2018(04)

■王政の残した明日への課題

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「定例会です」

 夏の向舞祭が終われば各大学の活動報告の場となっていた定例会も、3月にもなるとまた次の春に向けて動き出すことになる。新体制になった定例会の、実質的な最初の活動だ。新年度はどういった方針で、そして自分たちは今どういう状況なのかは把握しなければならない。
 ひとまず目標は5月のファンタジックフェスタ。そのイベントがあることはもうわかっていて、出展ブース募集のお知らせが出ていた。向島インターフェイス放送委員会は、ここに向けて動いて行くことになる。各校に提示する要項を作ったり、班決めのことを考えたり。やることはたくさんある。

「えーと、ひとまずファンフェスに向けて動いて行くワケなんですけど、今期のインターフェイスは例年に比べて予算がありません」
「えー! しょぼんなんですけどー!」
「L、そうなの?」
「そうなんだよ。先代の会計代理・カズ先輩曰くその原因は去年の定例会主催イベントでの収入が例年の3分の1以下だったこと」

 IFの予算はイベント事の機材保障費が大きな割合を占めている。機材に何かあった時のために、1人500円を保険としてもらっておくという制度だ。何もなければそれは定例会の予算として計上されるんだけど、年7万円くらいになるそれが去年はたった2万だったっていうな。
 この発表をした瞬間、議場が揺れた。何でそんなに収入がなかったのかと。その原因も俺はカズ先輩から聞いたんだけど、なるほどなという気持ちでいっぱいだった。それと同時に、これからどうしていこうかと頭を抱えたんだ。

「ファンフェスで星大さんの機材を借りたことで機材保障費がまるっと星大に行ったじゃんな」
「そうだったね」
「ちなみに星大にはファンフェス、初心者講習会、それから春の番組制作会でも機材を借りる予定だから、その保障費も星大に行くわな」
「うん、そう言えばウチの会計帳簿見ててもすごく増えてたよ。確かにIFからの機材保障費が2回来てた」
「尚且つ、対策委員にもちょっと援助してたんだな実は」
「そうだったんだね」
「というワケで、今期は極力無駄を省きつつ、自分たちで出来ることはやっていくという感じで行きたいと思います。例えば、IFの機材を使えるところは物置を穿り返すのをめんどくさがらずにIFの機材を使うとか」

 去年のファンフェスで先代が「物置穿るのめんどくさい」と言っていたことには俺も正直同じ気持ちだったけど、そのたった1回の「めんどくさい」が後々自分たちの首を絞めることになるとは思わなかったワケで。反省。
 対策委員は夏合宿の参加費をちょっと上乗せすることで稼いでいるそうだけど、それでも良識の範囲で収まるくらいしか上乗せ出来ないし、そっちはそっちで「機材保障費は定例会が持ってくから自分たちの予算にならないもんなあ」と嘆いているらしい。どこも予算がないのには変わりない。

「L、今って機材保障費って機材を出した大学が全額もらえるって感じ?」
「基本そんな感じ」
「正直、俺は何もなければ機材保障費は定例会に計上するのでいいと思うんだよ。機材に何かあった時に保障してもらえばいいかなって」
「ボクもテルの意見には賛成かな。一昨年の初心者講習会は青女でやってたけど、機材保障費は定例会に計上してたはずだよ」
「いつからその大学が持ってくみたいな感じになったんだろう」
「それなー。俺の記憶が確かだったら、去年のファンフェスの時に石川先輩が星大の機材を使う条件として定例会側に提示したのがそれだったと思う」
「石川先輩、大学でもこの件に関しては結構怒ってたからね……対策委員を解散したときに整頓してきたし引継ぎもしてきたんだから、素人でも掘り起こせないはずがないのにって言って」

 どうやら、機材保障費を機材を出した大学が持って行くというルールは去年だけの特殊ケースだったらしい。実質的に圭斗先輩と石川先輩の抗争だったということで話は落ち着いたけど、今後はどうするのかという明確なルールを作らなきゃいけない。
 直もテルも機材保障費は定例会で計上する方がいいという立場だ。青女と星大という、行事の会場になったり機材を出すことの多い大学の代表がそう言っているのだから説得力はまあある。ただ、この2人は定例会の委員長と副委員長という立場だから言えることかもしれない。

「俺も基本直とテルの意見に賛成ではある。だけど、俺たちがそう言ったところで「定例会の横暴だ」となる可能性もゼロじゃない。その一方で、去年みたく機材を出した大学がそれをまるっと持って行くことが続くと「何であの大学ばっかり」となる可能性もある。だから、対策委員とかそれぞれの大学さんの意見ももらいたいと思う。ここまでで何か」
「はい」
「はい、奈々」
「対策委員兼務としての立場から言うと、初心者講習会とか夏合宿とか、対策委員の行事では対策委員にも少しお金を分けて欲しいなーって気持ちはありますッ!」
「わかった、それも含めて考えるので、奈々は次の対策委員の会議でみんなの意見をもらってきてくれるかな。俺からも野坂と果林に時間割いてもらえるよう連絡しとくし」
「了解ですッ!」

 ファンフェスのことについて話すつもりが機材保障費の話が思いがけず盛り上がってしまった。今日の会議は少々長くなりそうだ。だけど、会議が長くなると春が来たなという感じがする。去年は座っているだけだったけど、今年は頑張らないと。


end.


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圭斗さんとイシカー兄さんの抗争が、L率いる次期定例会の首を絞めていたことが発覚しました。今回テルがめっちゃ喋ってる!
でも、4月のうちからいち氏に釘を刺されていたこともあって議長・Lは結構しっかりやれている様子。いい感じに育ちましたね
そう言えば奈々は対策委員と定例会の兼務でしたね。1年生がいないのでこんな感じだったけど、どちゃくそ忙しいやんけ奈々

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