2018(04)
■バチバチクラッシュ(未遂)
++++
テストが近くなってきて、情報センターを利用する人の数も増えてきたなーって思う。そうなってくると、スタッフの方もいつもより多くスタンバってて、特に授業のほとんどない春山さんなんて、1日中センターにいるくらい。
放課の枠に入って、カナコさんの姿が見える。ちょっと前まではエレベーターの方から来てたと思うんだけど、最近では事務所のある5階まで階段を使っているんだとか。美や演劇への意識なんだろうなあ。本当にストイック。
「おはようござ、いたぁっ! ……おはようございます~」
「カナコさん大丈夫ですか?」
「またバチっちゃった~。何でこんなに静電気ばっかり。冬だからかな」
「乾燥してるとバチバチするって言いますもんねー」
事務所のドアノブを握ろうとしてバチッとなって手を引っ込めて、折り畳みイスに座ろうと手を伸ばせばまたバチッとなって。何かをする度にバチッと来るみたいだし、カナコさんは本当に静電気との戦いで大変そう。
カナコさんがお茶を淹れてくれていると、階段側からまた誰かが来た感じ。これは林原さんか。珍しいなあ、林原さんもセンターにいないときがあるんだーって、いないことくらいありますよね! ずっと籠もってる印象だったけど!
「川北、自習室には春山さんがいるのだな」
「はいそうですー」
「そうか。では、セットアップをしたら代わろう」
よく見ると林原さんは何か買い物したらしい袋を提げてきていた。林原さんの買い物ということは、センターに何か新しいマシンでも導入されるのかな。ちなみに、マシンのセットアップなどは専ら林原さんの担当みたくなってますよね。
「雄介さん、お茶淹れますけど飲みますか?」
「ああ、もらおう」
「あイタっ。もー、何で引き出しの取っ手でバチるのー」
「はーっ……どうして自称研修生のために設備投資をせねばならんのか」
「林原さーん、何を買ってきたんですかー?」
「加湿器だ。自習室の方には年末に導入されていたが、事務所の方にも必要だろうと春山さんが那須田さんに交渉していたようでな。取り寄せていた物が今になって届いたから、それをセットアップするところだ」
冬っていう季節的な物もあるんだろうけど、暖房も入ってるから情報センターの湿度はとんでもなく低くて本当にカラカラ。それなのに飲み物の持ち込みが出来ないのは本当にしんどいし、湿度が低いと風邪をひきやすくなったりもするっていうので自習室の方には年末に加湿器が導入されてたんだ。空気清浄機の機能もあるよ!
「へー。事務所にも加湿器が入るんですねー」
「オレは要らんと言ったのだが、春山さんがな。綾瀬がいる以上部屋の湿度を上げないと何をどうクラッシュさせられるかわからんと。綾瀬をつまみ出せばいいだけの話ではないかと言ったがそれは却下されてな」
「えっ、カナコさんですか? まあ、確かに機械はオンチの部類だと思いますけど」
「綾瀬は機械音痴も問題だが、それ以上にいつ何に反応するかわからん静電気の方が厄介でな」
今の今までカナコさんが自称研修生の域を脱することが出来ていないのは、自他ともに認める機械音痴だからだ。春山さんの責任でA番の仕事をすることもあるけど、何度か危なっかしい場面がありましたよね。押しちゃいけないボタンを押しそうになってたり。実際に軽微な被害もあったけど、それは春山さんが復旧させてて。
だけど林原さんが心配しているのは機械音痴よりも静電気。今日だけでもいろんなところでバチバチ言わせてるカナコさんだ。USBなんかのデバイスもそうだし、マシンの本体もカナコさんの静電気でバチッとなって大事なデータが吹っ飛んだりしたら大変だーっていうのは春山さんも思ってたみたいで。
何かネットで見た気もするしね、静電気でデータがクラッシュして卒論がおじゃんになったっていう話。もしここでそんなことが起こったら詰め寄られて大変なことになる気しかしないけど、そんな人は春山さんと林原さんが何とかしてくれそうな気もする。でも静電気が起こりにくい環境作りって大事ですね!
「えっ、私の静電気ってそんなに大きな問題だったんですか!?」
「問題も大問題だ…! それを自覚した上で今後もセンターに居座るつもりなら静電気対策をするのだな」
「でも、対策ってどうすれば……」
「そのくらい自分で調べんか」
タンクに水を入れながら、林原さんはこれ見よがしな溜め息をひとつ。ピッとスイッチが入れば、少ししてシュンシュンとミストが放出され始める。機械のモニターによれば、現在の事務所の湿度は25%。えっ、お湯だって沸かしてる部屋なのにちょっと酷すぎない?
「でも林原さん、俺ちょっと思ったんですけどー、部屋の湿度が低い方が食料品の長期保存にはいいんじゃないですか?」
「そもそも、食品を長期保存する機会のある方がおかしいのだがな」
そびえ立つのはプレッツェルの壁。はい、まだまだ大量にあるプレッツェルですよね。ちなみに、最初は3ケースとおまけの2ケースって感じで配られたノルマだったけど、やっぱりその程度で許されるワケもなく全員にさらに10ケースが追加配布されましたよね! やったーしんどい!
「とにかく、セットアップは済んだからオレは春山さんと交代してくる」
「はーい、いってらっしゃーい」
「……ミドリ君、ミドリ君は静電気でバチッとならない?」
「俺はそこまでなりませんねー」
「えーウソ! ミドリ君の髪見てたら静電気起こってそうなのに!」
「俺の髪がぴょんぴょんしてるのは元々ですから! もー、静電気とは関係ないですぅー!」
end.
++++
情報センターに加湿器が導入されたようです。機械類のセットアップはリン様の担当なのね。まあ強そうだもんな
そして久々にセンターでカナコを見たような気がする。いや、プレッツェル回にもいたか
髪はぴょんぴょんしてるけどそれは元々なので静電気とは関係ないミドリであった
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テストが近くなってきて、情報センターを利用する人の数も増えてきたなーって思う。そうなってくると、スタッフの方もいつもより多くスタンバってて、特に授業のほとんどない春山さんなんて、1日中センターにいるくらい。
放課の枠に入って、カナコさんの姿が見える。ちょっと前まではエレベーターの方から来てたと思うんだけど、最近では事務所のある5階まで階段を使っているんだとか。美や演劇への意識なんだろうなあ。本当にストイック。
「おはようござ、いたぁっ! ……おはようございます~」
「カナコさん大丈夫ですか?」
「またバチっちゃった~。何でこんなに静電気ばっかり。冬だからかな」
「乾燥してるとバチバチするって言いますもんねー」
事務所のドアノブを握ろうとしてバチッとなって手を引っ込めて、折り畳みイスに座ろうと手を伸ばせばまたバチッとなって。何かをする度にバチッと来るみたいだし、カナコさんは本当に静電気との戦いで大変そう。
カナコさんがお茶を淹れてくれていると、階段側からまた誰かが来た感じ。これは林原さんか。珍しいなあ、林原さんもセンターにいないときがあるんだーって、いないことくらいありますよね! ずっと籠もってる印象だったけど!
「川北、自習室には春山さんがいるのだな」
「はいそうですー」
「そうか。では、セットアップをしたら代わろう」
よく見ると林原さんは何か買い物したらしい袋を提げてきていた。林原さんの買い物ということは、センターに何か新しいマシンでも導入されるのかな。ちなみに、マシンのセットアップなどは専ら林原さんの担当みたくなってますよね。
「雄介さん、お茶淹れますけど飲みますか?」
「ああ、もらおう」
「あイタっ。もー、何で引き出しの取っ手でバチるのー」
「はーっ……どうして自称研修生のために設備投資をせねばならんのか」
「林原さーん、何を買ってきたんですかー?」
「加湿器だ。自習室の方には年末に導入されていたが、事務所の方にも必要だろうと春山さんが那須田さんに交渉していたようでな。取り寄せていた物が今になって届いたから、それをセットアップするところだ」
冬っていう季節的な物もあるんだろうけど、暖房も入ってるから情報センターの湿度はとんでもなく低くて本当にカラカラ。それなのに飲み物の持ち込みが出来ないのは本当にしんどいし、湿度が低いと風邪をひきやすくなったりもするっていうので自習室の方には年末に加湿器が導入されてたんだ。空気清浄機の機能もあるよ!
「へー。事務所にも加湿器が入るんですねー」
「オレは要らんと言ったのだが、春山さんがな。綾瀬がいる以上部屋の湿度を上げないと何をどうクラッシュさせられるかわからんと。綾瀬をつまみ出せばいいだけの話ではないかと言ったがそれは却下されてな」
「えっ、カナコさんですか? まあ、確かに機械はオンチの部類だと思いますけど」
「綾瀬は機械音痴も問題だが、それ以上にいつ何に反応するかわからん静電気の方が厄介でな」
今の今までカナコさんが自称研修生の域を脱することが出来ていないのは、自他ともに認める機械音痴だからだ。春山さんの責任でA番の仕事をすることもあるけど、何度か危なっかしい場面がありましたよね。押しちゃいけないボタンを押しそうになってたり。実際に軽微な被害もあったけど、それは春山さんが復旧させてて。
だけど林原さんが心配しているのは機械音痴よりも静電気。今日だけでもいろんなところでバチバチ言わせてるカナコさんだ。USBなんかのデバイスもそうだし、マシンの本体もカナコさんの静電気でバチッとなって大事なデータが吹っ飛んだりしたら大変だーっていうのは春山さんも思ってたみたいで。
何かネットで見た気もするしね、静電気でデータがクラッシュして卒論がおじゃんになったっていう話。もしここでそんなことが起こったら詰め寄られて大変なことになる気しかしないけど、そんな人は春山さんと林原さんが何とかしてくれそうな気もする。でも静電気が起こりにくい環境作りって大事ですね!
「えっ、私の静電気ってそんなに大きな問題だったんですか!?」
「問題も大問題だ…! それを自覚した上で今後もセンターに居座るつもりなら静電気対策をするのだな」
「でも、対策ってどうすれば……」
「そのくらい自分で調べんか」
タンクに水を入れながら、林原さんはこれ見よがしな溜め息をひとつ。ピッとスイッチが入れば、少ししてシュンシュンとミストが放出され始める。機械のモニターによれば、現在の事務所の湿度は25%。えっ、お湯だって沸かしてる部屋なのにちょっと酷すぎない?
「でも林原さん、俺ちょっと思ったんですけどー、部屋の湿度が低い方が食料品の長期保存にはいいんじゃないですか?」
「そもそも、食品を長期保存する機会のある方がおかしいのだがな」
そびえ立つのはプレッツェルの壁。はい、まだまだ大量にあるプレッツェルですよね。ちなみに、最初は3ケースとおまけの2ケースって感じで配られたノルマだったけど、やっぱりその程度で許されるワケもなく全員にさらに10ケースが追加配布されましたよね! やったーしんどい!
「とにかく、セットアップは済んだからオレは春山さんと交代してくる」
「はーい、いってらっしゃーい」
「……ミドリ君、ミドリ君は静電気でバチッとならない?」
「俺はそこまでなりませんねー」
「えーウソ! ミドリ君の髪見てたら静電気起こってそうなのに!」
「俺の髪がぴょんぴょんしてるのは元々ですから! もー、静電気とは関係ないですぅー!」
end.
++++
情報センターに加湿器が導入されたようです。機械類のセットアップはリン様の担当なのね。まあ強そうだもんな
そして久々にセンターでカナコを見たような気がする。いや、プレッツェル回にもいたか
髪はぴょんぴょんしてるけどそれは元々なので静電気とは関係ないミドリであった
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