2018(04)
■スカウトの引きの良さ
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昨日から始まった製品の吊り札付けの仕事は、塩見さんをリーダーに、その補佐を俺がやるという感じで進めていくことになった。塩見さんは吊り札付けをやっている作業小屋にずっといることは出来ないから、ここには俺が常駐することになっている。
俺はカバンの入ったケースを部屋の中に下ろしたり、作業が終わったケースをパレットに積み上げながら必要があれば備品を補充したり、数を確認したりと忙しくも充実していた。そして昼休憩を挟んで午後の作業が始まって、小屋の中はまた賑やかになる。
「大石先輩、吊り札が無くなりました」
「はーい」
「高木、ロックスピン」
「ありがとうございます」
この作業をしているのは人材派遣の主婦の人が10人くらいと、俺が誘った朝霞となっち、それから緑ヶ丘の1年生、タカティの3人。主婦さんは5人1組の2チーム編成、学生チームは基本3人だけど、日常の出荷業務を終えたら伊東さんが合流するという流れだ。
なっちとタカティは授業の関係で今日から来てくれたんだけど、昨日も来てくれてた朝霞がちょっと作業の説明をしたらもう覚えてババッと仕事を始めちゃうんだもんなあ。1日で人に説明出来るくらい覚えた朝霞も凄いよね。しかもご飯を食べてる時みたいにひたすら喋らず黙々と作業してるし。
主婦チームの方は油断すると手よりも口の方が活発に動き始めちゃうことも結構あるけど、学生チームは本当にすごい。連携も単語ひとつで通じるし。と言うか相手が何を言いたいか言われる前に察して欲する物を出しちゃうんだから。えっ、この3人過去に何かで同じ班だったとかだっけ? 初めて集まるにしては連携取れすぎじゃない?
「って言うかもう1パレット終わっちゃいそうなんだね。……塩見さーん、塩見さーん、内線20番お願いしまーす。塩見さん20番お願いしまーす」
構内放送をかけると、間髪置かずに小屋にやってくるフォークリフト。塩見さんだ。
「どうした千景」
「あっ、もうなくなっちゃうんで次のパレットお願いします。帰ってくる頃にはこのパレットは終わると思います」
「了解」
昨日は朝霞1人だったからわからなかったんだけど、学生チームが3人揃ったときの勢いがすごい。手際もだし、多分3人ともこういう作業が得意なんだと思う。自然と流れ作業が形になって、ローテーションやフォーメーションも体に染み込ませてる。
俺はこの部屋全体に目を行き届かせることが仕事だけど、正直朝霞たち3人に関してはあまり心配していない。わからないことはわからないと聞いてくれるからというのもある。たまに、過去の経験や別の現場での事例を出して勝手に何でもしちゃう人もいるから、そういうのも止めなきゃいけないし。
「千景、おかわり来たぞ」
「ありがとうございます」
さっそく塩見さんが持ってきてくれたおかわりをパレットから下ろして、梱包用テープをカッターで切ってからレーンの上に載せていく。気持ち学生チームの方を多めに下ろして。今日半日作業の様子を見ていて、どのチームがどれだけの仕事を出来ると判断した結果だね。
作業の終わったパレットを所定の場所に戻した後、塩見さんはしばらく小屋で作業を見ていた。吊り札の管理や人材さんの様子を見るという目的で。だけど、賑やかに、楽しそうに作業していた主婦チームにはとうとう雷が落ちましたよね。
「千景、ちょっと」
「はい」
小屋の扉を閉めて、ガラス越しに作業を見ながらの話が始まる。塩見さんはひとつ大きく溜め息を吐いて、首を軽く傾げた。えっ、これってどういう反応なんだろう。
「はー……、お前、すげえの連れて来たな」
「えっと、3人のことですか?」
「ああ。今ちょっと見てただけだけど、めちゃくちゃ手が速いし集中力が凄まじい」
「そうですね、それは俺も思って見てました」
「3人全員揃うことってそうないんだったっけか」
「そうですね、あのメガネの子は1年生なので授業が。次に3人揃うのは土曜日ですね」
「そうか。土曜は出荷ないから従業員もフル稼働出来るし、速くなるぞ」
――なんて話していると、ガラス扉の方からコンコンとノックの音がする。なっちだ。セロテープの輪っかを持っているように見える。
「千景、切れたんじゃねえのか」
「みたいですね」
「今持って来てやる」
「ありがとうございます。……なっち、セロテープが無くなったのかな?」
「ああ。支給された分を使い切ってしまったんだ」
「今塩見さんが持って来てくれるから少し待ってて」
そうこうしている間に、作業の終わったケースがいくつもレーンの上に戻されていた。俺はそれを空パレットに積みながら思う。俺は細かい作業が本当に苦手だから、こういう作業の出来る人が本当に凄いなあって。あと、ここで仕事を任せてもらえたんだから頑張らなきゃなって。
「千景、テープ」
「ありがとうございます」
「あっ、ラベルの台紙は捨てるなよ。事務所で点数集めてるから」
「そしたら今塩見さんに台紙預けちゃっていいですか」
「じゃあもらってくわ」
「なっちー、セロテープ来たよー」
end.
++++
チーム温玉が再集結してアルバイトをしています。ちーちゃんは現場の担当者として、塩見さんの右腕として頑張っている様子。
ちーちゃんは学生チームの送迎なんかもしているので想像以上に働いてるんだろうなあ
チーム温玉の3人が塩見さんに抱いた第一印象なんかも今後聞いてみたいですね。えっこんな髪の色いいのって思うやろなまず
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昨日から始まった製品の吊り札付けの仕事は、塩見さんをリーダーに、その補佐を俺がやるという感じで進めていくことになった。塩見さんは吊り札付けをやっている作業小屋にずっといることは出来ないから、ここには俺が常駐することになっている。
俺はカバンの入ったケースを部屋の中に下ろしたり、作業が終わったケースをパレットに積み上げながら必要があれば備品を補充したり、数を確認したりと忙しくも充実していた。そして昼休憩を挟んで午後の作業が始まって、小屋の中はまた賑やかになる。
「大石先輩、吊り札が無くなりました」
「はーい」
「高木、ロックスピン」
「ありがとうございます」
この作業をしているのは人材派遣の主婦の人が10人くらいと、俺が誘った朝霞となっち、それから緑ヶ丘の1年生、タカティの3人。主婦さんは5人1組の2チーム編成、学生チームは基本3人だけど、日常の出荷業務を終えたら伊東さんが合流するという流れだ。
なっちとタカティは授業の関係で今日から来てくれたんだけど、昨日も来てくれてた朝霞がちょっと作業の説明をしたらもう覚えてババッと仕事を始めちゃうんだもんなあ。1日で人に説明出来るくらい覚えた朝霞も凄いよね。しかもご飯を食べてる時みたいにひたすら喋らず黙々と作業してるし。
主婦チームの方は油断すると手よりも口の方が活発に動き始めちゃうことも結構あるけど、学生チームは本当にすごい。連携も単語ひとつで通じるし。と言うか相手が何を言いたいか言われる前に察して欲する物を出しちゃうんだから。えっ、この3人過去に何かで同じ班だったとかだっけ? 初めて集まるにしては連携取れすぎじゃない?
「って言うかもう1パレット終わっちゃいそうなんだね。……塩見さーん、塩見さーん、内線20番お願いしまーす。塩見さん20番お願いしまーす」
構内放送をかけると、間髪置かずに小屋にやってくるフォークリフト。塩見さんだ。
「どうした千景」
「あっ、もうなくなっちゃうんで次のパレットお願いします。帰ってくる頃にはこのパレットは終わると思います」
「了解」
昨日は朝霞1人だったからわからなかったんだけど、学生チームが3人揃ったときの勢いがすごい。手際もだし、多分3人ともこういう作業が得意なんだと思う。自然と流れ作業が形になって、ローテーションやフォーメーションも体に染み込ませてる。
俺はこの部屋全体に目を行き届かせることが仕事だけど、正直朝霞たち3人に関してはあまり心配していない。わからないことはわからないと聞いてくれるからというのもある。たまに、過去の経験や別の現場での事例を出して勝手に何でもしちゃう人もいるから、そういうのも止めなきゃいけないし。
「千景、おかわり来たぞ」
「ありがとうございます」
さっそく塩見さんが持ってきてくれたおかわりをパレットから下ろして、梱包用テープをカッターで切ってからレーンの上に載せていく。気持ち学生チームの方を多めに下ろして。今日半日作業の様子を見ていて、どのチームがどれだけの仕事を出来ると判断した結果だね。
作業の終わったパレットを所定の場所に戻した後、塩見さんはしばらく小屋で作業を見ていた。吊り札の管理や人材さんの様子を見るという目的で。だけど、賑やかに、楽しそうに作業していた主婦チームにはとうとう雷が落ちましたよね。
「千景、ちょっと」
「はい」
小屋の扉を閉めて、ガラス越しに作業を見ながらの話が始まる。塩見さんはひとつ大きく溜め息を吐いて、首を軽く傾げた。えっ、これってどういう反応なんだろう。
「はー……、お前、すげえの連れて来たな」
「えっと、3人のことですか?」
「ああ。今ちょっと見てただけだけど、めちゃくちゃ手が速いし集中力が凄まじい」
「そうですね、それは俺も思って見てました」
「3人全員揃うことってそうないんだったっけか」
「そうですね、あのメガネの子は1年生なので授業が。次に3人揃うのは土曜日ですね」
「そうか。土曜は出荷ないから従業員もフル稼働出来るし、速くなるぞ」
――なんて話していると、ガラス扉の方からコンコンとノックの音がする。なっちだ。セロテープの輪っかを持っているように見える。
「千景、切れたんじゃねえのか」
「みたいですね」
「今持って来てやる」
「ありがとうございます。……なっち、セロテープが無くなったのかな?」
「ああ。支給された分を使い切ってしまったんだ」
「今塩見さんが持って来てくれるから少し待ってて」
そうこうしている間に、作業の終わったケースがいくつもレーンの上に戻されていた。俺はそれを空パレットに積みながら思う。俺は細かい作業が本当に苦手だから、こういう作業の出来る人が本当に凄いなあって。あと、ここで仕事を任せてもらえたんだから頑張らなきゃなって。
「千景、テープ」
「ありがとうございます」
「あっ、ラベルの台紙は捨てるなよ。事務所で点数集めてるから」
「そしたら今塩見さんに台紙預けちゃっていいですか」
「じゃあもらってくわ」
「なっちー、セロテープ来たよー」
end.
++++
チーム温玉が再集結してアルバイトをしています。ちーちゃんは現場の担当者として、塩見さんの右腕として頑張っている様子。
ちーちゃんは学生チームの送迎なんかもしているので想像以上に働いてるんだろうなあ
チーム温玉の3人が塩見さんに抱いた第一印象なんかも今後聞いてみたいですね。えっこんな髪の色いいのって思うやろなまず
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