2018(04)
■さすらいの派遣アルバイター
++++
「あっ、朝霞。来てくれてありがとー」
「どうしたんだ突然」
「改めまして、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「今年もよろしくお願いします。それで、何なんだ頼みって」
大学近くのカフェで大石と待ち合わせ。律儀に新年の挨拶なんかも交わして、改めて本題へ。大石からは、バイト関係で頼みたいことがあるからと呼び出されていた。大石のバイトと言えば倉庫での肉体労働だったはずだけど、そこでどうして俺が出てくるのか。
もしかして、さすらいの派遣アルバイターである俺に大石と同じ仕事をしろということなのだろうか。体力のない俺に肉体労働なんて出来る気がしないけど、とりあえずは話を聞いてみないと始まらない。
「あっ、そうそう。朝霞、製品の吊り札付けの仕事って出来る?」
「吊り札付けって言うと、細かい系の作業だな」
「うん、そうだね。具体的には製品……えっと、カバンの吊り札付けと、一部製品は部品になる紐を取り付けるって言う作業もあるかな」
「お前がやってるような肉体労働では」
「ないね。うちの会社では人材派遣の主婦の人がメインにやるような仕事だよ」
「一応吊り札付けの経験はあるから説明してもらえれば出来ると思う」
俺が前にやった製品の吊り札付けの仕事は洋服にバノックでタグや値札をつけるという仕事だった。服と値札を繋げてるあのプラスチックの紐みたいなヤツだ。アレをハンドガンのような道具でひたすらバチンバチンとつけていくんだ。
ただ、あらかじめ行き先別に梱包された状態で来るから、品物と札を間違えないようにしないといけなかったりと気をつけるところはまあまああった。きっとカバンにしても要領はそこまで違わないと思いたい。現場での説明に期待。
「それはいつからの仕事で、待遇は」
「15日の火曜日からで、勤務時間は9時から5時半まで、午前と午後に15分ずつと、昼に1時間の休憩があるから実働は7時間だね。時給は1000円で、交通費も出るよ」
「へー、結構いいな」
「毎日じゃなくてもいいし、土曜日もあるから入れる日だけとか、午前だけ、午後だけとかでも全然いいよ」
「わかった。次のマネキンが終わったら実質ニートだし、お前の会社の仕事をやらせてもらうよ」
「わー、ありがとう!」
大石から提示された条件は悪くなかったし、次のマネキンの仕事の後は途方に暮れるところだったから、迷わずオッケーの返事をした。毎年この時期はテストが近いということもあってあまりバイトを入れてなかったから、派遣会社の方も無駄に学習しているのかなかなか連絡をして来ないんだ。
クリスマスから年末にかけて旅行をしたり地元で遊びまくったりした結果、正直かなりの金欠状態。その時点ではこれまでの蓄えで何とかなっていたけど、今がじり貧状態で。ビールが飲みたいのに飲めないし。安酒で我慢すればと思うけど、安酒でも一度飲んでしまうとストッパーが無くなるから禁酒してるんだ。
「あれっ。つかお前のバイト先の会社って西海だよな?」
「そうだね。あっ、実はなっちにもこの話をしてて、青池駅まで来てくれれば俺が迎えに行くよってことになってるんだ。良かったら朝霞も途中で拾って行こうか」
「マジか、至れり尽くせりだな」
「あっでもその場合交通費は俺に付くことになるし、朝霞には付かなくなっちゃうけど」
「全然いい。と言うかそこまでしてもらって申し訳ない」
「ううん、こっちは来てもらうんだもん。それくらいはするよ。それに、大学からもそんなに遠くないから道も大体わかるし」
「と言うかなっちも来るんだな。お前となっちってそんな関わりあったっけ」
「ファンフェスで同じ班だったんだよ」
大石は、ファンフェス以降のなっちとの親交について語ってくれた。伏見がミッツに惚れられていた件で相談をしたり、その流れで飯を食いに行ったりとかでちょこちょこ会っていたらしい。そして、俺もその存在を初めて知ったんだけど、LINEでも大石はなっちと友達になっているらしい。それはツミツミという共通の趣味が結んだ縁。
「その他にも美奈つてに話を聞いたりしてるし、なっちとは仲良くさせてもらってるよ」
「ミーナとか懐かしい名前だな」
「あっ、そうだよね。美奈はあんまりインターフェイスの表舞台に出てこないから」
「言うほど俺も表でバリバリやってたワケじゃないしな」
「あっ、それでさ朝霞、頼みっていうのはそれだけじゃなくて」
「ん? どうした」
「朝霞の友達とかの中にちょっと働きたいなーって人がいれば、声をかけてみてもらえないかなと。あっでも俺の車はあと1人しか乗れないんだけど」
「わかった、適当に当たってみる。もし誰かいたらお前に言えばいいか?」
「そうだね、お願ーい」
でも、これまでもこのテの作業は派遣会社から人を雇って賄っていただろうに、ここまで人海戦術と言うかネズミ算的な感じで人を探し始めたんだ? ……いや、さすらいの派遣アルバイターだから事情はわかんないでもないけど。
「大石、確認する。学生とかに手当たり次第聞いてるっていうのは、学生だからチョロい扱いでも大丈夫だろうって会社側が思ってるワケではないよな?」
「むしろ逆だね。むしろ学生さんの方がしっかり仕事をしてくれるから、それだけの待遇で迎えたいっていうことだよ」
「うん、まあ、察してはいた。如何せんこういう働き方をしてると現場の社員さんから言われるんだ、下手なスポットより学生の方がいいって。それでちょっとでも出来る奴は囲い込まれたり、会社の登録やめてその現場で直接雇われるようになるしな。俺は断ってたけど」
「どうして断ってたの?」
「極力いろんな現場に行きたかったんだよ、ステージのネタのためと言うか、後学のために」
「ああー……朝霞って感じだねー」
何はともあれ、しばらく働き口に困ることはなくなった。これで何とか生活していくことも出来るだろう。さて、俺の人脈でちょっと働きたいなーって奴は誰かいたかなあ。手当たり次第聞いてみるか。
end.
++++
朝霞Pがさすらいの派遣アルバイターを自称しまくっている件。洋平ちゃんのステージスターばりに自称してますね。
はい! 今年度らしい感じで言えばこの年始のアルバイトにチーム温玉から菜月さんが参戦するということでしょう! 再集結の時間だ!
と言うか年末年始の朝霞Pは結構お金使ってましたね……洋平ちゃんとの旅行だけでウン万ってレベルだろうし
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「あっ、朝霞。来てくれてありがとー」
「どうしたんだ突然」
「改めまして、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「今年もよろしくお願いします。それで、何なんだ頼みって」
大学近くのカフェで大石と待ち合わせ。律儀に新年の挨拶なんかも交わして、改めて本題へ。大石からは、バイト関係で頼みたいことがあるからと呼び出されていた。大石のバイトと言えば倉庫での肉体労働だったはずだけど、そこでどうして俺が出てくるのか。
もしかして、さすらいの派遣アルバイターである俺に大石と同じ仕事をしろということなのだろうか。体力のない俺に肉体労働なんて出来る気がしないけど、とりあえずは話を聞いてみないと始まらない。
「あっ、そうそう。朝霞、製品の吊り札付けの仕事って出来る?」
「吊り札付けって言うと、細かい系の作業だな」
「うん、そうだね。具体的には製品……えっと、カバンの吊り札付けと、一部製品は部品になる紐を取り付けるって言う作業もあるかな」
「お前がやってるような肉体労働では」
「ないね。うちの会社では人材派遣の主婦の人がメインにやるような仕事だよ」
「一応吊り札付けの経験はあるから説明してもらえれば出来ると思う」
俺が前にやった製品の吊り札付けの仕事は洋服にバノックでタグや値札をつけるという仕事だった。服と値札を繋げてるあのプラスチックの紐みたいなヤツだ。アレをハンドガンのような道具でひたすらバチンバチンとつけていくんだ。
ただ、あらかじめ行き先別に梱包された状態で来るから、品物と札を間違えないようにしないといけなかったりと気をつけるところはまあまああった。きっとカバンにしても要領はそこまで違わないと思いたい。現場での説明に期待。
「それはいつからの仕事で、待遇は」
「15日の火曜日からで、勤務時間は9時から5時半まで、午前と午後に15分ずつと、昼に1時間の休憩があるから実働は7時間だね。時給は1000円で、交通費も出るよ」
「へー、結構いいな」
「毎日じゃなくてもいいし、土曜日もあるから入れる日だけとか、午前だけ、午後だけとかでも全然いいよ」
「わかった。次のマネキンが終わったら実質ニートだし、お前の会社の仕事をやらせてもらうよ」
「わー、ありがとう!」
大石から提示された条件は悪くなかったし、次のマネキンの仕事の後は途方に暮れるところだったから、迷わずオッケーの返事をした。毎年この時期はテストが近いということもあってあまりバイトを入れてなかったから、派遣会社の方も無駄に学習しているのかなかなか連絡をして来ないんだ。
クリスマスから年末にかけて旅行をしたり地元で遊びまくったりした結果、正直かなりの金欠状態。その時点ではこれまでの蓄えで何とかなっていたけど、今がじり貧状態で。ビールが飲みたいのに飲めないし。安酒で我慢すればと思うけど、安酒でも一度飲んでしまうとストッパーが無くなるから禁酒してるんだ。
「あれっ。つかお前のバイト先の会社って西海だよな?」
「そうだね。あっ、実はなっちにもこの話をしてて、青池駅まで来てくれれば俺が迎えに行くよってことになってるんだ。良かったら朝霞も途中で拾って行こうか」
「マジか、至れり尽くせりだな」
「あっでもその場合交通費は俺に付くことになるし、朝霞には付かなくなっちゃうけど」
「全然いい。と言うかそこまでしてもらって申し訳ない」
「ううん、こっちは来てもらうんだもん。それくらいはするよ。それに、大学からもそんなに遠くないから道も大体わかるし」
「と言うかなっちも来るんだな。お前となっちってそんな関わりあったっけ」
「ファンフェスで同じ班だったんだよ」
大石は、ファンフェス以降のなっちとの親交について語ってくれた。伏見がミッツに惚れられていた件で相談をしたり、その流れで飯を食いに行ったりとかでちょこちょこ会っていたらしい。そして、俺もその存在を初めて知ったんだけど、LINEでも大石はなっちと友達になっているらしい。それはツミツミという共通の趣味が結んだ縁。
「その他にも美奈つてに話を聞いたりしてるし、なっちとは仲良くさせてもらってるよ」
「ミーナとか懐かしい名前だな」
「あっ、そうだよね。美奈はあんまりインターフェイスの表舞台に出てこないから」
「言うほど俺も表でバリバリやってたワケじゃないしな」
「あっ、それでさ朝霞、頼みっていうのはそれだけじゃなくて」
「ん? どうした」
「朝霞の友達とかの中にちょっと働きたいなーって人がいれば、声をかけてみてもらえないかなと。あっでも俺の車はあと1人しか乗れないんだけど」
「わかった、適当に当たってみる。もし誰かいたらお前に言えばいいか?」
「そうだね、お願ーい」
でも、これまでもこのテの作業は派遣会社から人を雇って賄っていただろうに、ここまで人海戦術と言うかネズミ算的な感じで人を探し始めたんだ? ……いや、さすらいの派遣アルバイターだから事情はわかんないでもないけど。
「大石、確認する。学生とかに手当たり次第聞いてるっていうのは、学生だからチョロい扱いでも大丈夫だろうって会社側が思ってるワケではないよな?」
「むしろ逆だね。むしろ学生さんの方がしっかり仕事をしてくれるから、それだけの待遇で迎えたいっていうことだよ」
「うん、まあ、察してはいた。如何せんこういう働き方をしてると現場の社員さんから言われるんだ、下手なスポットより学生の方がいいって。それでちょっとでも出来る奴は囲い込まれたり、会社の登録やめてその現場で直接雇われるようになるしな。俺は断ってたけど」
「どうして断ってたの?」
「極力いろんな現場に行きたかったんだよ、ステージのネタのためと言うか、後学のために」
「ああー……朝霞って感じだねー」
何はともあれ、しばらく働き口に困ることはなくなった。これで何とか生活していくことも出来るだろう。さて、俺の人脈でちょっと働きたいなーって奴は誰かいたかなあ。手当たり次第聞いてみるか。
end.
++++
朝霞Pがさすらいの派遣アルバイターを自称しまくっている件。洋平ちゃんのステージスターばりに自称してますね。
はい! 今年度らしい感じで言えばこの年始のアルバイトにチーム温玉から菜月さんが参戦するということでしょう! 再集結の時間だ!
と言うか年末年始の朝霞Pは結構お金使ってましたね……洋平ちゃんとの旅行だけでウン万ってレベルだろうし
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