2018(04)

■プレッツェル輸出大作戦!

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 ジャガイモのときの前例があったから、もしかしてがあるかなと思ってタカティに話をしてみましたよね。そしたら、情報センターの事務所を埋め尽くしているプレッツェルのケースもいくらか引き取ってくれるとのこと。
 やっぱり持つべきものは消費出来る能力のある友達だと思う。俺はタカティに声をかけて、今は林原さんがいるはずの星大情報センターの事務所に顔を出す。閑散期だから事務所で待機してないかな~…? いくらどれだけでも持って行っていいって言われていても、話は通しておかなくちゃね。

「林原さーん」
「ああ、川北か。どうした、今日は非番だろう」
「えっと、ジャガイモのときの友達が、プレッツェルを引き取ってくれるそうなんですー。それで」
「皆まで言わなくとも理解した。手伝ってもらえばいいだろう」
「タカティ、入っていいってー」
「お邪魔します」

 ぺこりとお辞儀をして、タカティが事務所に入って来た。これが話したプレッツェルの壁だよと観光名所のように案内すると、タカティはこれがその、とこれまた観光客のように感心しながら壁を見上げている。
 さて、ここで大事になって来るのがタカティの処理能力だ。ジャガイモのときは緑ヶ丘の皆さんで食べ尽くしてくれたそうだけど、今回は果たしてどうなのか。救いは保存が利く物っていうところだけど、あんまりたくさんあっても飽きちゃうんだよなあ。

「タカティ、どれくらい持って行く?」
「うーん、そうだなあ。俺の主食とおやつ用に2ケースでしょ、果林先輩のおやつにとりあえず2ケース、高崎先輩のおつまみに1ケース、伊東先輩ならきっと何か美味しくリメイクしてくれるから1ケース、みんなで分ける分に1ケース……7ケースほどもらえるかな」
「ありがとう~! どうぞ持って行って!」
「川北、7ケースではキリが悪いだろう。おまけに3ケースつけてやるといい」
「そういうことだからタカティ、おまけに3ケースね!」

 緑ヶ丘の何が強いって、人海戦術が使えるところだよね。それと、個々の消費能力が高いっていうのと。俺もサークルで何かあれば配ることも考えるんだけど、なかなかサークルでの集まりも少ないし。
 UHBCはサークルの度に誰かしらお菓子を配ってくれるから油断するとお茶会サークルみたいになっちゃうようなところがある。プレッツェルはお茶菓子にうってつけだと思うんだけど、こんな時に限って集まりがないんだもんなあ。

「あっ、それとですね林原さん」
「む」
「ついでみたいになっちゃって申し訳ないんですけどー、俺、この土日で緑風に旅行に行ってきたんですよー。そのお土産があるんで良かったら皆さんで摘まんで食べてください」
「悪いな。では、ありがたくいただこう」
「あと、これは林原さんに個人的に。おはじきって言って、規格外みたいなおせんべいの詰め合わせなんですけど、味は美味しいんでー。プレッツェルに飽きたら食べてください」
「感謝する。既に飽きていたところだ」

 緑風に行ってた目的っていうのが建築旅行兼タカティの誕生日プレゼントを探すっていう2点あったんだよね。ユキちゃんと一緒にいろいろ回ってたんだけど、建築廻りも出来たし、美術館にも行けたし、ご飯は美味しかったし本当に楽しかったなー。
 机の上にお土産を置いて、改めて目的のプレッツェルを運び出すことに。そんなに重くないから平気かなって思ったけど、やっぱり平気ではなかったので素直に台車を使うことに。

「ミドリ、緑風に行ってたの?」
「うん。あのね、緑風の図書館とか美術館が建築的観点で結構興味あってさ。エリア庁舎も古い建物っていう意味で面白いし、なかなかいいんだよ」
「あ、そういう旅行だったんだね」
「完全に趣味だね。タカティは旅行とかしないの?」
「したいとは思ってるよ。帰省のときに途中下車とかするし」
「ああ、実家が遠いと帰省も立派に旅行だよね」

 プレッツェル10ケースを車の後部座席に積んで、借りた台車を事務所に戻して。林原さんはさっそくお土産のおはじきを摘まんでくれているようで、パリパリと音を立てていた。林原さんが地道にプレッツェルを減らす努力をしていることを俺はちゃんと知っているから……せめてもの手助けはしたいと思ったよね。

「え、今度インターフェイスのみんなでタカティの誕生会やるじゃん、緑ヶ丘の皆さんも集まる機会あるの?」
「MBCCは誰かの誕生日になるとそれを口実によく飲んでるよ。俺も明後日の予定を聞かれたから、あるんだと思うよ」
「ああ、だから俺たちは7日なんだ。でも、緑ヶ丘の飲み会とか怖そうだなあ」
「こわくないよ、楽しいよ。伊東先輩が作ってくれる料理を食べさせてもらったりしてさ」
「それはいいなーって思う」
「MBCCとIFの飲みが2日連続俺の部屋であるから、エイジなんか泊まるって言ってるよ。1ケースくらいビールと一緒に食べないかな」

 誰が何ケース、誰が何ケースとタカティは計算していたようだけど、果たして思うように行くのかな。でも、緑ヶ丘の皆さんが本気になったら10ケースくらいじゃ足りないって言われそうでもあるから怖いよね。別に一気に食べなきゃいけないワケじゃないしね。

「でも、本当に毎度毎度タカティには助けられてて……情報センターを代表してお礼を言いたいよ」
「何か毎回壮絶なことになってるよね、ミドリの職場」
「そうそう、ジャガイモとプレッツェルをここに持って来たのが同じ先輩なんだけど、その人は何をするにも規模が凄いと言うか、豪快なんだよ。その人の実家が北辰なんだけど、帰省する度にお土産が毎回――……あれっ?」
「……ミドリ?」
「……もしかして今後はお土産大会の開催が無くなっちゃうってこと!? バターサンドが!」

 いいや、その心配はまた今度することにして、今はとりあえずプレッツェルの運搬が優先だ! やっぱ要らないって言われちゃう前に運ばないと!


end.


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バターサンドが! でもバターサンドクラスの定番土産だったら割といつでも催事場やスーパーに売ってるんだよなあ
ジャガイモの件があったので、プレッツェルでもタカちゃんが星大にやってきました。リン様も2度目には察するようですね。
今期は割とエイジの存在感がここ2~3年の中では強い年じゃないかな。誕生会でもエイジに出てきてほしいなあ

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