end.


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MBCCの機材を配ったという話はあったのですが、その機材たちがどうなったのかという話はあまりやっていなかったので。
諏訪姉妹が2人揃っているのもまた久し振りだし珍しい。ですー。来年のかんなは何の年だっけ
果たしてハマちゃんはAKBCの新しいリーダーとしてどんな風に活気ある場所を作っていくのか!

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