2018(04)
■何もしないでただ話そう
++++
「あ~……げほっげほっ」
「朝霞クン大丈夫?」
「つか、救援要請出しといて難だけど、うつるぞ」
「ホントに。救援要請出してきといて今更うつるって言われてもさ。それで? 親密度Cの顔見知り程度の奴に看病頼むって、朝霞クンいい度胸してるよね」
「まだ言ってたのかそれ。B+っつってなかったか、げほっげほっ。泊まりで旅行してるのに顔見知りはさすがにごほっ」
「とりあえず、ご飯はすぐ食べられるようにしておけばいい?」
「すみません、お願いします」
重い頭にとめどなく出る咳。しっかりとマスクをして。単刀直入に言うと、インフルエンザにかかってしまった。体がヤバくて何をどうしたらいいかわからなかったと言うか、自分で何か出来る気がしなかったから、無意識に山口に救援要請を出していたんだ。1人暮らしで寝込むと後々が大変で。
部活の現役時代はステージが終わった後なんかにフッと長い瞬きをしたらその時間を飛び越えて、気付いたら自分の部屋のベッドの上にいる。それで山口が作った飯を食うのがお決まりの流れになっていた。だから俺の中では「寝込む=山口の世話になる」の式が出来上がっていた。
「どこからもらってきたの? 雄平さん?」
「いや、越谷さんとは会ってない。つかあの人もやってたのか」
「裕貴さん情報では、バイト先の後輩の子の面倒を見てあげてたらそこでもらっちゃったとかで」
「越谷さんらしいと言うか何と言うか。つか、やってんだったら越谷さんに救援要請出せばよかったかな……お前やってないだろ」
「今シーズンはやってないけど、いいよ。朝霞クンのお世話は喜んでさせていただきマス」
病院で薬はもらったし、咳はまだ出るけどさっきよりは全然楽になってるから一応動けるには動けるんだ。だけど山口は「朝霞クンは寝てなきゃダメ」と言って起きることを許してくれない。パソコンの前に座ることも禁止されている。正直、退屈すぎて死ぬ。
そして俺がインフルをもらう心当たりだ。最近作られたLINEグループ「USDX」に躍る文面がまさにそれ。どうもUSDX内でインフルエンザが流行しているらしく、菅野以外の全員がインフルでダウンしているという現状。心当たりがあるとすればまさにそこだ。京川さん宅で集まってたから。
ただ、不可解なのがリン君だ。塩見さんと京川さん、それから菅野と俺がやっているのはA型なんだけど、リン君だけは謎にB型に罹ってしまったらしい。つまりリン君は別のところで拾って来たんだね、という。
いや、リン君も不可解だけど菅野も十分不可解だ。何でお前だけやってねーんだよって。邪推だけど、如何せん菅野の彼女が薬学部の須賀だけに、その辺の対策や予防接種はちゃんとするように意識づけられているのかもしれない。偏見だとは思っている。
「つか、お前は大丈夫なのか」
「体? 全然平気」
「いや、体じゃなくて、予定とか。急に呼び出したけど」
「俺はほら、バイト柄日中は割とフリーだし。言うほど遊ぶ友達も多くないからね」
「フットサルとかしてるだろ」
「こないだ伊東クン家でウイイレ大会はしてたけど、まあそれくらいだよね最近は。何かその後でカンノ君がインフルになっちゃったから気を付けてねってスガノ君がLINEしてくれたよ。でも結構経ったけど症状出てないし、IFサッカー部経由での感染はなさそうだねって。って言うか、スガノ君とカンノ君てバンドもやってるし割と常に一緒にいる印象あるんだけど、スガノ君よくインフルもらってないな~って思っちゃうよね。何かコツでもあるのかな」
「コツって。でも言わんとするところはわかる」
菅野と菅野に関してはむしろ別行動してる時間の方が短いんじゃないかとすら思う。部活の現役時代も同じ班で、IFサッカー部もあって、USDX……当時はSDXか、それもあってバンドもあってって。2人揃って分刻みのスケジュールで動いてたんだなと。
何か、大学で出会った他人同士の割には趣味や相性みたいな物がガッチリと合ってんだなと思う。菅野とはUSDXに参加してから喋るようになったけど、あいつらは相手のことを尊敬した上で対等な立場で同じ目標に向かってるっていうのがよくわかった。いい関係だなと。
「朝霞クンは最近どう? 元気?」
「元気ではないよな、インフルやってんだから」
「それもそっか。えっと、最近何やってるのくらいの意味で解釈してくれたら嬉しい」
「最近は大石の紹介で倉庫のバイトに行ってたり」
「それが終わったってトコまでは聞いたよ」
「あとは卒論の資料集めを始めたりってトコかな。まあ、資料集めと言うか“いろんな人と会って話す”って感じだけど」
「だからインフルもらったんじゃない?」
「それは否定出来ない」
だけど、卒論を書くにはいろんな人と会って話すことが必要不可欠。その点で言えばUSDXの集まりは楽しすぎる。他にもベティさんのお店とか、最近はいろんなところに出歩いてたしシナリオ書くやらで夜も遅かったから、抵抗力という意味でも弱っていたのかもしれない。
「朝霞クン、俺とも喋ろう?」
「何だよ突然」
「深い意味はないけど。いいじゃない、たまには」
「いいけど、インフルうつっても知らねーぞ」
「今日はバイトないし、インフルの人とここまで濃厚に接触してたらねえ。他にどこも行けないよね。って言うか朝霞クンと一緒にいるのが楽だから」
「何だそれ」
「無理にテンション上げなくていいしね」
「そうですか。あっ、他にどこも行けないって言うけど俺今めっちゃアイス食べたい」
「ダッツがいい? それともスーパーカップ? どっちもマルチパックで買ってあるからね」
「マジですか……あっ、後で金払います」
「いいって」
「よくない。その調子だと他にもいろいろ買い込んで来てるな」
「最低限の食材と、朝霞クンがご飯食べれなかった時用にゼリー飲料をちょっとだよ」
「ちゃんとレシートよこせよ、年末使いまくった分はもう取り返したんだから」
end.
++++
遠い昔にインフルPの話をやったなあと思ってそれを掘り起こしてきました。Pさんもインフルやるよねと思って
というワケで看病の洋朝ですが、山口洋平さんがステージスター仕様をやめてるのは朝霞Pと宇部P相手のときだけなのよね
USDX内で大流行しているインフルエンザだけど、コンちゃんことスガPが唯一の生き残りということでスケジュール管理などが忙しくなるのかしら
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「あ~……げほっげほっ」
「朝霞クン大丈夫?」
「つか、救援要請出しといて難だけど、うつるぞ」
「ホントに。救援要請出してきといて今更うつるって言われてもさ。それで? 親密度Cの顔見知り程度の奴に看病頼むって、朝霞クンいい度胸してるよね」
「まだ言ってたのかそれ。B+っつってなかったか、げほっげほっ。泊まりで旅行してるのに顔見知りはさすがにごほっ」
「とりあえず、ご飯はすぐ食べられるようにしておけばいい?」
「すみません、お願いします」
重い頭にとめどなく出る咳。しっかりとマスクをして。単刀直入に言うと、インフルエンザにかかってしまった。体がヤバくて何をどうしたらいいかわからなかったと言うか、自分で何か出来る気がしなかったから、無意識に山口に救援要請を出していたんだ。1人暮らしで寝込むと後々が大変で。
部活の現役時代はステージが終わった後なんかにフッと長い瞬きをしたらその時間を飛び越えて、気付いたら自分の部屋のベッドの上にいる。それで山口が作った飯を食うのがお決まりの流れになっていた。だから俺の中では「寝込む=山口の世話になる」の式が出来上がっていた。
「どこからもらってきたの? 雄平さん?」
「いや、越谷さんとは会ってない。つかあの人もやってたのか」
「裕貴さん情報では、バイト先の後輩の子の面倒を見てあげてたらそこでもらっちゃったとかで」
「越谷さんらしいと言うか何と言うか。つか、やってんだったら越谷さんに救援要請出せばよかったかな……お前やってないだろ」
「今シーズンはやってないけど、いいよ。朝霞クンのお世話は喜んでさせていただきマス」
病院で薬はもらったし、咳はまだ出るけどさっきよりは全然楽になってるから一応動けるには動けるんだ。だけど山口は「朝霞クンは寝てなきゃダメ」と言って起きることを許してくれない。パソコンの前に座ることも禁止されている。正直、退屈すぎて死ぬ。
そして俺がインフルをもらう心当たりだ。最近作られたLINEグループ「USDX」に躍る文面がまさにそれ。どうもUSDX内でインフルエンザが流行しているらしく、菅野以外の全員がインフルでダウンしているという現状。心当たりがあるとすればまさにそこだ。京川さん宅で集まってたから。
ただ、不可解なのがリン君だ。塩見さんと京川さん、それから菅野と俺がやっているのはA型なんだけど、リン君だけは謎にB型に罹ってしまったらしい。つまりリン君は別のところで拾って来たんだね、という。
いや、リン君も不可解だけど菅野も十分不可解だ。何でお前だけやってねーんだよって。邪推だけど、如何せん菅野の彼女が薬学部の須賀だけに、その辺の対策や予防接種はちゃんとするように意識づけられているのかもしれない。偏見だとは思っている。
「つか、お前は大丈夫なのか」
「体? 全然平気」
「いや、体じゃなくて、予定とか。急に呼び出したけど」
「俺はほら、バイト柄日中は割とフリーだし。言うほど遊ぶ友達も多くないからね」
「フットサルとかしてるだろ」
「こないだ伊東クン家でウイイレ大会はしてたけど、まあそれくらいだよね最近は。何かその後でカンノ君がインフルになっちゃったから気を付けてねってスガノ君がLINEしてくれたよ。でも結構経ったけど症状出てないし、IFサッカー部経由での感染はなさそうだねって。って言うか、スガノ君とカンノ君てバンドもやってるし割と常に一緒にいる印象あるんだけど、スガノ君よくインフルもらってないな~って思っちゃうよね。何かコツでもあるのかな」
「コツって。でも言わんとするところはわかる」
菅野と菅野に関してはむしろ別行動してる時間の方が短いんじゃないかとすら思う。部活の現役時代も同じ班で、IFサッカー部もあって、USDX……当時はSDXか、それもあってバンドもあってって。2人揃って分刻みのスケジュールで動いてたんだなと。
何か、大学で出会った他人同士の割には趣味や相性みたいな物がガッチリと合ってんだなと思う。菅野とはUSDXに参加してから喋るようになったけど、あいつらは相手のことを尊敬した上で対等な立場で同じ目標に向かってるっていうのがよくわかった。いい関係だなと。
「朝霞クンは最近どう? 元気?」
「元気ではないよな、インフルやってんだから」
「それもそっか。えっと、最近何やってるのくらいの意味で解釈してくれたら嬉しい」
「最近は大石の紹介で倉庫のバイトに行ってたり」
「それが終わったってトコまでは聞いたよ」
「あとは卒論の資料集めを始めたりってトコかな。まあ、資料集めと言うか“いろんな人と会って話す”って感じだけど」
「だからインフルもらったんじゃない?」
「それは否定出来ない」
だけど、卒論を書くにはいろんな人と会って話すことが必要不可欠。その点で言えばUSDXの集まりは楽しすぎる。他にもベティさんのお店とか、最近はいろんなところに出歩いてたしシナリオ書くやらで夜も遅かったから、抵抗力という意味でも弱っていたのかもしれない。
「朝霞クン、俺とも喋ろう?」
「何だよ突然」
「深い意味はないけど。いいじゃない、たまには」
「いいけど、インフルうつっても知らねーぞ」
「今日はバイトないし、インフルの人とここまで濃厚に接触してたらねえ。他にどこも行けないよね。って言うか朝霞クンと一緒にいるのが楽だから」
「何だそれ」
「無理にテンション上げなくていいしね」
「そうですか。あっ、他にどこも行けないって言うけど俺今めっちゃアイス食べたい」
「ダッツがいい? それともスーパーカップ? どっちもマルチパックで買ってあるからね」
「マジですか……あっ、後で金払います」
「いいって」
「よくない。その調子だと他にもいろいろ買い込んで来てるな」
「最低限の食材と、朝霞クンがご飯食べれなかった時用にゼリー飲料をちょっとだよ」
「ちゃんとレシートよこせよ、年末使いまくった分はもう取り返したんだから」
end.
++++
遠い昔にインフルPの話をやったなあと思ってそれを掘り起こしてきました。Pさんもインフルやるよねと思って
というワケで看病の洋朝ですが、山口洋平さんがステージスター仕様をやめてるのは朝霞Pと宇部P相手のときだけなのよね
USDX内で大流行しているインフルエンザだけど、コンちゃんことスガPが唯一の生き残りということでスケジュール管理などが忙しくなるのかしら
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