2017(02)

■幻想のヌーディストオフィス

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 7月に入って、少しずつ学内にも人が戻り始めた。今日は土曜日だから平日よりも人が少ないとは言え多少は人が来る。俺がA番、林原さんがB番、それから暇だからと遊びに来ていた春山さんの3人で事務所でお茶を飲んでいたときのこと。

「やァー、おざァーす」
「ん? 土田。今日はお前のシフトではないぞ」
「私用ス。お気になさらズ」

 冴さんが買い物袋を提げて事務所にやってきた。今日はお休みのはずの冴さんがやってきたことにびっくりする。冴さんはおもむろにロッカーを開き、その前で袋をシャカシャカと漁っている。

「ロッカーが汗臭いンすよね」
「夏ですもんねー」
「で、置きファブと湿気取りを買ってきたンすわ」
「なるほどー」
「お前着替え頻度高いもんな」
「そーなんスわァー、着替えないと肌がしんどいンす」

 冴さんは豪快で奔放な性格をしている割に(……と言ってしまうと偏見極まりないんだけど)、肌がとても繊細らしい。蒸れや汗が大敵で、とにかくこまめに着替えたりベビーパウダーを振ったりしている。
 それはいいんだけど、それが堂々としすぎてるのが問題で。男だって事務所で大っぴらに着替えたりはなかなかしないのに、冴さんは廊下からも丸見えなのにフルオープンで着替えるからいろいろ困っちゃって。

「蒸れるンで本当はブラもしたくないくらいなんスけど、ブラしねーと重くてそれはそれで支障が出るっつーアレなんス」
「癒しの冴パイも大変なんだな」
「絶壁のアンタには理解出来ませんね」
「そーそー私は絶壁で……ってうるせーわリンこの野郎張っ倒すぞ!」
「ワイヤー入りだとしんどいし」
「ブラトップ的なのはサイズねーもんなあ冴は」
「そーなンすわ」
「ところで冴パイを揉みたいので脱いでくれていいぞ」
「やァー、春山サンも好きモノすねェー」
「うへへー、冴パイサイコー!」
「林原さん、多分、外だと脱ぐにしても触るにしても捕まりますよね」
「捕まるな」

 後ろから春山さんがおっぱいを揉んでいるのも気にせず冴さんはロッカーの整理をしているし。慣れって怖いなあと思う。置き型ファブリーズと水取りぞうさんの支度がすっかり出来ちゃってる。
 何か、せめてニプレスでもしてくれればなあって思ったりもする。そこが隠れてれば露出感も何となく減るような気もするし。ううん、そもそも情報センターの事務所でやることじゃないですよね!

「目のやり場に困りますし、やっぱり冴さんはニプレスをするべきですよ」
「ニプレスか。オレも一時期していたことがある」
「……ええっ!?」
「勘違いするなよ。自己防衛の手段としてだ。土田の乳で遊んでいる春山さんとかいう変態がやたら人の乳首を狙ってきていた時期があってだな」
「えっ、狙うって」
「お前の乳首を性感帯にしてやろうなどと言いながら忍び寄り、抓る、弾くは当たり前。さらには」
「あーもういいです怖いです!」
「お前もいつ狙われるかわからんぞ。相手はそのためだけにアダルトグッズを調達する奴だ」
「ええー……」

 とりあえず、冴さんのおっぱいとの戯れ方と、林原さんの乳首を弄る戯れ方には酷い程度の差があることがわかった。春山さんがもうわかんないですよね、怖すぎて。林原さんがされてるみたいなことをされたらどうしよう。
 い、いや、林原さんが特殊なんだと信じたい! 俺はただの男で、春山さんの興味を引きつけるような要素はばさばさに跳ねた髪の毛くらいだって、そう信じていたいですよ! 髪くらいならかわいいモンですよ!

「とりあえず、オレは自習室の保守・保全業務に行ってこよう」
「行ってら――って、林原さん! 逃げないでくださいよー! ちょっとー!」

 B番業務の名の下に逃げられた! うう、どうしよう。冴さんのおっぱいで満足してくれれば救われるんだけど。どうしよう、そう考えたら触られてもないのに何だかぞわぞわしてきましたよね!


end.


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久々に情報センター。夏の冴さんは汗や肌のかゆみなどとの戦いが待ち受けているらしい。センターは涼しくても服の中などは蒸れるんだ!
あの頃の春山さんとリン様はどんな攻防を繰り広げていたのかが気になるところですが、表のノリでは多分やれんヤツでしょう!
何が出て来ても驚かない段階にミドリが突入するのはいつになるだろうか。秋学期に入るまではまだわーひゃー言っててくれるかなあ

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