2018(04)
■執念と欲求の反復
++++
「ああああ~っ! おたま様~! かつてこれほど自分が分裂出来ないことを呪ったことはない~っ!」
「うんうん、アヤちゃんドンマイ」
戦いが終わって一段落したお正月。ううん、5日にもなればもうお正月とも言えないかな。実家での自堕落生活も終了して、自分の部屋での自堕落生活を再開した。いや、実家でのそれとこっちでのそれってまた質が違うんですよ!
カズはサッカー見るのに忙しいからまだもうしばらくこの部屋には来ないだろうし、うちはうちでこっちに置いといた戦利品の消化に忙しく。まだまだ冬は始まったばかりだからね、読むのも書くのも忙しいですわ。
で、うちに遊びに来るなりアヤちゃんがおいおいと泣きついていて。アヤちゃんとは3日間コミフェを満喫して、それから向島にとんぼ返りしてからも分単位のスケジュールを送ってたよね。アヤちゃんはバイト研修先の先輩が組んでるっていうバンドのライブを見に行ってたんだって。
だけど、本当は実家の方で高校のメンバーが集まってやるっていう花火大会にも誘われてて。そこまで仲のいい人がいるワケでもなさそうな花火大会を断ってライブの方に行ってたそうなんだけど……花火大会の方に、アヤちゃんの探してる先輩さんがいたんだって。
「実家に寄らずに星港に帰って来たのを後悔はしてないよ?」
「うん、それはライブの話をしてる様子を見ててわかる」
「だけど、その写真を共有しないでよって! 気になるイベントのレポートは自分で探して読みますから、欲してもないのに押し付けて来るネタバレとか罪でしかない!」
「あ~、それはダメだわ~」
「でしょ!? 今の先輩の写真をピンポイントで送って来るとか……万死に値するでしょ!?」
アヤちゃんは荒れていた。表現者として尊敬する先輩を、向島の星ナントカ大学に進学したという情報以外に何のヒントもなく探し始めて2年弱。いろんなイベントに足を運んだけど未だに見つかる気配もなく。だけど、誘われてたけど断った行事に先輩がいたっていうね。
しかも自分では全然見つけられないのにそこまで仲がいいワケでもない人から先輩の写真を送って来られるとかいう何とも言えないヤツ。無駄に……って言ったら怒られるかもだけど、誰からもヒントをもらわないっていう縛りプレイが難易度をグンと上げてるんだよね。アヤちゃんは運命を信じたいそうだけど。
運命というのは恋愛という意味での運命じゃなくて、演劇に携わる者として自分を成長させてくれた運命の人、という意味なんだそうだ。“先輩”は書くことに対してストイックで、妥協をしないし人にもさせないし、常にアンテナを張り巡らせてるとか。何か凄い人らしいですよ?
「それで、先輩は何か変わってた?」
「髪の色がちょっと明るくなってた気がする。元々色素薄めだけど」
「写真だしその辺は誤差の範囲じゃない?」
「そっか。そうですよね! 写真はいっくらでも加工出来ますからね!」
「アヤちゃんが言うと説得力が凄すぎるわ」
「って言うか冬の夜に花火と先輩とかいう素晴らしいシチュエーションと被写体があるのに撮影をガチらない意味がわからないんだけど何でスマホで適当に撮りましたって感じで済ませられるのかちょっとわかりませんね」
コミフェで頒布されたアヤちゃんの新刊写真集も見事に在庫なしですよね。ホント眼福すぎてこれで2000円って安すぎませんかって感じ。アヤちゃんは自分でもフォトショなんかをガッツリ扱うから、写真加工に関してはある程度聞けますよね。
って言うかアヤちゃんは割と真面目に投げ銭で生活出来るんじゃないかって思うんですよね。だから先にやってたバイトを辞めても大して困ってないし、研修先でバンドのピアノの先輩さんがアヤちゃんの採用をなかなか認めてくれなくても粘れるんだよねえ(お金を抜きにしてもアヤちゃんの執念は凄いけど)。
「それより、ライブの方はどうだったの?」
「ピアノの先輩様が本当に素敵でした…!」
「えっ、どしたのアヤちゃん、いつもピアノさんにイジメられてるみたいなこと言ってるのに」
「いや、ゆーてもですよ雨宮先生! 二次的に見ればピアノさんの挑発がどちゃくそえっちなんですよ! リアル視点ではは~やっぱ実力者すごいってなるんですよ!」
楽しかった方のことを喋り始めるとアヤちゃんはテンションが高くなって、先においおい泣きついてたことなんてなかったみたい。ピアノの先輩“様”…? 研修先とバンドの話は聞いてたけど、様ってついてたっけ今まで。様クラスに格上げしたのかなこのライブで。
「ところでおたま様のお正月は?」
「初詣と戦利品消化、それからSDX三昧でした」
「安っ定。カズさんの姿がなくて森だ」
「カズはカズでサッカー見てるから。てかプロ氏の年越し第九配信に思わず計4000円投げちゃいましたよね」
「投げたねー」
「いいの、これでSDXの皆さんに美味しい物食べてもらいたい、お肉とか」
「お肉って時点で誰かピンポイントで狙ってない?」
「気のせいダヨー」
「雨宮先生、新年の抱負は」
「雨宮さん今年は就活とかその他リアルでめっちゃ忙しくなるけど、それでも安定して本を出していたい! アヤちゃんの抱負は?」
「私玉置アヤ、プライベートでは先輩を見つけてセンター入所も認めてもらえるよう精進して、コスプレの方もよりクオリティを上げたりいろんなことに挑戦したいです」
今年もよろしくお願いします、と改めて挨拶を。ゆーてやってることは違ってもオフで話の出来る貴重な相棒ですからねえ。今年も頑張るぞー!
end.
++++
年末を経てカナコの悲劇。いや、本人そこまで悲壮感にくれてないしむしろネタバレふざけんなくらいには思ってそう
何やかんやカナコは現状を楽しんでいるので先輩を探すっていうミッションが二の次になりつつあるのでは…?
おたま様の投げ銭である。お肉ねえ。4000円でどれだけ食べることができるかしら
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「ああああ~っ! おたま様~! かつてこれほど自分が分裂出来ないことを呪ったことはない~っ!」
「うんうん、アヤちゃんドンマイ」
戦いが終わって一段落したお正月。ううん、5日にもなればもうお正月とも言えないかな。実家での自堕落生活も終了して、自分の部屋での自堕落生活を再開した。いや、実家でのそれとこっちでのそれってまた質が違うんですよ!
カズはサッカー見るのに忙しいからまだもうしばらくこの部屋には来ないだろうし、うちはうちでこっちに置いといた戦利品の消化に忙しく。まだまだ冬は始まったばかりだからね、読むのも書くのも忙しいですわ。
で、うちに遊びに来るなりアヤちゃんがおいおいと泣きついていて。アヤちゃんとは3日間コミフェを満喫して、それから向島にとんぼ返りしてからも分単位のスケジュールを送ってたよね。アヤちゃんはバイト研修先の先輩が組んでるっていうバンドのライブを見に行ってたんだって。
だけど、本当は実家の方で高校のメンバーが集まってやるっていう花火大会にも誘われてて。そこまで仲のいい人がいるワケでもなさそうな花火大会を断ってライブの方に行ってたそうなんだけど……花火大会の方に、アヤちゃんの探してる先輩さんがいたんだって。
「実家に寄らずに星港に帰って来たのを後悔はしてないよ?」
「うん、それはライブの話をしてる様子を見ててわかる」
「だけど、その写真を共有しないでよって! 気になるイベントのレポートは自分で探して読みますから、欲してもないのに押し付けて来るネタバレとか罪でしかない!」
「あ~、それはダメだわ~」
「でしょ!? 今の先輩の写真をピンポイントで送って来るとか……万死に値するでしょ!?」
アヤちゃんは荒れていた。表現者として尊敬する先輩を、向島の星ナントカ大学に進学したという情報以外に何のヒントもなく探し始めて2年弱。いろんなイベントに足を運んだけど未だに見つかる気配もなく。だけど、誘われてたけど断った行事に先輩がいたっていうね。
しかも自分では全然見つけられないのにそこまで仲がいいワケでもない人から先輩の写真を送って来られるとかいう何とも言えないヤツ。無駄に……って言ったら怒られるかもだけど、誰からもヒントをもらわないっていう縛りプレイが難易度をグンと上げてるんだよね。アヤちゃんは運命を信じたいそうだけど。
運命というのは恋愛という意味での運命じゃなくて、演劇に携わる者として自分を成長させてくれた運命の人、という意味なんだそうだ。“先輩”は書くことに対してストイックで、妥協をしないし人にもさせないし、常にアンテナを張り巡らせてるとか。何か凄い人らしいですよ?
「それで、先輩は何か変わってた?」
「髪の色がちょっと明るくなってた気がする。元々色素薄めだけど」
「写真だしその辺は誤差の範囲じゃない?」
「そっか。そうですよね! 写真はいっくらでも加工出来ますからね!」
「アヤちゃんが言うと説得力が凄すぎるわ」
「って言うか冬の夜に花火と先輩とかいう素晴らしいシチュエーションと被写体があるのに撮影をガチらない意味がわからないんだけど何でスマホで適当に撮りましたって感じで済ませられるのかちょっとわかりませんね」
コミフェで頒布されたアヤちゃんの新刊写真集も見事に在庫なしですよね。ホント眼福すぎてこれで2000円って安すぎませんかって感じ。アヤちゃんは自分でもフォトショなんかをガッツリ扱うから、写真加工に関してはある程度聞けますよね。
って言うかアヤちゃんは割と真面目に投げ銭で生活出来るんじゃないかって思うんですよね。だから先にやってたバイトを辞めても大して困ってないし、研修先でバンドのピアノの先輩さんがアヤちゃんの採用をなかなか認めてくれなくても粘れるんだよねえ(お金を抜きにしてもアヤちゃんの執念は凄いけど)。
「それより、ライブの方はどうだったの?」
「ピアノの先輩様が本当に素敵でした…!」
「えっ、どしたのアヤちゃん、いつもピアノさんにイジメられてるみたいなこと言ってるのに」
「いや、ゆーてもですよ雨宮先生! 二次的に見ればピアノさんの挑発がどちゃくそえっちなんですよ! リアル視点ではは~やっぱ実力者すごいってなるんですよ!」
楽しかった方のことを喋り始めるとアヤちゃんはテンションが高くなって、先においおい泣きついてたことなんてなかったみたい。ピアノの先輩“様”…? 研修先とバンドの話は聞いてたけど、様ってついてたっけ今まで。様クラスに格上げしたのかなこのライブで。
「ところでおたま様のお正月は?」
「初詣と戦利品消化、それからSDX三昧でした」
「安っ定。カズさんの姿がなくて森だ」
「カズはカズでサッカー見てるから。てかプロ氏の年越し第九配信に思わず計4000円投げちゃいましたよね」
「投げたねー」
「いいの、これでSDXの皆さんに美味しい物食べてもらいたい、お肉とか」
「お肉って時点で誰かピンポイントで狙ってない?」
「気のせいダヨー」
「雨宮先生、新年の抱負は」
「雨宮さん今年は就活とかその他リアルでめっちゃ忙しくなるけど、それでも安定して本を出していたい! アヤちゃんの抱負は?」
「私玉置アヤ、プライベートでは先輩を見つけてセンター入所も認めてもらえるよう精進して、コスプレの方もよりクオリティを上げたりいろんなことに挑戦したいです」
今年もよろしくお願いします、と改めて挨拶を。ゆーてやってることは違ってもオフで話の出来る貴重な相棒ですからねえ。今年も頑張るぞー!
end.
++++
年末を経てカナコの悲劇。いや、本人そこまで悲壮感にくれてないしむしろネタバレふざけんなくらいには思ってそう
何やかんやカナコは現状を楽しんでいるので先輩を探すっていうミッションが二の次になりつつあるのでは…?
おたま様の投げ銭である。お肉ねえ。4000円でどれだけ食べることができるかしら
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