2018(04)

■想いと工数は比例しない

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「ミドリ、こないだは本当にゴメンね! 今度は本当にちゃんとしたほうじ茶チョコだから!」
「わざわざありがとう。それでは、いただきます」

 今日はなんと、ユキちゃんからのバレンタイン・リベンジということで、2回目のチョコレートをいただきました! ほうじ茶チョコって聞いてた最初のバレンタインのチョコレートが、中にポテトサラダがくるまれた独特なチョコレートで。
 バレンタインに向けてユキちゃんはお姉さんと妹さんと一緒に手作りしてたそうなんだけど、包みが同じだったことで入れ違ってしまったそうだ。俺が食べたポテサラチョコは本来お姉さんがバイト先の同僚である林原さんに対する仕返しのつもりで作ってたもの。林原さんが食べたのがそれはもう美味しいほうじ茶チョコで。
 それでユキちゃんが、ちゃんとしたほうじ茶チョコを作って渡すから待っててねって言ってくれて。と言うか俺は最初のバレンタインで市販のチョコももらってたし、ユキちゃんからもらえるだけですごく嬉しかったんだけど、まさか2回目があるだなんてって。

「今食べてみていいかな」
「どうぞ。むしろ感想を聞かせてほしいな」
「では、いただきます」

 丸いちゃぶ台を挟んで、ユキちゃんが緊張した様子で俺のことを見ている。ユキちゃんに見つめられて俺も正直緊張してるし、味がわかるかどうかちょっと心配。物づくりは好きだけど、俺自身チョコレートの違いがわかるかと言えば。うん。
 カリッと外側を割って半分にしてみると、中の少し柔らかいチョコがほうじ茶風味なんだとわかる。手に持っている方をちょっと匂えば、確かにほうじ茶らしい香ばしさがある。詳しいことはわからないけど、美味しいことだけは確かだ。

「ユキちゃん、美味しいよ!」
「本当!? よかったー」
「うん。外と中の食感の違いとか、どうやってやったんだろうって、ビックリだよ!」
「前にも言ったけど、レシピはさと先輩です」
「俺なんてレシピがあっても難しい料理が多いもん、凄いよユキちゃん」

 一気に全部食べないで、少しずつ食べることに。2、3日くらいなら大丈夫だよね。って言うか気付いちゃったんだけど、俺の部屋でチョコレートをもらう、これって完全におうちデートでは!? あ、いや、疚しいことは考えてないけど気付いた瞬間ドキドキしてきた~! 平静に、平静に。

「そう言えばさ、前にミドリが作ってくれた鯖の味噌汁あったでしょ?」
「うん」
「あれね、家でも作ってみたんだー。みんな美味しいって言っててうちでもたまにやるようになったんだよ」
「簡単だもんね。俺の作り方も本来の作り方からは大分簡略化してるけど大丈夫?」
「簡単で美味しいとか最高じゃない? 敷居を高くし過ぎるよりいいと思うな」

 すると、変なタイミングで俺のお腹が鳴るんだ。うう、チョコだって食べたのに。緊張するやら恥ずかしいやらで変な汗が出るし顔も熱いしバタバタしちゃってる。えっ、もうご飯食べるような時間帯? あ、昼の12時半……それならお腹も空くよね!

「ミドリ、そろそろご飯食べる?」
「そ、そうだね! 何食べよっか! あ~、でも買い物に行かなきゃ何もないなあ。外で食べる?」
「あたしはおうちでのんびりがいいな。買い物に行かない?」
「行きます! え、えっと、そしたら、スーパーを回りながら食べたい物を考える感じでいいかな?」
「その感じで行きましょー」

 車を出す時はあんまりガチガチにならないようにしないと。ユキちゃんの命を預かるワケだから、安全運転をいつも以上に心がけて。近くのスーパーにやってきたけど、何かこれって同棲してるみたいだなとか思っちゃう俺の発想の飛躍具合がもう本当にね! 付き合ってもないよ!
 カゴを提げて、何が食べたいかなあって青果コーナーからぐるりと回る。それと関係なく、必要な野菜を少し入れて。ニンジンとタマネギ、それから……ジャガイモはまだあるからいいや。えっと、もやしもあるといいね。……って本題は今日のお昼ご飯!

「うーん、何が食べたいかなあ」
「パスタとかは?」
「あっ、いいねー。何味にしよう」
「たらことか美味しそうだねー」
「そうだねー。たらこにしよっか。たらこのパスタソースあるかなあ」
「たらこはあるんじゃないかな。パスタだけじゃ味気ないし、野菜スープでも作ろっか」
「わー、美味しそうだなー。うん、一緒に作ろう」

 パスタとあえるソース、それから野菜スープの材料。サラダ用にカット野菜の袋も少し。その他には俺の当面の食糧なんかを買い込んで。お互いに、あれが好きこれが好きと言い合うのがとても楽しい。忘れちゃいけないサバ缶も、しっかりとカゴの中に追加して。

「カット野菜とかパスタソースって手抜きかなあ。さと先輩みたくちゃんと料理が出来るようになりたいって思うけどね」
「あれっ、さっきユキちゃんが言ってたよ。簡単で美味しいって最高だって。手抜きじゃないと思うよ俺は。野菜を切ってくれた人やソースを開発してくれた人が手を入れてるからトータル手抜きじゃない」
「ミドリ、ありがと」
「さと先輩は特別上手だから、憧れるにはいいけど比べるとへこんじゃうよ」
「で、でも、さと先輩はその料理で彼氏をゲットしたみたいなんです…!?」
「えっ、えーっ!? さと先輩に彼氏が!? でもわかる気がする!」


end.


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ミドリがわーひゃー言ってるだけのお話。ミドリがわーひゃー言ってるのがかわいいんだ!
こんな感じですが、ミドユキはまだ付き合ってないよ……でも秒読みという感じですね。頑張れミドリ
さとちゃんの家事スキルは確かに憧れではあるけれど、比べるとへこむね。似たような人にいち氏という人がいますね

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