2018(05)
■嵐の現場に立ち向かう
++++
「来週からいよいよセンターは繁忙期に入る。春の履修登録は健康診断と同日に行うことになっているから一応学年ごとの利用にはなるが、それでも日頃より忙しくなることには違いない。心してかかれ」
いよいよ3月最終週を迎えることになる。星港大学ではまだ自宅などからの履修登録制度を設けておらず、健康診断と同日に情報センターで履修する形式を採っている。火曜日は新4年生、水曜日は新3年生、木曜日は新2年生という日程だ。
普段センターを利用するのは専用のパソコン学習室を持たない文系の学生がほとんどだが、履修登録は何故か文系理系を問わず情報センターからでないとならないというクソルールがあるのだ。おかげでこちらは大変なことになるのだが。
「春の履修登録って基本は学年ごとの利用ですよねー。秋に比べて人が少ないと思うんですけど、何がどう大変になってくるんですかー?」
「まず、理系の学生はセンターの利用方法を知らん。パソコンの扱いには問題ないのだが、学部の学習室のように好き勝手に過ごす連中が多くてな」
「なるほどー」
「次に、文系理系問わず多いのが、履修登録や単位制度についての質問だ。ちなみにこれはセンターではなく学生課の管轄ではあるのだが、センターのスタッフに単位についての質問が飛ぶことは多い」
「えっ、単位のことなんて俺もよくわかってませんよー!」
「その他、これは情報センターの管轄ではないだろうといういちゃもんを付けられることもあるが、その辺は上手くかわすように」
先日星大でも卒業式が執り行われ、春山さんの籍が完全になくなった。主と呼ばれた人を欠いて迎える初めての繁忙期になる。ここにずっと座っていられる人がいないということでバタバタすることは避けられないだろう。
一応学生課に行って単位制度に関する資料をもらっては来たが、こんな資料だけ見たところで理解せん奴はせん。こちらが親切丁寧に説明してもわからないからと結局勝手に解決するのだから、最初から聞くなという話になるのだが。
いや、単位に関する質問ならまだいい方なのかもしれない。場合によっては学籍番号がわからず学生システムにログイン出来んという問い合わせもある。学籍番号なんか学生証を見れば書いてある。大学に来るのに学生証は必須のはずだが、たまに非所持の奴がいるのだ。それから、そもそもパソコンの扱いがわからんなどという奴も。
「それはいいが、このプレッツェルはどうにかならんか」
「まだたくさんありますねー……」
「烏丸、主食として持って行かんか」
「ユースケの頼みだから応えたいけど、今はいいかな」
「か、烏丸さんが食べ物を拒否してる…!?」
「プレッツェルも美味しいんだけど、久々に食パンを食べたら甘くて美味しくてさ。今は食パンがメインなんだ」
「綾瀬はどうだ」
「私も前のがまだ残ってまして……」
春山さんの置き土産と言うか遺産のプレッツェルは未だ事務所を圧迫している。川北の活躍と、オレが日頃から少しずつ消費していたことで減らしはしているのだがそれでもまだまだ残っている。いなくなってからも迷惑な人だ。
まさかプレッツェルの引き取りを烏丸に拒否されるとは思わなかったのだが、それだけ烏丸もプレッツェルの消費には苦戦していたということなのだろう。塩味の強いプレッツェルばかり食べていると、ただの食パンが甘く感じるのか。
「それはそうとして、火曜日だな。出来るだけ早く終えて来るようにするが、川北と綾瀬で回すことになるとは前々から言っている通りでだな」
「どんなことに気を付けたらいいですかー?」
「とりあえず、2人で回していると抜ける暇がないから腹を満たした上でトイレには行っておけということか」
「あっはい」
「それから川北」
「はい」
「オレと烏丸が来るまでヘルプはない。どんなことがあっても自分で解決しろ。一応この期間は那須田さんにもいてもらうようにはするが、あの人は現場のことに基本手を出さん。よほど手の付けられん荒くれ者が出た場合のみあの人の権力を頼れ。逆に言えばそれ以外は使えんと思え」
新4年にもなると授業のコマ数が少なくなるはずで、履修登録にかかる一人当たりの所要時間が少なくなるはずだ。しかし、綾瀬はA番専任スタッフでB番のことには対応出来ん。しかも4年は卒論や実習がどうしたなどと新2年の川北には対応出来んことを言って来る可能性もある。
一応情報センターには所長という立場の那須田さんという大人がいるが、あの人は基本的に置物で、実務的なことには期待出来ん。履修登録は基本的に健康診断を終えてからでなければ出来ん制度になっているから、いかにして早く健康診断を終えるかのルート取りが大事になって来る。
「烏丸、健康診断は極力早く終えるように回れ。男の場合レントゲンなどは意外に手間取らん。視力・聴力などのレーンが少ないところを先に消化するんだ」
「はーい」
「それから」
事務用のパソコンを操作し、重要な書類を出力する。プリンターから吐き出されたばかりで熱を持つそれを、センター前の掲示板に貼って準備は完了だ。
「林原さん今何したんですか?」
「センターの求人情報を掲示した。人がいなさすぎるからな。新スタッフは学年・学部を問わん。使える奴をどんどん取っていく」
「それは大事ですね!」
履修登録に健康診断、それから求人募集とバタバタする時期だ。新学期を迎えても、新入生の履修登録と在校生の履修修正などでひっきりなしにセンターは動く。各々の授業が始まってからも多忙さは極まる。
「それでは各自、自習室に不備がないか確認するように」
「はーい」
end.
++++
リン様がバイトリーダーとして迎えるはじめての繁忙期です。リン様が隊長らしさを見せ始めています。
そして未だ事務所を圧迫するプレッツェルである。ダイチでもそろそろいいかなっていうレベルに来るとかどんなんや
で、ミドリね。ここから新2年生で実質的ナンバーツーとして1人で何でも出来るようになっていかなきゃいけないのね。がんばえー
.
++++
「来週からいよいよセンターは繁忙期に入る。春の履修登録は健康診断と同日に行うことになっているから一応学年ごとの利用にはなるが、それでも日頃より忙しくなることには違いない。心してかかれ」
いよいよ3月最終週を迎えることになる。星港大学ではまだ自宅などからの履修登録制度を設けておらず、健康診断と同日に情報センターで履修する形式を採っている。火曜日は新4年生、水曜日は新3年生、木曜日は新2年生という日程だ。
普段センターを利用するのは専用のパソコン学習室を持たない文系の学生がほとんどだが、履修登録は何故か文系理系を問わず情報センターからでないとならないというクソルールがあるのだ。おかげでこちらは大変なことになるのだが。
「春の履修登録って基本は学年ごとの利用ですよねー。秋に比べて人が少ないと思うんですけど、何がどう大変になってくるんですかー?」
「まず、理系の学生はセンターの利用方法を知らん。パソコンの扱いには問題ないのだが、学部の学習室のように好き勝手に過ごす連中が多くてな」
「なるほどー」
「次に、文系理系問わず多いのが、履修登録や単位制度についての質問だ。ちなみにこれはセンターではなく学生課の管轄ではあるのだが、センターのスタッフに単位についての質問が飛ぶことは多い」
「えっ、単位のことなんて俺もよくわかってませんよー!」
「その他、これは情報センターの管轄ではないだろうといういちゃもんを付けられることもあるが、その辺は上手くかわすように」
先日星大でも卒業式が執り行われ、春山さんの籍が完全になくなった。主と呼ばれた人を欠いて迎える初めての繁忙期になる。ここにずっと座っていられる人がいないということでバタバタすることは避けられないだろう。
一応学生課に行って単位制度に関する資料をもらっては来たが、こんな資料だけ見たところで理解せん奴はせん。こちらが親切丁寧に説明してもわからないからと結局勝手に解決するのだから、最初から聞くなという話になるのだが。
いや、単位に関する質問ならまだいい方なのかもしれない。場合によっては学籍番号がわからず学生システムにログイン出来んという問い合わせもある。学籍番号なんか学生証を見れば書いてある。大学に来るのに学生証は必須のはずだが、たまに非所持の奴がいるのだ。それから、そもそもパソコンの扱いがわからんなどという奴も。
「それはいいが、このプレッツェルはどうにかならんか」
「まだたくさんありますねー……」
「烏丸、主食として持って行かんか」
「ユースケの頼みだから応えたいけど、今はいいかな」
「か、烏丸さんが食べ物を拒否してる…!?」
「プレッツェルも美味しいんだけど、久々に食パンを食べたら甘くて美味しくてさ。今は食パンがメインなんだ」
「綾瀬はどうだ」
「私も前のがまだ残ってまして……」
春山さんの置き土産と言うか遺産のプレッツェルは未だ事務所を圧迫している。川北の活躍と、オレが日頃から少しずつ消費していたことで減らしはしているのだがそれでもまだまだ残っている。いなくなってからも迷惑な人だ。
まさかプレッツェルの引き取りを烏丸に拒否されるとは思わなかったのだが、それだけ烏丸もプレッツェルの消費には苦戦していたということなのだろう。塩味の強いプレッツェルばかり食べていると、ただの食パンが甘く感じるのか。
「それはそうとして、火曜日だな。出来るだけ早く終えて来るようにするが、川北と綾瀬で回すことになるとは前々から言っている通りでだな」
「どんなことに気を付けたらいいですかー?」
「とりあえず、2人で回していると抜ける暇がないから腹を満たした上でトイレには行っておけということか」
「あっはい」
「それから川北」
「はい」
「オレと烏丸が来るまでヘルプはない。どんなことがあっても自分で解決しろ。一応この期間は那須田さんにもいてもらうようにはするが、あの人は現場のことに基本手を出さん。よほど手の付けられん荒くれ者が出た場合のみあの人の権力を頼れ。逆に言えばそれ以外は使えんと思え」
新4年にもなると授業のコマ数が少なくなるはずで、履修登録にかかる一人当たりの所要時間が少なくなるはずだ。しかし、綾瀬はA番専任スタッフでB番のことには対応出来ん。しかも4年は卒論や実習がどうしたなどと新2年の川北には対応出来んことを言って来る可能性もある。
一応情報センターには所長という立場の那須田さんという大人がいるが、あの人は基本的に置物で、実務的なことには期待出来ん。履修登録は基本的に健康診断を終えてからでなければ出来ん制度になっているから、いかにして早く健康診断を終えるかのルート取りが大事になって来る。
「烏丸、健康診断は極力早く終えるように回れ。男の場合レントゲンなどは意外に手間取らん。視力・聴力などのレーンが少ないところを先に消化するんだ」
「はーい」
「それから」
事務用のパソコンを操作し、重要な書類を出力する。プリンターから吐き出されたばかりで熱を持つそれを、センター前の掲示板に貼って準備は完了だ。
「林原さん今何したんですか?」
「センターの求人情報を掲示した。人がいなさすぎるからな。新スタッフは学年・学部を問わん。使える奴をどんどん取っていく」
「それは大事ですね!」
履修登録に健康診断、それから求人募集とバタバタする時期だ。新学期を迎えても、新入生の履修登録と在校生の履修修正などでひっきりなしにセンターは動く。各々の授業が始まってからも多忙さは極まる。
「それでは各自、自習室に不備がないか確認するように」
「はーい」
end.
++++
リン様がバイトリーダーとして迎えるはじめての繁忙期です。リン様が隊長らしさを見せ始めています。
そして未だ事務所を圧迫するプレッツェルである。ダイチでもそろそろいいかなっていうレベルに来るとかどんなんや
で、ミドリね。ここから新2年生で実質的ナンバーツーとして1人で何でも出来るようになっていかなきゃいけないのね。がんばえー
.