2018(04)
■戦線参加のエントリー
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「えーでは、今年の情報センターも仕事納めっつーことで、お疲れさんでした」
授業は先週のうちに終わっていたが、情報センターは今週も開放されていた。しかし、年末年始には当然閉鎖される施設であって、スタッフもそれぞれ実家へと散っていく。
春山さんの閉めの挨拶を清掃道具を持ちながら聞くオレたちだ。センターにも清掃業者は入るが大掃除までは業務のうちに入っていないらしい。センターの自習室、そして業者の入らない事務所の大掃除という名目で今日は全員が集合していた。
「さて、何か言い残したことはあったかな」
「屯屯おかきホタテ味」
「リンてめえ、安定の蛮族だな」
「爆買いは安定の行事なんですから、リクエストを送るくらいは自由かと」
「えー! そしたら俺もバターサンドを~…!」
「自分はバターケーキの方でオナシャース」
「はいはい。川北はサンドで冴はケーキだな。はい他」
春山さんが帰省してこっちに戻って来る時には空港の土産物売り場で爆買いをするのが恒例行事と化している。妖怪菓子配りと呼んでも何ら問題はなく、有名な北辰土産からマイナーというか、本当に地元の人間が日常的に食べているような物を買ってきたりする。
半年もセンターにいればこの爆買いに一度は遭遇しているから、何が美味しかったなどというのがわかるようになるものだ。しかし、オレや川北、それから土田のリクエストにきょとんとした顔をしているのが烏丸と何故か今日もいる自称研修生の綾瀬だ。
「はい他~?」
「……ユースケ、これって何の時間なの?」
「春山さんが帰省したときに大量に買って来る土産のリクエストタイムだ」
「リクエストが出来るの?」
「そうか、お前は秋学期からの入所だからこの人の爆買いを知らんのか。この人はとにかく北辰土産を大量に買って来る。それをここでばら撒いてだな」
「ユースケは何が好きなの?」
「オレは屯屯おかきという米菓が好きだ。一度食べ始めるとやめられなくなるのが問題点でな」
「ミドリは何が好きなの?」
「俺はバターサンドですねー。口に入れた瞬間風味がぶわ~ってして、美味しさがぎゅ~ってして、とにかく美味しいんですよー!」
「あ、そう言えばセンターに来たばっかりの頃に食べてたね」
「そうですそれです!」
結局、リクエストがあろうがなかろうが春山さんが爆買いしてくるのには変わらんので、ここでのリクエストは閉め切られることになった。ただ、烏丸は甘いものを贅沢だと言ってあまり食べないので、甘くないものも今回は増やしてみようと春山さんは計画を立てているようだ。
「でも、春山さんのお土産大会って本当に楽しいですよね。俺もいつもより多めに買って来てみましょうかね」
「おっ、いいぞ川北。私は漬け物がいいな」
「漬け物ですねー。他の人は何か長篠土産で何かリクエストはありますかー?」
「夏に食ったあのパイが美味かったな」
「りんごパイですねー。あれ美味しかったですよねー。また買って来まーす」
「じゃあ自分は栗きんとん買って来やーす」
「もしかしてまたりっちゃん先輩を並ばせるんじゃ……」
「こんな時のためのリツすわ」
「わっ、私も東都土産を買って来ますっ! お土産戦線に参戦したいですっ!」
ダンッとコロコロを床に打ち付け、綾瀬が鼻息を荒くしている。と言うか出身は山羽だと聞いていたが何故そこで東都が出て来るのかと。いや、好きにすればいいのだが。買収も疑われかねん行為には違いない。
「カナコ、東都土産だったら私はアレが食ってみたいなーァ。東都駅にあるバターサンド」
「東都駅……頑張って寄ってみますね!」
「って言うかカナコちゃんって実家山羽でしょ? 東都に旅行にでも行くの?」
「年末の東都と言・え・ば。……ですよ烏丸さん!」
「えっ、わかんない」
「綾瀬、誰もが皆年末の東都とコミフェがイコールで結ばれるお前のような人種ではないのだぞ」
「それがすぐに出て来るということは、雄介さんにはイコールで結ばれているということですか…!?」
「ニアイコールだが、それはとにかくとしてコミフェに行くのであれば東都土産よりもお使いを頼みたい」
「おいリン、個人的なヤツは後にしろ」
……と言うか、綾瀬も年末の音楽祭には出席するはずだが、まさかコミフェに行ってから来ると言うのか? まさに分刻みのスケジュールになるのではないかと思うのだが、上手く回す算段があるのだろう。
ここで確認すべきは春山さんが確実に帰省するということだ。大晦日の路上ライブ、それから音楽祭。そのどちらも春山さんが北辰に帰省しているという体で計画されている。どう足掻いても手の届かないところで面白いことをやるのが最大のドッキリなのだ。
「では綾瀬には後で買い物リストを渡すことにしてだな」
「責任重大じゃないですか…!」
「ダイチ、お前も実家に帰るんだろ? 西京だっけ」
「あ、俺は帰る予定ないんですよー」
「リン、お前は帰省もクソもないけど向島の土産をたっぷり用意してくれていいんだぞ」
それぞれの場所でそれぞれの行事に忙しくなりそうな年末年始だ。しかし、もし春山さんのノリで土産大会が開かれるとすると、今日の大掃除が一瞬で無に帰すのではないかという恐怖が多少ないこともないのだが
end.
++++
仕事納めの情報センターです。何気にミドリもお土産はちょこちょこ買って来るし、って言うかダイチは1回どっかのタイミングでちょっと帰った年度がなかったかな
そしてカナコは年末の東都に突っ込みに行くようなので、それはそれで戦線である。音楽祭もあるから忙しいぞ!
年始にはお土産大会が開かれるのかな? きっととんでもないことになるんやろなあ……例年通りならプレッツェルも来るはずなんだが
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「えーでは、今年の情報センターも仕事納めっつーことで、お疲れさんでした」
授業は先週のうちに終わっていたが、情報センターは今週も開放されていた。しかし、年末年始には当然閉鎖される施設であって、スタッフもそれぞれ実家へと散っていく。
春山さんの閉めの挨拶を清掃道具を持ちながら聞くオレたちだ。センターにも清掃業者は入るが大掃除までは業務のうちに入っていないらしい。センターの自習室、そして業者の入らない事務所の大掃除という名目で今日は全員が集合していた。
「さて、何か言い残したことはあったかな」
「屯屯おかきホタテ味」
「リンてめえ、安定の蛮族だな」
「爆買いは安定の行事なんですから、リクエストを送るくらいは自由かと」
「えー! そしたら俺もバターサンドを~…!」
「自分はバターケーキの方でオナシャース」
「はいはい。川北はサンドで冴はケーキだな。はい他」
春山さんが帰省してこっちに戻って来る時には空港の土産物売り場で爆買いをするのが恒例行事と化している。妖怪菓子配りと呼んでも何ら問題はなく、有名な北辰土産からマイナーというか、本当に地元の人間が日常的に食べているような物を買ってきたりする。
半年もセンターにいればこの爆買いに一度は遭遇しているから、何が美味しかったなどというのがわかるようになるものだ。しかし、オレや川北、それから土田のリクエストにきょとんとした顔をしているのが烏丸と何故か今日もいる自称研修生の綾瀬だ。
「はい他~?」
「……ユースケ、これって何の時間なの?」
「春山さんが帰省したときに大量に買って来る土産のリクエストタイムだ」
「リクエストが出来るの?」
「そうか、お前は秋学期からの入所だからこの人の爆買いを知らんのか。この人はとにかく北辰土産を大量に買って来る。それをここでばら撒いてだな」
「ユースケは何が好きなの?」
「オレは屯屯おかきという米菓が好きだ。一度食べ始めるとやめられなくなるのが問題点でな」
「ミドリは何が好きなの?」
「俺はバターサンドですねー。口に入れた瞬間風味がぶわ~ってして、美味しさがぎゅ~ってして、とにかく美味しいんですよー!」
「あ、そう言えばセンターに来たばっかりの頃に食べてたね」
「そうですそれです!」
結局、リクエストがあろうがなかろうが春山さんが爆買いしてくるのには変わらんので、ここでのリクエストは閉め切られることになった。ただ、烏丸は甘いものを贅沢だと言ってあまり食べないので、甘くないものも今回は増やしてみようと春山さんは計画を立てているようだ。
「でも、春山さんのお土産大会って本当に楽しいですよね。俺もいつもより多めに買って来てみましょうかね」
「おっ、いいぞ川北。私は漬け物がいいな」
「漬け物ですねー。他の人は何か長篠土産で何かリクエストはありますかー?」
「夏に食ったあのパイが美味かったな」
「りんごパイですねー。あれ美味しかったですよねー。また買って来まーす」
「じゃあ自分は栗きんとん買って来やーす」
「もしかしてまたりっちゃん先輩を並ばせるんじゃ……」
「こんな時のためのリツすわ」
「わっ、私も東都土産を買って来ますっ! お土産戦線に参戦したいですっ!」
ダンッとコロコロを床に打ち付け、綾瀬が鼻息を荒くしている。と言うか出身は山羽だと聞いていたが何故そこで東都が出て来るのかと。いや、好きにすればいいのだが。買収も疑われかねん行為には違いない。
「カナコ、東都土産だったら私はアレが食ってみたいなーァ。東都駅にあるバターサンド」
「東都駅……頑張って寄ってみますね!」
「って言うかカナコちゃんって実家山羽でしょ? 東都に旅行にでも行くの?」
「年末の東都と言・え・ば。……ですよ烏丸さん!」
「えっ、わかんない」
「綾瀬、誰もが皆年末の東都とコミフェがイコールで結ばれるお前のような人種ではないのだぞ」
「それがすぐに出て来るということは、雄介さんにはイコールで結ばれているということですか…!?」
「ニアイコールだが、それはとにかくとしてコミフェに行くのであれば東都土産よりもお使いを頼みたい」
「おいリン、個人的なヤツは後にしろ」
……と言うか、綾瀬も年末の音楽祭には出席するはずだが、まさかコミフェに行ってから来ると言うのか? まさに分刻みのスケジュールになるのではないかと思うのだが、上手く回す算段があるのだろう。
ここで確認すべきは春山さんが確実に帰省するということだ。大晦日の路上ライブ、それから音楽祭。そのどちらも春山さんが北辰に帰省しているという体で計画されている。どう足掻いても手の届かないところで面白いことをやるのが最大のドッキリなのだ。
「では綾瀬には後で買い物リストを渡すことにしてだな」
「責任重大じゃないですか…!」
「ダイチ、お前も実家に帰るんだろ? 西京だっけ」
「あ、俺は帰る予定ないんですよー」
「リン、お前は帰省もクソもないけど向島の土産をたっぷり用意してくれていいんだぞ」
それぞれの場所でそれぞれの行事に忙しくなりそうな年末年始だ。しかし、もし春山さんのノリで土産大会が開かれるとすると、今日の大掃除が一瞬で無に帰すのではないかという恐怖が多少ないこともないのだが
end.
++++
仕事納めの情報センターです。何気にミドリもお土産はちょこちょこ買って来るし、って言うかダイチは1回どっかのタイミングでちょっと帰った年度がなかったかな
そしてカナコは年末の東都に突っ込みに行くようなので、それはそれで戦線である。音楽祭もあるから忙しいぞ!
年始にはお土産大会が開かれるのかな? きっととんでもないことになるんやろなあ……例年通りならプレッツェルも来るはずなんだが
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