2018(04)
■根を張るニューコンテンツ
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「あっこさーん、あこさーん。お汁粉食べませんかー?」
「食べるー」
「こっち向いてもらっていいですかねー」
「動画止めるのめんどくさいんですよー。何か上手いこと手に乗せてもらえませんかねー」
多忙を極める冬休みもあと少し。緑ヶ丘大学は次の月曜日から平常授業に戻るけど、戻ったところで授業の少ない3年生にはあまり関係ないのかもしれない。冬休みに入ったくらいから、あっこさんはパソコンに張り付いて動画三昧。昼も夜も動画三昧すしざんまい。
俺は俺でコミフェ遠征をしてて、その戦利品消化とか通販の準備とかでちょこちょこ忙しくしてて。あっこさんに頼まれてた物を渡しても現状積んでるんだよなあ。まあ、いくらあっこさんでも分裂は出来ないし、今は動画優先なのね。
「てか今は何の動画見てるの?」
「ゲーム実況とかがメイン」
「へー」
「この休みでいろいろ見てたんだけど、今はSDXに潜ってるよね」
「へー」
「興味なさそうですねしょーゆ君」
「将由です」
俺は少しだけオタクだけど、姉の章子さんもまあまあなオタク。一緒にスマホゲームなどをしてきゃっきゃしていると人に言うとお姉さんと仲がいいんだねとよく言われるからそれなりに仲のいい姉弟なんだと思う。
確かに兄弟どっちかの部屋に籠ってガチャの成果を発表し合ったり、推しのプレゼンをしたり、部活やサークルの原稿を一緒にやったりするという話はなかなか聞かない。原稿やってる時に同士の存在が近くにあるのは刺激があっていいなとは実感している。
「でも、将由はSDX好きだと思うよ」
「え、何で」
「やってることはゲーム実況だけど、本当にやりたいことはキャラクター遊びなんだって」
「キャラクター遊び?」
「リアルの人がゲーム実況者としてのキャラクターを演じる、的な」
「つまり、リアルの人格と実況者としてのキャラクターは別物であると」
その話には少し興味深い。俺は本が好きだし文学云々のことについての興味はあるけど、それよりも人間について興味が強かったから社会学部に入った。人格としてのキャラクターとか、集団に措ける役割が形成される経緯とか。
あっこさんが冬休みに見漁ったゲーム実況動画の中でもSDXというグループを推して来るのはきっとそういうことなんだろうなあ。元々ハマったら突き詰めるタイプの人ではあるけど、今回は久々にガチなのが来たかなあ。本でも動画でもそれにハマったらこれまで出てるの全部見るもんなあこの人。
「お餅おかわり」
「食べるねえ。それより原稿やってる?」
「SDXをBGMに出来るレベルまで見てから本腰入れてやる」
「いつになるやら」
「へーきへーき。それでも1時間見たら3000字進めてるから」
「その辺はさすがだなあ」
「もちろん3000字進める間も後ろで動画は再生しています」
「さすがだなあ」
あっこさんの凄いところはこれだよなあ。とにかく筆が早い。俺もまあまあ速い方だとは思ってたけど、身内にこんな化け物染みたのがいたらまだまだだってなりますよね。早ければいいというものでもないけど、早い方が単純にいっぱい書けるし他のことをインプットする時間も出来るから。時間は有限だし。
「SDXの他にもめるむさんと仲間たちとかもすごい可愛いし、正月がこれだけで終わってしまった……」
「いいんじゃない、充実してるみたいだし」
「いいんだ、バイトもしてるし初詣も行ったし。お汁粉も食べてるからちゃんとお正月だよ!」
「むしろそれだけやってて、かつ原稿もやっててよく動画漬けになれるなという気もする」
「人に会わないとネタがなくなるでしょうが」
「それはわからないでもないけど。とりあえずおかわり持ってくる」
「よろしこ」
人のいる話を書く以上、何かしら人との関わりを持たないとネタが出来ないというのは確かだ。ぼっちの妄想で人の思考を組み上げていくよりも、自分以外の人とリアルにでも通話でも何でもいいけど喋ることで思いもよらないことに気付けたりもする。
そう考えると、実際に存在する人がやっている実況動画なんかはあっこさんには向いているんだろうなと。特にグループでやっている物なら人の会話が黙ってても入って来る。それでいて実質2.5次元だから画面の向こうにいる推しを愛でる楽しさもある。
「はい、おかわり」
「どーもー」
「でも、動かずに食べてばかりいると肥えるよ」
「頭と手を動かしてるのじゃダメですかねえ」
「バイトもしてるから大丈夫だとは思うけど、家では動かなさすぎるでしょ」
「家でくらいいいじゃないですかー」
あっこさんは比較的社会的な活動と言うか、生活の中で外に出て動いてるからまだ引き籠もりになったりしないんだろうな。だけど、これであっこさんが人と会わずに、外に出なくても過ごせるタイプだったら完全に危なかったよね。たまにいるよね、何かにハマって消息不明になる人。
「って言うか、そういう自分は何か動いてんの?」
「一応バイトはしてるけど」
「バイトと原稿以外で」
「特に何も」
「やーい、人のことは言えないんだー」
「何か腹立つな」
end.
++++
樽中姉弟の正月休みの一幕。しょーこちゃんが動画三昧、弟のサッカスの方は普段通りなのかしら。
って言うかここの姉弟は合同誌とか出さないのかな、作風と言うか方向性ってどんな感じなんだろうね
仲良しの樽中姉弟は学内で会うことがあるのかしら。たまにご飯とか食べててもかわいいとは思うがどうだろう
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「あっこさーん、あこさーん。お汁粉食べませんかー?」
「食べるー」
「こっち向いてもらっていいですかねー」
「動画止めるのめんどくさいんですよー。何か上手いこと手に乗せてもらえませんかねー」
多忙を極める冬休みもあと少し。緑ヶ丘大学は次の月曜日から平常授業に戻るけど、戻ったところで授業の少ない3年生にはあまり関係ないのかもしれない。冬休みに入ったくらいから、あっこさんはパソコンに張り付いて動画三昧。昼も夜も動画三昧すしざんまい。
俺は俺でコミフェ遠征をしてて、その戦利品消化とか通販の準備とかでちょこちょこ忙しくしてて。あっこさんに頼まれてた物を渡しても現状積んでるんだよなあ。まあ、いくらあっこさんでも分裂は出来ないし、今は動画優先なのね。
「てか今は何の動画見てるの?」
「ゲーム実況とかがメイン」
「へー」
「この休みでいろいろ見てたんだけど、今はSDXに潜ってるよね」
「へー」
「興味なさそうですねしょーゆ君」
「将由です」
俺は少しだけオタクだけど、姉の章子さんもまあまあなオタク。一緒にスマホゲームなどをしてきゃっきゃしていると人に言うとお姉さんと仲がいいんだねとよく言われるからそれなりに仲のいい姉弟なんだと思う。
確かに兄弟どっちかの部屋に籠ってガチャの成果を発表し合ったり、推しのプレゼンをしたり、部活やサークルの原稿を一緒にやったりするという話はなかなか聞かない。原稿やってる時に同士の存在が近くにあるのは刺激があっていいなとは実感している。
「でも、将由はSDX好きだと思うよ」
「え、何で」
「やってることはゲーム実況だけど、本当にやりたいことはキャラクター遊びなんだって」
「キャラクター遊び?」
「リアルの人がゲーム実況者としてのキャラクターを演じる、的な」
「つまり、リアルの人格と実況者としてのキャラクターは別物であると」
その話には少し興味深い。俺は本が好きだし文学云々のことについての興味はあるけど、それよりも人間について興味が強かったから社会学部に入った。人格としてのキャラクターとか、集団に措ける役割が形成される経緯とか。
あっこさんが冬休みに見漁ったゲーム実況動画の中でもSDXというグループを推して来るのはきっとそういうことなんだろうなあ。元々ハマったら突き詰めるタイプの人ではあるけど、今回は久々にガチなのが来たかなあ。本でも動画でもそれにハマったらこれまで出てるの全部見るもんなあこの人。
「お餅おかわり」
「食べるねえ。それより原稿やってる?」
「SDXをBGMに出来るレベルまで見てから本腰入れてやる」
「いつになるやら」
「へーきへーき。それでも1時間見たら3000字進めてるから」
「その辺はさすがだなあ」
「もちろん3000字進める間も後ろで動画は再生しています」
「さすがだなあ」
あっこさんの凄いところはこれだよなあ。とにかく筆が早い。俺もまあまあ速い方だとは思ってたけど、身内にこんな化け物染みたのがいたらまだまだだってなりますよね。早ければいいというものでもないけど、早い方が単純にいっぱい書けるし他のことをインプットする時間も出来るから。時間は有限だし。
「SDXの他にもめるむさんと仲間たちとかもすごい可愛いし、正月がこれだけで終わってしまった……」
「いいんじゃない、充実してるみたいだし」
「いいんだ、バイトもしてるし初詣も行ったし。お汁粉も食べてるからちゃんとお正月だよ!」
「むしろそれだけやってて、かつ原稿もやっててよく動画漬けになれるなという気もする」
「人に会わないとネタがなくなるでしょうが」
「それはわからないでもないけど。とりあえずおかわり持ってくる」
「よろしこ」
人のいる話を書く以上、何かしら人との関わりを持たないとネタが出来ないというのは確かだ。ぼっちの妄想で人の思考を組み上げていくよりも、自分以外の人とリアルにでも通話でも何でもいいけど喋ることで思いもよらないことに気付けたりもする。
そう考えると、実際に存在する人がやっている実況動画なんかはあっこさんには向いているんだろうなと。特にグループでやっている物なら人の会話が黙ってても入って来る。それでいて実質2.5次元だから画面の向こうにいる推しを愛でる楽しさもある。
「はい、おかわり」
「どーもー」
「でも、動かずに食べてばかりいると肥えるよ」
「頭と手を動かしてるのじゃダメですかねえ」
「バイトもしてるから大丈夫だとは思うけど、家では動かなさすぎるでしょ」
「家でくらいいいじゃないですかー」
あっこさんは比較的社会的な活動と言うか、生活の中で外に出て動いてるからまだ引き籠もりになったりしないんだろうな。だけど、これであっこさんが人と会わずに、外に出なくても過ごせるタイプだったら完全に危なかったよね。たまにいるよね、何かにハマって消息不明になる人。
「って言うか、そういう自分は何か動いてんの?」
「一応バイトはしてるけど」
「バイトと原稿以外で」
「特に何も」
「やーい、人のことは言えないんだー」
「何か腹立つな」
end.
++++
樽中姉弟の正月休みの一幕。しょーこちゃんが動画三昧、弟のサッカスの方は普段通りなのかしら。
って言うかここの姉弟は合同誌とか出さないのかな、作風と言うか方向性ってどんな感じなんだろうね
仲良しの樽中姉弟は学内で会うことがあるのかしら。たまにご飯とか食べててもかわいいとは思うがどうだろう
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