2018(04)
■晴れの舞台は似合わない
++++
「はー……疲れた。やっと終わった」
「いやはや、長い間お疲れ様でした」
「ホントに」
「ささ、どうぞ飲んでください」
「あざーす。かんぱーい」
「かんぱーい」
「――って、俺は何でお前とナチュラルにファミレスにいるのか」
今日は成人式があった。俺とこーたは同じ青浪市の括りで式に出席して、人によってはその後地区とか学校単位の式だの集まりだのに移って行ったんだと思う。だけど、こーたの学区はそういう集まりがなかったみたいだし、俺はその手の集まりをスルーした。
多分地区の集まりがあればそこに行き、なくても仲間内でセルフ二次会みたいなことをするのが一般的なんだろう。だけど俺は、何かいつものようにこーたとぐだぐだと駄弁りながら腹ごしらえをしている。だけど心底疲れているし、こーたとぐだぐだやるくらいの方が楽でいい。
「何を言っているんですか。内輪の集まりをスルーしたのはあなたでしょうに。あーあ、せっかく遠方から帰って来て野坂さんと会いたいなーと思っていた人もいるかもしれませんのに」
「それはない。つか俺がそんな気分じゃないしそんな風に思われる覚えもない」
「うわ~い、安定のクズだぁ~、さぁっすがイケメン詐欺だね!」
「うるせーウザドル。お前こそ内輪の集まりはなかったのかよ」
「そういうのは年末年始に済ませたので、今改めてやる必要性もないんですよね」
「お前って非リアの皮を被ったリア充の陽キャだよな」
こーたは中学とか高校の友達とちょこちょこ集まって近況を話したりしているみたいだけど、俺はそういうことが全くない。多分、他人に対する興味関心の差もあるのかもしれない。誰がどこで何をしているとか、割とどうでもいいし。
そんなことをやっていると友達が減りそうだけど、それくらいのことで友達じゃなくなる奴とはそもそも付き合えなくね? 会いたいときに会って前回の続きから気兼ねなく話せる奴がちょうどいいって言うじゃんか。
「さすが野坂さん、クズと言うかマイペースと言うか」
「B型だしな俺」
「血液型がB型の人がみんなあなたのようだと思わない方がいいですよ」
「近場に誰か他にBいたっけ」
「MMPの2年生は野坂さん以外Oですよ。確か奈々がB型だったかと。B型云々の前に野坂さんは末っ子故のマイペースさも相まってこんなことになってるんじゃないです?」
「ちげーよ! 今日はもう精神的にめっちゃ疲弊したんだって。キャパオーバーなんだよこれ以上何かするとか」
「ぷーくすくす、野坂さんの勇姿、しかとこの目とスマホに記録しましたよ」
「バカ野郎目はともかくスマホって何だ!」
「野坂さんが成人式実行委員会の代表として壇上に立って新成人誓いの言葉を述べるなんて面白い光景、記録しない理由が見当たらないじゃないですかぁ~」
どうして今日の俺がここまでキャパオーバーだの疲れただのと言っているのかと言えば、先の大役で疲弊したというのが大きい。俺は成人式実行委員会として学年が上がった頃からバタバタと走り回っていた。対策委員と並行していたからそれもめっちゃしんどかったんだけども。
実行委員になるのは地区毎の持ち回りで地元に残っている奴の中から選ばれるらしく、逃れられない運命だったんだろう。だけど、どうして俺が実行委員長というワケでもないのに新成人代表として誓いの言葉を述べなければならなかったのか。全くもって意味がわからない。
「見ます? 見ます? 私が録画した野坂さんの勇姿、見ます?」
「絶対見ない。今すぐ消せ」
「え~、少なくとも3年生の先輩方にお見せするまでは消しませんよねぇ~」
「3っ…!? それだけは絶対にやめろ!」
「いいじゃないですか、失敗したとかじゃないですし。むしろ良かったと思いますよ。さすが、顔で選ばれた新成人代表だけあって見栄えも良かったですし。いよっ、イケメン詐欺!」
「顔…?」
「ええ。ご存知ありませんでした? 私の友人もいたじゃないですか、実行委員に」
「ああ、何かいたな」
「彼女曰く、そういう現場が画になるイケメンを代表にした方がいいという理由で野坂さんが代表になるよう仕向けたそうですよ」
意味がわからない。そういう場だったらもっと何かあるだろ、しっかりしてる奴とか、星大で成績のいい奴とかいろいろさあ。あとは高校以前に何か実績を残してるとかさ。顔で選んだ? いやいや、どこをどう見たら俺の顔を前に出そうと思うのか、その意味がわからない。
「こーた、ビール1杯奢れ」
「奢る理由がわかりませんが」
「え、今日疲れたから」
「仕方ないですね、1杯だけですよ」
「マジか! あざす!」
成人式を終えたと言っても俺個人はまだ19歳。本来なら店で堂々と飲酒も出来ないけど、大役を終えた開放感は大きい。いや、それより疲労感の方が大きいな。これからどういう大人になっていくかはわからないけど、日々俺の思う将来に向けて努力をし続けなければならないことに変わりはない。
「え、挨拶マジで撮ってないよな?」
「撮りましたよ? 何を言ってるんですかあなたは」
「ええ~……」
「野坂さんのお母様にもお見せしたいですね」
「やめろ」
end.
++++
恒例の成人式ノサカいじりです。もっと他の2年生にもフォーカスを当てていいと思うんだけどなあ
地元の集まりなどには無関心なノサカと、年末年始で済ませた神崎の何かアレよ……ほらアレ。どうして今のノサカにそこそこに人望があるんだろう
ノサカがカルピスサワーとかでなくビールを飲んでいるのはファミレス故のメニューの少なさだよ! 飲めないワケではないっぽいね
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「はー……疲れた。やっと終わった」
「いやはや、長い間お疲れ様でした」
「ホントに」
「ささ、どうぞ飲んでください」
「あざーす。かんぱーい」
「かんぱーい」
「――って、俺は何でお前とナチュラルにファミレスにいるのか」
今日は成人式があった。俺とこーたは同じ青浪市の括りで式に出席して、人によってはその後地区とか学校単位の式だの集まりだのに移って行ったんだと思う。だけど、こーたの学区はそういう集まりがなかったみたいだし、俺はその手の集まりをスルーした。
多分地区の集まりがあればそこに行き、なくても仲間内でセルフ二次会みたいなことをするのが一般的なんだろう。だけど俺は、何かいつものようにこーたとぐだぐだと駄弁りながら腹ごしらえをしている。だけど心底疲れているし、こーたとぐだぐだやるくらいの方が楽でいい。
「何を言っているんですか。内輪の集まりをスルーしたのはあなたでしょうに。あーあ、せっかく遠方から帰って来て野坂さんと会いたいなーと思っていた人もいるかもしれませんのに」
「それはない。つか俺がそんな気分じゃないしそんな風に思われる覚えもない」
「うわ~い、安定のクズだぁ~、さぁっすがイケメン詐欺だね!」
「うるせーウザドル。お前こそ内輪の集まりはなかったのかよ」
「そういうのは年末年始に済ませたので、今改めてやる必要性もないんですよね」
「お前って非リアの皮を被ったリア充の陽キャだよな」
こーたは中学とか高校の友達とちょこちょこ集まって近況を話したりしているみたいだけど、俺はそういうことが全くない。多分、他人に対する興味関心の差もあるのかもしれない。誰がどこで何をしているとか、割とどうでもいいし。
そんなことをやっていると友達が減りそうだけど、それくらいのことで友達じゃなくなる奴とはそもそも付き合えなくね? 会いたいときに会って前回の続きから気兼ねなく話せる奴がちょうどいいって言うじゃんか。
「さすが野坂さん、クズと言うかマイペースと言うか」
「B型だしな俺」
「血液型がB型の人がみんなあなたのようだと思わない方がいいですよ」
「近場に誰か他にBいたっけ」
「MMPの2年生は野坂さん以外Oですよ。確か奈々がB型だったかと。B型云々の前に野坂さんは末っ子故のマイペースさも相まってこんなことになってるんじゃないです?」
「ちげーよ! 今日はもう精神的にめっちゃ疲弊したんだって。キャパオーバーなんだよこれ以上何かするとか」
「ぷーくすくす、野坂さんの勇姿、しかとこの目とスマホに記録しましたよ」
「バカ野郎目はともかくスマホって何だ!」
「野坂さんが成人式実行委員会の代表として壇上に立って新成人誓いの言葉を述べるなんて面白い光景、記録しない理由が見当たらないじゃないですかぁ~」
どうして今日の俺がここまでキャパオーバーだの疲れただのと言っているのかと言えば、先の大役で疲弊したというのが大きい。俺は成人式実行委員会として学年が上がった頃からバタバタと走り回っていた。対策委員と並行していたからそれもめっちゃしんどかったんだけども。
実行委員になるのは地区毎の持ち回りで地元に残っている奴の中から選ばれるらしく、逃れられない運命だったんだろう。だけど、どうして俺が実行委員長というワケでもないのに新成人代表として誓いの言葉を述べなければならなかったのか。全くもって意味がわからない。
「見ます? 見ます? 私が録画した野坂さんの勇姿、見ます?」
「絶対見ない。今すぐ消せ」
「え~、少なくとも3年生の先輩方にお見せするまでは消しませんよねぇ~」
「3っ…!? それだけは絶対にやめろ!」
「いいじゃないですか、失敗したとかじゃないですし。むしろ良かったと思いますよ。さすが、顔で選ばれた新成人代表だけあって見栄えも良かったですし。いよっ、イケメン詐欺!」
「顔…?」
「ええ。ご存知ありませんでした? 私の友人もいたじゃないですか、実行委員に」
「ああ、何かいたな」
「彼女曰く、そういう現場が画になるイケメンを代表にした方がいいという理由で野坂さんが代表になるよう仕向けたそうですよ」
意味がわからない。そういう場だったらもっと何かあるだろ、しっかりしてる奴とか、星大で成績のいい奴とかいろいろさあ。あとは高校以前に何か実績を残してるとかさ。顔で選んだ? いやいや、どこをどう見たら俺の顔を前に出そうと思うのか、その意味がわからない。
「こーた、ビール1杯奢れ」
「奢る理由がわかりませんが」
「え、今日疲れたから」
「仕方ないですね、1杯だけですよ」
「マジか! あざす!」
成人式を終えたと言っても俺個人はまだ19歳。本来なら店で堂々と飲酒も出来ないけど、大役を終えた開放感は大きい。いや、それより疲労感の方が大きいな。これからどういう大人になっていくかはわからないけど、日々俺の思う将来に向けて努力をし続けなければならないことに変わりはない。
「え、挨拶マジで撮ってないよな?」
「撮りましたよ? 何を言ってるんですかあなたは」
「ええ~……」
「野坂さんのお母様にもお見せしたいですね」
「やめろ」
end.
++++
恒例の成人式ノサカいじりです。もっと他の2年生にもフォーカスを当てていいと思うんだけどなあ
地元の集まりなどには無関心なノサカと、年末年始で済ませた神崎の何かアレよ……ほらアレ。どうして今のノサカにそこそこに人望があるんだろう
ノサカがカルピスサワーとかでなくビールを飲んでいるのはファミレス故のメニューの少なさだよ! 飲めないワケではないっぽいね
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